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【発明の名称】 農業用マルチフィルム
【発明者】 【氏名】角田 邦彦

【要約】 【課題】同じく光合成により活発化する藻類と雑草とのうち、一方の藻類の繁殖を促進させながら他方の雑草の生育を抑制するという相反する問題点を解決するもので、フィルム内面を親水化する藻類の繁殖効果が大きく、尚且つフィルム下の雑草の生育を抑制することのできる、着色された農業用マルチフィルムを提供すること。

【解決手段】熱可塑性樹脂に湿式法酸化第二鉄1〜10重量%を配合したことを特徴とする農業用マルチフィルムであり、湿式法酸化第二鉄が、平均粒径0.14μm〜0.21μmの球状形であり、pHが5.0〜7.5、酸化第二鉄の純度が95.0%以上であるα−Fe2O3であることが好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】熱可塑性樹脂に湿式法酸化第二鉄1〜10重量%を配合したことを特徴とする農業用マルチフィルム。
【請求項2】湿式法酸化第二鉄が、平均粒径0.14μm〜0.21μmの球状形であり、pHが5.0〜7.5、酸化第二鉄の純度が95.0%以上であるα−Fe2O3であることを特徴とする請求項1記載の農業用マルチフィルム。
【請求項3】熱可塑性樹脂に湿式法酸化第二鉄1〜10重量%を配合し、分光透過特性が550nmでは20〜40%であり、550nmから450nmの間は直線的に上昇し、450nm/550nm比が1.01〜1.05であることを特徴とする農業用マルチフィルム。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、秋口から春先にかけて地面を覆うことで雑草の生育抑制と地温の上昇による農作物の生育促進とを図る農業用マルチフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、秋口から春先にかけては、雑草の生育を抑制すると共に地表を保温して地温を上昇させることにより農作物の生育の促進を図る目的で、地面を透明或いは黒色のマルチフィルムで覆って農作物を栽培することが一般に行われている。
【0003】ところが、透明タイプのマルチフィルムは地温上昇に必要な太陽光の透過率が良いため、地温が上昇し易く農作物の生育促進には有利であるものの、太陽光の透過は同時に雑草の生育をも促進させてしまい、フィルム下の雑草が繁茂し易いという問題があり、一方、黒色タイプのマルチフィルムは、太陽光を遮蔽するためフィルム下の雑草の繁茂は防止できるものの、地温を上昇させる効果が十分でなく、農作物の生育促進が満足に図れないという問題があった。
【0004】このため、地温の上昇機能と雑草の繁茂防止機能を兼ね備えた、緑色顔料を配色した緑色タイプのマルチフィルムが提案されている(特公昭51−13688号公報)。この緑色タイプのマルチフィルムは、太陽光の可視光のうちで光合成に強く関係する青色と赤色の波長の光を吸収するため、フィルム下の雑草の光合成を阻害してその繁茂を防止すると共に、地温を上昇させるに必要な近赤外部の波長の光を透過させることにより地温の上昇を図るようにしたものである。
【0005】しかしながら、現実には、かかる緑色タイプを地面にマルチングして使用すると地温上昇の点で次のような問題があった。
【0006】すなわち、地面にフィルムをマルチングすると、フィルム内面には地表面から蒸発してきた水蒸気が付着する。黒色タイプのマルチフィルムでは、フィルム自体が太陽光を吸収することによって昇温しているため、フィルム内面に付着した水蒸気は蒸発してしまい結露するような事態は生じないが、前記透明タイプのマルチフィルムや緑色タイプのマルチフィルムでは、フィルム内面に地表面から蒸発してきた水蒸気が結露し、これが水滴となって付着してしまう。このフィルム内面に結露した水滴は、太陽光を乱反射させ、地表面に入射することにより地温を上昇さすべき太陽光のフィルムの透過量を減少させ、地温上昇を妨げる結果となる。ところが、透明タイプのマルチフィルムでは、マルチング後2〜3週間でフィルム内面に付着していた結露水が水膜化して水滴が消え、太陽光の乱反射がなくなり、透明タイプ本来の地温上昇効果が完全に発揮されるようになるのに対し、緑色タイプのマルチフィルムでは、フィルム内面に付着している水滴はいつまでも消えず、緑色タイプ本来の地温の上昇効果が十分に達成できない。
