| 【発明の名称】 |
ハタケシメジの人工栽培用培養基及びそれを用いたハタケシメジの人工栽培用方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】西井 孝文
【氏名】太田 勉
【氏名】原 弘
【氏名】田所 孝
|
| 【要約】 |
【課題】ハタケシメジの人工栽培方法において、安価で、しかも安定的且つ短期間に高品質のハタケシメジを発生させることを可能にする人工栽培用培養基、及びそれを用いたハタケシメジの人工栽培方法を提供する。
【解決手段】ハタケシメジの人工栽培方法において、豆類を原料とする餡粕を含む培養基を用いて、ハタケシメジの菌糸を培養し、子実体を発生させ、培養基として絶乾重量比でバーク堆肥100 部に対して、餡粕を10〜100 部、米ぬかを10〜50部配合したものを用いる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 豆類を原料とする餡粕を含むハタケシメジの人工栽培用培養基。 【請求項2】 絶乾重量比でバーク堆肥100 部に対して、豆類を原料とする餡粕を10〜100 部、米ぬかを10〜50部配合してなるハタケシメジの人工栽培用培養基。 【請求項3】 請求項1又は2に記載の人工栽培用培養基を用いて、ハタケシメジの菌糸を培養し、子実体を発生させることを特徴とするハタケシメジの人工栽培方法。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は新規なキノコ培養基およびハタケシメジの人工栽培方法に関し、さらに詳しくは、豆類を原料とする餡粕を含む人工栽培用培養基を用いて、菌糸を培養し、子実体を発生させるにより、子実体を安価で、短期間に、また安定的に収穫することを可能にするハタケシメジの人工栽培に関するものである。 【0002】 【従来の技術】ハタケシメジはシメジ属のきのこで、子実体の形態がホンシメジと類似しており、ホンシメジの腐生型といわれるほど美味であり、香りや歯ざわりの良い食用きのこである。本きのこは腐生性きのこの一種であり、秋には林内や庭園、畑地、道端等の他、ときには家屋等の床下にも多数群がって発生する(今関六也・本郷次雄:原色日本新菌類図鑑(1)、保育社、1987) 。 【0003】一般のきのこ栽培においては、工業的スケールで大量に、また安定的に生産することが可能な「菌床人工栽培法」が定着し、この方法で栽培したブナシメジ、ヒラタケ、エノキタケ等多くの商品が市場に出回っている。一方、ハタケシメジの人工栽培方法としては、野外栽培法と室内栽培法があるが、野外栽培法は収穫が1年に1〜2回であり、また、栽培期間が長いために室内栽培に関心が集まっている。 【0004】ハタケシメジの人工栽培用培養基としては、オガクズもしくはバーク堆肥等の腐植性基材を支持体とし、これに、米ヌカ、鶏糞、腐葉土、灰、寒天残渣等を加えた培養基に添加物として、例えばケイ素化合物(特開昭62-210921 号公報)やアルミニウム化合物、アルカリ土類金属化合物、オカラ(特開平5-192035号公報)、その他、ケイ皮酸もしくはその関連物質(特開昭60-3918 号公報)、亜硫酸パルプ廃液より分別したリグニン、糖複合体を中心とする成分のスルホン酸塩(特開昭61-100505 号公報)、発生率向上剤としてクエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸等の有機酸(特開平7-303419号公報)、過酸化水素または次亜塩素酸ナトリウム(特開平9-19218 号公報) 、浄水ケーキとカニ殻(特開平9-233943号公報)等を添加する方法が提案されている。 【0005】また、ヒラタケ、ナメコ、エノキタケ、シイタケ、マイタケの室内栽培に用いるそれぞれの培養基にホップ粕、ビール粕、麦芽くず(特開昭54-7695 号公報、きのこ技術集談会第6回年会および第10回シンポジウム講演要旨集、1994年8月)を添加する栽培方法、さらには乾燥ビール粕(特開平8-154482号公報) を用いる方法、籾殻を配合する方法(特願平10-50339号明細書)も提案されている。 【0006】ハタケシメジの栽培方法としては、バーク堆肥あるいはオガクズ等の支持体に米ヌカその他の栄養素あるいは添加物を混合して栽培容器に充填して殺菌する。ここへハタケシメジの種菌を接種して一定温度と湿度に調整した室内で栽培して、菌糸が栽培容器内に蔓延した後に菌掻きおよび水分補給を行い、次いで栽培容器の開口部を被覆素材で被覆した後に栽培を継続して子実体を発生させるものである。 【0007】本方法において、被覆素材で栽培容器の開口部を被覆することは子実体を短期間に、また安定的に、かつ多量に発生させ、収穫するためには極めて重要な方法である(特公平5-15404 号公報)。また本発明者等は被覆素材で栽培容器の開口部を被覆した後に、温度ならびに湿度を一定の条件にした室内に1〜7日間置いた後に栽培を継続した(特開平7-44号公報)後に、菌糸が侵入していない表層部の被覆素材を除去してさらに栽培を継続する方法(特開平7-45号公報)も提案している。 