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【発明の名称】 植物ウイルスの接種方法
【発明者】 【氏名】佐藤 貞一

【氏名】小湊 正幸

【氏名】佐山 春樹

【氏名】石村 英二

【要約】 【課題】碁盤格子状に小さな鉢「セル」が数十〜数百連結した箱「トレイ」の該セルに、小量の床土(培養土)を入れ、播種機により播種を行い、成形苗の生産を行うトレイ育苗法において、該苗の根生葉が重なり合って、地面に平たく放射状に拡がった苗「ロゼット状態の苗」などに、極めて簡単に植物ウイルスを100%感染させることが可能な、植物ウイルス接種法を提供する。

【解決手段】植物体の表面にブラシを当接し、該植物体の表面を被傷させ、その前または後において植物体の表面に植物ウイルス液を接触させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】植物体の表面にブラシを当接し、該表面を被傷させることを特徴とする植物ウイルスの接種方法。
【請求項2】植物体の表面にブラシを当接し、該表面を被傷させ、その前または後において該表面に植物ウイルス液を接触させることを特徴とする植物ウイルスの接種方法。
【請求項3】植物体の表面に研磨剤の付着したブラシを当接し、該表面を被傷させ、その前または後において該表面に植物ウイルス液を接触させることを特徴とする植物ウイルスの接種方法。
【請求項4】外径が0.05〜0.25mmである線状材を基面上に多数植え込んだブラシを用いる請求項1〜3いずれかに記載の植物ウイルスの接種方法。
【請求項5】植物体が、ロゼット状態の野菜苗、花卉苗または果樹苗である請求項1〜3いずれかに記載の植物ウイルスの接種方法。
【請求項6】植物ウイルス液として、着色料を添加した植物ウイルス液を用いる請求項1〜5いずれかに記載の植物ウイルスの接種方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、碁盤格子状に小さな鉢(以下「セル」という)が数十〜数百連結した箱(以下「トレイ」という)の該セルに、小量(八〜九分目)の床土(培養土)を入れ、播種機により播種を行い、成形苗の生産を行うトレイ育苗法において、根生葉が重なり合って、地面に平たく放射状に拡がった苗(以下「ロゼット状態の苗」という)に、極めて簡単に植物ウイルスを100%感染させることが可能な、植物ウイルスの接種方法に関する。
【0002】
【従来の技術】本発明者らは、植物体の表面に植物ウイルス液を噴霧した後、研磨剤を付着させたロ−ラーを圧接回転せしめ、該表面を被傷せしめると共に該植物体に植物ウイルスを接種する方法を開発し、特許出願した(特開平4−330005)。
【0003】この方法によれば、綿棒、指、ガラス棒による接種法と比べ、接種に要する時間が著しく短縮され、またスプレーガンによる接種法に比べ、少ない植物ウイルス液(以下「接種液」ということがある)で高い感染率を得ることができる利点を有する。
【0004】しかしながら、この方法は、上記トレイ育苗法において、育苗途中の植物体の表面に植物ウイルス液を噴霧した後、該表面に対し、図4に示すように、把手13、柄12およびロ−ラ11からなり、柄12の一端部に把手13を連結し、また柄12の他端部をロ−ラ11の軸受けとし、該軸受けにロ−ラ11を回転自在に連結した植物ウイルス接種器の該ロ−ラ11を、圧接回転しても、苗トレイ4の上端部とセル14の床土表面との間隔が大きい状態で生育する植物体に対しては、ロ−ラ11の外周面が当接できないため、被傷せしめることができず、植物ウイルスの感染率が低くなる欠点を有していた。
