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【発明の名称】 榾木を利用したきのこの栽培法
【発明者】 【氏名】井上 邦英

【要約】 【課題】1. きのこの榾木栽培で美味しい高品質のきのこを栽培すること。

【解決手段】1. 新規の榾木の切断面接種法をとる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 きのこ用榾木に使用するきのこ種菌として小麦、ライ麦、玄米、玄ダッタンソバ、コーリャンの単体又はその混合物を主培地として、又はそれに鋸屑、米糠、ふすま等の通常の鋸屑種菌の原料を加えたものを主培地として製造したきのこ種菌。
【請求項2】 きのこ用榾木に、上記【請求項1】のきのこ菌を接種するにあたり、榾木の一方の切断面に該きのこ菌を乗せ、その菌の上に切断面より大きいフィルム・シート類を被せて、その上から平たい木片等で連打して、きのこ菌を榾木の切断面に密着せしめた後にフィルム・シート類を切断面に隣接する樹皮側面にゴム又は紐、針金類で固定することを特徴とするきのこ菌の接種法。
【請求項3】 上記【請求項2】で接種された榾木の未接種の切断面を3〜15cm土中に埋めて直立せしめ、ビニールシート類でカバーし、遮光した状態で、きのこ菌糸が土中に埋めた底面の切断面に白く皮膜を張るまで保持することを特徴とする榾木の培養法(1次培養と云う)
【請求項4】 上記【請求項3】の培養済み榾木に利用するきのこの発茸誘因物質として、天然に存在する樹木の内・外皮、栗、ドン栗の内・外皮、蕎麦殼(ダッタン蕎麦を含む)、コーヒー豆の単独又は2種以上の混合物の微粉末を100重量部として、それに糖類1〜20重量部、水200〜400重量部を加えた物質であり榾木の切断面に発茸誘因を目的として使用することを特徴とする、きのこの発茸誘因物質。
【請求項5】 上記【請求項4】の天然物の単独又は2種以上の混合物を熱水又は溶媒抽出で得た抽出エキス末を5重量部とし、それに広葉樹の鋸屑細粒を100重量部、糖類を5〜15重量部、水200〜300重量部を加えた物質であり、発茸誘因を目的として榾木の切断面に使用することを特徴とするきのこ発茸誘因物質。
【請求項6】 上記【請求項3】の1次培養完了後の榾木を10〜25cm部に切断し、その切断面の一方の面に、上記〔請求項4又は5〕の発茸誘因物質を全面に添付又は榾木の導管に沿って縦方向に開けた1ヶ〜数ヶの開孔部(約直径8〜15mm、深さ20〜40mm)に充填し、該発茸誘因物質の乾燥防止の為に、フィルム・シート類でカバーして、土中に全部又は特定の長さまで埋設して追熟培養することを特徴とする榾木の第2次培養法。
【請求項7】 上記【請求項6】の榾木の第2次培養に使用する土壌にm当たり籾殼10〜30l、木炭粉3〜10l、普通の堆肥又は腐葉土30〜60l、米糠、ふすま、油粕混合物10〜20lを深さ約20cmまでの土壌を耕して混合し,PHを5.0〜6.5に調整することを特徴とする榾木の第2次培養の土壌調整法。
【請求項8】 上記【請求項】1〜3、4又は5、及び6〜7の1つの項目又は多項目を広葉樹の榾木に使用することを特徴とする、きのこの栽培法。
【請求項9】 上記【請求項】1〜3、4又は5、及び6〜7の1つの項目又は多項目を松属、杉属の榾木に使用することを特徴とする、きのこの栽培法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】きのこの原木榾木栽培の為の特別な種菌を製造すること、該種菌の切断面への接種法、接種された榾木の培養法、榾木を短木化し、切断面に発茸誘因物質を添付すること、該榾木の土壌への埋設及びその土壌の物理的、化学的成分の調整法に関する技術である。
【0002】
【従来の技術】従来のきのこの榾木栽培に於ける接種法は、コマ菌、鋸屑菌を問わず榾木樹皮側面に深さ25〜30mmの開孔部への接種で、芯材部への菌糸の伸長が遅れていた。
【0003】榾木切断面への接種法には特定のきのこ、即ちひらたけと万年茸に通称云われるサンドウィッチ法があったが、これは鋸屑種菌をサンドウィッチのハムの如く、榾木と榾木の切断面の間にはさみこむ方法で、両切断面への密着性が弱く、且つ乾燥しやすく種菌の榾木への活着に失敗することが多かった。