【0007】本発明者はこの透明タイプのマルチフィルム内面の水滴の水膜化の原因を鋭意検討した結果、透明タイプのマルチフィルムではフィルム内面が親水化されていることを突き止めた。この点について更に検討したところ、透明タイプのマルチフィルムの内面には緑藻、藍藻等の藻類が繁殖しており、その藻類を中心にして各種共生微生物や代謝物質がフィルム内面を親水化しているのに対し、緑色タイプのマルチフィルムの内面にはこれら藻類の繁殖がほとんど見られないために、フィルム内面の親水化が生じないことが判明した。
【0008】上記透明タイプのマルチフィルム内面を親水化している緑藻、藍藻等の藻類は、空気中や畑地に常在しており、それが水に浸った状態に置かれると光合成により繁殖する。この光合成は、前述の通り太陽光の可視光のうちで青色と赤色の波長の光により活発化するが、緑色タイプのマルチフィルムでは、フィルム下の雑草の生育を阻害するために、この光合成に強く関係する青色と赤色の波長の光を吸収するようにしているため、フィルムを透過する光にはこれら青色と赤色の波長の光が少なく、この結果、フィルム内面に付着する結露水中での藻類の光合成を抑制してしまい、それら藻類の繁殖をも阻害してしまう。
【0009】さらに、緑色タイプのマルチフイルムにおいては、用いる緑色顔料(主にフタロシアニン系)がベース樹脂の耐候劣化を促進し、フィルム耐候性を低下させるという欠点がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の通り、同じく光合成により活発化する藻類と雑草とのうち、一方の藻類の繁殖を促進させながら他方の雑草の生育を抑制するという相反する問題点を解決するもので、フィルム内面を親水化する藻類の繁殖効果が大きく、尚且つフィルム下の雑草の生育を抑制することのできる、着色された農業用マルチフィルムを提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者は、農業用マルチフィルムに含有させる着色顔料として、フィルム内面での藻類の繁殖効果が大きく、尚且つフィルム下の雑草の生育を抑制することのできる条件を満足する着色顔料を見出し、本発明に至ったものであり、すなわち、請求項1に記載の発明は、熱可塑性樹脂に湿式法酸化第二鉄1〜10重量%を配合したことを特徴とする農業用マルチフィルムである。
【0012】請求項2に記載の発明は、湿式法酸化第二鉄が、平均粒径0.14μm〜0.21μmの球状形であり、pHが5.0〜7.5、酸化第二鉄の純度が95.0%以上であるα−Fe2O3であることを特徴とする請求項1記載の農業用マルチフィルムである。
【0013】請求項3に記載の発明は、熱可塑性樹脂に湿式法酸化第二鉄1〜10重量%を配合し、分光透過特性が550nmでは20〜40%であり、550nmから450nmの間は直線的に上昇し、450nm/550nm比が1.01〜1.05であることを特徴とする農業用マルチフィルムである。
【0014】本発明に係る農業用マルチフィルムは、フィルム内面を親水化する藻類の繁殖効果が大きく、これによりフィルム内面に付着して太陽光を乱反射させる原因となる水滴が水膜化して短期間に消え、太陽光がフィルムを乱反射することなく透過することにより地温上昇効果が早期に発揮されるようになる。その一方でフィルム下の雑草の生育を抑制してその繁茂を防止することができる。
【0015】また、本発明に係る農業用マルチフィルムは、顔料の耐光性に優れると共に、フィルムの耐候性を悪化させることもほとんどなく、安価で経済性も良い。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明において使用される熱可塑性樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、塩化ビニルとその誘導体等の熱可塑性樹脂が挙げられる。特に、直鎖状低密度ポリエチレン(以下、L−LDPE)が性能、コストの面で好ましい。
【0017】この熱可塑性樹脂に含有する着色顔料は、湿式法酸化第二鉄であり、好ましくは平均粒径0.14μm〜0.21μmの球状形であり、pHが5.0〜7.5、酸化第二鉄の純度が95.0%以上であるα−Fe2O3である。
