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【発明の名称】 紙マルチシート
【発明者】 【氏名】内田 広美

【要約】 【課題】地温上昇効果を有するとともに、生分解性に問題のない紙マルチシートを提供する【解決手段】紙基材の少なくとも一面に設けたラテックスを含む防湿層または防湿層表面に光触媒性酸化チタンを含有させる。紙基材中にフミン酸またはフミン酸塩を有し、さらに伸張性付与加工を施して紙の長手方向の伸びを大きくする。

【解決手段】紙基材の少なくとも一面に設けたラテックスを含む防湿層または防湿層表面に光触媒性酸化チタンを含有させる。紙基材中にフミン酸またはフミン酸塩を有し、さらに伸張性付与加工を施して紙の長手方向の伸びを大きくする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】紙基材の少なくとも一面にラテックスを含む防湿層を設けた紙マルチシートにおいて、該防湿層または該防湿層表面に光触媒性酸化チタンを存在せしめることを特徴とする紙マルチシート。
【請求項2】前記紙基材中に、フミン酸またはフミン酸塩を紙基材の絶乾重量当たり0.05〜15重量%含有する請求項1に記載の紙マルチシート。
【請求項3】前記紙基材が、JIS P 8132に基づく抄紙方向の破断伸びが3〜20%である請求項1または2に記載の紙マルチシート。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明に属する技術分野】本発明は農業用紙マルチシートに関し、さらに詳しくは、従来の防湿層をもつ紙マルチシートには期待できなかった地温の上昇効果を有しつつ、生分解性を有する紙マルチシートを提供するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から野菜園芸を主とする農業において、目的とする植物を育成する際に、雑草の発生防止、保温、土壌水分の保持などのためのマルチシートとして、ポリオレフィン系のプラスチックフィルムが使用されている。しかし、これらのフィルムマルチシートはほとんど生分解性がないため、収穫後に使用済みのフィルム回収、処分が必要となり、この回収作業が農業従事者の負担となっている。
【0003】一方、紙が土中で腐植、分解する特性を活かした紙マルチシートとして、特開昭55−92625号公報や特開昭55−111734号公報には、伸長紙にパラフィンワックスの水性懸濁液を含浸させたものが開示されている。しかし、紙マルチシートは通気性及び透湿性が高いため、保温性に関してはフィルムマルチシートに劣るのが現状である。そこで、紙マルチシートに保温性を付与する方法として、特開昭60−250949号公報には、ポリ塩化ビニリデンとカーボンブラックでクレープ紙の両面を被覆したものが開示され、さらに特開平7−115854号公報には、ゼオライト微粒子とパルプを混合抄紙した紙マルチシートについて開示されている。このような紙マルチシートは塗工量が多く高価である上、地温上昇効果はフィルムマルチシートには及ばなかった。また、特開平8−205693号公報には、紙基材の片面にラテックスとワックスからなる防湿層をもうけた紙マルチシートが開示されている。さらに特開平10−84789号公報には顔料とラテックスからなる防湿層を有する紙マルチシートについて開示されている。これらの紙マルチシートは、地温上昇効果はフィルムマルチシートと同等の性能を有しているが、使用後に土中に鋤き込んだ際、その防湿剤に含まれる合成樹脂ラテックスの生分解性が低いため、残留することが懸念された。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、地温上昇効果を有するとともに、防湿層に生分解性をもたせた紙マルチシートを提供することである。さらに、本発明は、展張時の作業性に優れ、耐候性を有する紙マルチシートを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、紙マルチシートの少なくとも一面に設けられた防湿層に生分解性を付与する方法を鋭意検討した結果、防湿層に含まれる合成樹脂ラテックスを分解するために、光触媒性酸化チタンを混入または接触させることで生分解性を向上できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、酸化チタンが触媒となり、水からのフリーラジカル生成により周辺の合成樹脂が酸化分解され消失する機構を利用して、防湿剤中の合成樹脂の生分解性を高め、地温上昇効果を有し且つ生分解性を有する紙マルチシートを発明した。
