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【発明の名称】 農業用マルチシート
【発明者】 【氏名】川崎 秀一

【氏名】渡辺 誠幸

【氏名】川崎 裕司

【氏名】八代 洵

【要約】 【課題】透水性及び耐生分解性に優れた農業用マルチシートを提供する。

【解決手段】機械パルプを30重量%以上70重量%以下、化学パルプを30重量%以上60重量%以下含有する木材パルプを主成分とし、浸透助剤が対パルプ当たり0.05重量%以上10重量%以下含有され、水の透水性が30ml/m・分以上500ml/m・分以下であることを特徴とする農業用マルチシート。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 機械パルプを30重量%以上70重量%以下、化学パルプを30重量%以上60重量%以下含有する木材パルプを主成分とし、浸透助剤が対パルプ当たり0.05重量%以上10重量%以下含有され、坪量が50g/m以上120g/m以下で、かつ水の透水性が30ml/m・分以上500ml/m・分以下であることを特徴とする農業用マルチシート。
【請求項2】 前記浸透助剤がノニオン系界面活性剤であることを特徴とする請求項1に記載の農業用マルチシート。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、農作物及び花卉の品質及び収穫量を向上させるために使用される農業用マルチシートに関するものであり、さらに詳しくは従来のプラスチックフィルム製農業用マルチシートでは困難であった透水性に優れた農業用マルチシートに関する。
【0002】
【従来の技術】農業用マルチシートは農作物あるいは花卉の周りの地面を被覆する資材であり、地温の調節、雑草発生の抑制等の効果により農作物あるいは花卉品質、収量の向上を目的として使用されている。従来、この農業用マルチシートはポリオレフィン系のプラスチックフィルムが使用されてきた。しかしながら、これらのプラスチックフィルム製マルチシートは殆ど生分解性がないため、使用後の回収・焼却処理が必要である。この回収・焼却処理にあたっては特殊な装置や多大な労力と時間が必要である上、環境汚染の点からも問題となっている。
【0003】また、プラスチックフィルム製マルチシートは透水性が無く、雨水等が溜まる欠点があり、水を抜くために穴を開けるなど繁雑な作業が伴う。特にカボチャ、スイカ、メロン等の蔓先植物の果実の下に敷設する様な下敷きマルチの分野においては、シート上に水が溜まると腐敗の原因となるので、透水性が必要である。
【0004】一方、セルロース繊維が地中で腐食分解する特性を活かした農業用マルチシートに関する技術が開示されている。セルロース繊維を主体とした単なる紙を畑に敷設した場合、分解速度が早く、農業用マルチシートとしての用を為さない。特開昭55-92625号公報、特開昭55-111734号公報には、紙基材にパラフィンワックスを含浸する方法が開示されているが、この方法では、パルプ繊維の分解速度は抑えられるが、シートの透水性を得ることは期待できない。
【0005】特開平8-214707号公報、特開平10-84789号公報には、ラテックスとワックスを紙基材に塗工することにより生分解性を制御し、なおかつ透湿性を抑える方法が開示されているが、本発明が目的としている透水性を持つ農業用マルチシートとは逆の特徴である。
【0006】特開平8-205692号公報には紙基材にフミン酸またはフミン酸塩を含浸することにより生分解性を制御する方法が開示されているが、フミン酸を含浸することによりシートの耐水性は高くなり、透水性は得難くなる。
【0007】紙基材の透水性を改善する技術としては、パルプ中の短繊維(0.2mm以下のパルプ繊維)を除去する方法が特開昭58-180086号公報、特開昭62-184200号公報、特開平7-26497号公報に開示されているが、工程が複雑になる上に、流失原料が多くなる点から普及していない。また、これらの技術は積層板原紙に関するものであり生分解性の制御については触れられていなかった。
【0008】以上に示したように、従来の技術では生分解性を制御し、なおかつ透水性が改善された紙基材の農業用マルチシートに関する技術は開示されていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、生分解性を制御し、かつ透水性が改善され、カボチャ、スイカ、メロン等の蔓先植物に好適な農業用マルチシートを提供することを課題とした。より具体的には、生分解性は、気温25℃〜30℃の日本の一般的な畑地に敷設した場合に90日間程度は分解されないで、その形態を保持し、土壌中に鋤込んだ後は30日程度で生分解されることを目標とした。また、透水性は、1時間当たりの降水量が約2mmの降雨に対応する30ml/m・分以上であることを目標とした。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、紙基材を用いた従来の農業用マルチシートが透水性を十分に有していない原因を鋭意研究した結果、セルロースの生分解性を抑えるために耐水処理を施した結果、透水性がほとんど得られないことが明らかになった。そこで、本発明者らは、耐水処理を伴わない生分解性の制御方法として、機械パルプの配合量を規定することにより透水性を損なわずに、地中で90日程度形態を保持出来ることを見出した。
