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【発明の名称】 植栽容器
【発明者】 【氏名】横井 勝彦

【要約】 【課題】ゴム粒子とバインダーのみで透水性、通気性及び保水性を満足する植栽容器とする。

【解決手段】密度が低い内層3と内層3より密度が高い外層2とよりなる複層構造部を少なくとも一部に有する。水分の乾燥状態は外層の密度によって律速され、外層の密度を調整することで素焼きに匹敵する十分な透水性と通気性を得ることができる。また内層の密度を低くすることで、保水性も確保できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ゴム粒子と該ゴム粒子どうしを互いに接合するバインダとよりなり底部と該底部の周縁部から立ち上がる側壁部とからなる所定の容器形状に成形されてなる植栽容器であって、密度が低い内層と該内層より密度が高い外層とよりなる複層構造部を少なくとも一部に有することを特徴とする植栽容器。
【請求項2】 前記複層構造部は前記側壁部全体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の植栽容器。
【請求項3】 前記複層構造部における前記内層の密度は0.4〜0.6であり前記外層の密度は0.6〜0.9であることを特徴とする請求項1に記載の植栽容器。
【請求項4】 前記ゴム粒子はEPDMゴムからなることを特徴とする請求項1に記載の植栽容器。
【請求項5】 前記複層構造部における前記内層にはスポンジゴム粒子を含むことを特徴とする請求項1に記載の植栽容器。
【請求項6】 前記複層構造部の前記外層には該外層表面に表出する石粒が含まれていることを特徴とする請求項2に記載の植栽容器。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、植木鉢、プランターなど、植物を育成・栽培するためのゴム製の植栽容器に関する。
【0002】
【従来の技術】植木鉢やプランターなどの植栽容器としては、従来より素焼き製のもの、あるいはプラスチック製のものなどが知られている。このうち素焼き製の植栽容器は、透水性及び通気性に優れているが、その反面保水性に劣るため水やりを頻繁に行わなければならないという不具合がある。また素焼き製の植栽容器は重いため運搬に労力を要し、かつ壊れやすいという問題もある。
【0003】一方、プラスチック製の植栽容器は軽くて壊れにくく、かつ安価であるという長所を有しているが、透水性及び通気性に劣るため、植物の成育の点では素焼き製のものに比べて劣っている。そこでゴムチップを用いて植栽容器を形成することが提案されている。すなわち、ゴムチップをバインダーで固めて成形された植栽容器では、空気及び水がゴムチップ間を通過できるため透水性と通気性に優れている。またゴムチップ間の間隙は複雑に蛇行しているため、水分はある程度時間を要して通過するため保水性も得られる。
【0004】しかしながら、ゴムチップよりなる植栽容器では、プラスチック製のものは言うに及ばず素焼き製のものに比べても保水性に劣っている。そこで例えば特開平6−189635号公報には、ゴムチップをバインダーで固めてなり、そのゴムチップ間にセルロース系多孔性ビーズが分散された植木鉢が開示されている。このような構成とすることにより、空気及び水がゴムチップ間を通過できるため透水性と通気性に優れ、かつ多孔性ビーズにより保水性も満足される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで植栽容器に用いられるゴムチップとしては、廃ゴムを粉砕したものを用いることが望ましい。これにより地球資源を節約することができ、かつ廃ゴムを焼却することなくリサイクルできるので地球温暖化の防止にも役立つ。また安価な植栽容器とすることができる。
【0006】しかしながら特開平6−189635号公報に開示された植木鉢では、保水性を得るために多孔性ビーズを用いているので、たとえ廃ゴムを粉砕したゴムチップを用いても高価となるという不具合がある。本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ゴム粒子とバインダーのみで透水性、通気性及び保水性を満足する植栽容器とすることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する請求項1に記載の本発明の植栽容器の特徴は、ゴム粒子とゴム粒子どうしを互いに接合するバインダとよりなり底部と底部の周縁部から立ち上がる側壁部とからなる所定の容器形状に成形されてなる植栽容器であって、密度が低い内層と内層より密度が高い外層とよりなる複層構造部を少なくとも一部に有することにある。
