| 【発明の名称】 |
育苗培土用糊剤、育苗培土および育苗培土の製造方法ならびに育苗培土の固化方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】岩熊 正樹
【氏名】中村 正文
【氏名】副田 康貴
【氏名】元岡 茂治
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| 【要約】 |
【課題】根鉢部分が弾力性を有し、育苗ポットからの抜け性が良好で、機械移植時の機械抵抗が少ない土付苗を安定して形成でき、さらに、農園芸作物の、特に根圏における生育阻害を予防して健苗を得ることができる育苗培土用糊剤、育苗培土および育苗培土の製造方法ならびに育苗培土の固化方法を提供する。
【解決手段】アニオン度が、0を超え70モル%以下の重合体からなり、該重合体が有する酸性基の30モル%以上が2価カチオンの塩である重合体を育苗培土用糊剤として用いる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】アニオン度が0を超え70モル%以下の重合体からなり、該重合体が有する酸性基の30モル%以上が2価カチオンの塩であることを特徴とする育苗培土用糊剤。 【請求項2】上記重合体が有する酸性基が、カルボキシル基およびその塩ならびにスルホン酸基およびその塩から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の育苗培土用糊剤。 【請求項3】上記2価カチオンが、カルシウムイオンであることを特徴とする請求項1または2記載の育苗培土用糊剤。 【請求項4】請求項1ないし3のいずれか1項に記載の育苗培土用糊剤と、育苗培土基材とを含むことを特徴とする育苗培土。 【請求項5】請求項1ないし3のいずれか1項に記載の育苗培土用糊剤を育苗培土基材に混合することを特徴とする育苗培土の製造方法。 【請求項6】アニオン度が0を超え70モル%以下の重合体と、電離により2価カチオンを生成する化合物と、育苗培土基材とを、上記重合体が有する酸性基のうち、30モル%以上が2価カチオンの塩となるように混合することを特徴とする育苗培土の製造方法。 【請求項7】請求項1ないし3のいずれか1項に記載の育苗培土用糊剤を用いて育苗培土を固化することを特徴とする育苗培土の固化方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、農園芸作物の機械移植に好適に用いられる育苗培土用糊剤、育苗培土および該育苗培土の製造方法ならびに該育苗培土の固化方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来より、農園芸作業の効率化を図る目的で、野菜、花卉、水稲等の農園芸作物の機械移植がさかんに行われている。一般に、機械移植は、鉢形等の形状よりなる育苗容器(育苗ポット)中で土付苗を育苗し、続いて、移植機により、上記育苗ポットから土付苗を、たとえば、突き出すことによって分離した後、畝へ植付けるという手順により行われる。 【0003】このように、機械移植は、農園芸作業の効率化を図るために、上記土付苗、すなわち、苗と、苗を育成するために育苗ポット中に充填され、該苗の根によって包みこまれた育苗培土(以下、「根鉢部分」という)とが、ともに移植機により畝へ植付けられるという作業工程を有している。上記突き出しを行う場合は、たとえば、育苗ポットの底部に穿設された穴を貫通し得るように移植機に設けられた突き出し棒により、土付苗が突き出される。 【0004】従って、上記手順による機械移植が円滑に行われるためには、根鉢部分が弾力性を有し、これにより、土付苗が崩れることなく、育苗ポットから突き出し等され易い性質、すなわち、育苗ポットからの抜け性が良好であることが必要である。 【0005】一方、機械移植される農園芸作物が、特に根圏において順調に生育できるためにも、上記根鉢部分は、適度の弾力性を有していることが必要である。 【0006】そこで従来より、育苗培土に、アクリルアミド/アクリル酸(塩)共重合体等の育苗培土用糊剤を含有させ、該育苗培土を育苗培土用糊剤にて固化させることにより、育苗培土の弾力性および抜け性を向上させる手法が用いられている。 【0007】上記育苗培土用糊剤を含有した育苗培土としては、たとえば、特公平3−49525号公報に、アクリル酸ナトリウムに由来する繰返し単位を所定の比率で含むアクリルアミド/アクリル酸ナトリウム共重合体を含有する育苗培土が開示されている。この育苗培土では、アクリル酸ナトリウムの電離によって生じるナトリウムイオンと、育苗培土基材としての土壌中に含まれる多価金属イオン(多価カチオン)とが置換し、育苗培土と育苗培土用糊剤との間で新たなイオン結合が形成され、育苗培土どうしが育苗培土用糊剤によって架橋されることにより、固化反応が行われる。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】ところが、上記従来の育苗培土は、ナトリウムイオンと多価カチオンとが反応する際の固化反応条件によって育苗培土の固化状態が変化し、得られる根鉢部分が硬くなったり、土壌の粒子どうしが密着して締まったものになり、十分な弾力性が得られない場合が多々ある。育苗培土がこのような状態となると、育苗ポットからの抜け性が悪化し、機械移植時に、移植機から土付苗に対し加えられる力、すなわち、機械抵抗が大きくなる。 【0009】また、土付苗が十分生長する前に、上記のような固化反応が進んでしまうと、根鉢部分が十分な弾力性を有しなくなるため、根の十分な生長が妨げられ、農園芸作物の生育が阻害されるという問題点がある。 【0010】一方、上記固化反応条件によっては、得られる根鉢部分が十分に固化されない場合があり、このような場合には育苗ポットから土付苗を突き出す際に、該土付苗の根鉢部分が崩壊するため、移植機による機械作業を円滑に行うことができない。 