【0008】なお、大豆子種の皮殻を含有する菌床を用いてマイタケ、ナメコ、ヒラタケ、エノキダケを栽培することは特開昭63-37165号公報に、また大豆皮とチップダストを配合したPleurotus sajor-caju(Fr.)Sing.(通称、ヒマラヤヒラタケ)の栽培用培地は、特開平6-335319号公報および特開昭62-3716 号公報で知られている。また、豆類を原料とする餡粕をパルプスラリーに添加して抄紙してなる模様紙は、実開平8-702 号公報で知られている。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】一般にハタケシメジの人工栽培、特にバーク堆肥を主成分支持体とする培養基を用いる場合、バーク堆肥の品質、あるいは添加物の配合割合によっては培養基内の物理性の悪化を招き、菌糸生長の遅れ、子実体の発生不良がでる等の問題点があった。したがって、バーク堆肥の品質、あるいは添加物の配合割合に関わらず、安定的且つ短期間に子実体が収穫できることが可能になる培養基資材が望まれていた。 【0010】しかしながらハタケシメジの人工栽培技術に関して従来から提案されている培養基資材は、添加物としては高価、あるいは入手が困難等の問題点が多く、大型栽培を考える上で支障があった。本発明の目的は、これらの問題点を解決して、ハタケシメジの人工栽培方法において、安価で、しかも安定的且つ短期間に高品質のハタケシメジを発生させることを可能にする培養基及びそれを用いたハタケシメジの人工栽培方法を提供することである。 【0011】 【課題を解決するための手段】本発明者等は、ハタケシメジの人工栽培方法において、これまで用いられてきた培養基よりも、さらに安価で、しかも安定的且つ短期間に高品質のハタケシメジを発生させることを可能にする培養基について検討した結果、食品産業の産業廃棄物である豆類を原料とする餡粕(あんかす)を混合することによって、安価で、しかも安定的且つ短期間に高品質のハタケシメジを発生させることが可能になることを見出して本発明を完成した。すなわち本発明は、豆類を原料とする餡粕を含む人工栽培用培養基に存する。より具体的には、本発明は、絶乾重量比でバーク堆肥100 部に対して、豆類を原料とする餡粕を10〜100 部、米ぬかを10〜50部配合してなるハタケシメジの人工栽培用培養基に存する。 【0012】本発明はまた、ハタケシメジの人工栽培方法において使用するための、豆類を原料とする餡粕を含む培養基、及びそれを用いて、ハタケシメジの菌糸を培養し、子実体を発生させることを特徴とするハタケシメジの人工栽培方法に存する。 【0013】 【発明の実施の形態】以下に本発明を詳細に説明する。 培養基絶乾重量比でバーク堆肥100 部に対して、豆類を原料とする餡粕を10〜100 部配合したものに、栄養源として米ぬかを10〜50部混合し、含水率を60〜68%に調製したものを用いる。また、必要に応じて補助栄養源としてフスマ、カニ殻、乾燥ビール粕等の有機質成分、カルシウム、カリウム、アルミニウム等の無機質成分を適宜配合したものを用いることができる。 【0014】餡粕本発明で使用する餡粕は、豆類を原料とする菓子、餅等の食品製造業者から出る産業廃棄物で、煮た小豆、大豆、白ささげ、白隠元、うずら隠元などをすりつぶし、さらに煮たものから漉し餡をとった粕で、餡の種類、製造方法、その他いずれについても限定されることはない。また、必要に応じて、乾燥物、堆積物も使用することができる。好ましくは、原料の安定的供給の面からは小豆が使用される。 【0015】栽培容器栽培容器は、一般にきのこの人工栽培に使用されているものであればいずれも使用できる。通常、ポリプロピレン製のビンまたは直方体型の袋で、その容量は800 〜1,000ml のものを使用するのが好ましい。 【0016】組織培養および継代培養培地本発明においてハタケシメジ菌糸の培養に用いる培地としては、一般に担子菌が生育する培地であればいずれも使用可能である。例えば、「菌類研究法」(青島清雄、椿啓介、三浦宏一朗編:昭和58年6月1日発行、共立出版)に記載されている培地はいずれも使用できるが、特に好ましい例は、表1または表2に示す組成の培地である。 【0017】 【表1】
【0018】 【表2】
【0019】種菌の作製人工栽培したハタケシメジ、あるいは野生のハタケシメジを採取して組織の一部を切り取り、例えば表1または表2に示した寒天培地を用いて組織培養を行う。得られた菌糸の継代培養を繰り返して得た無菌菌糸を、バーク堆肥もしくはオガクズと米ぬか等の栄養源とを絶乾重量比で100:10〜50の範囲で混合した後に、含水率を60〜68%に調整した培地に接種して、20〜25℃で約30日間培養して種菌を作製する。 【0020】被覆素材本発明で使用する被覆工程の被覆素材は、本発明者らが先に提案した(特願平9-332680号明細書)pH5.5 〜7.5 、含水率55〜75%であるバーク堆肥を使用することが好ましく、電気伝導度が1.0mS/cm以下、粒度が10mm以下のバーク堆肥を使用することが更に好ましい。 