【0008】請求項2に記載の植栽容器の特徴は、請求項1に記載の植栽容器において、複層構造部は側壁部全体に形成されていることにある。請求項3に記載の植栽容器の特徴は、請求項1に記載の植栽容器において、複層構造部における前記内層の密度は0.4〜0.6であり外層の密度は0.6〜0.9であることにある。
【0009】請求項4に記載の植栽容器の特徴は、請求項1に記載の植栽容器において、ゴム粒子はEPDMゴムからなることにある。請求項5に記載の植栽容器の特徴は、請求項1に記載の植栽容器において、複層構造部における内層にはスポンジゴム粒子を含むことにある。そして請求項6に記載の植栽容器の特徴は、請求項2に記載の植栽容器において、複層構造部の外層には外層表面に表出する石粒が含まれていることにある。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の植栽容器では、少なくとも一部に複層構造部を有している。この複層構造部は、密度が低い内層と内層より密度が高い外層とから構成されている。密度が低ければゴム粒子どうしの間隙が多くなり、密度が高ければゴム粒子どうしの間隙が少なくなる。また透水性及び通気性は間隙の量と相関関係が高いのであるから、複層構造部においては、密度が低い内層は透水性及び通気性が相対的に高く、密度が高い外層は内層に比べて透水性及び通気性が低い。したがって植栽容器内の水分の乾燥状態は外層の密度によって律速され、外層の密度を調整することで素焼きに匹敵する十分な透水性と通気性を得ることができる。
【0011】一方、土壌中の水分と直接接触する内層においては、水分は毛細管現象によってゴム粒子どうしの間隙に貯留される。したがって内層の密度を外層より低くしておけば、内層に貯留される水分量が外層に貯留される水分量より多くなる。また外層表面から蒸散する水分は外層に貯留される水分より少ないのであるから、結果的に内層に貯留される水分量は外層から蒸散する水分量より多くなり、これにより保水性を確保することができる。
【0012】したがって本発明の植栽容器では、ゴム粒子とバインダーのみの構成で、外層と内層の密度を最適に調整することによって、透水性及び通気性と保水性とを満足させることができ、植物の栽培に最適で安価な植栽容器とすることができる。本発明の植栽容器は、ゴム粒子とバインダーとを混合し、それを成形してバインダーを固めてゴム粒子どうしを接合することで製造することができる。そして植栽容器の密度は、ゴム粒子の大きさ、バインダーとゴム粒子の比率、成形時の圧縮度合いなどによって所定の値とすることができる。また複層構造部を製造するには、異なる密度の成形品どうしを接合してもよいし、複数回の成形で一体化することで複層構造部を形成することも好ましい。
【0013】複層構造部は3層以上設けることもできるが、少なくとも2層あれば足りる。また、内層表面から外層表面に向かって密度が徐々に高くなるような、傾斜密度をもつ構造とすることもできる。この複層構造部は底部及び側壁部の少なくとも一部にあればよく、その面積に応じた透水性、通気性及び保水性が得られる。しかし透水性及び通気性はある程度高い方が好ましいことから、複層構造部はできるだけ広い面積で設けることが好ましい。また植栽容器は載置されて使用されるものであるから、底部からの透水及び通気は側壁部に比べて低い。したがって複層構造部は側壁部に設けることが望ましく、側壁部全体に形成することが特に望ましい。
【0014】複層構造部において、内層の密度は0.4〜0.6であり外層の密度は0.6〜0.9であることが望ましい。内層の密度が0.4より低くなると透水性が高すぎるため好ましくなく、内層の密度が0.6を超えると保水性が不十分となる。また外層の密度が0.6より低いと透水性及び通気性が高くなりすぎて植物の成育上好ましくなく、外層の密度が0.9を超えると保水性が高くなりすぎて植物の成育上好ましくない。