【0011】本発明は、上記各問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、根鉢部分が弾力性を有し、育苗ポットからの抜け性が良好で、機械移植時の機械抵抗が少ない土付苗を安定して形成でき、さらに、農園芸作物の、特に根圏における生育阻害を予防して、健苗を安定して得ることができる育苗培土用糊剤、育苗培土および育苗培土の製造方法ならびに育苗培土の固化方法を提供することにある。 【0012】 【課題を解決するための手段】請求項1の育苗培土用糊剤は、上記の課題を解決するために、アニオン度が0を超え70モル%以下の重合体からなり、該重合体が有する酸性基の30モル%以上が2価カチオンの塩であることを特徴としている。 【0013】請求項2の育苗培土用糊剤は、上記の課題を解決するために、請求項1記載の構成に加えて、上記重合体が有する酸性基が、カルボキシル基およびその塩ならびにスルホン酸基およびその塩から選ばれる少なくとも1種であることを特徴としている。 【0014】上記の構成によれば、育苗培土の良好な固化状態を得ることができ、根鉢部分が弾力性を有し、育苗ポットからの抜け性が良好で、機械移植時の機械抵抗が少ない土付苗を安定して形成でき、さらに、農園芸作物の、特に根圏における生育阻害を予防して、健苗を安定して得ることができる育苗培土用糊剤を提供することができる。 【0015】請求項3の育苗培土用糊剤は、上記の課題を解決するために、請求項1または2記載の構成に加えて、上記2価カチオンが、カルシウムイオンであることを特徴としている。 【0016】上記の構成によれば、植物の生育に対し、安全性を有する育苗培土用糊剤を提供することができる。 【0017】請求項4の育苗培土は、上記の課題を解決するために、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の育苗培土用糊剤と、育苗培土基材とを含むことを特徴としている。 【0018】上記の構成によれば、上記育苗培土が、上記の育苗培土用糊剤を含むことで、育苗培土の固化反応を制御し、育苗培土の良好な固化状態を得ることができる。従って、根鉢部分が弾力性を有し、育苗ポットからの抜け性が良好で、機械移植時の機械抵抗が少ない土付苗を安定して形成でき、さらに、農園芸作物の、特に根圏における生育阻害を予防して、健苗を安定して得ることができる育苗培土を提供することができる。 【0019】請求項5の育苗培土の製造方法は、上記の課題を解決するために、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の育苗培土用糊剤を育苗培土基材に混合することを特徴としている。 【0020】請求項6の育苗培土の製造方法は、上記の課題を解決するために、アニオン度が0を超え70モル%以下の重合体と、電離により2価カチオンを生成する化合物と、育苗培土基材とを、上記重合体が有する酸性基のうち、30モル%以上が2価カチオンの塩となるように混合することを特徴としている。 【0021】上記の方法によれば、上記育苗培土が、上記の育苗培土用糊剤を含むことで、育苗培土の固化反応を制御し、育苗培土の良好な固化状態を得ることができる。従って、上記の方法によれば、根鉢部分が弾力性を有し、育苗ポットからの抜け性が良好で、機械移植時の機械抵抗が少ない土付苗を安定して形成でき、さらに、農園芸作物の、特に根圏における生育阻害を予防して、健苗を安定して得ることができる育苗培土を提供することができる。 【0022】請求項7の育苗培土の固化方法は、上記の課題を解決するために、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の育苗培土用糊剤を用いて育苗培土を固化することを特徴としている。 【0023】上記の方法によれば、上記育苗培土が、上記の育苗培土用糊剤を含むことで、育苗培土の固化反応を制御し、育苗培土の良好な固化状態を得ることができる。従って、根鉢部分が弾力性を有し、育苗ポットからの抜け性が良好で、機械移植時の機械抵抗が少ない土付苗を安定して形成でき、さらに、農園芸作物の、特に根圏における生育阻害を予防して、健苗を安定して得ることができる育苗培土の固化方法を提供することができる。 【0024】 【発明の実施の形態】本発明の内容について、以下に詳細に説明する。本発明の育苗培土用糊剤は、アニオン度が0を超え70モル%以下の重合体からなり、該重合体が有する酸性基(酸性官能基)の30モル%以上が2価カチオンの塩であるという構成を有している。本発明において、上記育苗培土用糊剤として用いられる上記重合体としては、酸性基として、具体的には、たとえば、カルボキシル基およびその塩ならびにスルホン酸基およびその塩のいずれか一つの官能基を有する単量体を含む単量体成分を重合してなる重合体が挙げられる。 【0025】カルボキシル基もしくはその塩を有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸およびそのモノエステル、マレイン酸およびそのモノエステル、シトラコン酸およびそのモノエステル、メサコン酸およびそのモノエステル等の1または2以上のカルボキシル基を含む単量体;上記例示の単量体のアルカリ金属塩、上記例示の単量体のアルカリ土類金属塩等の水溶性の塩;等が挙げられる。これら単量体は、一種類のみを用いてもよいし、適宜二種類以上を混合して用いてもよい。 【0026】また、スルホン酸基もしくはその塩を有する単量体としては、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、2−アクリロイルアミノ−2−メチルスルホン酸、3−アクリロイルオキシエタンスルホン酸、3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アクリルアミド−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸等の1または2以上のスルホン酸基を含む単量体;上記例示の単量体のアルカリ金属塩、上記例示の単量体のアルカリ土類金属塩等の水溶性の塩;等が挙げられる。これら単量体は、一種類のみを用いてもよいし、適宜二種類以上を混合して用いてもよい。 