【0018】本発明において、平均粒径とは、電子顕微鏡写真からの算術的平均値である。平均粒径が0.14μm未満では酸化第二鉄の分散性が悪くなり着色力が低下し、雑草の生育抑制効果が著しく低下する。また0.21μmを越えると顔料の分散性は良好であるが、着色力が低下し、雑草の生育抑制効果が低下する。
【0019】また本発明において、酸化第二鉄の純度はJISK 5109-1972に準じて測定した値であり、純度が95.0%未満になると、不純物により製品化されたフィルムの耐候性が低下し、フィルムの使用期間まで機械物性を保持できなくなる。
【0020】pHが5.0〜7.5の範囲外になると、平均粒径0.14μm〜0.21μmの球状形の酸化第二鉄が得られす、またフィルム製造に使用する着色剤を製造する際、製造機のロール、押出機を腐食させることがある。なお、pHの測定はJIS K 5101の24.A法に拠る。
【0021】本発明において、かかる酸化鉄の熱可塑性樹脂に対する添加量は、熱可塑性樹脂に湿式法酸化第二鉄1〜10重量%の範囲であり、好ましくは1〜5重量%の範囲である。添加量が10重量%を超えると、太陽光線の透過率が低下し、地温の上昇が抑制される。また、1重量%未満では雑草の生育抑制効果が低下する。更に、本発明においては、従来公知の界面活性剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、アンチブロッキング剤等を添加することもできる。
【0022】本発明の農業用マルチフィルムの製造法としては、通常の方法で熱可塑性樹脂と本発明の酸化第二鉄を配合し、フィルムを製造する。例えば、バンバリミキサー、ロール或いは押出機等を使用して熱可塑性樹脂と前記酸化鉄とを溶融混練して着色剤マスターバッチを製造し、次いでマスターバッチとベースとなる熱可塑性樹脂を配合し、インフレーション加工、Tダイ加工等の通常の成形方法でフィルム状に成形する。
【0023】また、この場合、押出機を複数台使用して共押出することにより多層の農業用マルチフィルムを製造することもできる。例えば2層フィルムとする場合、1層は前記着色顔料を含有する橙色のフィルム層とし、他の1層は透明のフィルム層としたり、適当な色濃度の黒色系や銀色系等の着色フィルム層としてもよい。
【0024】また、このような2層フィルムは、そのいずれの層が地表面側に配される態様で使用されてもよい。例えば銀色面を外面側にして展張使用すれば、太陽光を反射することで各種害虫の飛来を抑制する効果がある。
【0025】なお、かかる農業用マルチフィルムの厚みは、利用用途によっても異なり、また透過率とも密接な関係があるので慎重に選択する必要があるが、概ね5〜60μm程度とすることが好ましい。
【0026】更に、本発明に係る農業用マルチフィルムは、酸化第二鉄を配合し橙色を呈している。かかる農業用マルチフィルムは、その分光透過特性が、550nmでは20〜40%であり、550nmから450nmの間は直線的に上昇し、450nm/550nm比が1.01〜1.05であることが好ましい。
【0027】
【実施例】以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0028】フィルム1(本発明)の製造日本ポリケム(株)製のリニヤー低密度ポリエチレン(MFR1.0 密度0.920)に着色顔料α−Fe2O3(平均粒径0.20μmの球状形、pHが6.0、酸化第二鉄の純度が97.0%)を2重量%含有するように、着色剤マスターバッチを用いて厚み20μmのフィルムを作成した。
【0029】フィルム1の分光透過特性の評価上記フィルム1の分光透過特性を測定した結果を図1に示す。
【0030】図1に示す通り、フィルム1は、赤色光(波長600〜700nm)を良く透過しており、青色光(波長400〜450nm)はやや弱い透過になっている。そして、波長550nmから強く、波長450nmの間まで透過率は低下しており、このためフィルムは明るい橙色を呈している。
【0031】一方、地温の上昇効果に大きく関与する太陽光からの熱線である波長760〜3000nmの範囲の透過率が大きい。