【0015】複層構造部において、内層の厚さは目的とする保水性に応じて種々調整することができる。また外層の厚さが薄すぎると透水性及び通気性を調整することが困難となるので、外層の厚さは約10mm以上とすることが好ましい。また内層にはスポンジゴムからなるゴム粒子を含むことも好ましい。スポンジゴムを含むことにより、その細孔内に水分を貯留することができ保水性が一層向上する。
【0016】なお廃ゴムは一般に黒色であり、その粉砕ゴムチップを用いて製造された植栽容器も黒色となるため意匠性が低い。そこで本発明の植栽容器では、顔料などを添加したり塗装することなどにより、意匠性を向上させることが好ましい。また、ゴム粒子に加えて石粒などの加飾体を混合することもできる。このようにすれば、表面に加飾体が表出するため、ゴム粒子だけの場合に比べて質感が向上し意匠性が向上する。さらにその表面に塗装すると、ゴム粒子と石粒との着色され易さが異なるために、石粒のみが着色されず目立った意匠とすることもできる。
【0017】ゴム粒子の材質としては、天然ゴム及び各種合成ゴムなど特に種類を問わないが、地球資源節約の観点から、廃タイヤなどの廃ゴムを粉砕したゴムチップを用いることが好ましい。また植栽容器は屋外で用いられる場合が多いから、耐候性に優れたEPDMゴムが望ましく、EPDMゴムから形成された車両部品の廃棄物を粉砕して用いることが特に望ましい。またEPDMゴム製品には老化防止剤などの薬品が混入されていないので、廃ゴムを用いても薬品の溶出による不具合が生じない。なおゴム粒子の径には特に制限がないが、見映えよく成形可能な範囲として2〜3mmの径とするのが適当である。
【0018】またバインダーとしては、用いるゴム粒子どうしを接合可能なものであり植栽容器としての使用時の応力に耐える強度を発現するものであれば用いることができ、例えばウレタン系、エポキシ系のバインダーを用いることができる。またその使用量は、ゴム粒子100重量部に対して10〜15重量部が最適である。これより少ないと強度が不足し、これより多くなるとゴム粒子どうしの間隙がバインダーで充填されるため、透水性、通気性及び保水性が低下する。
【0019】また本発明の植栽容器では、ゴム粒子とバインダーに加えて、顔料や染料などの着色剤を混合してもよいし、固形肥料を混合することもできる。特に固形肥料を混合すれば、使用中に水分によって固形肥料が土壌中に徐々に溶出するので、施肥効果を長期間発現させることができる。また固形肥料が溶出した後に残った空洞によって透水性、通気性及び保水性をさらに確保することもできる。
【0020】
【実施例】以下、試験例及び実施例により本発明を具体的に説明する。
(試験例)先ず自動車のウェザストリップの廃棄物を粉砕してなるゴムチップを用意した。このゴムチップはEPDMゴムからなり、老化防止剤などの薬剤は含まれていない。またゴムチップの粒径は約2〜3mmである。
【0021】このゴムチップ100重量部に対してウレタン系バインダー10重量部を混合して混練し、所定の成形型中で加熱圧縮成形により縦100mm、横100mmの板状の試験片を形成した。このとき、加圧力を変更することで、種々の厚さと密度をもつ試験片を形成した。得られた種々の密度の試験片について、吸放水特性を測定した。吸放水特性は、水を満たした容器中に試験片を浸漬し、所定時間経過後に試験片を取り出し、表面付着水が滴下しなくなった段階で重量を測定して吸水時の吸水率を測定した。また、水を満たした容器中に試験片を24時間浸漬し、取り出して水平なテーブル上に立てて置き、所定時間経過後の重量を測定して放水時の吸水率を測定した。それぞれの結果を図1に示す。
【0022】図1より、密度が0.9を超えると吸水時及び放水時ともに吸水率が低くなっていることがわかる。つまり密度が0.9を超えると、透水性及び通気性が不十分となる。なお図には示されていないが、密度が0.6より低くなると吸水率の変化が急激となり、素早く吸水するものの放水も急激であることがわかった。すなわち密度が0.6より低くなると、透水性及び通気性が高すぎて保水性が低下する。これはゴムチップどうしの間隙が広い範囲でつながるためと考えられる。
【0023】したがって上記の試験により、外層としては密度が0.6〜0.9の範囲が最適であることが明らかとなった。
(実施例1)図2に本実施例の植木鉢の断面図を示す。この植木鉢は、円板状の底部1と底部1の周縁部から立ち上がる逆円錐台形状の外層2と、外層2の内周表面に一体的に接合された内層3とから構成されている。底部1の中央には水抜き孔10が形成されている。