【0027】上記各単量体において、上記水溶性の塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩等が挙げられる。 【0028】さらに上記単量体成分は、上記カルボキシル基およびその塩ならびにスルホン酸基およびその塩のいずれか一つの官能基を有する単量体と共重合可能な不飽和単量体を含んでいてもよい。 【0029】上記不飽和単量体としては、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルエーテル、アリルアルキルエーテル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アルケン類、マレイン酸ジエステル、フマル酸ジエステル、スチレン、スチレン誘導体、シクロヘキセン、ビニルハライド、飽和カルボン酸ビニルエステル、飽和カルボン酸アリルエステル;等が挙げられる。これら単量体は、一種類のみを用いてもよいし、適宜二種類以上を混合して用いてもよい。 【0030】また、本発明にかかる上記重合体としては、反応性を有する官能基を側鎖に有する重合体において、該側鎖に、エステル化、エーテル化、アセタール化等の反応により、カルボキシル基を導入した重合体、たとえば、シュウ酸エステル化ポリビニルアルコール、グリコール酸エーテル化ポリビニルアルコール、グリオキザル酸アセタール化ポリビニルアルコール等のポリビニールアルコール類;および、上記例示のポリビニルアルコールの塩;等であってもよい。 【0031】さらに、本発明にかかる重合体としては、カルボキシメチルセルロースまたはその塩であってもよく、これらの化合物に由来する繰返し単位が側鎖に導入された重合体であってもよい。 【0032】また、本発明にかかる重合体としては、さらに、天然高分子であるペクチン酸またはその塩、アルギン酸またはその塩であってもよく、これらの化合物に由来する繰返し単位を含む重合体であってもよい。 【0033】これら重合体は、一種類のみを用いてもよく、適宜二種類以上を混合して用いてもよい。 【0034】上記例示の重合体のなかでも、上記カルボキシル基もしくはその塩を有する単量体からなる単一重合体;上記スルホン酸基もしくはその塩を有する単量体からなる単一重合体;上記カルボキシル基もしくはその塩を有する単量体と上記スルホン酸基もしくはその塩を有する単量体との2元または多元共重合体;上記例示の単量体の少なくともいずれか一つと、これら単量体と共重合可能な不飽和単量体との2元または多元共重合体;のいずれか一種、または二種以上の上記重合体の混合物が好ましく、アクリルアミドおよびアクリル酸ナトリウムを含む単量体成分からなる、2元または多元アクリル系共重合体が特に好ましい。 【0035】本発明におけるアクリル系重合体の重量平均分子量は、特に限定されないが、200万〜3,000万の範囲内であることが好ましい。重量平均分子量が、3,000万を超えると、上記重合体が水等に対して溶解し難くなるので好ましくない。 【0036】本発明にかかる上記アニオン度は、0を超え70モル%以下であり、好ましくは、5〜40モル%、さらに好ましくは、10〜30モル%、最も好ましくは、15〜25モル%の範囲内である。上記アニオン度が70モル%を超える場合には、上記重合体の多価カチオンに対する反応性が高くなりすぎるので好ましくない。 【0037】本発明におけるアニオン度とは、重合体中の酸性官能基の量を示す値であり、上記重合体の原料として用いられる各単量体の全量を100モル%としたときに、上記官能基が含まれる単量体の量(単位:モル%)に、該単量体に含まれる酸性官能基の個数を乗じた値(単位:モル%)の総数である。 【0038】上記アニオン度について、本発明にかかる重合体として、たとえば、次のA、B、Cの3つの単量体からなる重合体を例に挙げて、以下に説明する。 【0039】A:アクリルアミド等の、アニオン性を有しない単量体、つまり、官能基として、カルボキシル基もしくはその塩、または、スルホン酸基もしくはその塩等の酸性官能基のいずれをも有しない単量体B:カルボキシル基もしくはその塩を1つ含む単量体C:スルホン酸基もしくはその塩を1つ含む単量体上記A、B、Cの3種の単量体を各々、aモル%、bモル%、cモル%、a+b+c=100モル%の割合で重合してなる重合体の場合、アニオン度は、b+cモル%となる。 【0040】また、上記Bの代わりに、D:カルボキシル基もしくはその塩を2つ含む単量体を含む、A、D、Cの3種の単量体を各々、aモル%、dモル%、cモル%、a+d+c=100モル%の割合で重合してなる重合体の場合、そのアニオン度はd×2+cモル%となる。 【0041】従って、上記の定義によれば、たとえば、本発明にかかる上記の重合体が、カルボキシル基を2つ含むイタコン酸の単一重合体であるポリイタコン酸である場合には、アニオン度は100モル%×2=200モル%となる。 【0042】次に、上記アニオン度の具体的な測定方法について説明する。一般的に、アニオン度は、ポリビニルアルコール硫酸カリウム(ポリビニルスルホン酸カリウム、PVSK)を用いた以下に示す滴定法または、IR(Infrared absorption spectroscopy、赤外線吸収スペクトル)による分析等で測定することができる。 【0043】<アニオン度の測定方法>(1)200ml容コニカルビーカーに、イオン交換水90mlをとり、N/10水酸化ナトリウム水溶液で、pH10.0〜10.2に調整する。 【0044】(2)(1)をスターラーで撹拌しながら、正確に計量したN/200メチルグリコールキトサン溶液5mlを(1)に対し加え、1分間以上撹拌する。 【0045】(3)アニオン度を測定したい試料の500ppm水溶液10mlを、(2)に対し、滴下量の正確性が維持できる程度に低速で滴下し、滴下後さらに、5分間以上撹拌してから、トルイジンブルー指示薬を2〜3滴加える。 【0046】(4)(3)をN/400ポリビニルスルホン酸カリウム(N/400PVSK)で滴定する。滴定速度は、2ml/分とし、検水、すなわち、被滴定液が青色から赤紫色に変色して、該変色した状態が10秒以上持続する時点を終点とする。 【0047】(5)上記試料の代わりに、イオン交換水を用いた対照試験(1)〜(4)を行う。 【0048】(6)次式により、アニオン度を算出する。 【0049】 【数1】
