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【発明の名称】 キノコの子実体を容器で栽培する方法
【発明者】 【氏名】片山 博視

【氏名】岩田 眞人

【氏名】福田 栄次

【氏名】小宮 ともみ

【要約】 【課題】雑菌の汚染の可能性が低く、良質な子実体を効率よく得ることができ、そしてコストが安く、労力のかからない方法を提供すること【解決手段】 キノコの子実体を容器で栽培する方法であって、1つ以上の栽培容器の中の培地でキノコの菌糸を培養することにより形成された菌床の表面を掻き取る工程、表面を掻き取った菌床に、キノコの子実体原基の形成に有効な湿度を該栽培容器において維持するに適切な量の水分を添加する工程、および該栽培容器内からの水分の実質的な漏失がない状態で、かつ該栽培容器内の温度を菌糸の培養温度から約0〜10℃低い温度に維持しながら培養することによりキノコの子実体原基を形成させる工程、を包含する、キノコの子実体の栽培方法。

【解決手段】キノコの子実体を容器で栽培する方法であって、1つ以上の栽培容器の中の培地でキノコの菌糸を培養することにより形成された菌床の表面を掻き取る工程、表面を掻き取った菌床に、キノコの子実体原基の形成に有効な湿度を該栽培容器において維持するに適切な量の水分を添加する工程、および該栽培容器内からの水分の実質的な漏失がない状態で、かつ該栽培容器内の温度を菌糸の培養温度から約0〜10℃低い温度に維持しながら培養することによりキノコの子実体原基を形成させる工程、を包含する、キノコの子実体の栽培方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 キノコの子実体を容器で栽培する方法であって、1つ以上の栽培容器の中の培地でキノコの菌糸を培養することにより形成された菌床の表面を掻き取る工程、表面を掻き取った菌床に、キノコの子実体原基の形成に有効な湿度を該栽培容器において維持するに適切な量の水分を添加する工程、および該栽培容器内からの水分の実質的な漏失がない状態で、かつ該栽培容器内の温度を菌糸の培養温度から約0〜10℃低い温度に維持しながら該菌床を培養することによりキノコの子実体原基を形成させる工程、を包含する、キノコの子実体の栽培方法。
【請求項2】 前記栽培容器が、ポリプロピレン製の耐熱性ビンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】 前記水分を添加する工程が、水分を噴霧して行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】 前記水分の実質的な漏失が無い状態が、前記栽培容器に蓋をすることにより達成され、そして前記温度の維持が、該栽培容器を空冷することにより行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】 キノコの子実体を容器で栽培する方法であって、コンテナに収容された複数の栽培容器の各々に形成されたキノコ菌床の表面を掻き取る工程、該栽培容器の各々に、キノコの子実体原基の形成に有効な湿度を該栽培容器内で維持するに適切な量の水分を添加する工程、該栽培容器の各々に蓋をする工程、蓋をした複数の栽培容器を収容したコンテナを桟木を挟んで積み上げ、それによって空気の流通に必要な空間を形成する工程、および該空間に空気を流通させることにより該栽培容器内を菌床の培養温度から約0〜10℃低い温度で維持する工程を包含する、方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、キノコの子実体を容器で栽培する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、市場に出回っている食用キノコ(例えば、ヒラタケ、ブナシメジ、エノキタケ、ナメコ、エリンギなど)の子実体の多くは、人工栽培して得られたものである。子実体の人工栽培には、(i)半永久的(20年は利用可能)に使用し得る;
(ii)栽培規模が小さいため、扱いが容易である;
(iii)棚、棚台車などを用いて栽培ビンを立体的に配置することができ、空間を有効に利用し得る;
という利点があることから、ポリプロピレン製の耐熱性ビンを用いることが多い。
【0003】子実体は、一般的に、表1に示す工程で栽培される。
【0004】
【表1】

【0005】これらの一連の栽培工程のそれぞれが完全であってはじめて良質の子実体が得られる。この一連の栽培工程のなかで特に管理が困難であり、子実体の収量減少および品質低下の原因となり易い工程が、「芽出し工程」である。
