| 【発明の名称】 |
切枝に着生したままの葉を溶液中につけることによる切枝の長期管理育成とその発根、接木への応用。 |
| 【発明者】 |
【氏名】前田 敏
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| 【要約】 |
【課題】葉から溶液を吸収させることにより、切枝、切花の活性期間の延長をはかるとともに、この無菌的な葉からの吸収機構をさし穂、つぎ穂の水管理・栄養管理に応用し、さし木、つぎ本の技術の安定化、効率化についての基礎技術の確立をはかる。
【解決手段】ここに葉からの溶液の吸収能力と、その菌に対する二重の防禦機能、つまり細胞は菌を濾過してその侵入を防ぎ、それでもなお、一部の傷口から菌が侵入すれば、離層を形成し、茎への侵入を遮断する。こういった葉の機能に着目し、切枝、切花の葉を通しての無菌的な水管理、栄養管理を利用して長期間にわたりその活性の延長をはかる。それとともに、この無菌的な葉からの吸収機構をさし穂、つぎ穂の水管理、栄養管理に応用し、さし木、つぎ木技術の安定化、効率化についての基礎技術の確立をはかる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 切枝の切口ではなく切口以外の茎葉の一部を、水だけ、又は肥料又は農薬を含む水溶液、又はこれらの混合液につけて、そこから溶液を吸収させ、切枝を長期間にわたり管理育成し、さらにはこれを切枝の発根やつぎ木に応用する方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【産業上の利用分野】 果樹園芸、花卉、庭園草木類の切枝の長期にわたる管理育成、発根、接木に利用し得る。 【0002】 【従来の技術】 切枝やつぎ穂の水管理、栄養管理は、切枝、つぎ穂の切口からの吸収に依存している。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 本発明者は、先に植物体に着生したままの葉を、肥料や農薬を含む水溶液につけて、葉の代謝活性を維持しつつ、長期間にわたり溶液を吸収させる条件やその応用例について検討し、特許を得た。その後、溶液につけた葉からの溶液の吸収の仕組や、その持続性について検討を続けて来た。 【0004】その結果、溶液につけた葉からの溶液吸収の仕組は、主として、通導組織によってつながる他葉の蒸散によって生ずる負圧が原動力であり、気温、湿度、風などにより、吸収量が支配されることがわかった。従って蒸散が盛んな夏期高温期には、各種落葉広葉樹に着生した葉の面積100cm2当り、20〜40日間で、115〜450gもの吸水を認めた。 【0005】ただし、長期間にわたり葉を溶液中につけたままでは、たとえ防腐剤を添加しても、葉からの浸出物のために溶液は次第に腐敗する。それにも関わらず無傷な健全な葉であれば、長期間その溶液中で緑色を保ち、溶液の吸収力を持続することがわかった。他方、老化した葉や傷がある葉を溶液中につけると、損傷部から褐変が拡大し、葉の腐敗の進行とともに離層を形成し脱落した。 【0006】無傷な健全な葉であれば、大量の菌の繁殖にもかかわらず、その溶液中でなぜ腐敗がおこらないのか、葉自体に殺菌力があるのか、又は細胞が菌を濾過して、その侵入を防いでいるのかよくわからない。しかし、葉に損傷があれば、そこから容易に菌が侵入し、腐敗が拡大し、やがて離層を形成し、茎や他葉への菌の侵入を防ぐ仕組があるらしい。要するに葉は菌の侵入に対して二重の防禦機構をもっていることが考えられ、葉から吸収した溶液は無菌状態である。 【0007】切枝や切花の切口は、きわめて大きな損傷部であり、しかも、切口付近には下方へ移行してきた有機栄養が滞留するので、切口を水につけると、これら有機物の溶脱により、切枝、切花は有機養分の損耗はげしく、しかも大量の菌の繁殖をおこす。