| 【発明の名称】 |
きのこの処理方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】高村 一知
【氏名】星野 浩子
【氏名】豊増 哲郎
【氏名】田中 徳夫
【氏名】中沢 武
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| 【要約】 |
【課題】種菌や微生物に影響を与えることなく、きのこ中に含まれるエルゴステロールをビタミンD2 に効率的に変換させて豊富なビタミンD2 を含有するきのこの処理方法を提供する。
【解決手段】成育中の子実体もしくは収穫後の生きのこに対し、波長が290nm〜350nmの紫外線を照射し、きのこ菌などを死滅させることなく、きのこの中のエルゴステロールをビタミンD2 に変換させて多量のビタミンD2 を含んだきのこを生成するものであって、しいたけの原木栽培や菌床栽培の栽培中のしいたけに対しても適用することができる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 成育中の子実体もしくは収穫後の生きのこに対して波長290nm〜350nmの範囲の紫外線を照射することを特徴とするきのこの処理方法。 【請求項2】 前記きのこは、しいたけであることを特徴とする請求項1に記載のきのこの処理方法。 【請求項3】 前記しいたけは、原木栽培における栽培中のしいたけであることを特徴とする請求項2に記載のきのこの処理方法。 【請求項4】 請求項1に記載のきのこの処理に際し、前記波長290nm〜350nmの範囲の紫外線照射と同時に、太陽光にほゞ等しい蛍光灯による光線を照射するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のきのこの処理方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、きのこの中に含まれているエルゴステロールを効率よくビタミンD2 に変換させ、栄養素としてのビタミンD2 を豊富に含有した高い商品価値を有するきのこを得るためのきのこの処理方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】しいたけ、マイタケおよびエノキタケなどの食用きのこ類は、栽培技術の進歩によって栽培環境の整った室内で栽培することが可能となり、年間を通じて常に消費者の手に入るようになってきているが、室内で栽培されたきのこ類には、ビタミンD2 の前駆物質であるエルゴステロールは存在しているがビタミンD2 自体の含有量はきわめて少ない。これに対して屋外で栽培されるきのこ類は、日光の照射を受けるのである程度のビタミンD2 存在を認めることができる。 【0003】かゝるきのこ類等のエルゴステロール含有食品や微生物に、汎用の紫外線殺菌灯を用いて主波長が254nmの紫外線を照射することによって、きのこ類や微生物中に含まれるエルゴステロールをビタミンD2 に変換することは従来から知られているところである。 【0004】かゝる公知例の一つとして、たとえば、特開平4−183369号公報に記載のきのこ類のビタミンD2 増強方法の実施例においては、生しいたけを乾燥して微粉砕した粒状体に微振動を与えながら、最大ピーク波長が248nmの紫外線殺菌灯による紫外線を照射してビタミンD2 を増強したしいたけの粒状体を得たことを開示している。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】前記特開平4−183369号公報で示されているように、従来の紫外線照射によるシイタケのビタミンD2 の増強方法は、収穫後の乾燥しいたけの粒状のものに汎用の紫外線殺菌灯を用い、前記主波長が254nmに近い最大ピーク波長が248nmの紫外線を照射するものであって、この紫外線の照射によってビタミンD2 を増加させることができる。しかしながら、この程度の波長の紫外線の照射ではビタミンD2 の増強が充分ではなく、収穫後の乾燥シイタケを粉砕して得たしいたけの粒状体に対してかゝる紫外線を照射することは、処理工程を増し、処理時間も多くなって能率面やコスト面で決して有利なものとはいえない。 