【0050】尚、上記測定方法は、たとえばアクリルアミド/アクリル酸ナトリウム共重合体等の2元重合体等の他、アクリルアミド/アクリル酸ナトリウム/AMPS共重合体等の、多元重合体のアニオン度の測定にも適用できる。 【0051】本発明において育苗培土用糊剤として用いられる上記の重合体は、該重合体中に含まれる酸性官能基全量を100モル%としたとき、30モル%以上が2価カチオンの塩、好適には、2価カチオンのカルボン酸塩またはスルホン酸塩となっている。 【0052】従って、上記2価カチオンを介して、イオン結合により、各酸性官能基どうしが架橋した構造をとることができる。より具体的には、たとえば、2価カチオンのカルボン酸塩または、スルホン酸塩は、2価カチオン1個を、カルボン酸イオンまたはスルホン酸イオンのいずれかのイオン2個で共有した状態となる。 【0053】上記酸性官能基のうち、2価カチオンの塩となっている酸性官能基の割合は、30モル%以上であれば特に限定されないが、得られる根鉢部分の弾力性、抜け性をより高めるためには、40モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることが最も好ましい。 【0054】2価カチオンとしては、たとえば、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、バリウムイオン、スズイオン、亜鉛イオン、銅イオン、ニッケルイオン、コバルトイオン等が挙げられる。上記例示の2価カチオンのうち、カルシウムイオンは、植物の生育に対する影響を考慮した場合、安全性に特に優れているため好ましく、上記重合体の酸性官能基を2価カチオンの塩とする場合、該酸性官能基が有する水素イオンまたは金属イオンをカルシウムイオンで置換することが好ましい。 【0055】本発明の育苗培土用糊剤を製造する方法としては、たとえば、(1)カルボキシル基またはその塩、スルホン酸基またはその塩等の酸性官能基を有する重合体に対し、イオン交換または透析等によって、上記重合体が有する酸性官能基を構成する水素イオンまたは1価カチオンを、上記2価カチオンで置換させる方法;(2)カルボキシル基またはその塩、スルホン酸基またはその塩等の酸性官能基を有する重合体を、電離により2価カチオンを生じる化合物たとえば炭酸カルシウムや消石灰(水酸化カルシウム)等のカルシウム含有化合物と育苗培土用基材である土壌とともに、コンクリートミキサー等の混合装置で混合することにより、上記重合体が有する酸性官能基を構成する水素イオンまたは1価カチオンを、上記2価カチオンで置換させる方法;等が挙げられる。 【0056】上記(1)の方法を採用する場合、イオン交換により上記2価カチオンへの置換を行う方法としては、たとえば、以下の方法が挙げられる。まず、2価カチオンで置換する前の上記重合体を、三次元網目構造等を有し水に不溶な高分子樹脂に、共有結合等により結合させて、イオン交換樹脂とする。このイオン交換樹脂をガラス製カラム等に充填し、溶離液として、2価カチオンを含む水溶液を該カラム中に流すことにより、上記重合体中の酸性官能基を構成する水素イオンまたは1価カチオンを、2価カチオンで置換する。 【0057】また、透析により、上記2価カチオンへの置換を行う方法としては、たとえば、2価カチオンで置換する前の上記重合体を、該重合体を透過しない透析膜中に充填し、これを2価カチオンを含む水溶液に対し透析する方法等が挙げられる。 【0058】さらに、上記(2)の方法を採用する場合、上記重合体が有する酸性基のうち、30モル%が2価カチオンの塩となるように、上記重合体と、電離により2価カチオンを生じる化合物との組み合わせに応じて、各々の混合比率や反応時間(置換に要する時間)等が適宜設定される。 【0059】上記混合比率としては、たとえば、重量比で、重合体:2価カチオンを生じる化合物=10:1.875〜3.500の範囲内が好ましい。 【0060】上記反応時間としては、たとえば、上記の好ましい混合比率で混合した場合、10日〜半年の範囲内が好ましい。 【0061】上記重合体における、2価カチオンへの置換割合は、たとえば、該重合体中のカルシウムイオン量をEPMA(Electron Probe MicroAnalyzer)分析によって測定することにより、算出される。 【0062】尚、2価カチオンで置換する前の上記重合体は、従来より一般に用いられている重合方法を用いて、上述した単量体を、アニオン度が0を超え70モル%以下の範囲内となるように重合させることにより、製造することができる。 【0063】また、本発明に係る育苗培土には、必要に応じて、本発明にかかる育苗培土用糊剤以外の重合体、その他添加剤等が育苗培土用糊剤の効果を阻害しない範囲内で含まれていてもよい。 【0064】本発明の育苗培土は、上記育苗培土用糊剤を所定の割合で土壌に混合することにより製造することができる。 【0065】育苗培土用糊剤を土壌に混合する方法としては、たとえば、コンクリートミキサーやリボンミキサー等の混合装置を用いて上記育苗培土用糊剤と土壌とを、均一に混合する方法が挙げられる。 【0066】また、本発明に係る育苗培土用糊剤を土壌に直接混合する方法の他、2価カチオンで置換される前の上記重合体と、土壌とを混合する際に、電離により2価カチオンを生じる化合物、好適には、炭酸カルシウム等のカルシウム含有化合物を添加し、上記2価カチオンへの置換を、混合と同時に行う方法を用いてもよい。また、育苗培土用糊剤と土壌等とを一括混合する上記方法の他、予め、高濃度の育苗培土用糊剤を含むマスターバッチ土壌を調製し、次いでこれと土壌とを混合して所定濃度とする方法を用いてもよい。 【0067】本発明の育苗培土に含まれる土壌としては、造粒培土、バーミキュライト、パーライト、ゼオライト等の鉱物資材;ピートモス、ヤシガラピートモス、バカス、バーク等の植物系繊維資材;および上記例示の資材の混合品;等が挙げられる。 