【0011】さらに本発明者らは、1時間当たり約2mmの降水量の降雨に対応する30ml/m・分以上の透水性を農業用マルチシートに付与することで、シート上の水の滞留が無くなり、野菜等の品質低下を防ぐことを見出し、本発明を完成させた。この透水性とは、農業用マルチシートを0.1mの円形の農業用マルチシートを平折り濾紙状に成形して漏斗に装着し、50mlの水が透過する時間を測定し、1分間に1.0mの農業用マルチシートが透水できる水の量に換算して求めるものである。また、透水性は高い方が良好と考えられるが、本発明においては上限として500ml/m・分であれば十分であると考えた。この透水性の値は1時間当たりの降水量が30mmの降雨に対応できることを示し、日本に於いて1日当たりの降水量が300mmを超えることは稀なことから充分な性能と考えられる。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明に使用される機械パルプは、砕木パルプ(GP)、リファイナーグラインドパルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)である。また、これらのパルプからなる故紙から製造したパルプ(DIP等)を用いることも可能である。化学パルプとしては、未晒しクラフトパルプ(UKP)、晒しクラフトパルプ(BKP)、サルファイトパルプ(SP)が用いられる。
【0013】機械パルプは、化学パルプに比べリグニンが多く残留し、セルロース繊維を被覆している。リグニンを分解することの出来る微生物は、セルロースを分解することの出来る微生物に比べて極めて少ない。その結果として、機械パルプは化学パルプに比べて耐生分解性が高いと考えられる。
【0014】本発明の農業用マルチシートにおいて、機械パルプの配合率は30〜70重量%にする必要がある。機械パルプの配合率が30重量%未満の場合、25〜30℃の環境下で日本の畑地に埋設すると、90日以内に生分解してしまいシートの形状を保持することが出来ない。また、機械パルプを増配することによって耐生分解性は向上するが、70重量%を超過して配合した場合に、次のような問題が生じるため70重量%を限度に配合した。機械パルプのパルプ繊維が細く緻密なことにより透水性に悪影響を及ぼす。引張り強度が著しく低下し、圃場に於ける作業性が低下する。また、機械パルプは濾水性が、一般に化学パルプより劣るため、70重量%を超過して配合すると、抄紙適性が悪く生産性が低下する。
【0015】本発明の農業用マルチシートは、坪量が50g/m以上120g/m以下である必要がある。本発明の目標とする透水性の確保という面からは、低坪量の方が有利であるが、坪量50g/m未満ではマルチャーで敷設する際に破断等の障害を引き起こす。また、敷設できたとしても、土壌中の微生物による生分解によって、一定期間の強度の維持が困難となる。坪量120g/mを超過した場合、耐生分解性という面では有利であるが、巻き取りの重量が重くなり、圃場での作業性が著しく低下する。
【0016】本発明の農業用マルチシートにおいて、水の透水性を30ml/m・分以上500ml/m・分以下にする必要がある。透水性を30ml/m・分以上500ml/m・分以下にするするためには、サイズ剤、耐水化剤等の透水性を低下させる抄紙薬品の添加は好ましくない。しかし、圃場に於ける作業性を考えると、5kgf/15mm以上の引張り強度及び1kgf/15mm以上の湿潤引張り強度が必要である。そのため、メラミン・ホルムアルデヒド、ポリアミド・エピクロルヒドリン、ポリエチレンイミン、グリオキザール、ジアルデヒドデンプン等の紙力増強剤の添加が必要である。
【0017】これら紙力増強剤の添加によって透水性の低下が引き起こされるが、ノニオン系界面活性剤に代表される浸透助剤の添加によって坪量が50g/m以上120g/m以下で、かつ水の透水性が30ml/m・分以上500ml/m・分以下にすることが可能となる。浸透助剤の添加方法としては、サイズプレスコーター、ゲートロールコーター等で含浸、塗布する方法でよい。
【0018】本発明で言う浸透助剤とは、前述した水の透水性を向上させる機能を有する薬品であり、いわゆる高吸水性樹脂とは異なるものである。浸透助剤としては、ポリエチレングリコール、グリセリン、ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール等のノニオン系界面活性剤が好ましい。浸透助剤の添加量としては、対紙基材0.05重量%以上10.0重量%以下が望ましい。0.05重量%未満では透水性の改善は困難であり、10.0重量%以上では紙基材の繊維間結合を破壊して紙力の低下を引き起こし、農業用マルチシートとしての必要な強度が得られない。