たとえ、頻繁に水をかえたり、防腐剤を添加したり、水切りを試みても、切枝、切花の長期間の活性の維持は困難であることは周知のとおりである。切口には菌を濾過する細胞膜もなく、葉のように離層を形成し菌の侵入を防ぐ仕組もない。切口に繁殖した菌は蒸散流によって溶液と共に通導組織を通ってすみやかに切枝、切花全体に蔓延し、そのいっそうの消耗から枯死をもたらす。 【0008】切枝の切口は切枝栄養分の溶脱それによる菌の繁殖をもたらし、しかもその侵入を防禦する機構をもたず、蒸散流によって切枝全体に菌の蔓延をもたらす。他方、健全な無傷な葉は菌の侵入を防禦する二重の機構をもっており、しかも無菌の溶液を旺盛に吸収する。従って切枝は切口から溶液を吸わせるよりも、切枝に着生した葉から溶液を吸わせる方が、ずっと長期間にわたり活性を保ちつづけると考えられ、ひいてはその応用として、さし穂、つぎ穂の無菌的な水管理も可能であると考えられ、さし木、つぎ木の簡易化、効率化についても検討を加えた。 【0009】 【課題を解決するための手段】1.切枝の切口を樹脂で防水密封し、切口からの菌の侵入を防ぎ、ひいては切口からの栄養分の損失を防ぎ、切枝についた葉から溶液を吸収させて切枝の活性の延長をはかる。 2.切枝の切口を樹脂で防水密封し、切枝についた葉から発根促進剤を含む水溶液を吸収させるか、又は発根促進剤を切口から吸わせた後に、切口を樹脂で防水密封し、切枝についた葉から溶液を吸わせて、切枝の活性の維持と、その発根、成長をはかる。 3.切口から発根促進剤を吸わせるか、切口に発根促進剤をまぶして、その切口を溶液につけることなく保湿するだけとし、切枝についた葉から溶液を吸収させ、その活性の維持と、発根・成長をはかる。 4.台木へのつぎ穂の活着の円滑化のため、つぎ穂についた葉から溶液を吸わせ、つぎ穂の活性維持と活着の円滑化をはかる。 【0010】盛夏季から秋にかけて、約15葉をつけたカエデの切枝10本を用い、この切枝の切口をシリコン系シーリング剤で密封し、透明な長筒型容器に入れ、切枝の下位葉の1葉がつかるよう注水した。切口の腐敗はおこらず、切枝に着いた葉は約10日間、緑色を失わず活性を持続したが、下位葉ほど老化しているので、この水につけた葉は、やがて腐敗脱落した。脱落葉を除去し、水を更新し、下から第2葉が水につかるまで水を注加した。この葉が枯死脱落すれば、更に上位の葉が水につかるよう、水の更新注加をくり返して、3カ月間、切枝の活性の維持をみた。 他方、切口を密封しないで、切口を水につけると、高温のため3〜4日で切口の腐敗が始まり、下位葉から褐変しはじめ、9日で切枝に着いた葉の半数が枯死し、15日目頃には全葉の枯死をみた。切口の密封により、切枝は約6倍以上の活性期間の延長を示した。高温期には、菌の繁殖が著しいので、葉から水を吸わせる場合と切口から水を吸わせる場合とのちがいは、きわめて端的にあらわれる。 【0011】9月中旬から10月中旬までの間に、約40cm長のキクとバラの切花各5本ずつを用い、その切口を樹脂で密封し、透明な長筒型の容器に、切花の下部葉が水につかるように注水し、葉から吸水させた。他方、切口に何も処理しない切花各5本ずつを同様な容器で切口から吸水させた。30日間、適宜に防腐剤を添加し、2日置きに水を更新した。切口を密封しなかったバラでは、3〜4日で切口に腐敗を認め、水切りを行ったが、約10日で凋萎が始まった。同様に切口を密封しなかったキクは、早期に切口の腐敗を認め、水切りを行ったが、下部葉から黄化褐変し、1カ月後、花蕾はいずれもしっかりしていたが、約半分の葉は枯死した。これに較べ、切口を密封すると、バラ、キクともに、切口の腐敗は認めず、そのかわり、水中につけた下部葉から次第に褐変が始まった。しかし、空中の葉は緑色を保ち、花蕾も生長をつづけ、1カ月後も凋萎を認めなかった。実験期間中はかなり高温が続いたにもかかわらず、切口密封により、少なくとも3倍ていどの活性期間の延長が可能となった。