【0068】育苗培土用糊剤の、育苗培土中における混合割合は、育苗培土全量に対し、0.05〜5重量%の範囲内であることが好ましく、0.1〜3重量%の範囲内であることがさらに好ましく、0.5〜1.5重量%の範囲内であることが最も好ましい。0.05重量%未満では、育苗培土の強度が不足するので好ましくない。また、5重量%を超えると、コストがかかる他、播種作業時に育苗ポットへの粘着が発生するため好ましくない。 【0069】本発明の育苗培土用糊剤および育苗培土は、野菜、花卉、苗木、稲等の農園芸作物に対し使用することができる。また、タマネギ、ネギ等の比較的根の少ない野菜の土付苗においても、弾力性および抜け性を有する根鉢部分を安定して形成することができる。 【0070】本発明の育苗培土は、育苗培土用糊剤を土壌と混合して得られた育苗培土に、たとえば、農園芸作物の播種前後において、必要に応じて、所定量の潅水を行うことにより固化させることができる。また、上記潅水を行わない場合であっても、育苗培土中に含まれる水分によって、固化反応を進行させることもできる。 【0071】次に、本発明の育苗培土用糊剤を用いた場合の土付苗の根鉢部分の固化状態について、以下に詳細に説明する。 【0072】上記固化状態を説明する指標としては、たとえば、突き出し時の育苗培土の崩れの有無、圧縮時の育苗培土の崩れの有無、および突き出し抵抗等を用いることができる。 【0073】突き出し時の育苗培土の崩れの有無は、以下の方法により確認できる。図1に示すように、育苗ポット1の底部に穿設された穴2を貫通し得るように、移植機に設けられた突き出し棒3により、矢印4にて示す突き出し方向(育苗ポット1の底部から土付苗を押し上げる方向)に土付苗5を突き出した後、土付苗5の根鉢部分における、育苗培土の崩れの有無を、目視により観察する。 【0074】圧縮時の育苗培土の崩れの有無は、以下の確認方法により確認できる。図2に示すように、育苗ポット1より取り出した土付苗5を、水平なステージ6上に置き、上方より、土付苗5の根鉢部分の育苗培土の高さが、圧縮前の3分の2になるまで圧縮し、育苗培土の崩れの有無を、目視により観察する。 【0075】また、突き出し抵抗は、突き出し時に移植機から土付苗5に対して与えられる圧力(単位:kg重)を、たとえば、プッシュ・プルスケール(株式会社今田製作所製)を用いて測定することにより、求めることができる。 【0076】上記突き出し時の育苗培土の崩れが無い土付苗5は、根鉢部分の強度が高く、良好な固化状態を有している。また、上記圧縮時の育苗培土の崩れが無い土付苗5は、根鉢部分が、圧縮時等における崩れを防止できるとともに根の生育に必要な程度の弾力性を有している。また、上記突き出し抵抗が少ないほど、土付苗5は、育苗ポット1からの抜け性が良好である。 【0077】以上のように、本発明にかかる育苗培土用糊剤は、アニオン度が0を超え70モル%以下の重合体からなり、該重合体が有する酸性基の30モル%以上が2価カチオンの塩であることを特徴としている。また、本発明にかかる育苗培土は、上記育苗培土用糊剤と、育苗培土用基材としての土壌とを混合するか、あるいはアニオン度が0を超え70モル%以下の重合体と、電離により2価カチオンを生成する化合物と、育苗培土基材としての土壌とを、上記重合体が有する酸性基のうちえ30モル%以上が2価カチオンの塩となるように混合することにより、容易に製造することができる。 【0078】本発明によれば、上記育苗培土用糊剤を用いることで、育苗培土の良好な個化状態を得ることができ、根鉢部分が弾性力を有し、育苗ポット1からの抜け性が良好で、機械移植時の機械抵抗が少ない土付苗5を安定して形成でき、さらに、農園芸作物の、特に根圏における生育阻害を予防して、健苗を安定して得ることができる。 【0079】本発明に係る育苗培土用糊剤が、安定した固化状態を形成できる詳細な機構は明らかではないが、主に、以下のような機構によるものと考えられる。 【0080】2価カチオンを介して上記酸性官能基どうしが架橋した構造を有する本発明にかかる上記の重合体は、架橋した状態から、再び電離する性質を有している。このため、本発明にかかる該重合体は、潅水により育苗培土中で電離し、育苗培土基材中の他の多価カチオンとの間で、再度イオン結合を形成して架橋され、これにより、育苗培土の固化反応が行われる。本発明に係るアクリル系重合体は、上記のような固化反応により、育苗培土の固化状態を、安定して形成することができる。 【0081】従来より育苗培土用糊剤として用いられているアクリルアミド/アクリル酸ナトリウム共重合体中のように、重合体が有する酸性官能基が1価カチオンの塩のみである場合は、上記架橋した状態が無い状態で、育苗培土中で固化反応が開始される。 【0082】この場合、土壌の種類によっては、すなわち、土壌中に含まれる多価カチオン量および組成によっては、アルミニウムイオン含有量が高い土壌が存在し、かかる土壌に対しては、育苗培土用糊剤と該土壌中のアルミニウムイオンとが反応して架橋状態を生じる割合が高くなる。これは、アルミニウムのイオン化傾向が小さいため、一旦、アルミニウムイオンと育苗培土用糊剤と反応してしまうと、電離しにくくなるためである。この様な状態で得られる育苗培土は、弾力性が無く、非常に硬い状態となる。 【0083】一方、本発明に係る重合体では、酸性官能基どうしが2価カチオンを介して予め架橋した状態が存在していることで、一定の固化状態を得られるように、固化反応が進行する。すなわち、2価カチオンを介して予め架橋させておくと、土壌中に含まれる多価カチオン量および組成によらず、育苗培土用糊剤の一部は、2価カチオンで架橋されたままの状態で残る。このため、得られる育苗培土は、弾力性に富んだものであり、根の生長を妨げることは無い。 【0084】上記したように、本発明にかかる育苗培土用糊剤を用いれば、固化反応前に一旦架橋状態にある2価カチオンのうち、一部は架橋されたままの状態で残り、他の部分が固化時に電離して新たな架橋が行われるため、アクリルアミド/アクリル酸ナトリウム共重合体のように、重合体中の酸性基が全て1価カチオンである上記従来の育苗培土用糊剤と比較して、架橋反応すなわち固化反応を制御し易い。 