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【発明の名称】 感温ハイドロゲルにより被覆された中空体または植物性有機体並びにそれらを使用した植物栽培用床
【発明者】 【氏名】千葉 倫久

【要約】 【課題】

【解決手段】細孔にデンプン、糖類などの粘稠性水和物を塗布し、細孔より空気を注入して得られた中空体もしくは水苔、樹皮、有機肥料等をポリ−N−イソプロピルアクリルアミド水溶液に浸漬、取り出して乾燥することにより、それぞれの表面形状に沿って感温ハイドロゲルによる薄膜を形成させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 表面を感温ハイドロゲルで被覆された内部に独立気泡を有するデンプン、糖類の中空体。
【請求項2】 表面を感温ハイドロゲルで被覆された植物性有機体。
【請求項3】 有機体が水苔であることを特徴とする請求項2記載の感温ハイドロゲルで被覆された植物性有機体。
【請求項4】 有機体が樹皮であることを特徴とする請求項2記載の感温ハイドロゲルで被覆された植物性有機体。
【請求項5】 有機体が腐葉土、堆肥、乾燥牛糞、乾燥鶏糞などの有機肥料や遅効性肥料であることを特徴とする請求項2記載の感温ハイドロゲルで被覆された植物性有機体。
【請求項6】 増粘剤、チクソトロピック剤を含有した感温ハイドロゲルであることを特徴とする請求項1〜請求項5記載の感温ハイドロゲルで被覆された中空体および植物性有機体。
【請求項7】 請求項1〜請求項6記載の感温ハイドロゲルで被覆された中空体または植物性有機体を単独または複数種組合わせてなる植物栽培用床。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、植物栽培用床として有用に用いられる感温ハイドロゲルにより被覆された中空体および植物性有機体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】種苗、苗木、花き、観賞植物、野菜、果実等の植物栽培床には寒天ゲル等が用いられている。しかしながら、寒天ゲルは保持している水分が苗により吸収されたり、乾燥した場合には再度吸水しないため、苗床として使用できても圃場栽培の支持体としては使用できない。また、寒天ゲルは一旦固化すると、溶解させることが困難であり、苗床から圃場への移行の際には、糖などの栄養分を含む寒天培地を手作業で苗の根から除去する工程が必要で、苗の根を傷めることが多いとともに、寒天培地が根に残り、土壌中で雑菌が繁殖し、根腐れを起こすことがあり、苗生産の収率の低下の原因となっていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このように、寒天ゲルが苗床支持体として完全に満足のいくものでないことから、水の吸水、放水に対し可逆性を示すハイドロゲルの使用が提案されている。特開平5−262882号公報には、熱可逆性ハイドロゲルが提案されている。また、「高分子、Vol.47、No.12 (1998)」(高分子学会刊)には、「感温ゲルを用いた植物組織培養苗の生産システム」において、感温ハイドロゲル(Thermo-responsive Hydrogels、以下、TRHGと略記する)を植物栽培用床として利用することが提案されている。
【0004】TRHGを種苗床として用いることにより、培養床から圃場への移行の際に苗の植え替えの必要がないため、人件費の大幅なコストダウンと、苗の損傷がないことから、大幅な収率の向上が期待できる。しかしながら、このシステムにおいて使用される無機質の多孔質、例えば軽石、パーライト等は、寄生植物、ラン科植物等有機質担体を支持体とすることを好む植物の生産システムには好適と云えず、さらに好ましい支持体の出現が望まれていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、前記問題点を解決するために鋭意研究した結果、有機体を支持体とする種苗床の材料において、独立気泡をもつデンプン、糖類の気泡体の表面をTRHGにて被覆すること、また、水苔、樹皮、腐葉土、堆肥、乾燥牛糞、乾燥鶏糞等の表面をTRHGにて被覆した有機体が植物栽培床用支持体として最適であることを見出し、本発明に到達した。
【0006】以下、本発明について詳述する。本発明で云うTRHGはポリ−Nイソプロピルアクリルアミドを化学的に架橋したものである。本発明では 0.5wt%〜3wt%の濃度のポリ−N−イソプロピルアクリルアミド水溶液が好ましく用いられる。水溶液濃度が 0.5wt%より薄いと有機体表面に被膜を形成させにくいし、3wt%を超える濃度になると溶液の粘度が高くなりすぎ、有機体表面の被膜層が厚くなりやすく好ましくない。