【0006】従来の芽出し工程は、一般に以下の方法で行われる。
【0007】菌掻きをした栽培ビンを、芽出室と呼ばれる部屋に搬入する。適切な温度で、換気条件を調整しながら、芽出室を加湿する。芽出室の湿度は、90〜95%RHに維持する。芽出し室では、栽培ビンの蓋を開け、菌床を露出した状態で芽出しを行うのが一般的であり、栽培ビンの蓋をすると、栽培ビン内に炭酸ガスが蓄積し、炭酸ガス濃度が上昇して発芽率が低くなるので良くないとされている。発芽してキノコ子実体原基が形成されたら、栽培ビンを生育室に移動する。
【0008】通常、子実体を商業的規模で栽培する場合、芽出室は日常的に加湿および使用されるので芽出室全体が不衛生になりやすい。不衛生な芽出室で芽出しを行うと、菌床が雑菌に汚染される確率が高い。雑菌による菌床の汚染は子実体の品質低下の原因である。実際、キノコの子実体の奇形は、ほとんどの場合「芽出し工程」での雑菌汚染に原因があり、例えば、ヒラタケ腐敗病、エリンギ腐敗病などはPsuedomonas tolaasiiの繁殖が原因であることが知られている。雑菌汚染が激しい場合は、子実体が全く得られないか、またはその収量が著しく少ない。
【0009】また、芽出室の加湿は、一般に加湿器を用いて行われるので、芽出室の中での場所により湿度にムラができる。そのため、芽出し室の中でのキノコの栽培ビンが置かれる位置により、菌床が過度に加湿になったり、逆に乾燥気味になる。菌床が過度に加湿になると、雑菌汚染が起きやすく、得られる子実体が軟弱になり易いという問題がある。菌床が乾燥気味になる場合、発芽しなかったり、発芽してもその時期が不揃いになったりするという問題がある。
【0010】また、芽出室では棚を用いて栽培ビンを空間的に配置することが多い。このような場合、通常、「菌掻き」を行なった栽培ビンを1コンテナに16本並べ、このコンテナを1単位として芽出室の棚に並べ、芽出しの後に生育室に移動する(なお、栽培ビンを並べたコンテナを棚に載せる作業を、「棚ざし」という)。しかし、栽培ビンを並べたコンテナの重量は、約11kgであり重いので、棚ざしおよび生育室への移動は重労働である。
【0011】さらに、従来の芽出し方法では、芽出室は加湿されて湿度が高いので、漏電の危険性があるという問題もある。
【0012】芽出室の空気を循環させ、温度および湿度を調節するための空調設備として、ファンクーラーではなくフィンクーラーを用いることが推奨されている。ファンクーラーは、風の発生量が多いために菌床面が乾燥してしまうという欠点を有する。フィンクーラーは、風の発生量が少ないという利点を有する一方、設備費、電力費とも高額であるという問題がある。
【0013】棚ざしの労力を省くために、棚を用いない方法、つまり菌掻き後に栽培ビンをコンテナに並べ、そのコンテナを積み上げる方法が提案された。しかし、この方法では、栽培ビンの間の空気の流れが不十分であり、芽出しの間に菌糸から発生する熱がこもりやすく、温度障害を生じて、子実体の発芽が見られない、または発芽しても子実体の形状が不揃いになることがある。また、この方法では、加湿された状態で、汚れているコンテナの底面が、ビンの開口部に直接接触するので、雑菌汚染が多発するという問題もある。
【0014】このように、従来の芽出し方法では、良質のキノコの子実体を効率的に得ることが困難である。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記問題点の解決を意図するものであり、雑菌の汚染の可能性が低く、良質な子実体を効率よく得ることができ、そしてコストが安く、労力のかからない方法を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、従来、栽培ビンの蓋を開け菌床を露出させた状態で行わなければならないとされてきた芽出し工程を、栽培ビンの蓋を閉めた状態で行うことにより、従来と比較して雑菌汚染の確率が下がり、かつ均一な発芽が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0017】本発明のキノコの子実体を容器で栽培する方法は、1つ以上の栽培容器の中の培地でキノコの菌糸を培養することにより形成された菌床の表面を掻き取る工程、表面を掻き取った菌床に、キノコの子実体原基の形成に有効な湿度を該栽培容器において維持するに適切な量の水分を添加する工程、および該栽培容器内からの水分の実質的な漏失がない状態で、かつ該栽培容器内の温度を菌糸の培養温度から約0〜10℃低い温度に維持しながら該菌床を培養することによりキノコの子実体原基を形成させる工程、を包含する。栽培容器は、ポリプロピレン製の耐熱性ビンであり得る。上記水分を添加する工程は、水分を噴霧して行われ得る。上記水分の実質的な漏失が無い状態は、上記栽培容器に蓋をすることにより達成され、そして上記温度の維持は、該栽培容器を空冷することにより行われ得る。