【0085】 【実施例】以下に述べる実施例および比較例において、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらにより何ら限定されるものではない。尚、以下の実施例および比較例で用いた育苗培土用糊剤における酸性官能基中の水素イオンまたは1価カチオンの2価カチオンへの置換割合は、以下の方法により算出した。 【0086】<2価カチオンへの置換割合の算出方法>育苗培土用糊剤を両面テープの片面上に固定し、光学顕微鏡で観察しながら、カミソリ刃で切削した。切削して得た切片の断面を上にしてカーボン試料台に固定し、カーボン蒸着後、測定供試料とした。 【0087】上記測定供試料について、EPMA(島津製作所(株)製、JXA−6600MX)を用いて、2価カチオンに対応する元素を定性した。検出された各元素について設定標準試料との相対強度比較による濃度換算を行い、定量した。 【0088】2価カチオンへの置換割合は、育苗培土用糊剤としての各アクリル系重合体に官能基として含まれる酸性官能基、すなわち、カルボキシル基もしくはその塩、または、スルホン酸基もしくはその塩の全量を100モル%としたとき、何モル%が、2価カチオンの塩となっているかについて、上記元素の定量値より算出した。 【0089】〔実施例1〕アニオン度17.0モル%、重量平均分子量2,000万のアクリルアミド/アクリル酸ナトリウム共重合体(AA/SA)を、透析膜(和光純薬工業(株)製)内に充填した後、20℃で、14.7重量%塩化カルシウム二水和物(CaCl2 ・2H2 O)水溶液中に所定時間放置し、上記共重合体を構成するアクリル酸ナトリウムのナトリウム塩部分におけるナトリウムイオンをカルシウムイオンで置換した化合物を、本発明に係る育苗培土用糊剤として得た。 【0090】上記共重合体を構成するアクリル酸ナトリウムにおけるナトリウムイオンのカルシウムイオンへの置換割合を上述した方法により算出した結果、40モル%が、カルシウムイオンに置換されていた。 【0091】次に、水稲用の粒状培土(北海三共(株)製、含水率12%)20kgに、上記方法で得られた育苗培土用糊剤200gを添加し、リボンミキサー(株式会社ダルトン製)で3分間混合することにより、本発明にかかる育苗培土を得た。 【0092】次いで、この育苗培土に、20重量%の水を添加し、リボンミキサーで5分間混合した後、この育苗培土をタマネギ用育苗トレー(みのる産業(株)製、育苗ポット数448ポット/枚)に充填し、鎮圧ローラーを用いて鎮圧した。その後、タマネギ(品種オホーツク1号)の種子を、1粒/1ポットとなるように播種し、軽く覆土した後、ハウス内で育苗した。 【0093】上記タマネギが3〜4葉期まで生育した時、潅水を停止し、各育苗ポット内の育苗培土が十分に乾燥するまで放置した。上記育苗ポット内の育苗培土が完全に乾燥したことを目視により確認した。 【0094】上記育苗ポット内の生育苗(土付苗)の根鉢部分の強度、すなわち、上記育苗培土の固化状態を評価した。具体的には、上記の育苗ポットの底まで水が浸透するまで潅水し、適度に湿った状態で、上記タマネギ用育苗トレーから100ポットの育苗ポットをランダムに抜き取り、この抜き取った100ポットの育苗ポットについて突き出し時の育苗培土の崩れの有無の確認、圧縮時の育苗培土の崩れの有無の確認、および突き出し抵抗を測定することにより、上記育苗培土の固化状態を評価した。突き出し時の育苗培土の崩れの有無、および圧縮時の育苗培土の崩れの有無は、前述した各確認方法により確認し、育苗培土の崩れがなかった育苗ポットの個数を計数した。また、突き出し抵抗は、プッシュ・プルメーターにより測定した。この結果を、用いた育苗培土用糊剤の物性と併せて表1に示す。 【0095】〔実施例2〕実施例1において、AA/SAにおけるナトリウムイオンのカルシウムイオンへの置換割合を80%とした以外は、実施例1と同様の操作を行って、本発明にかかる育苗培土用糊剤を得た。次いで、実施例1で得られた育苗培土用糊剤に代えて上記の育苗培土用糊剤を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行って、本発明にかかる育苗培土を得た。この育苗培土について、実施例1と同様の方法により、タマネギ生育時の固化状態を評価した。この結果を、用いた育苗培土用糊剤の物性と併せて表1に示す。 【0096】〔実施例3〜5〕実施例1において、アニオン度22.0モル%、重量平均分子量2,200万のアクリルアミド/アクリル酸ナトリウム共重合体を使用し、該共重合体におけるナトリウムイオンの、カルシウムイオンへの置換割合を、各々、30モル%、60モル%、90モル%とした以外は、実施例1と同様の操作を行って、本発明にかかる育苗培土用糊剤を得た。次いで、実施例1で得られた育苗培土用糊剤に代えて、上記の育苗培土用糊剤を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行って、本発明にかかる育苗培土を得た。この育苗培土について、実施例1と同様の方法により、タマネギ生育時の固化状態を評価した。この結果を、用いた育苗培土用糊剤の物性と併せて表1に示す。 【0097】〔実施例6〜8〕実施例1において、アニオン度31.0モル%、重量平均分子量2,500万のアクリルアミド/アクリル酸ナトリウム/AMPS(Acrylamide−2−methylpropane sulfonic acid、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)(AA/SA/AMPS)を使用し、カルシウムイオンへの置換割合を、各々、45モル%、75モル%、100モル%とする以外は、実施例1と同様の操作を行って、本発明にかかる育苗培土用糊剤を得た。次いで、実施例1で得られた育苗培土用糊剤に代えて上記の育苗培土用糊剤を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行って、本発明にかかる育苗培土を得た。