【0005】そして、根生葉が重なり合って、地面に平たく放射状に拡がる性質を有する苗(ロゼット状態の苗)は一般に育苗日数が比較的多くかかることから、灌水回数が多くなり、それにつれて苗トレイ4の各セル14の床土15表面がえぐりとられ、苗トレイ4の上端部と床土15表面との間隔が大きくなり、育苗日数が多くなるにつれて円筒形ロ−ラ11でセル穴14内部の苗6aの被傷作業が行いにくくなる。また、この方法は凹凸のある地面に植えた植物体に対して被傷せしめることが容易でない欠点を有する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、凹凸のある地面に植えた植物体、特にトレイ育苗法により育苗されたロゼット状態の苗、に対して極めて簡単に被傷せしめ、植物ウイルスを100%感染させることが可能な、植物ウイルスの接種方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、遂に本発明を完成した。
【0008】すなわち本発明は、(1)植物体の表面にブラシを当接し、該表面を被傷させることを特徴とする植物ウイルスの接種方法であり、(2)また本発明は、植物体の表面にブラシを当接し、該表面を被傷させ、その前または後において該表面に植物ウイルス液を接触させることを特徴とする植物ウイルスの接種方法であり、(3)また本発明は、植物体の表面に研磨剤の付着したブラシを当接し、該表面を被傷させ、その前または後において該表面に植物ウイルス液を接触させることを特徴とする植物ウイルスの接種方法である。
【0009】以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】本発明の対象とする植物としては、任意の植物が挙げられるが、弱毒ウイルス接種によりウイルス防除効果が可能な作物、例えばトマト、ピ−マン、メロン、テンサイ、カボチャ、タバコ、ホウレン草、レタスなどの野菜類、リンドウ、ペチュニア、ベニバナ、キンギョソウ、百日草などの花卉類が好ましい。
【0011】また、本発明に用いるブラシとしては、把手あるいは柄のついた基面上に柔軟性があって弾力性に富む線条材を植え込んだものであれば任意のものが採用でき、例えば、塗装用ブラシ、歯磨き用ブラシ、洋服用ブラシ、たわし、あるいは柔軟性と弾力性に富む繊維状金属線を使用した剣山などが挙げられる。これらは、地床育苗、トレイ育苗など、それぞれの苗床の大きさ、形、面積などに応じて複数個連結使用することが好ましい。ブラシを複数連結して使用する場合は、同一の基面上に縦及び/又は横方向に必要個数固定し、各線状材の先端を揃えることが好ましい。
【0012】また、本発明のブラシに用いられる線状材は、外径0.05〜0.25mmで、長さ1〜5cmのものが好ましい。
【0013】植物体の表面に上記ブラシを当接すると、極めて簡単に該植物体の表面を被傷させることが可能となる。当接は、植物体の表面に対して当てるだけでもよいが、当てた状態で擦る手段がより好ましい。当接は、1回でも可能であるが、2〜4回行うことが該植物体の表面を完全に被傷させる上で好ましい。
【0014】また本発明は、植物体の表面に研磨剤の付着したブラシを当接するときは、該植物体の表面に対し、より細かな傷を多量に形成できると共にウイルスの接種感染率を増大できるので好ましい。
【0015】研磨材としては、けいそう土(セライト)、ベントナイト、500〜600メッシュのカ−ボランダムなどが挙げられるが、特にセライトは軽く撹拌するだけで液に均一に分散し、また電動スプレ−を用いても噴口が詰まらないので好ましい。これらの粒径は5〜35ミクロンが好ましく、また添加量は、液に1〜3重量%加える。