【0018】本発明のキノコの子実体を容器で栽培する方法は、コンテナに収容された複数の栽培容器の各々に形成されたキノコ菌床の表面を掻き取る工程、該栽培容器の各々に、キノコの子実体原基の形成に有効な湿度を該栽培容器内で維持するに適切な量の水分を添加する工程、該栽培容器の各々に蓋をする工程、蓋をした複数の栽培容器を収容したコンテナを桟木を挟んで積み上げ、それによって該栽培容器間の空気の流通に必要な空間を形成する工程、および該空間に空気を流通させることにより該栽培容器内を菌床の培養温度から約0〜10℃低い温度で維持する工程を包含する。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明の栽培方法を以下に詳述する。
【0020】1.キノコ本明細書において、キノコとは、菌床栽培が可能でかつ子実体を形成し得る菌類であれば、いずれの種に属する菌類であってもよい。キノコの例としては、Pleurotus属、Lentinus属、Flammulina属、Hypsizigus属、Grifola属、Pholiota属、Auricularia属、Agrocybe属、Hericium属、Agaricus属、Lyophyllum属、Tricholoma属、Rhizopagon属、またはTuber属に属する菌が挙げられる。好ましくは、エリンギ(Pleurotus eryngii)、シイタケ(Lentinus edodes)、エノキダケ(Flammulina velutipes)、ヒラタケ(Pleurotus ostreatus)、シロタモギダケ(Hypsizigus ulmarius)、ブナシメジ(Hypsizigus marmoreus)、マイタケ(Grifola frondosa)、ナメコ(Pholiota nameko)、キクラゲ(Auricularia auricula)、マッシュルーム(Agaricus bisporus)、ヤナギマツタケ(Agrocybe cylindracea)、ヤマブシタケ(Hericium erinaceum)、アガリクス(Agaricus blazei)、ホンシメジ(Lyophyllum shimeji)、マツタケ(Tricholoma matsutake)、バカマツタケ(Tricholoma bakamatsutake)、トリュフ(Tuber melanosporum)、またはショウロ(Rhizopagon rubescens)であり、より好ましくは、エリンギ、ヒラタケ、ブナシメジ、エノキタケ、またはナメコである。
【0021】2.培地の組成および作製組成本発明で用いられる培地の組成は、特に限定されず、従来、各種キノコの栽培のために開発されたか、または使用されるいずれの培地であっても使用し得る。
【0022】培地は、一般に、広葉樹および針葉樹の少なくとも一方の木材から得られるオガクズまたは木材チップ;アワ、ヒエ、キビ、イネ、サトウキビ、トウモロコシ、ムギ(例えば、コムギ、オオムギおよびライムギ)などの穀物の成分(例えば、米ヌカ、トウモロコシヌカ、コーンコブ、コーンブラン、ムギヌカ、オオムギ粉砕物、フスマ、ワラ、もみがら、およびサトウキビバガス);腐葉土;牛フン堆肥、鶏フン堆肥、バーク堆肥などの堆肥;、オカラ、豆皮、コーヒーかす、酒かすなどの食品製造副産物;リグニン;綿実ハルブラン;ココナッツピート;苔類;園芸用土;石灰;牡蛎殻;糖蜜;植物用液体肥料などを任意に組み合わせて使用し得る。
【0023】Pleurotus属のキノコ(例えば、エリンギ)の栽培には、例えば、オガクズ、米ヌカ、およびフスマの少なくとも1種を含む培地を使用し得る。代表的な組成は、オガクズ100重量部に対して、米ヌカ約10〜約30重量部およびフスマ約10〜約30重量部である。
【0024】Lentinus属のキノコ(例えば、シイタケ)の栽培には、例えば、オガクズ、木材チップ、米ヌカ、およびフスマの少なくとも1種を含む培地を使用し得る。代表的な組成は、オガクズ100重量部に対して、木材チップ約10〜約30重量部、米ヌカ約10〜約30重量部、およびフスマ約10〜約30重量部である。
【0025】Flammulina属のキノコ(例えば、エノキダケ)の栽培には、例えば、オガクズ、コーンコブ、米ヌカ、および乾燥オカラの少なくとも1種を含む培地を使用し得る。代表的な組成は、オガクズ100重量部に対して、コーンコブ約10〜約20重量部、および米ヌカ約20〜約50重量部である。