この育苗培土について、実施例1と同様の方法により、タマネギ生育時の固化状態を評価した。この結果を、用いた育苗培土用糊剤の物性と併せて表1に示す。 【0098】〔比較例1〕アクリルアミド/アクリル酸ナトリウム共重合体を構成するアクリル酸ナトリウムのナトリウム塩部分におけるナトリウムイオンのカルシウムイオンへの置換を行わない以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較用の育苗培土用糊剤を得た。すなわち、本比較例では、育苗培土用糊剤として、アニオン度17.0モル%、重量平均分子量2,000万のアクリルアミド/アクリル酸ナトリウム共重合体を用いた。次いで、実施例1で得られた育苗培土用糊剤に代えて上記の育苗培土用糊剤を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較用の育苗培土を得た。この育苗培土について、実施例1と同様の方法により、タマネギ生育時の固化状態を評価した。この結果を、用いた育苗培土用糊剤の物性と併せて表1に示す。 【0099】〔比較例2〕アクリルアミド/アクリル酸ナトリウム共重合体を構成するアクリル酸ナトリウムのナトリウム塩部分におけるナトリウムイオンのカルシウムイオンへの置換を行わない以外は、実施例3と同様の操作を行って、比較用の育苗培土用糊剤を得た。すなわち、本比較例では、育苗培土用糊剤として、アニオン度22.0モル%、重量平均分子量2,200万のアクリルアミド/アクリル酸ナトリウム共重合体を用いた。次いで、実施例3で得られた育苗培土用糊剤に代えて上記の育苗培土用糊剤を用いた以外は、実施例3と同様の操作を行って、比較用の育苗培土を得た。この育苗培土について、実施例1と同様の方法により、タマネギ生育時の固化状態を評価した。この結果を、用いた育苗培土用糊剤の物性と併せて表1に示す。 【0100】〔比較例3〕アクリルアミド/アクリル酸ナトリウム/AMPS共重合体を構成するアクリル酸ナトリウムのナトリウム塩部分におけるナトリウムイオンのカルシウムイオンへの置換を行わない以外は、実施例6と同様の操作を行って、比較用の育苗培土用糊剤を得た。すなわち、本比較例では、育苗培土用糊剤として、アニオン度31.0モル%、重量平均分子量2,500万のアクリルアミド/アクリル酸ナトリウム/AMPS共重合体を用いた。次いで、実施例6で得られた育苗培土用糊剤に代えて上記の育苗培土用糊剤を用いた以外は、実施例6と同様の操作を行って、比較用の育苗培土を得た。この育苗培土について、実施例1と同様の方法により、タマネギ生育時の固化状態を評価した。この結果を、用いた育苗培土用糊剤の物性と併せて表1に示す。 【0101】〔比較例4〕アニオン度0.0モル%、重量平均分子量2,100万のポリアクリルアミド(PAA)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行って比較用の育苗培土用糊剤を得た。すなわち、本比較例では、育苗培土用糊剤として、アニオン度0.0モル%、重量平均分子量2,100万のポリアクリルアミドを用いた。次いで、実施例1で得られた育苗培土用糊剤に代えて上記の育苗培土用糊剤を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較用の育苗培土を得た。この育苗培土について、実施例1と同様の方法により、タマネギ生育時の固化状態を評価した。この結果を、用いた育苗培土用糊剤の物性と併せて表1に示す。 【0102】〔比較例5〕育苗培土用糊剤を使用しない以外は、実施例1と同様の操作を行って、タマネギ生育時の固化状態を評価した。この結果、育苗培土が育苗培土用糊剤を含まない場合、育苗培土が固化せず、育苗培土が突き出し時に全て崩れてしまい、突き出し抵抗を測定することはできなかった。また、圧縮時の育苗培土の崩れを実施例1と同様の方法により測定した結果、全ての育苗培土が崩れた。この結果を表1に示す。 【0103】 【表1】
【0104】表1の結果から明らかなように、本発明に係る育苗培土用糊剤として、実施例1〜8のアクリル系重合体を用いた育苗培土では、全て、突き出し時の育苗培土の崩れが無い土付苗の個数が96個以上であり、かつ、圧縮時の育苗培土の崩れが無い土付苗の個数が、いずれも比較例1〜5に示すいずれの育苗培土よりも多いことがわかる。また、突き出し抵抗が、いずれも比較例1〜5に示すいずれの育苗培土よりも低いことがわかる。 【0105】従って、上記実施例1〜8のアクリル系重合体を育苗培土用糊剤として用いることにより、従来の育苗培土用糊剤を用いた場合と比較して、より弾力性を有し、抜け性が優れた土付苗が、安定して得られることがわかる。従って、上記育苗培土用糊剤およびこれを含む育苗培土は、従来の育苗培土用糊剤およびこれを含む育苗培土と比較して、実用性が高いことがわかる。 【0106】〔実施例9〕粒状培土(日東エフシー(株)製、含水率12%)20kgに、炭酸カルシウム20gおよび、アニオン度18.0モル%、重量平均分子量2,200万のアクリルアミド/アクリル酸ナトリウム共重合体200gを添加し、コンクリートミキサーで3分間混合した。混合後、20℃で1ケ月保管し、上記の共重合体を構成するアクリル酸ナトリウムのナトリウム塩部分におけるナトリウムイオンをカルシウムイオンで置換させた後、該混合物を本発明にかかる育苗培土として得た。 【0107】この育苗培土から、上記カルシウムイオンによる置換後の共重合体を本発明にかかる育苗培土用糊剤として採取し、上述した方法により、カルシウムイオンへの置換割合を調べた。その結果、上記共重合体中のアクリル酸ナトリウムを構成するナトリウムイオン全量のうち、70モル%以上が、カルシウムイオンによって置換されていた。 【0108】上記方法で得た育苗培土に、該育苗培土に対し、20重量%の水を添加し、5分間コンクリートミキサーで混合した後、この育苗培土をタマネギ用育苗トレー(みのる産業(株)製、育苗ポット数448ポット/枚)に充填し、鎮圧ローラーを用いて鎮圧した。その後、タマネギ(品種オホーツク1号)の種子を、1粒/1ポットとなるように播種し、軽く覆土した後、ハウス内で育苗した。 