なお、キクでは切口を密封した区で15日目頃からすべての個体に発根を認めた。密封しなかった区では発根は認められなかった。花芽・花蕾をつけた切枝であったが、切口を密封すると発根がおこったのは、切口から有機無機栄養物質の溶脱、損耗がおこらず、切口の腐敗、茎への菌の侵入など生長に対する負の要因が防止されたためと思われる。 【0012】キク、ゼラニウムの何れも花芽、花蕾を除去した切枝各10本を用い、その切口から約1時間、オキシベロン剤200倍水溶液を吸わせ、切口を樹脂で密封し、透明な長円筒型容器に入れ、切枝の下部葉がつかるまで、塩化加里、リン酸アンモン各1%水溶液を注入し、10月上旬から同下旬まで、1週間おきに溶液を更新しながら20日間放置した。キク、ゼラニウムとも、すべての葉は緑色をたもち、キクでは全個体に多数の発根をみたが、ゼラニウムでは発根を認めなかった。 【0013】透明な筒(径20cm、高さ20cm)の中間部に仕切りをつくり、筒を上下に分け、この仕切りに7つの小孔(径7mm)をあけた。この筒の上部から、この孔にゼラニウムの切枝の切口を約3cmほどさしこみ、上部の筒に水を注水しても仕切りの下に水が漏れないように、孔と茎とのすき間をシーリング剤で密閉し、0012と同じ水溶液を上部の筒に、切枝の約1/5がつかるまで注入した。その後、仕切りの下につき出た切口に発根促進剤ルートンをまぶし、筒を深さ2cmの皿に入れ、この皿に水を注入し、なお適宜に水を噴霧して筒の下部を保湿した。9月下旬から10月中旬までの約20日間に、すべての個体に発根を認めた。0012でゼラニウムが発根しなかったのは、薬剤の種類又は濃度が不適切であったのか、酸素不足のためかわからない。ほぼ同時に実験を実施したので、温度の影響ではないと思われる。 【0014】約20cm長のゼラニウムの茎の2/3を切り取り、残った部分を台木とし、切取った枝の花蕾を除去したのち、この切枝をさらに2分し、約5葉をつけた先端部分をつぎ穂とした。割り接ぎ法で台木につぎ穂をさしこみ、接合部を幅広のビニールひもで緊縛し、つぎ穂の1葉を水につけた。このつぎ木個体5個体を実験に用いた。水はなるべく頻繁に更新し、直射光の当たらない明所に、9月中旬から11月中旬までの2カ月間放置した。台木とつぎ穂の間の通導組織の連絡の良否をしらべるために、処理後、20日目から3日間、葉からの吸水を一時停止したが、つぎ穂の葉の凋萎は全個体とも認めなかった。接ぎ穂の幼葉は処理直後から生長をつづけ、1カ月後には3個体に花蕾をつけるに至った。1カ月半で葉からの水の供給を停止し、2カ月後にはビニールひもを除去したが、全個体とも接合部の表皮の癒着を見た。 【0015】 【発明の効果】 切枝、切花の管理において、切口からの溶液を吸わせるよりも、無傷な葉から溶液を吸わせることにより、無菌的な水分・栄養補給が可能となり、よってはるかに長期間、切枝、切花の活性が維持できる。この技術は、さし穂やつぎ穂の無菌的な水管理・栄養管理を可能とし、さし木、つぎ木技術の安定化、効率化に役立つことがわかった。
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| 【出願人】 |
【識別番号】393030006 【氏名又は名称】前田 敏
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| 【出願日】 |
平成10年11月24日(1998.11.24) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2000−157050(P2000−157050A) |
| 【公開日】 |
平成12年6月13日(2000.6.13) |
| 【出願番号】 |
特願平10−375379 |
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