【0026】Hypsizigus属のキノコ(例えば、シロタモギダケ)の栽培には、例えば、オガクズ、コーンコブ、米ヌカ、およびフスマの少なくとも1種を含む培地を使用し得る。代表的な組成は、オガクズ100重量部に対して、米ヌカ約10〜約50重量部、およびフスマ約10〜約50重量部である。
【0027】Grifola属のキノコ(例えば、マイタケ)の栽培には、例えば、オガクズ、コーンブラン、フスマ、およびオカラの少なくとも1種を含む培地を使用し得る。代表的な組成は、オガクズ100重量部に対して、コーンブラン約10〜約50重量部、およびフスマ約10〜約50重量部である。
【0028】Pholiota属のキノコ(例えば、ナメコ)の栽培には、例えば、オガクズ、米ヌカ、フスマ、およびトウモロコシヌカの少なくとも1種を含む培地を使用し得る。代表的な組成は、オガクズ100重量部に対して、米ヌカ約10〜約50重量部、およびフスマ約10〜約30重量部である。
【0029】Auricularia属のキノコ(例えば、キクラゲ)の栽培には、例えば、オガクズ、コーンコブ、米ヌカ、およびフスマの少なくとも1種を含む培地を使用し得る。代表的な組成は、オガクズ100重量部に対して、コーンコブ約5〜約10重量部、および米ヌカ約20〜約50重量部である。
【0030】Agrocybe属のキノコ(例えば、ヤナギマツタケ)の栽培には、例えば、オガクズ、米ヌカ、フスマ、コーンコブ、およびコーンブランの少なくとも1種を含む培地を使用し得る。代表的な組成は、オガクズ100重量部に対して、米ヌカ約10〜約30重量部、およびフスマ約10〜約30重量部である。
【0031】Hericium属のキノコ(例えば、ヤマブシタケ)の栽培には、例えば、オガクズ、米ヌカ、フスマ、コーンコブ、およびコーンブランの少なくとも1種を含む培地を使用し得る。代表的な組成は、オガクズ100重量部に対して、米ヌカ約10〜約30重量部、およびフスマ約10〜約30重量部である。
【0032】Agaricus属のキノコ(例えば、アガリクス)の栽培には、例えば、オガクズ、米ヌカ、堆肥、およびアワの少なくとも1種を含む培地を使用し得る。代表的な組成は、オガクズ100重量部に対して、米ヌカ約20〜約40重量部、および堆肥約10〜約20重量部である。
【0033】Lyophyllum属、Tricholoma属、Rhizopagon属、Tuber属のキノコ(例えば、ホンシメジ、マツタケ、ショウロ、トリュフ)の栽培には、例えば、オガクズ、腐葉土、米ヌカ、フスマ、およびリグニンの少なくとも1種を含む培地を使用し得る。代表的な組成は、オガクズ100重量部に対して、腐葉土約20〜約100重量部、米ヌカ約20〜約35重量部、フスマ約20〜約35重量部、およびリグニン約0〜7重量部である。
【0034】各種キノコに適切な培地組成は、当業者に公知である。
【0035】上記の培地成分を混合し、当業者に周知の方法に従って水を加えて練り合わせることにより、本発明の栽培方法に用いられる培地が作製される。
【0036】上記培地は、適切な栽培容器に収容される。栽培容器は、滅菌処理に耐え得る容器であれば、その形状、大きさ、材料などは制限されない。キノコ栽培で最も一般的に用いられる容量850ml、口径58mmのビンを使用してもよいし、他の栽培容器、例えば袋栽培用の袋を使用することもできる。
【0037】3.滅菌上記の人工栽培用培地は、そのままで、あるいは栽培容器に詰められた後に滅菌処理が行われる。滅菌条件は、一般的に用いられる滅菌処理の条件の範囲内であれば、特に限定されない。滅菌方法の例としては、高圧蒸気滅菌、常圧蒸気滅菌などが挙げられる。例えば、約121℃にて約60分の高圧蒸気滅菌が好ましい。
【0038】4.接種種菌を調製するためには、天然または人工栽培のキノコの子実体のいずれから菌糸または胞子を採取して培地で増殖させて用いてもよいし、あるいは微生物寄託機関および研究機関などで保存されている菌株の菌糸を培地で増殖させて用いてもよい。得られた種菌と滅菌処理後の培地を混合することにより、接種を行う。種菌と培地の容積比は、特に限定されないが、約1:100〜約1:25であることが好ましい。
【0039】5.培養キノコの子実体を栽培するためには、まず、培地に接種された種菌の培養を行い、キノコの菌糸を増殖させ、菌回りを完了させて菌床を形成させる(培地全体に菌糸が行き渡った状態を、菌回りが完了した、という)。培養条件は、キノコが生育可能な条件であれば、特に限定されない。各種キノコに適切な培養条件は、当該分野で公知である。