【0016】本発明を実施するには、植物体の表面にブラシを当接し、該表面を被傷させ、その前または後において該表面に植物ウイルス液を接触させる。
【0017】発明に使用される植物ウイルスとしては、植物特に作物に感染すると壊疽、モザイク、糸葉、矮化、黄変などの激しいウイルス症状を起こし収穫量が大幅に減る原因となるキュウリモザイクウイルス、その他トマト栽培におけるタバコモザイクウイルス、キユウリの栽培におけるキユウリ緑斑モザイクウイルス、柑橘類の栽培における柑橘トリステザウイルス(文献:亀谷満朗、1989「農業および園芸」64巻、第159〜164頁、および栃原比呂志、1986「農業技術」41巻(11)、第1〜6頁参照)、ダイズモザイクウイルス、タバコネクロシスウイルス、タバコ茎えそウイルス、タバコ輪点ウイルス、タバコ矮化ウイルス、アルファルファモザイクウイルス、トマト黄化えそウイルス、ジャガイモYウイルス、および上記各ウイルスの弱毒ウイルスなどが挙げられる。
【0018】上記植物ウイルスの弱毒ウイルスを、予め植物(苗)に接種感染しておくと、ウイルスの感染によって発生する上記植物ウイルス症状の被害を防ぐことができる利点を有する。
【0019】植物ウイルスを接種する時期は、目的とする植物の生育中の適宜な時期でよいが、弱毒ウイルスを利用してウイルス症状の被害を防ぐことが目的であれば、外界圃場に植える前の幼苗の時期が好ましく、とくに鉢上げ前のトレイでの育苗時期が集約的、効率的に接種できるので好ましい。育苗トレイでの接種適期としては、(1)トマトなら子葉〜本葉2枚、(2)ピ−マンは子葉〜本葉2枚、(3)メロン、キュウリは子葉〜本葉1枚、(4)草丈、節間が短く苗がロゼット状態となる作物のペチュニア、トルコギキョウ、タバコでは4葉〜6葉、(5)リンドウは6葉〜8葉の頃が挙げられる。
【0020】植物ウイルス液は以下の方法により調製することが好ましい。植物ウイルスの感染葉の搾汁液をガ−ゼで濾過し得られた液を滅菌水または適当な緩衝液(例えば、中性付近の0.1Mリン酸緩衝液)により、例えば感染葉の重量に対して5〜50倍希釈して調製するか、或いは常法により得られた純化ウイルス液(例えばキュウリモザイクウイルス液)を滅菌水または適当な緩衝液により適宜の濃度、例えばウイルス濃度25〜500μg/mlに希釈して調製する。
【0021】上記植物ウイルス液に、必要によりさらに着色料を添加して懸濁する。着色料を添加すると、植物体の表面に植物ウイルス液を接触させた後、該ウイルス液が付着したか、否かの識別が容易となる利点を有する。着色料としては、合成着色料、天然着色料など任意の着色料が挙げられるが、食用植物の場合は、食品用着色料を用いることが安全性の面で好ましく、またその色は青色もしくは赤色が植物体の表面の色(緑色)に対して付着の確認が容易となるので好ましい。着色料の濃度(希釈濃度)は例えば合成着色料を使用するなら400〜800倍に薄める。
【0022】植物ウイルス液を接触させる手段としては、噴霧、浸漬、塗布、散水など任意の方法が挙げられるが、小量均一噴霧で接種効果が高い噴霧手段がいちばん好ましい。噴霧手段としては、簡易ハンドスプレ−、動力噴霧機(例えば小型電動塗装噴霧機)、スプレ−ガンなどが挙げられる。但し、簡易ハンドスプレ−を用いる場合、研磨材により噴霧口が詰まる場合があるので注意を要する。小型電動塗装噴霧機は吐出量が50〜500ml/分程度であることが少量均一散布を行なううえで好ましい。接種液の散布量は、トレイ育苗の場合(縦30、横60cmのトレイの場合)は5〜15ml、地床育苗の場合は、3.3m2当り100〜300mlが好ましい。