【0004】上述【0002】及び【0003】の接種法に基づく榾木栽培でも樹皮に接触している部分を除き、切断面からのきのこ発生はできなかった。この為に樫、桜のように簡単に樹皮のはがれやすい樹種の椎茸栽培への利用ができなかった。
【0005】従来のきのこの榾木栽培に於いて、きのこの発生は樹皮面からのみで、きのこの芽数は自然まかせで、多数・同時発茸による品質低下が起こっていた。
【0006】ひらたけ、万年茸に見られる榾木の土壌栽培に於いて、榾木自身の栄養分からのみのきのこの発生方式であり、土壌の団粒化対策や栄養分の補給(施肥)の概念がなかった。この為に榾木土壌栽培に於いては、同一土壌の2年目以降には連作障害が発生していた。この為の収量と品質低下に悩まされていた。
【0007】松属、杉属の原木を榾木としてきのこ栽培に利用する技術はなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】榾木切断面への接種に於いて、活着性の向上を計ること。
【0009】接種後の榾木への通気性を保持しつつ、乾燥による培養失敗を防止すること。
【0010】培養済み榾木の切断面からきのこを発生させること、及び発生個所を限定すること。
【0011】榾木の土壌栽培に於いて、土壌を媒介して、榾木中のきのこ菌糸に土壌に施肥した栄養分を吸収せしめて、きのこの生産量と品質の向上を計ること。
【0012】松属、杉属の原木をきのこ栽培に利用すること。
【0013】
【課題を解決する為の手段】榾木切断面への接種に於いて、きのこ菌の活着性向上には種菌の成分の改良、即ち糖質と蛋白質を通常より多くすること。次に種菌の榾木切断面への密着性を高める方策をとる。
【0014】切断面へ接種された種菌の乾燥防止の為に、種菌をフィルム・シート類でカバーし、密封する方策をとる。次に接種してない切断面を地中に3〜15cm埋設し、切断面からの榾木内の水分の蒸散防止と土中水分の榾木への供給を計り、榾木の乾燥を防止することが接種された種菌の乾燥防止方策になっている。
【0015】上述【請求項3】の1次培養完了後、長尺の榾木を短榾木(長さ10〜25cm)に切断し、切断面の一方の面に、きのこの発茸誘因物質を添付又は任意の開孔部に充填し、そこからきのこを発生せしめる方策をとる。
【0016】上述【0015】の短榾木を事前に土壌改良及び施肥した土壌に縦方向に全部又は一部埋設して、榾木より土中にきのこ菌糸を蔓延せしめ、土中よりミネラルを含む栄養分を菌糸に吸収せしめる方策をとる。
【0017】特に、松属及び杉属の榾木の場合は広葉樹に比較して炭水化物系成分の不足がある為に、きのこの発茸及び量、質に問題があるので【請求項7】の土壌に施す各種物質の使用量を高域で使用することによって、松属、杉属の榾木の養分不足を補充する方策をとる。
【0018】
【発明実施の形態】樹木の樹種は広葉樹から、樫、櫟、針葉樹から赤松と杉を選抜し、根元の直径20〜40cmの原木で、樹幹のみならず樹枝部も 直径8cmまでを長さ45〜180cmに切断し【請求項】1〜3、4と5を別々に及び6〜7を利用して実施した。使用したきのこ菌は、椎茸、舞茸、ひら茸である。尚前述【請求項7】の処理区と未実施の対照区を設けた。以下、実施例に依って説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
【実施例−1】1.種菌 :1997年1月8日コーリャンと小麦同量を浸水し、水分含量約60%にしたものを30体積部に広葉樹鋸屑50体積部、米糠10体積部、ふすま10体積部を培地原料とし通常の製法で、椎茸、舞茸、ひら茸の榾木切断面用種菌を準備した。
2.榾木 :1997年2月25日〜28日、櫟を伐採し長さ60cm、90cm、120cm、150cmの榾木を準備した。
3.接種と一次培養 :1997年3月10日〜15日。上記菌種を【請求項2】に準じて接種しポリエチレンフィルム(0.025mm厚)でカバーした。その後ビニールハウス内で榾木の長短、樹種に関係なく、接種面でない片面を土中に約5〜10cm埋設しビニールフィルムと遮光ネットでカバーした。