【0040】Pleurotus属に属する菌の培養に適切な条件は、一般に、温度は、約12℃以上約28℃以下、湿度は、約50%RH以上約80%RH以下、CO2濃度は、約3000ppm以下である。好ましくは、温度は、約15℃以上約24℃以下、湿度は約60%RH以上約75%RH以下、CO2濃度は、約2500ppm以下である。より好ましくは、温度約20℃、湿度約65%RH以上約70%RH以下、CO2濃度約2000ppm以下である。
【0041】Lentinus属に属する菌の培養に適切な条件は、一般に、温度は、約12℃以上約26℃以下、湿度は、約50%RH以上約80%RH以下、CO2濃度は、約3000ppm以下である。好ましくは、温度は、約15℃以上約24℃以下、湿度は約60%RH以上約75%RH以下、CO2濃度は、約2000ppm以下である。より好ましくは、温度約22℃、湿度約65%RH以上約70%RH以下、CO2濃度約1500ppm以下である。
【0042】Flammulina属に属する菌の培養に適切な条件は、一般に、温度は、約10℃以上約22℃以下、湿度は、約50%RH以上約80%RH以下、CO2濃度は、約3000ppm以下である。好ましくは、温度は、約14℃以上約20℃以下、湿度は約60%RH以上約75%RH以下、CO2濃度は、約2000ppm以下である。より好ましくは、温度約18℃、湿度約65%RH以上約70%RH以下、CO2濃度約1500ppm以下である。
【0043】Hypsizigus属に属する菌の培養に適切な条件は、一般に、温度は、約10℃以上約26℃以下、湿度は、約50%RH以上約80%RH以下、CO2濃度は、約3000ppm以下である。好ましくは、温度は、約15℃以上約24℃以下、湿度は約60%RH以上約75%RH以下、CO2濃度は、約2000ppm以下である。より好ましくは、温度約20℃、湿度約65%RH以上約70%RH以下、CO2濃度約1500ppm以下である。
【0044】Grifola属に属する菌の培養に適切な条件は、一般に、温度は、約15℃以上約28℃以下、湿度は、約50%RH以上約80%RH以下、CO2濃度は、約3000ppm以下である。好ましくは、温度は、約18℃以上約25℃以下、湿度は約60%RH以上約75%RH以下、CO2濃度は、約2500ppm以下である。より好ましくは、温度約23℃、湿度約70%RH以上約75%RH以下、CO2濃度約2000ppm以下である。
【0045】Pholiota属に属する菌の培養に適切な条件は、一般に、温度は、約12℃以上約28℃以下、湿度は、約50%RH以上約80%RH以下、CO2濃度は、約3000ppm以下である。好ましくは、温度は、約15℃以上約24℃以下、湿度は約60%RH以上約75%RH以下、CO2濃度は、約2500ppm以下である。より好ましくは、温度約20℃、湿度約65%RH以上約70%RH以下、CO2濃度約2000ppm以下である。
【0046】Auricularia属に属する菌の培養に適切な条件は、一般に、温度は、約15℃以上約30℃以下、湿度は、約50%RH以上80%RH以下、CO2濃度は、約3000ppm以下である。好ましくは、温度は、約18℃以上約22℃以下、湿度は約60%RH以上約75%RH以下、CO2濃度は、約2000ppm以下である。より好ましくは、温度約20℃、湿度約65%RH以上約70%RH以下、CO2濃度約1500ppm以下である。
【0047】Agrocybe属に属する菌の培養に適切な条件は、一般に、温度は、約18℃以上約30℃以下、湿度は約50%RH以上約80%RH以下、CO2濃度は、約3000ppm以下である。好ましくは、温度は、約20℃以上約28℃以下、湿度は約55%RH以上約70%RH以下、CO2濃度は、約2000ppm以下である。より好ましくは、温度約24℃、湿度約60%RH以上約65%RH以下、CO2濃度約1500ppm以下である。
【0048】Hericium属に属する菌の培養に適切な条件は、一般に、温度は、約13℃以上約25℃以下、湿度は約50%RH以上約80%RH以下、CO2濃度は、約3000ppm以下である。好ましくは、温度は、約15℃以上約23℃以下、湿度は約60%RH以上約75%RH以下、CO2濃度は、約2000ppm以下である。より好ましくは、温度約20℃、湿度約65%RH以上約70%RH以下、CO2濃度約1500ppm以下である。
【0049】Agaricus属に属する菌の培養に適切な条件は、一般に、温度は、約15℃以上約30℃以下、湿度は約50%RH以上約75%RH以下、CO2濃度は、約2500ppm以下である。好ましくは、温度は、約20℃以上約28℃以下、湿度は約60%RH以上約70%RH以下、CO2濃度は、約2000ppm以下である。より好ましくは、温度約25℃、湿度約60%RH以上約70%RH以下、CO2濃度約1500ppm以下である。