【0023】以下添付された図に従って、本発明をより具体的に説明する。図1は、植物体(ロゼット状態の苗6a)の表面に植物ウイルス液5を小型電動塗装噴霧器2により付着させる状態を示し、また図2は該植物体の表面にブラシ8を当接し、該植物体の表面を被傷させる状態を示す。ブラシ8の右側の苗は被傷した状態を示している。
【0024】図1において、植物ウイルス液5を入れた小型電動塗装噴霧機2(例えば日本ワグナ−・スプレ−テック社製ミニペインタ−など)を用いて苗トレイ4のロゼット状態の苗6aの表面に、予め着色料および研磨材を添加使用した植物ウイルス液5を噴霧し着色具合を見ながら満遍なく付着させる。
【0025】次に図2に示すように、苗トレイ4の苗6aを、研磨材が付着したブラシ8を縦方向と横方向に数回擦る。
【0026】図3は、本発明の植物ウイルスの接種方法の概略説明図で、苗トレイ4のロゼット状態の苗6aをブラシ8の毛10で、各セル穴14の内部の茎葉の隅々にいたるまで擦って接種していることを示す。ブラシ8のそれぞれの毛10がもつ弾力性、柔軟性、自由自在な動きにより、各セル穴14から苗トレイ4の表面にはみでない苗6aの地際部の茎葉に至るまで、苗全体の茎葉に噴霧付着した植物ウイルス液を満遍なく擦り付けて接種することができる。また、苗トレイ4表面と床土15表面との間隔(凹凸差)が大きい場合においても、ブラシ8の毛10でセル穴14内部の苗6aを擦ることは容易である。図3において、9はブラシの把手(または柄)であり離れている苗に接種するときに手で掴んで用いる。
【0027】
【実施例】以下、実施例を示して本発明についてさらに詳細に説明する。
【0028】実施例1(1)弱毒ウイルス接種対象となる作物の苗の育成例先ず、トマト、ピ−マン、ペチュニア、タバコ用培養土としてホ−ネン社製の「セルトップミックス」とサカタのタネ社製の「ス−パ−ミックスA」を1:1に混合して作成し、リンドウ用培養土として細粒鹿沼土、細粒赤玉土、ピ−トモスを1:1:1に混合して作成し、それぞれの作物の苗に応じたヤンマ−農機社製の二種類の苗トレイ「ヤンマ−野菜トレイ25−200(セルの大きさ25mm角×深さ45mm)、ヤンマ−野菜トレイ30−128(セルの大きさ30mm角×深さ45mm)」に充填し、それぞれの作物の種を播種した。発芽させたあと、作物の苗に応じた適当な温度と採光条件のもと液肥を注入したり灌水を行う通常の育苗管理を行い、それぞれの苗を弱毒ウイルスを接種する生育適期まで育てた。接種適期は発芽が揃って生育して根鉢になって葉が数枚になるころであり、トレイ苗として出荷する5〜10日前が適当である。この接種時期の苗について生育を調べて苗が本発明の接種に適合するかを調べた結果を示す。
【0029】
表1 育苗 育苗 調査 ** 草 丈 作物 トレイ 日数 株数 葉 数 地際部上 トレイ表面上 (穴) (日) (株) (枚) (cm) (cm)
トマト 200 20 10 1.5 5.2 4.7*(桃太郎エイト)
ピ−マン 200 30 10 1.2 3.6 3.0 (土佐かつら)
ペチュニア 128 40 21 6.7 2.0 1.2 (タイタンパレ−ド)
タバコ 200 40 10 5.7 1.5 0.9(キサンチnc)
リンドウ 128 75 14 7.6 1.1 0.4(エゾリンドウ系)
*()は播種した種の品種名、商品名などを示す。
**葉数はトマト、ピ−マンは子葉除いた葉数を示し、リンドウは対葉であるが1枚ずつの葉数を示す。
【0030】表1の結果から、トマトとピ−マンの苗はセル穴内部から苗トレイ表面上に突き出て子葉と本葉は苗トレイ表面約3cm以上にあり、従来法の植物ウイルス接種方法(特開平4−330005)の円筒形ロ−ラによる擦り付け接種を行う場合、苗トレイ表面上で充分に苗の茎葉を擦ることができる。しかるに、苗がロゼット状態となるペチュニア、タバコ、リンドウはトレイ表面上の草丈が0.4〜1.2cmでかなり低くく草丈の約半分はセル穴内部にあり、節間は極端に短く、葉数は折り重なって枚数が多く、従来の接種方法によるロ−ラではセル穴内部の茎葉に至るまで充分な擦り付けを行って接種することができない。