【0019】本発明の農業用マルチシートに、雑草の成長の抑制や地温の保温の目的で有色顔料、あるいは染料を加えても良い。また、土壌中の微生物による分解を妨げない範囲で、填料を添加しても良い。填料としてはホワイトカーボン、シリカ、クレー、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン、プラスチックピグメント等が挙げられる。
【0020】
【実施例】次ぎに、本発明を実施例にて説明するが、本発明は実施例によって制限を受けるものでない。実施例及び比較例の農業用マルチシートについて、以下の方法にて透水性、耐生分解性について測定した。
・透水性の測定方法 : 0.1mの円形の農業用マルチシートを平折り濾紙状に成形し、漏斗に装着し50mlの水が透過する時間を測定することにより、1mの農業用マルチシートが1分間に透水できる水の量(ml/m・分)に換算した。
・耐生分解性の評価方法 : 紙基材の土壌中での分解性は、埋設する土壌によって大きく異なり客観的評価が難しい。そこで本発明では、日本の代表的な農業用土壌である黒ボク土(サカタの種(株)製)に、分解を促進するために腐葉土を10%配合した試験土壌を用いた。25℃の温室において幅10cm、長さ20cmの試験片を深さ10cmに土壌中に埋設し、土が乾かないように水を散布して90日間保持した後に取り出して形状を観察した。シートの形状が保持されていた場合に○、分解によって形状が確認できなかった場合に×の評価を与えた。
【0021】[実施例1]サーモメカニカルパルプ(CSF200ml)35重量%、針葉樹未晒クラフトパルプ(CSF500ml)65重量%のパルプ配合のスラリーに、湿潤紙力増強剤(商品名:SZ665、住友化学(株)製)を対パルプ当たり0.2重量%添加し、硫酸バンドで紙料pHを4.5に調整後、長網抄紙機で抄紙して坪量80g/m、密度0.5g/cmの農業用マルチシート原紙を得た。次にサイズプレスコーターでポリエチレングリコール(商品名:PEG600、三洋化成(株)製)を対パルプ当たり1.0重量%付着させて、農業用マルチシートを製造し、透水性、耐生分解性について測定し、結果を表1に示した。
【0022】[実施例2]パルプ配合をサーモメカニカルパルプ50重量%、針葉樹未晒クラフトパルプ50重量%に変えた以外は実施例1と同様に、坪量80g/m、密度0.5g/cmの農業用マルチシート原紙を得た。次にサイズプレスコーターで実施例1で使用したポリエチレングリコールを対パルプ当たり5.0重量%付着させて、農業用マルチシートを製造し、透水性、耐生分解性について測定し、結果を表1に示した。
【0023】[実施例3]パルプ配合をサーモメカニカルパルプ65重量%、針葉樹未晒クラフトパルプ35重量%に変えた以外は実施例1と同様に、坪量80g/m、密度0.5g/cmの農業用マルチシート原紙を得た。次にサイズプレスコーターで実施例1で使用したポリエチレングリコールを対パルプ当たり5.0重量%付着させて、農業用マルチシートを製造し、透水性、耐生分解性について測定し、結果を表1に示した。
【0024】[比較例1]実施例1と同様の方法で農業用マルチシート原紙を製造し、ポリエチレングリコールを付着させないで、坪量80g/m、密度0.5g/cmの農業用マルチシートを製造し、透水性、耐生分解性について測定し、結果を表1に示した。
【0025】[比較例2]実施例3と同様の方法で農業用マルチシート原紙を製造し、ポリエチレングリコールを付着させないで、坪量80g/m、密度0.5g/cmの農業用マルチシートを製造し、透水性、耐生分解性について測定し、結果を表1に示した。
【0026】[比較例3]パルプ配合をサーモメカニカルパルプ90重量%、針葉樹未晒クラフトパルプ10重量%に変えた以外は実施例1と同様の方法で、坪量80g/m、密度0.5g/cmの農業用マルチシート原紙を得た。次にサイズプレスコーターで実施例1で使用したポリエチレングリコールを対パルプ当たり5.0重量%付着させて、農業用マルチシートを製造し、透水性、耐生分解性について測定し、結果を表1に示した。
【0027】[比較例4]比較例3と同様の方法で農業用マルチシート原紙を製造し、ポリエチレングリコールを付着させないで、坪量80g/m、密度0.5g/cmの農業用マルチシートを製造し、透水性、耐生分解性について測定し、結果を表1に示した。
【0028】
【表1】

【0029】
【効果】表1に示した結果から明らかなように、実施例1〜3で示される本発明の農業用マルチシートは透水量が多く、土壌中の耐生分解性にも優れており、特に野菜の下敷き用として優れた効果を有する農業用マルチシートを得ることができた。
【出願人】 【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
【出願日】 平成10年9月30日(1998.9.30)
【代理人】 【識別番号】100074572
【弁理士】
【氏名又は名称】河澄 和夫
【公開番号】 特開2000−102329(P2000−102329A)
【公開日】 平成12年4月11日(2000.4.11)
【出願番号】 特願平10−278955