【0006】この発明の発明者等は、より多くのビタミンD2 を含むしいたけの効率的な生産を意図して培養中や栽培中の生しいたけに対して前記紫外線の照射を行うことを試みることによって、かゝる培養中や栽培中の生しいたけに前記波長の紫外線を照射すると、ビタミンD2 のある程度の増加は認められるものゝ、これによってしいたけ菌や微生物が死滅してその後の成育に支障を及ぼし、この方法が決して適切なものではないという問題に直面したが、引き続く研究試験の結果、この発明のきのこの処理方法を完成するに至った。 【0007】 【課題を解決するための手段】この発明の請求項1のきのこの処理方法は、成育中の子実体もしくは収穫後の生きのこに対して波長290nm〜350nmの範囲の紫外線を照射することを特徴とするものである。 【0008】 【発明の実施の形態】この発明のきのこの処理方法において、処理の対象となるきのこは、好ましくはしいたけ、マイタケ、エノキタケなどの食用菌茸類であって、その対象は成育中の子実体もしくは収穫後の生きのこである。 【0009】かゝるきのこにおいて、より好ましくは生産と需要が最も多いしいたけを対象とすることが好ましく、野外における原木栽培又は室内における原木栽培によるいずれの子実体にも適用することができる。 【0010】きのこに照射する紫外線は、紫外線の波長範囲のうちの遠紫外から近紫外に跨がった波長290nm〜350nmの範囲の紫外線を照射するもので、これは図3に示すように、主波長を310nmとして、比エネルギーが20%以上の紫外線波長に該当するもので、図4に示す主波長が254nmの従来の紫外線殺菌灯に比べて高い波長範囲のものである。 【0011】かゝる290nm〜350nmの範囲に入る紫外線波長できのこに紫外線を照射すると、従来の室内栽培方法や屋外栽培方法で収穫したきのこの中に含まれるビタミンD2 に比べてビタミンD2 が圧倒的に増加し、汎用されている主波長254nmの紫外線を照射したものに比べてもきわめて高い量のビタミンD2 の生成を達成することができる。 【0012】前記の波長範囲の紫外線は、これを栽培中のきのこに照射してもきのこの生育に悪影響はなく、また、きのこの菌糸細胞や胞子の発芽に照射しても大きな影響を与えることがないが、波長が290nm未満の紫外線は、主波長が254nmの紫外線に近くなるためきのこ菌が死滅するおそれがあり、波長が350nmを超えると特殊な紫外線照射装置を使用する必要があるので、コストアップに繋がることになる。 【0013】紫外線の照射時間には特別な制限はないが、好ましくは10分以下の短時間でよく、より好ましくは数分以下でよい。 【0014】この発明の処理方法において、きのこに対して波長290nm〜350nmの範囲の紫外線を照射と同時に、太陽光にほゞ等しいスペクトルの蛍光灯の光線を照射することによって前記ビタミンD2 を多量に含み、かつ屋外栽培で得たきのこに匹敵する安定した色彩のきのこを得ることができる。 【0015】かゝる太陽光にほゞ等しいスペクトルを有する蛍光灯としては、たとえば、ほゞ400〜650nmの範囲の波長を持つ特殊蛍光灯D65(東芝ライテック社製健康線用蛍光ランプ)を使用することができ、この特殊蛍光灯D65の使用により、微生物を死滅させることなく、屋内栽培で色調の薄いきのこを屋外栽培で得られたきのこに匹敵する色調のきのことすることができる。 【0016】 【作用】この発明のきのこの処理方法は、きのこに対して波長290nm〜350nmの範囲の紫外線を照射することによって成育中の子実体や収穫後の生きのこに対してきのこ菌などの微生物を死滅させることなく、ビタミンD2 の前駆物質であるエルゴステロールをビタミンD2 に効率的に変換させて豊富なビタミンD2 を含有するきのこを得ることができる。 【0017】その際、かゝる波長範囲の紫外線の照射と共に、太陽光線に近い波長範囲の蛍光灯の光線を照射することによって屋外栽培品と同等か、これを凌駕する安定した色彩のきのこを得ることができ、前記したビタミンD2 の豊富な含有量と相俟ってきのこの商品価値を高めることができる。 【0018】 【実施例】以下、この発明のきのこの処理方法を、実施例及び比較例に基づいてより具体的に説明する。 【0019】<実施例1>室内の人工気象室で栽培された後記する3種類の種菌を用い、原木栽培によって発生した収穫前の生しいたけに主波長310nmの紫外線を照射し、生成したビタミンD2 (IU/100g乾燥重量)を測定した。