【0031】(2)ロゼット状態の苗における弱毒ウイルス接種結果の比較キュウリモザイクウイルスの弱毒ウイルス(日本デルモンテ社製、「NDM−1」)の純化液をリン酸緩衝液に濃度100μg/mlで希釈し、着色料(合成着色料、ブリリアントブル−FCF)を500倍で加えて接種液を作成した。128穴トレイで40日育苗した6〜7枚期のペチュニアに、本発明では接種液を簡易ハンドスプレ−で苗に噴霧し、茎葉が青色に着色する具合を見ながら少量均一噴霧を行い、その噴霧直後、けいそう土(セライト)を毛先に付着させたブラシ(富士ブラシ製造販売社製、ペンキ用刷毛、毛の長さ3.6cm、ブラシ幅7cm、ブラシの毛の外径約0.1mm、毛の素材は山羊)を四つ並列に並べて、図3のごとく作成したブラシ(ブラシ幅30cm)で縦方向と横方法にセル穴内部の茎葉に至るまで苗全体の茎葉を満遍なく計3回擦った。
【0032】
【比較例】比較例1上記実施例1と同様に接種液を噴霧した直後、けいそう土(セライト)が付着したロ−ラ(ニトムズ社製 コロコロ、ロ−ラの長さ16cm)で苗トレイの表面上に突き出ている苗の茎葉を計3回擦った。
【0033】
【対照例】対照例1上記実施例1で得られる接種液を噴霧して、擦り操作は一切行わなかった。
【0034】対照例2上記実施例1で得られる接種液にけいそう土(セライト)を2%混合し、その液に綿棒(ジョンソン・エンド・ジョンソン社製)を浸し、苗の葉の裏にあて板を差し当てて支えとし、それぞれ株の葉を6枚ずつ綿棒で擦り、綿棒は8株の接種を終える毎に交換した。以上の接種操作を行った8日目に、それぞれの128穴トレイから調査株をランダムに取り、弱毒ウイルスを検出した。
【0035】上記実施例1、比較例、対照例1及び対照例2の結果をまとめて表2に示す。
【0036】
表2 トレイ当り 調査 接種損傷 弱毒ウイルス検出 擦り器具 接種液量 接種時間 株数 株発生数*検出株 感染率 (ml) (分) (株) (株) (株) (%)
本発明 ブラシ 8 0.75 13 0 13 100比較例 ロ−ラ 8 1.08 13 4 11 85対照例1 無 し 8 0.21 10 0 0 0対照例2 綿棒 19 25.33 10 0 10 100 *弱毒ウイルスの検出は接種後8日目に、それぞれの株から6枚の葉の葉片を取り、ビニ−ル小袋に入れて揉み潰し、燐酸緩衝液を700μl/袋、注入し、セライトを入れて混ぜ、その液に綿棒を浸したあと直ちにササゲ(品種:黒種3尺)の初生葉に擦り付け、斑点が発生した場合ウイルスの検出とし、斑点が発生しない場合無検出とした。
数字はそのウイルス検出結果を示す。
【0037】表2の結果から、先ず比較例のロ−ラによる接種は、育苗トレイ表面からはみでた苗の葉がセル穴の角の先端とロ−ラに挟まり、ロ−ラの回転により葉が少し裂ける程度の擦り傷が31%(4株/13株中)発生した。また、苗トレイのセル穴内部にある茎葉にはロ−ラは触れず、擦り操作が完全でなく感染率は85%に止まった。対照例1の接種液の噴霧のみによる接種では、苗を擦る操作が無いので全く感染させることができなかった。対照例2では接種液を株当り六枚ずつ満遍なく綿棒で擦るので、接種液を多く必要とし、また接種時間を大幅に必要とした。