【0109】上記タマネギが3〜4葉期まで生育した時、潅水を停止し、各育苗ポット内の育苗培土が十分に乾燥するまで放置した。上記育苗ポット内の育苗培土が完全に乾燥したことを目視により確認した。 【0110】上記育苗ポット内の生育苗(土付苗)の根鉢部分の強度、すなわち、タマネギ生育時の上記育苗培土の固化状態を実施例1と同様の方法により評価した。この結果を、用いた育苗培土用糊剤の物性と併せて表2に示す。 【0111】〔実施例10〕実施例9において、アニオン度29.0モル%、重量平均分子量2,500万のアクリルアミド/アクリル酸ナトリウム/AMPS共重合体を使用した以外は、実施例9と同様の操作を行って、本発明にかかる育苗培土用糊剤を含む育苗培土を得た。この育苗培土について、実施例9と同様の方法により、タマネギ生育時の固化状態を評価した。この結果を、用いた育苗培土用糊剤の物性と併せて表2に示す。 【0112】〔比較例6〕炭酸カルシウムを添加しない以外は、実施例9と同様の操作を行って、アニオン度18.0モル%、重量平均分子量2,200万のアクリルアミド/アクリル酸ナトリウム共重合体を育苗培土用糊剤として含む比較用の育苗培土を得た。この育苗培土について、実施例1と同様の方法により、タマネギ生育時の固化状態を評価した。この結果を、用いた育苗培土用糊剤の物性と併せて表2に示す。 【0113】〔比較例7〕炭酸カルシウムを添加しない以外は、実施例10と同様の操作を行って、アニオン度29.0モル%、重量平均分子量2,500万のアクリルアミド/アクリル酸ナトリウム/AMPS共重合体を育苗培土用糊剤として含む比較用の育苗培土を得た。この育苗培土について、実施例1と同様の方法により、タマネギ生育時の固化状態を評価した。この結果を、用いた育苗培土用糊剤の物性と併せて表2に示す。 【0114】〔比較例8〕実施例9において、アニオン度0.0モル%、重量平均分子量2,300万のポリアクリルアミドを使用した以外は、実施例9と同様の操作を行って、該ポリアクリルアミドを、育苗培土用糊剤として含むと共に炭酸カルシウムを含む比較用の育苗培土を得た。この育苗培土について、実施例1と同様の方法により、タマネギ生育時の固化状態を評価した。この結果を、用いた育苗培土用糊剤の物性と併せて表2に示す。 【0115】〔比較例9〕炭酸カルシウムを添加しない以外は、比較例8と同様の操作を行って、上記のポリアクリルアミドを育苗培土用糊剤として含む比較用の育苗培土を得た。この育苗培土について、実施例1と同様の方法により、タマネギ生育時の固化状態を評価した。この結果を、用いた育苗培土用糊剤の物性と併せて表2に示す。 【0116】〔比較例10〕粒状培土(日東エフシー(株)製、含水率12%)20kgに、炭酸カルシウム20gを添加し、コンクリートミキサーで3分間混合した後、20℃で1ケ月保管した後、該混合物を比較用の育苗培土として得た。この育苗培土について、実施例1と同様の方法により、タマネギ生育時の固化状態を評価した。この結果を、表2に示す。 【0117】〔比較例11〕粒状培土(日東エフシー(株)製、含水率12%)を用いて、実施例1と同様の方法により、タマネギ生育時の固化状態を評価した。この結果を表2に示す。 【0118】 【表2】
【0119】表2の結果から明らかなように、本発明に係る育苗培土用糊剤として、実施例9〜10の育苗培土用糊剤を用いた育苗培土では、突き出し時の育苗培土の崩れが無い土付苗の個数が各々99個、98個と多く、かつ、圧縮時の育苗培土の崩れが無い土付苗の個数が、いずれも比較例6〜11に示すいずれの育苗培土よりも多いことがわかる。また、突き出し抵抗が、いずれも比較例6〜11に示すいずれの育苗培土よりも低いことがわかる。尚、比較例8〜11に示す育苗培土を用いた場合、育苗培土が固化せず、突き出し時に全て崩れてしまい、突き出し抵抗を測定することはできなかった。 【0120】以上のように、上記実施例9〜10によれば、上記実施例9〜10のアクリル系重合体、すなわち、本発明にかかる育苗培土用糊剤を簡便に得ることができることがわかる。また、上記実施例9〜10で得られたアクリル系重合体を育苗培土用糊剤として用いることにより、従来の育苗培土用糊剤を用いた場合と比較して、より弾力性を有し、抜け性が優れた土付苗が、安定して得られることがわかる。従って、上記育苗培土用糊剤およびこれを含む育苗培土は、従来の育苗培土用糊剤およびこれを含む育苗培土と比較して、実用性が高いことがわかる。 【0121】 【発明の効果】上記育苗培土が、上記の育苗培土用糊剤を含むことで、育苗培土の固化反応を制御し、育苗培土の良好な固化状態を得ることができる。従って、本発明の構成によれば、根鉢部分が弾力性を有し、育苗ポットからの抜け性が良好で、機械移植時の機械抵抗が少ない土付苗を安定して形成でき、さらに、農園芸作物の、特に根圏における生育阻害を予防して、健苗を安定して得ることができる育苗培土を提供できるという効果を奏する。
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| 【出願人】 |
【識別番号】596005964 【氏名又は名称】住化農業資材株式会社 【識別番号】000100469 【氏名又は名称】みのる産業株式会社
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| 【出願日】 |
平成10年12月22日(1998.12.22) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100080034 【弁理士】 【氏名又は名称】原 謙三
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| 【公開番号】 |
特開2000−188947(P2000−188947A) |
| 【公開日】 |
平成12年7月11日(2000.7.11) |
| 【出願番号】 |
特願平10−365566 |
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