【0050】Lyophyllum属、Tricholoma属、Rhizopagon属、Tuber属などに属する菌根菌の培養に適切な条件は、一般に、温度は、約20℃以上約26℃以下、湿度は、約50%RH以上約75%RH以下、CO2濃度は、約2000ppm以下である。好ましくは、温度は、約22℃以上約24℃以下、湿度は約60%RH以上約70%RH以下、CO2濃度は、約1500ppm以下である。より好ましくは、温度約23℃、湿度約60%RH以上約70%RH以下、CO2濃度約1500ppm以下である。
【0051】光照射は、あってもなくてもよいが、好ましくは、暗黒条件である。
【0052】菌回りにかかる時間は、培養に用いる容器の容量(培地の容量)によって変動する。菌回りが完了した後、さらに数日間培養を続け、菌糸を熟成させ、子実体の発生を促進する。しかし、熟成は必ずしも必要ではない。
【0053】熟成期間は、Pleurotus属に属する菌であれば、通常、約0日以上約15日以下、好ましくは約3日以上約7日以下であり得る。Lentinus属に属する菌であれば、通常、約20日以上約100日以下、好ましくは約30日以上約80日以下であり得る。Flammulina属に属する菌であれば、通常、約0日以上約7日以下、好ましくは約2日以上約4日以下であり得る。Hypsizigus属に属する菌であれば、通常、約20日以上約80日以下、好ましくは約30日以上約80日以下であり得る。Grifola属に属する菌であれば、通常、約7日以上約30日以下、好ましくは約10日以上約20日以下であり得る。Pholiota属に属する菌であれば、通常、約10日以上約40日以下、好ましくは約15日以上約30日以下であり得る。Auricularia属に属する菌であれば、通常、約0日以上約20日以下、好ましくは約2日以上約10日以下であり得る。Agrocybe属に属する菌であれば、通常、約0日以上約8日以下、好ましくは約2日以上約6日以下であり得る。Hericium属に属する菌であれば、通常、約0日以上約6日以下、好ましくは約2日以上約4日以下であり得る。Agaricus属に属する菌であれば、通常、約5日以上約20日以下、好ましくは約10日以上約15日以下であり得る。そして、Lyophyllum属、Tricholoma属、Rhizopagon属、Tuber属に属する菌根菌であれば、通常、約5日以上約30日以下、好ましくは約15日以上約20日以下であり得る。
【0054】6.菌掻き培養後、菌床の表面を掻き取る(これを、菌掻きをする、という)。菌掻きの方法の例としては、当業者に周知の「ぶっかき」、「ひらがき」、「まんじゅうがき」などの方法が挙げられるが、これらに限定されない。菌掻きでは、一般に、培養が完了した栽培容器を開け、菌床の表面を掻き取る。菌掻きで掻き取られる表面の厚さは、一般に約5〜10mmである。その後、培地に湿り気を加えるために、キノコの子実体原基の形成に有効な湿度を栽培容器内で維持するに適切な量の水分を菌床に添加する。水分の添加は、例えば、栽培容器に水を注いで一定時間の後に排水するか、または新たな菌床表面に少量の水(例えば、850ccのビンで栽培する場合、通常、約2〜20cc、好ましくは約5〜10cc)を散水または噴霧することによって行われる。
【0055】菌掻きをすると、子実体の形態が整う、子実体の成長が揃う、などの効果が得られる。
【0056】7.芽出し菌掻きの後、芽出し操作を行う。まず、菌掻き後、栽培容器からの水分の実質的な漏失がないようにする。例えば、栽培容器がビンであれば蓋をする。「水分の実質的な漏失が無い」とは、子実体原基が形成されるまでの間、それに必要な水分が保持されることをいい、例えば、1日の水分の漏失量が栽培容器内の水分の約5%以下であることをいう。この方法によれば、栽培容器から水分が実質的に逃げないので、芽出室の加湿は必要なく、かつキノコの子実体原基の形成に有効な湿度が栽培容器内で保たれる。また、不衛生な芽出室に菌床表面を露出しないので、雑菌汚染の可能性が低くなる。
【0057】栽培容器は、そのまま棚に収容してもよいし、コンテナに収容してそのコンテナを積み上げてもよい。栽培容器をコンテナに収容する場合、台車の上にコンテナを桟木(さんぎ)を挟んで積み上げ、それによって栽培容器間の空気の流通に必要な空間を形成し得る。桟木の材質および大きさは限定されない。桟木の材質の例としては、木材、金属、プラスチック、ゴムなどが挙げられる。栽培ビンの本数が多い場合は、例えば、オートキャッパーを利用することにより、栽培容器に蓋をする作業が容易になる。