【0021】栽培方法絶乾重量比でバーク堆肥100 部に対して、豆類を原料とする餡粕を10〜100 部配合したものに、栄養源として米ぬかを10〜50部混合し、含水率を60〜68%に調製した培養基を、ポリプロピレン製の800 〜1,000ml の栽培ビンあるいは約1L容の栽培袋に充填し、120 〜130 ℃で1〜3時間程度高圧蒸気殺菌し、これを冷却した後、先に作製した種菌を無菌的に接種する。その後、栽培ビンで栽培する場合は、室温20〜25℃および湿度60〜80%(RH)に調整した室内で菌糸が培養基内に蔓延し、さらに菌糸に褐色の変化が見られるようになって菌糸が熟成し、かつ子実体の原基が形成される前の時期まで30〜60日間培養する(菌糸培養工程)。 【0022】次に菌掻きを行い、栽培ビンの開口部分の上端まで水を加えて1〜5時間放置した後、余剰水を捨て、前記のバーク堆肥で開口部を1〜2cmの厚さに被覆する(被覆工程)。さらにこれを室温20〜25℃、湿度90〜100%(RH)の条件に調節した室内で1〜10日間培養する(育成工程)。次いで菌糸が侵入していない表層部の被覆素材を除去し、室温10〜20℃、湿度90〜100 %(RH)、照度50〜300 ルックスの条件に調整した室内で栽培を継続する(子実体形成工程)と、被覆後20〜35日には子実体の収穫が可能になる。 【0023】 【実施例】以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 実施例1絶乾重量比でバーク堆肥(中日本農産社製)100 部に対して、小豆の餡粕を18部配合したものに、栄養源として米ぬかを17部、補助栄養源としてカニ殻を5部混合し、含水率を63%に調製した培養基を、850ml 容のポリプロピレン製栽培ビンに620g充填した。そして、ビン内の培養基全体に空気を補給し、菌糸の生育を良好にするために、ビンの開口部分から底部近くに達するまで、培養基に直径2.0cm の大きさの穴をあけた。 【0024】このビンを高圧殺菌釜(120℃−1時間)にて殺菌した。培養基の温度を25℃以下に冷却した後、クリーンルーム(接種室)にてハタケシメジの種菌(登録品種「亀山1号」、登録第6740号)を15g接種して、室温23℃、湿度70%(RH)に調整した室内で接種した種菌の菌糸が栽培容器内に蔓延し、さらに菌糸に褐色の変化が見られるようになって菌糸が熟成し、かつ子実体の原基形成が見られない時期まで培養した(菌糸培養工程)。 【0025】次に水分補給のため水40mlを加え2時間放置した後、開口部を下にして余剰水を除去し、pH6.2 、含水率65%、電気伝導度0.3mS/cm、粒度10mm以下のバーク堆肥で開口部を約2.0cm の厚さで被覆した(被覆工程)。これを室温23℃、湿度95%(RH)の条件に調整した室内で7日間培養を継続した後、菌糸が侵入していない表層部の被覆素材を除去し、さらに室内温度17℃、湿度95%(RH)、照度200 ルックスに調節した室内で栽培を継続した(子実体形成工程)。この結果、種菌接種から30日で菌糸がビン全体に蔓延し、75日目に栽培ビン1本当たり135g(32本の平均)のハタケシメジの子実体が収穫された。 【0026】実施例2培養基として、絶乾重量比でバーク堆肥100 部に対して、小豆の餡粕を22部、乾燥ビール粕を15部、米ぬかを26部、カニ殻を5部混合したものを用いた以外は、実施例1と同様に栽培を行った結果、種菌接種から30日で菌糸がビン全体に蔓延し、75日目に栽培ビン1本当たり139g(32本の平均)のハタケシメジの子実体が収穫された。 【0027】比較例培養基として、絶乾重量比でバーク堆肥100 部に対して、小豆の餡粕を配合せず、米ぬかを50部、カニ殻を5部混合したものを用いた以外は、実施例1と同様に栽培を行った結果、菌糸生長が遅れ、種菌接種から菌糸がビン全体に蔓延するまでに45日を要し、90日目に栽培ビン1本当たり122g(発生した21本の平均)のハタケシメジの子実体が収穫されたが、接種した32本中11本で子実体の発生が見られなかった。 【0028】 【発明の効果】本発明の栽培方法及び豆類を原料とする餡粕を含む培養基により、高品質のハタケシメジを安価で、しかも安定的に、高収率で収穫することが可能になった。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】594156880 【氏名又は名称】三重県 【識別番号】000122298 【氏名又は名称】王子製紙株式会社
|
| 【出願日】 |
平成11年4月12日(1999.4.12) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100077517 【弁理士】 【氏名又は名称】石田 敬 (外4名)
|
| 【公開番号】 |
特開2000−295920(P2000−295920A) |
| 【公開日】 |
平成12年10月24日(2000.10.24) |
| 【出願番号】 |
特願平11−104424 |
|