【0006】本発明に係る紙マルチシートは、紙基材の少なくとも一面にラテックスを含む防湿層を設け、その防湿層または防湿層表面に光触媒性酸化チタンを存在せしめたことを特徴とするものである。また、本発明の紙マルチシートは、その紙基材中にフミン酸またはフミン酸塩を紙基材の絶乾重量当たり0.05〜15重量%含有することが好ましい。さらに、本発明の紙マルチシートは、その紙基材がJIS P 8132に基づく抄紙方向の破断伸びが3〜20%であることが好ましい【0007】
【発明の実施の形態】本発明の防湿層で使用する光触媒性酸化チタンは、白色顔料としては広く用いられている天然顔料である。結晶形の違いから主にルチル型とアナターゼ型があり、後者の方が光化学活性が高い。酸化チタンは、紫外線照射によって電子が励起し自由電子と正孔を生じる。その正孔が酸化チタン表面の吸着水に捕捉されてフリーラジカルとなり、強力な酸化剤として樹脂成分を分解する。また同時に自由電子により4価から3価に還元されたチタニウム原子が空気中の酸素分子を吸着し、その吸着酸素と水素原子が反応してフリーラジカルを生成し、樹脂成分を分解する。このように、酸化チタンは触媒として作用し樹脂を分解する。
【0008】酸化チタンの配合量は、合成樹脂に対して0.05〜5.0%、好ましくは0.5〜3.0%がよい。0.05%未満だと合成樹脂の分解を促進する効果が小さく、5.0%以上だと塗工層内部で粒子が重なり合うため効果が頭打ちとなり、経済性が悪い。防湿層上に酸化チタンの水分散液を塗工する場合、防湿層表面に均一に塗布することが重要であるから、濡れを良くするために濡れ剤などの各種助剤を添加しても良い。
【0009】本発明で防湿層に使用される合成樹脂ラテックスは特に限定されないが、例えばスチレン−ブタジェン系ラテックス、メチルメタクリレート−ブタジェン系ラテックス、アクリロニトリル−ブタジェン系ラテックス、ポリエチレン系ラテックス等から適宜選択して使用する。もちろんこれらの防湿効果を向上させるために、ワックスや架橋剤等を併用することも可能である。これらを混合して防湿剤とし、紙基材に塗工する。
【0010】防湿剤の塗工量は、塗工後の透湿度(JIS Z 0208(カップ法)B法による)が100g/m2・24h以下になるように塗工量を決定することが好ましい。このレベルの透湿度を持つ紙マルチシートであれば、土壌水分の蒸発を少なく抑えることができ、保温効果が高い。
【0011】防湿剤の塗工方法は、エアナイフコーター、バーコーター、ロールコーター、ブレードコーター等から任意に選択して塗工することができるが、塗工カラー粕によるトラブルが比較的少ないエアナイフコーターが好ましい。
【0012】本発明の紙基材は、木材パルプや古紙パルプから得られるセルロースパルプを主成分として湿式抄紙機で製造して得られる。木材パルプと古紙パルプの原料配合比は適宜選択して製造される。
【0013】紙基材の坪量は特に限定されないが、30〜200g/m2の範囲で適宜選択する。30g/m2未満では畑に展張後、一定期間強度を維持することが難しい。200g/m2以上だと、シートの重量が大きくなりすぎ、また紙厚も厚くなるため作業性が悪くなる。
【0014】坪量が低い紙基材には、紙マルチシートの強度を向上させるため、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)を使用することが好適である。古紙パルプは段ボール古紙、新聞古紙等いずれでも良い。また、古紙パルプは古紙再利用促進のために配合するが、これは紙マルチシートのコストダウンにもつながり有益である。
【0015】本発明では、紙基材にフミン酸またはフミン酸塩を含有することができる。フミン酸およびフミン酸塩は紫外線を吸収し、熱や温度に対して安定であり、耐水性を有する特徴があるため、紙基材へ内添、含浸、塗工することにより耐候性を付与することができる。フミン酸およびフミン酸塩の含有量はパルプに対して0.05〜15重量%、好ましくは1〜5重量%である。含有量が0.05重量%未満ではフミン酸およびフミン酸塩を含有させた効果が得られず、含有量が15重量%を越えても効果は頭打ちとなる。内添方法は、原料スラリーにフミン酸またはフミン酸塩を添加して抄紙すればよい。また、塗工方法は、フミン酸またはフミン酸塩の溶液を直接紙に塗工すればよい。この場合、様々な塗工方法が適用でき、なおかつバインダー類を添加することなく紙に定着できる。フミン酸の含有方法として、内添、含浸、塗工いずれの方法でも耐候性効果に変わりはない。ただし、塗工の場合は、防湿層を設ける前に原紙に塗布することが好ましい。
【0016】マルチシートの展張はハウス栽培では手張りで行う場合が多く、特に伸張性は要求されない。一方、屋外栽培では機械展張が多くマルチシートの伸張性が重要となってくる。紙マルチシートに伸張性を与える手段としては、伸張装置による加工、クレープ加工などいずれでも良い。縦方向の破断伸びは、3〜20%の範囲で調整される。破断伸びが3%未満では機械展張の際に破れやすく、破断伸びが20%を越えても取り扱い性に差がなくなる。