【0058】芽出しの際は、栽培容器内の温度を、上記5項の培養で菌糸を培養した温度から約0〜10℃低い温度に維持しながら菌床を培養し、キノコの子実体原基を形成させる。各種キノコに適切な芽出し温度は、当業者に公知である。キノコ菌糸は発育にともなって発熱することが多く、そのために栽培容器内の温度が上昇する場合は、芽出室内の空気を流通させることにより栽培容器を一定の温度まで空冷し得る。栽培容器が多数である場合、栽培容器をコンテナに収容し、コンテナを桟木を挟んで積み上げると、空冷による栽培容器内の温度調節が容易である。芽出室に空調設備を設置して、芽出室内の空気の流通を促進し得る。空調設備の例としては、ファンクーラーおよびフィンクーラーが挙げられる。設備費および電力費が安価であることから、ファンクーラーが好ましい。
【0059】Pleurotus属に属する菌の芽出し温度は、通常、約10℃以上約20℃以下、好ましくは約15℃以上約18℃以下、さらに好ましくは約16℃である。
【0060】Lentinus属に属する菌の芽出し温度は、通常、約10℃以上約20℃以下、好ましくは約12℃以上約18℃以下、さらに好ましくは約15℃である。
【0061】Flammulina属に属する菌の芽出し温度は、通常、約8℃以上約18℃以下、好ましくは約10℃以上約16℃以下、さらに好ましくは約13℃である。
【0062】Hypsizigus属に属する菌の芽出し温度は、通常、約10℃以上約18℃以下、好ましくは約14℃以上約16℃以下、さらに好ましくは約15℃である。
【0063】Grifola属に属する菌の芽出し温度は、通常、約12℃以上約24℃以下、好ましくは約18℃以上約23℃以下、さらに好ましくは約22℃である。
【0064】Pholiota属に属する菌の芽出し温度は、通常、約10℃以上約18℃以下、好ましくは約12℃以上約16℃以下、さらに好ましくは約14℃である。
【0065】Auricularia属に属する菌の芽出し温度は、通常、約18℃以上約27℃以下、好ましくは約20℃以上約25℃以下、さらに好ましくは約22℃である。
【0066】Agrocybe属に属する菌の芽出し温度は、通常、約15℃以上約22℃以下、好ましくは、約18℃以上約20℃以下、さらに好ましくは、約19℃である。
【0067】Hericium属に属する菌の芽出し温度は、通常、約13℃以上約20℃以下、好ましくは、約15℃以上約20℃以下、さらに好ましくは、約17℃である。
【0068】Agaricus属に属する菌の芽出し温度は、通常、約20℃以上約30℃以下、好ましくは、約22℃以上約28℃以下、さらに好ましくは、約25℃である。
【0069】Lyophyllum属、Tricholoma属、Rhizopagon属、Tuber属に属する菌根菌の芽出し温度は、通常、約14℃以上約20℃以下、好ましくは約16℃以上約20℃以下、さらに好ましくは約18℃である。
【0070】光照射は、あってもなくてもよい。例えば、明条件(約50〜100Lux)12時間暗条件12時間の日周期、または終日暗黒条件である。
【0071】芽出し条件で培養される日数は、特に限定されず、肉眼でキノコの子実体原基の形成が認められるまでである。
【0072】芽出しが完了したら栽培容器を解放し(例えば、栽培容器がビンであればキャップをはずし)、生育工程へと移行する。
【0073】8.生育上記7で得られる子実体原基の生育条件は、キノコが生育可能な条件であれば、特に限定されない。各種キノコについて適切な生育条件は公知である。
【0074】Pleurotus属については、一般に、温度は、約10℃以上約20℃以下、湿度は約80%RH以上約100%RH以下、CO2濃度は、約2000ppm以下、好ましくは、温度は、約15℃以上約18℃以下、湿度は約85%RH以上約95%RH以下、CO2濃度は、約1500ppm以下、より好ましくは、温度約16℃、湿度約90%RH、CO2濃度約1000ppm以下である。
【0075】Lentinus属については、一般に、温度は、約10℃以上約20℃以下、湿度は約80%RH以上約100%RH以下、CO2濃度は、約3000ppm以下、好ましくは、温度は、約12℃以上約18℃以下、湿度は約85%RH以上約95%RH以下、CO2濃度は、約2000ppm以下、より好ましくは、温度約14℃、湿度約90%RH、CO2濃度約1500ppm以下である。