【0024】先ず自動車のウェザストリップの廃棄物を粉砕してなるゴムチップを用意する。このゴムチップはEPDMゴムからなり、老化防止剤などの薬剤は含まれていない。またゴムチップの粒径は約1〜3mmである。このゴムチップ100重量部に対してウレタン系バインダー10重量部を混合して混練し、上下一対の所定の成形型中で加熱圧縮成形することにより、底部1と外層2よりなる一次成形品を形成する。得られた底部1及び外層2よりなる一次成形品の密度は0.85であり、厚さは10mmである。
【0025】次に、一次成形品を下型中に配置した状態で、上記ゴムチップ100重量部に対してウレタン系バインダー10重量部を混合した混練物を一次成形品の内部に注入し、所定の上型で加熱圧縮成形して、外層2の内周表面に内層3を形成した。内層3は外層2と一体的に接合され、内層3の密度は0.6であり、厚さは10mmである。
【0026】この植木鉢では、密度の高い外層2により素焼き製の植木鉢と同等の透水性及び通気性を有している。また密度の低い内層3により保水性に優れ、素焼き製の植木鉢と比べて水やりの間隔を長くすることができる。
(実施例2)上記実施例では植木鉢を例示したが、図3に示すポット型の植栽容器とすることもできる。この植栽容器は、ゴムチップとバインダとから形成され複数の有底の6個の植栽穴40をもつ密度0.9の本体4と、ゴムチップとバインダとから形成され植栽穴40の内周表面に形成された密度0.6の内層41とから構成されている。また植栽穴40の底部には、水抜き孔42がそれぞれ形成されている。
【0027】本体4は400×400×150mmの直方体であり、植栽穴40は直径120mm深さ130mm、植栽穴40どうしの間隔は70mm、植栽穴40から本体4の外周表面までの距離は30〜70mmに形成されている。また植栽穴40の内周表面に形成された内層41の厚さは10mmである。この植栽容器においても、密度の高い本体4により素焼き製の植木鉢と同等に透水性及び通気性に優れる。また密度の低い内層41により保水性に優れ、素焼き製の植木鉢と比べて水やりの間隔を長くすることができる。
【0028】(実施例3)図3に示すポット型の植栽容器ばかりでなく、図4に示すコンテナ型のものにも本発明を適用することができる。この植栽容器は、ゴムチップとバインダとから形成された箱状の本体5と、本体5の底面を除く内周表面に形成されゴムチップとバインダとからなる内層50とから構成され、本体5の密度は0.85、内層50の密度は0.6に形成されている。また本体5の底部には、数カ所に水抜き孔51が設けられている。
【0029】この植栽容器においても、密度の高い本体5により素焼き製の植木鉢と同等に透水性及び通気性に優れる。また密度の低い内層50により保水性に優れ、素焼き製の植木鉢と比べて水やりの間隔を長くすることができる。なお、本実施例の植栽容器において、本体5の高さが低いものを用い、図5に示すようにそれに枠体6を積層して用いることもできる。この枠体6は、本体5と同じ構成の外層60と、内層50と同じ構成の内層61とから構成する。また本体5及び枠体6には、それぞれ四隅にピン穴52,62が形成され、ピン7をピン穴52,62に挿通することで本体5と枠体6を積層固定することができる。また長さの長いピン7を用いれば、複数の枠体6を本体5に積層することもできる。
【0030】このように積層型の植栽容器とすれば、栽培する植物に応じて植栽容器の高さを変更することが容易となり、かつ植栽容器の高さが異なっても透水性、通気性及び保水性を同等とすることができるので、最適な成育土壌を構成することができる。
【0031】
【発明の効果】すなわち本発明の植栽容器によれば、ゴム粒子とバインダーのみの構成で透水性及び通気性を確保するとともに保水性をも確保することができ、安価で植栽性に優れている。
【出願人】 【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
【出願日】 平成11年1月28日(1999.1.28)
【代理人】 【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
【公開番号】 特開2000−217436(P2000−217436A)
【公開日】 平成12年8月8日(2000.8.8)
【出願番号】 特願平11−20084