これに対して本発明は、苗に付着した少量の噴霧液を128穴トレイの縦幅(約30cm)に応じたブラシで単純に数回擦るだけなので接種時間が少なく、育苗トレイの凹凸に対してブラシの柔軟性のある毛先の自由自在な動きによりセル穴内部にある茎葉に至るまで十分に擦ることができ、苗の擦り傷は極めて軽微で、接種損傷株発生数は無く、弱毒ウイルスを100%感染させることができた。従って、本発明は、少量の接種液量で、簡単な器具と簡便な方法により、迅速に、しかも集約的、効率的に擦り付け接種ができ、トレイ苗を満遍なく擦ることができ完全に植物ウイルスを感染させることができ、さらにブラシの柔軟性のある毛先の動きにより苗に損傷を与えずに接種できる。
【0038】(3)弱毒ウイルス接種株の葉の部位別ウイルス増殖比較弱毒ウイルス接種後8日目の本発明と比較例のペチュニアを、上位葉、中位葉、下位葉にそれぞれ二枚ずつふり分け、その二枚ずつの葉をそれぞれ小袋に入れて揉み潰し、燐酸緩衝液を注入してセライトを混ぜ、その液に綿棒を浸したあと直ちにササゲ(品種:黒種3尺)の初生葉に一枚ずつに擦り付けて接種し、その四日後、それぞれの初生葉に斑点が発生した数を数え、本発明と比較例との弱毒ウイルス接種株の葉の部位別ウイルス増殖を、ペチュニアの株当りササゲ斑点発生数で比較した。表3に本発明と比較例の結果を示す。
【0039】
表3 ペチュニアの葉のササゲ斑点発生数 調査株数 下位葉 中位葉 上位葉 合 計 (株) (ケ) (ケ) (ケ) (ケ)
本発明 10 19.0 22.8 20.0 61.8 比較例 10 1.6 13.7 16.1 31.4【0040】表3より、ロ−ラを用いて接種した比較例のササゲの斑点発生数は、下位葉が少なく、中位葉から上位葉になるにつれて斑点の発生が多くなった。これはロ−ラでは苗トレイの凹部分のセル穴内部の茎葉に至まで擦ることができず、苗の下部分の葉は弱毒ウイルスが増殖しずらかったことを示す。これに対して、ブラシを用いて接種した本発明では、苗トレイの凹凸に対してブラシの柔軟性のある毛先の自由自在な動きによりセル穴内部にある茎葉を十分に擦り、下位葉、中位葉、上位葉のいずれからもほぼ同等の斑点が発生し、また、ペチュニア株当りササゲ斑点数の合計は比較例の倍となり、弱毒ウイルスがペチュニア体内に早く浸透して増殖したことを示す。
【0041】
【本発明の効果】本発明は、少量の植物ウイルス液と、簡易噴霧具やブラシなどの簡単な器具を用いて、苗に均一噴霧したあと数回苗を擦るだけの簡便な方法により、迅速に、効率的かつ集約的に大量の苗の接種作業を短時間に行える効果を有する。また本発明は、トマト、ピ−マンのような育苗トレイ表面に葉が完全に突き出る作物のほか、ペチュニア、トルコキキョウ、タバコ、リンドウなどの節間が極度に短く葉が重なってロゼット状態になり育苗トレイの表面に葉が完全に出ていない苗においても、ブラシの柔軟性のある細い毛先の自由自在な動きにより、育苗トレイ表面の苗の先端の葉から、セル穴内部の地際部の茎葉に至るまで十分に擦って接種することができる効果を有する。また苗を傷付けることなく接種でき、そのうえ植物ウイルスを早く植物体内に浸透させ、ほぼ完璧に感染させることできる効果も合わせて奏するものである。また本発明は平坦な地面に植えた植物体に対して植物ウイルスを接種する場合ばかりでなく、凹凸のある地面に植えた植物体に対しての接種ムラなく、植物ウイルスを接種し感染させることができる。
【出願人】 【識別番号】000104559
【氏名又は名称】日本デルモンテ株式会社
【出願日】 平成11年1月12日(1999.1.12)
【代理人】
【公開番号】 特開2000−201535(P2000−201535A)
【公開日】 平成12年7月25日(2000.7.25)
【出願番号】 特願平11−4842