【0007】ポリ−N−イソプロピルアクリルアミドは高価な高分子化合物である。また、分子内にアミド基を有する物質は、生体に対して毒性を示す危惧がある。そのためその使用量はできる限り少ない方が好ましい。一方、有機体表面に強固な被膜を形成させるには、必要な粘度を有することが求められる。この理由から、チクソトロピック剤や増粘剤が用いられる。
【0008】本発明で使用するチクソトロピック剤とは、酸化鉄,酸化アルミニウム等のゾル、ベントナイト、アルミニウム石鹸が挙げられ、特に酸化鉄のゾルが好ましく用いられる。また、増粘剤としてはアラビアゴムが好ましく用いられる。
【0009】本発明では、デンプン、糖類の中空体の表面をTRHGで被覆した支持体も用いられる。この支持体は軽量であり、栽培する植物に対する養分供給材としての役目もし、使用後は自然環境下分解して無害物となる。本支持体を作るには、次のような方法によるのが好ましい。すなわち、デンプンまたは麦芽糖(水飴)の粘稠な水和物を、一端を密閉した多数の細孔を有する金属パイプの表面に塗りつけて被膜を形成させ、金属パイプの開口部より徐々に空気を押し出すと、細孔部位に内部に空気気泡を有する多数のデンプンまたは麦芽糖の中空体が形成されるので、これを採取する。さらに、得られた中空体をポリ−N−イソプロピルアクリルアミド溶液に浸漬し、取り出して乾燥することにより、中空体の表面にTRHGの被膜を形成することができる。なお、得られる中空体の寸法は、押し出し圧力、時間および水和物の粘度によって決まるが、寸法精度は悪くともかまわない。
【0010】水苔、樹皮、腐葉土、堆肥、乾燥牛糞、乾燥鶏糞などの有機体も、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミドの溶液に浸漬し、取り出し、乾燥することにより有機体表面にTRHGの被膜を形成することができる。必要があれば、チクソトロピック剤や増粘剤をポリ−N−イソプムロピルアクリルアミド溶液に添加することもできる。チクソトロピック剤や増粘剤を使うことにより、必要最小限のTRHG薄被膜層の形成が容易になる。
【0011】以上の通り、TRHGにて被覆された中空体または植物性有機体を単独または複数種組合わせて植物栽培床として用いることができる。本支持体は若干の温度変化により再生が可能で、何度でも使用でき、破棄する必要がないため環境に優しい支持体である。また、植物体の植え替え、支持体の交換なしに養苗/栽培に使用でき、培地交換を含めて完全な閉鎖系を維持したまま植物の育成が可能であり、今後ますます開発が活発になるであろうトランスジェニック植物の育成用システムとしての応用が期待されるのである。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。
【0013】
【実施例1】デンプンの粘稠な水和物を調製した。一端を密閉した多数の細孔を有する金属パイプの表面に水和物を塗り、被膜を形成し、金属パイプの開口部から徐々に空気を押し出すと、細孔部位に多数のデンプンの気泡体を形成することができた。これらの気泡体を金属パイプ表面から分離しデンプンの独立気泡体を採取した。
【0014】別にポリ−N−イソプロピルアクリルアミド1gを採量し、 100mlの冷水に溶解して、1%水溶液を調製した(以下、本調製水溶液という)。本調製水溶液にアラビヤゴムを約 0.5g添加溶解すると本調製水溶液に粘稠製を付与することができた。この粘稠液を、以下、粘稠本調製水溶液という。
【0015】竹製の篭に本独立気泡体を入れて、押え板を乗せて、それを粘稠本調製水溶液中に約5分間浸漬した後取り出し、水切りした後に、平面上の網の上に散布した状態で33℃の温風中にて加温した。本独立気泡体の表面に厚さ 0.3mm〜0.5mm のTRHG薄膜が形成されていた。
【0016】
【実施例2】市販の水苔を水中に浸漬した後取り出して軽く絞って遊離水を除去し、湿潤した水苔とした。該水苔を実施例1と同様の操作をして、水苔の形状に沿ったTRHGの薄膜を形成することができた。
【0017】
【実施例3】市販の乾燥鶏糞を用い、実施例2と同様の操作により乾燥鶏糞の形状に沿ったTRHGの薄膜を形成することができた。
【0018】
【発明の効果】本発明のTRHGにより被覆された中空体または植物性有機体を植物栽培床用に用いることにより、種苗床より圃場に植え替えに要する人件費が大幅にカットすることができ、生産コストを大幅に低減させることが可能となった。また、支持体が有機物であるため、寄生植物の育成栽培床として顕著な効果を発揮することができるようになった。
【出願人】 【識別番号】599032268
【氏名又は名称】株式会社 僚和
【出願日】 平成11年3月9日(1999.3.9)
【代理人】 【識別番号】100066533
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 武敏
【公開番号】 特開2000−253742(P2000−253742A)
【公開日】 平成12年9月19日(2000.9.19)
【出願番号】 特願平11−61961