これに対し、屋外で栽培されて前記紫外線を照射を行わない無処理の3種類の生しいたけについて生成したビタミンD2 (IU/100g乾燥重量)を測定して対比せしめて〔表1〕の結果を得た。使用した生しいたけの種菌は、Y763号,436号および440号の3種類(いずれも森産業株式会社製)で、これらを対象として前記主波長310nmの紫外線を1回の照射時間を15分間として8時間の間隔で1日3回照射し、この照射を収穫までの4〜7日の間に毎日実施した。使用した主波長310nmの紫外線照射装置は、東芝ライテック社製の健康線用蛍光ランプ(20形、FL20S・E 定格ランプ電力:20W ランプ電流0.360A 紫外線出力;2.9W)である。なお、ビタミンD2 の定量法は、紫外線照射後のきのこを24時間凍結乾燥しし、その約3〜4枚をミキサーで粉末とした後、1gをビタミン定量用とし、衛生試験法(食品中のビタミンD2 定量の公式法)に記載されている二段階定量法によって実施した。 〔以下余白〕 【0020】 【表1】
【0021】この〔表1〕の結果から、310nmの紫外線を照射した生しいたけは、紫外線を照射しない無処理の屋外栽培品に対してビタミンD2 が圧倒的多量に含まれていることが窺える。 【0022】<実施例2〜4及び比較例1〜3>きのことして、いずれも収穫後の菌床栽培によるしいたけ、マッシュルームおよびエノキタケを用い、これらについて波長が310nmと、254nmの紫外線をそれぞれのきのこに対して所定の照射時間で照射し、波長310nmの紫外線照射による実施例2〜4のきのこと、波長254nmの紫外線照射による比較例1〜3のきのこを得た。これらについて紫外線の照射時間とビタミンD2 の生成量(IU/100g乾燥重量)との関係を調べ、その結果を〔表2〕に示す。これらの実施例および比較例において、しいたけおよびマッシュルームは、石突きを切り落とし、傘の裏側を上にした状態で紫外線を照射し、エノキタケは採取したものをそのまゝ使用した。紫外線は照射灯を試料面から高さ65cmに設置し、周囲から光線が入らないように暗幕を張り巡らし、試料に紫外線が均一に照射されているか否かを確認したのち、254nmの紫外線は紫外線強度計(UVR−1)で紫外線強度を測定し、310nmの紫外線強度はスガ試験機社製のpH−11−UT型の装置を用いて測定した。なお、波長310nmの紫外線照射装置は、実施例1で使用した装置と同じ装置を用い、波長254nmの紫外線照射装置としては、主波長253.7nmの東芝ライテック社製の殺菌ランプ(スタータ形、20形GL20 定格ランプ言力:20W ランプ電流0.360A 紫外線出力;4.1W)を使用した。また、ビタミンD2 の定量法は、実施例1の場合に準拠して実施した。 〔以下余白〕 【0023】 【表2】
【0024】この〔表2〕より、波長310nmの紫外線を照射した実施例2〜4の各きのこは、波長254nmの紫外線を照射した比較例1〜3の各きのこに比べて各照射時間において、きわめて多量のビタミンD2 が生成していることが判る。 【0025】<実施例5及び比較例4,5>しいたけ菌糸を寒天平板培地(1%グルコース、1%麦芽エキス、0.4%の酵母エキスおよび1%の寒天からなる)に接種して温度25℃で1週間培養後、波長310nmの紫外線を所定時間照射して実施例5の紫外線照射培地を得ると共に、しいたけ菌糸を接種した他の寒天平板培地には波長254nmの紫外線を所定時間照射して比較例4の紫外線照射培地を得た。これら紫外線照射培地における紫外線照射日数(日)と、菌糸の生育量(mm/day)との関係を紫外線の照射を行わない無処理の比較例5と共に〔図1〕に示す。また、紫外線照射時間(分)に対する発芽した胞子の生存率(%)の関係を前記無処理の比較例5と共に〔図2〕に示す。なお、胞子は寒天平板培地に104個になるように塗布して前記の紫外線を照射した後、発芽した胞子数を測定し、無処理の発芽数に対する割合から胞子の生存率を測定して生存率を求めたもので、紫外線灯からの距離はいずれも30cmとした。 【0026】〔図1〕からは、紫外線波長310nmを照射した実施例5のしいたけ菌糸の照射後の培養日数に対する生育量は、紫外線の照射を行わない無処理の比較例5のそれと比較してほゞ遜色のないものであるに対し、紫外線波長254nmを照射した比較例4のしいたけ菌糸の照射後の培養日数に対する生育量は、これらに比べて劣っていることが判る。