【0017】本発明によって得られる紙マルチシートは、土壌水分の蒸発を抑えることで土の放熱を防ぎ、地温を上昇させることができる。また、防湿層に生分解性を付与することにより、さらに、マルチシート使用後の生分解性の問題も解決できた。
【0018】
【実施例】本発明をよりわかりやすくするために以下に実施例を記述するが、この実施例は本発明を制限するものではない。なお、実施例中の%は破断伸び以外、固形分重量%を示す。
【0019】実施例1下記の配合のスラリーを調成後、長網抄紙機によって抄紙し、坪量55g/m2、破断伸び1.9%の紙基材を得た。
(紙料1)
針葉樹未晒クラフトパルプ(550ml.csf) 60% 古紙パルプ 40% 内添サイズ剤(商品名 サイズパインE、荒川化学工業(株)社製)
対パルプ0.6% フミン酸ナトリウム(商品名CH−02、テルナイト(株)社製)
対パルプ4.0% 硫酸バンド(pH4.5に調整) 対パルプ5.0%次に、下記の配合で防湿剤を調成した。
(防湿剤)
酸化チタン 1.0%(商品名DN−1−0、比表面積290m2/g、古河機械金属(株)社製)
SBRラテックス 52% (商品名OX1060、Tg8℃、固形分50%、日本ゼオン社製)
ワックスエマルジョン 48%(商品名OKW−40、固形分40%、荒川化学社製)
紙料1で得られた紙基材に、上記防湿剤をエアナイフコーターで15g/m2塗工したのち、110℃で乾燥させ、紙マルチシートを得た。紙マルチシートの透湿度は25g/m2・24hであった(JIS Z 0208(カップ法)B法による)。
【0020】実施例2酸化チタンの添加量を0.5%にした以外、実施例1と同様にして紙マルチシートを作成した。得られた紙マルチシートの透湿度は20g/m2・24hであった。
【0021】実施例3酸化チタンの添加量を3.0%にした以外、実施例1と同様にして紙マルチシートを作成した。得られた紙マルチシートの透湿度は27g/m2・24hであった。
【0022】実施例4原紙の抄造時に伸張性付与加工を施した以外、実施例1と同様にして紙マルチシートを作成した。得られた紙マルチシートの抄紙方向の破断伸びは7.3%、透湿度は26g/m2・24hであった。
【0023】比較例1実施例1の防湿剤塗工前の紙マルチシート原紙。この透湿度は2000g/m2・24h以上であった。
【0024】比較例2防湿層に酸化チタンを添加しなかった以外、実施例1と同様にして紙マルチシートを作成した。得られた紙マルチシートの透湿度は18g/m2・24hであった。
【0025】比較例3厚さ30μmの黒フィルムマルチを使用した。
【0026】<紙マルチシートの保温性確認試験>実施例1〜4、比較例1、3で得られたサンプルを、防湿層を下向きにして、幅45cm、高さ25cmの平高畝に手張りした。その際、畝の土中5cmのところに熱電対を差し込み、15分毎に地温を測定した。5月中旬に測定した最高地温と最低地温を表1に示す。表1から、本発明の紙マルチシートは黒フィルムマルチ並の保温性能があることがわかる。
【0027】
【表1】

【0028】<紙マルチシートの分解性試験・1>実施例1〜4、比較例1、2で得られたサンプルについて、90日間屋外に暴露して引張強度を測定し、劣化度を観察した。その結果を図1のグラフに示す。図1より、酸化チタンが添加された防湿層は長期にわたって強度低下がおこることがわかる。
【0029】<紙マルチシートの分解性試験・2>実施例1、比較例2で得られたサンプルについて、5ヶ月間屋外に暴露し、塗工層の重量変化を1ヶ月毎に測定した。その結果を図2に示す。図2より、酸化チタンを添加した方が塗工層の分解が長期に渡って進むことがわかる。また、実施例1のサンプル表面を顕微鏡にて観察したところ、暴露期間が長くなるに連れその表面がでこぼこになり、酸化チタン粒子が多く現れてくることから、ラテックス部分が分解していることが明らかであった。
【0030】
【発明の効果】本発明により、地温上昇効果を有するとともに防湿層に生分解を性付与した紙マルチシートを提供することが出来、さらに展張時の作業性に優れ、耐候性を有するため実用上非常に有効である。
【0031】
【出願人】 【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子製紙株式会社
【出願日】 平成10年10月16日(1998.10.16)
【代理人】
【公開番号】 特開2000−116250(P2000−116250A)
【公開日】 平成12年4月25日(2000.4.25)
【出願番号】 特願平10−295314