4.短榾木へ発茸誘因物質の添付と充填:1997年5月30日〜6月5日。椎茸、舞茸、ひら茸の菌で1次培養した榾木長60cm、90cm物を長さ約15cmに切断し【請求項4】の発茸誘因物質を切断面全面に添付と開孔部への充填に分けて使用した。そして、その切断面をポリエチレンフィルムでカバーした。その後【請求項7】の土壌処理区と対照区に、直径の太さ別、きのこ菌別、それぞれほぼ平等に分けて土中に埋設した。尚、土中埋設に当たり、椎茸榾木は約5cm上部を土より出して、下部約10cmを地中に、又、舞茸とひら茸はポリエチレンフィルム添付面ぎりぎりまで地中に埋設した。椎茸、舞茸、ひら茸共、ポリエチレンフィルムを発茸約1ヶ月前に取りはがした。舞茸、ひら茸用榾木には、フィルムを取りはがした切断面に土を2〜3cm被せて完全に埋設した。これを整理しますと
5.収穫 :収穫は、椎茸、ひら茸は1997年11月、1998年3月、1998年11月の3回、舞茸については1997年11月と1998年10月の2回行った。榾木の状況より判断して、直径の太さにもよりますが収穫は少なくともあと2年乃至3年は続くものと思われます。


【0020】
【実施例−1】の結論として1. 本格的発生は接種後1年を経過してからである。大径木の榾木でも1年で発生する。このことは従来の方式では考えられないスピードアップである。
2. 発茸誘因物質による榾木切断面からの発茸は完全に成功した。しかし、その全面添付又は開孔部充填による差違は余りなかった。
3. 榾木埋設用土壌の改善効果は発生2年目から処理区の増収があり顕著な効果があった。25〜48%の増収となった。
4. 処理区のきのこは歯ごたえ、風味が強く、総じて甘みが強かった。
【0021】
【実施例−2】1.種菌 :【実施例−1】と同じ。
2.榾木 :1997年2月26日、赤松、根本直径25〜30cmを伐採。樹幹のみ長さ90cmに切断し、梢部直径10cmまで使用。
3.接種と :1997年3月14〜15日。椎茸とひら茸菌を接種。その後の処理一次培養【実施例−1】と同じ。
4.短榾木への切断と発茸誘因物質の添付と充填:1997年6月25〜30日。約15cmの長さに切断した。直径30cmから10cmまで、合計120本を直径毎にほぼ平等に二分して、それぞれ60本のグループを作り、発茸誘因物質を切断面全面添付と開孔部充填に分類した。それぞれ各グループを二分して、対照区と処理区に埋設した。
5.収穫【実施例−1】と同じタイミングで行った。結果は次の通り。


【0022】
【実施例−2】の結論として1. 針葉樹の赤松でも本発明の方式で、椎茸、ひら茸の栽培が十分できることが証明された。
2. 特に赤松に於いては土壌改良(処理区)の効果は大変顕著なものがあった。
3. 2年目からの発生のきのこに、椎茸、ひら茸共に松の風味があり、椎茸については特に強く、松茸風味と云える椎茸である。
【0023】
【発明の効果】本発明により榾木の切断面からの発茸が可能になった為に大径木の椎茸栽培への利用が可能になった。更に樹皮がはがれやすく今まで利用できなかった、桜、樫、椎等の使用が可能になった。
【0024】本発明で椎茸、舞茸、ひら茸等のきのこで、鋸屑栽培ではできないような高品質、ほんもののきのこが栽培できるようになった。
【0025】本発明で松属、杉属の原木を利用したきのこ栽培が可能になった。その結果、松茸風味のきのこ栽培や、松から抗ガン用きのこ、杉から杉花粉症に効果のあるきのこ、即ち薬効のあるきのこ栽培への可能性が出てきた。更に、産業的には松、杉の間伐材の有効利用の道が開けた。
【0026】本発明で発茸誘因物質の特定個所への開孔部充填方式で発茸数を榾木量に比し限定することにより、大型のきのこの発生が可能になった。
【0027】本発明で現在殆ど利用価値のなくなった雑木でもきのこ栽培に利用することが可能になった。
【出願人】 【識別番号】592146852
【氏名又は名称】井上 邦▲英▼
【出願日】 平成11年1月29日(1999.1.29)
【代理人】
【公開番号】 特開2000−217427(P2000−217427A)
【公開日】 平成12年8月8日(2000.8.8)
【出願番号】 特願平11−57488