〔図2〕における胞子の生存率について、紫外線波長310nmを照射した実施例5は、紫外線波長254nmを照射した比較例4に比べて優れた生存率を示していることが判る。 【0027】<実施例6>しいたけ種菌として前記実施例1と同じY763号、463号および440号の種菌を用い、実施例1に準じて栽培された屋外栽培中の原木に成育中の生しいたけ(以下、屋外栽培品という。)、室内人工気象室で原木栽培されて前記特殊蛍光灯D65灯のみによる照光を行った室内栽培品(以下、D65灯品という。)および主波長310nmの紫外線と、特殊蛍光灯D65灯との併用による照射で得たこの発明による室内栽培品(以下、D65灯+UV品という)について、標準色に対する色差を測定した。これを〔表3〕に示す。 【0028】 【表3】
【0029】前記の測定は、Minolta.CR−200型色彩色差計(ミノルタ製)を使用し、標準色として蛍光灯下で栽培したしいたけを標準対象にして、N.B.S単位(National Bureau Standards)の色差として表したもので、主な感覚的な差に対するN.B.S単位(△E=色差)の関係は〔表4〕のとおりである。 【0030】 【表4】
【0031】前記の〔表3〕から明らかなように、屋外栽培品、D65灯品及びD65灯+UV品は、〔表4〕に照らし合わせていずれも標準色に対しておおむね「appreciable(めだつほどに)」以上の顕著な色差を有し、D65灯品及びD65灯+UV品は、屋外栽培品に対して同等か、もしくは顕著な色差を有するものであることが判る。一方、D65灯+UV品は、実施例1で示したとおり主波長310nmの紫外線の照射によって豊富なビタミンD2 を当然含有していることに加えて、D65灯の照射によって優れた色彩のしいたけを得ていることが判る。 【0032】 【発明の効果】この発明のきのこの処理方法は、きのこに対して波長290nm〜350nmの範囲の紫外線を照射することによって成育中の子実体や収穫後の生きのこに対してきのこ菌のなどの微生物を死滅させることなく、ビタミンD2 の前駆物質であるエルゴステロールをビタミンD2 に効率的に変換して圧倒的に豊富なビタミンD2 を含有するきのことすることができる。 【0033】特に、かゝる波長範囲の紫外線の照射と共に、太陽光に近い波長範囲の蛍光灯の光線を照射することによって屋外栽培品と同等か、これを凌駕する安定した色彩のきのこを得ることができ、前記したビタミンD2 の豊富な含有量と相俟ってきのこの商品価値を高めることができるものである。 【0034】この発明のきのこの処理方法は、前記の紫外線照射と特殊蛍光灯の照射を、きのこの栽培工程中、すなわち、培養中のきのこ菌および栽培中のきのこに対して実施することができるため、処理のための特別な工程や時間を必要とせずに豊富なビタミンD2 を含有した色彩豊かなきのこを能率よく、かつ安価に得ることができるという利点を有するものである。
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| 【出願人】 |
【識別番号】596111690 【氏名又は名称】財団法人日本きのこ研究所 【識別番号】000173739 【氏名又は名称】財団法人食品産業センター
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| 【出願日】 |
平成10年11月26日(1998.11.26) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100069903 【弁理士】 【氏名又は名称】幸田 全弘
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| 【公開番号】 |
特開2000−157045(P2000−157045A) |
| 【公開日】 |
平成12年6月13日(2000.6.13) |
| 【出願番号】 |
特願平10−334869 |
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