【0032】実施例1前記フィルム1(本発明)をマルチングした後の該フィルム内面の水滴付着状況の経時変化を示す。対照サンプルとして、市販されている透明タイプのマルチフィルム(比較例1)と緑色タイプのマルチフィルム(比較例2)と請求項2を外れた酸化鉄にて着色したフィルム(比較例3)を用いて比較した。それぞれフィルムの厚みは20μmのL−LDPEフィルムである。
【0033】比較例3フィルムの製造日本ポリケム製のリニヤー低密度ポリエチレン(MFR1.0、密度0.920)に着色顔料として酸化鉄(平均粒径0.1μm、pH4.0、純度97%)を2重量%含有するように着色剤マスターバッチを用いて厚み20μmのフィルムを作成した。
【0034】テスト方法及び結果千葉県市原市のみかど化工(株)試験圃場において、畦巾60cm×長さ4m×各3区に上記各フィルムをマルチングした。テスト期間は1997年3月15日から同年5月31日までで、この間でフィルム内面に付着した水滴が消えて水膜化するまでの日数を肉眼で判定した。また、期間中4月10日時点でのフィルム下の雑草の発生状況について肉眼で判定した。判定結果は共に3区の平均であり、結果は次の通りであった。
【0035】
水膜化までに要した日数 雑 草 本発明 10日 少 比較例1 16日 極多 比較例2 57日 少 比較例3 32日 多 裸 地 − 極多以上の結果に示す通り、橙色に着色された本発明に係るフィルムはフィルム内面に付着した水滴が短期間で水膜化しており、日中昇温効果が早期に発揮可能であることを示している。すなわち、本発明に係るフィルムはその内面に藻類が繁殖し易く、これがフィルム内面を親水化して早期に水滴の水膜化を促しているものと考えられる。特に本発明は比較例1の透明タイプのマルチフィルムよりも短期間で水膜化しており、尚且つ比較例2に示す緑色タイプのマルチフィルムと同様に雑草の発生も少ない。このように同じ光合成により活発化するものでありながら、藻類の繁殖効果が大きい一方で雑草の生育を抑制することができるのは、前記分光透過特性で明らかにしたように、本発明に係るフィルムを透過した太陽光の光質(青色光と赤色光との強度バランス)が大きく影響しているものと考えられる。また、本発明から外れる比較例3に示すマルチフィルムでは、雑草の発生が多く、さらに水膜化するまでの日数も多く要する。
【0036】実施例2日本ポリケム製のリニヤー低密度ポリエチレン(MFR1.0 密度0.920)を使用して、α−Fe2O3(平均粒径0.20μmの球状形、pHが6.0、酸化第二鉄の純度が97.0%)を3重量%含有するように着色剤マスターバッチを用いて、温度180〜220℃に設定したインフレーション成形機にて、厚み20μmのフィルムを作成した。
【0037】比較として着色剤をα−Fe2O3 に代えて、赤系着色顔料である溶性モノアゾレッド、不溶性モノアゾレッド、ポリアゾレッド、ペリレンレッドを用い、その各々について上記と同様の工程にてそれぞれ厚み20μmのフィルムを作成した。
【0038】顔料の種類と耐候性の結果は次に示す通りであり、価格的にも耐候性の結果からも板状酸化鉄が最も優れている。
【0039】
顔料名 分 類 価 格 添加量(%) 耐候性 実施例2のα−Fe2O3 無機系 ○ 3 褪色なし 溶性モノアゾレッド 有機系 △ 0.5 褪色激しい 不溶性モノアゾレッド 有機系 △ 0.5 褪色激しい ポリアゾレッド 有機系 × 0.5 褪色する ペリレンレッド 有機系 × 0.5 褪色する ※耐候性:サンシャインウエザーメーター試験で700時間は屋外天暴で約1年余に相当する。
【0040】
※価格:○ 安価、△ 高価、× 極めて高価。
【0041】
【発明の効果】本発明によれば、フィルム内面を親水化する藻類の繁殖効果が大きく、尚且つフィルム下の雑草の生育を抑制することのできる、着色された農業用マルチフィルムを提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000100458
【氏名又は名称】みかど化工株式会社
【出願日】 平成10年8月27日(1998.8.27)
【代理人】 【識別番号】100101340
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英一
【公開番号】 特開2000−69861(P2000−69861A)
【公開日】 平成12年3月7日(2000.3.7)
【出願番号】 特願平10−257565