【0076】Flammulina属については、一般に、温度は、約4℃以上約10℃以下、湿度は約80%RH以上約100%RH以下、CO2濃度は、約4000ppm以下、好ましくは、温度は、約5℃以上約8℃以下、湿度は約85%RH以上約95%RH以下、CO2濃度は、約2500ppm以下、より好ましくは、温度約7℃、湿度約90%RH、CO2濃度約2000ppm以下である。
【0077】Hypsizigus属については、一般に、温度は、約10℃以上約18℃以下、湿度は約80%RH以上約100%RH以下、CO2濃度は、約3000ppm以下、好ましくは、温度は、約12℃以上約16℃以下、湿度は約85%RH以上約95%RH以下、CO2濃度は、約2000ppm以下、より好ましくは、温度約15℃、湿度約90%RH、CO2濃度約1500ppm以下である。
【0078】Grifola属については、一般に、温度は、約14℃以上約20℃以下、湿度は約85%RH以上約100%RH以下、CO2濃度は、約2000ppm以下、好ましくは、温度は、約16℃以上約18℃以下、湿度は約90%RH以上約95%RH以下、CO2濃度は、約1500ppm以下、より好ましくは、温度約17℃、湿度約93%RH、CO2濃度約1000ppm以下である。
【0079】Pholiota属については、一般に、温度は、約10℃以上約18℃以下、湿度は約85%RH以上約100%RH以下、CO2濃度は、約3000ppm以下、好ましくは、温度は、約12℃以上約16℃以下、湿度は約90%RH以上約100%RH以下、CO2濃度は、約2500ppm以下、より好ましくは、温度約14℃、湿度約95%RH、CO2濃度約2000ppm以下である。
【0080】Auricularia属については、一般に、温度は、約18℃以上約27℃以下、湿度は約85%RH以上約100%RH以下、CO2濃度は、約3000ppm以下、好ましくは、温度は、約20℃以上約24℃以下、湿度は約90%RH以上約95%RH以下、CO2濃度は、約2000ppm以下、より好ましくは、温度約22℃、湿度約93%RH、CO2濃度約1500ppm以下である。
【0081】Agrocybe属については、一般に、温度は、約15℃以上約22℃以下、湿度は約80%RH以上約100%RH以下、CO2濃度は、約3000ppm以下、好ましくは、温度は、約18℃以上約20℃以下、湿度は約85%RH以上約95%RH以下、CO2濃度は、約2000ppm以下、より好ましくは、温度約19℃、湿度約90%RH、CO2濃度約1500ppm以下である。
【0082】Hericium属については、一般に、温度は、約13℃以上約20℃以下、湿度は約85%以上約100%RH以下、CO2濃度は、約2000ppm以下、好ましくは、温度は、約15℃以上約18℃以下、湿度は約90%RH以上約95%RH以下、CO2濃度は、約1500ppm以下、より好ましくは、温度約17℃、湿度約93%RH、CO2濃度約1000ppm以下である。
【0083】Agaricus属については、一般に、温度は、約20℃以上約30℃以下、湿度は約75%RH以上約95%RH以下、CO2濃度は、約2500ppm以下、好ましくは、温度は、約22℃以上約28℃以下、湿度は約80%RH以上約90%RH以下、CO2濃度は、約2000ppm以下、より好ましくは、温度約25℃、湿度約90%RH、CO2濃度約1500ppm以下である。
【0084】Lyophyllum属、Tricholoma属、Rhizopagon属、Tuber属に属する菌根菌については、一般に、温度は、約14℃以上約20℃以下、湿度は、約75%RH以上約95%RH以下、CO2濃度は、約2000ppm以下、好ましくは、温度は、約16℃以上約20℃以下、湿度は約85%RH以上約95%RH以下、CO2濃度は、約1800ppm以下、より好ましくは、温度約18℃、湿度約90%RH、CO2濃度約1500ppm以下である。
【0085】生育工程では、光照射が必要である。光照射は、好ましくは、約50Lux以上約500Lux以下で1日あたり約1時間以上約8時間以下、さらに好ましくは、約100Lux以上約300Lux以下で1日あたり約1時間以上約6時間以下、さらにより好ましくは、約100Lux以上約200Lux以下で1日あたり約3時間である。所望の形態の子実体を得るためには、光照射およびCO2濃度を、適切にコントロールする。
【0086】生育を行う日数は、キノコの生育条件によって変化し得る。キノコの子実体が所望の大きさに生育したら、子実体の収穫を行う。
【0087】
【実施例】以下に、本発明の実施例を説明する。しかし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0088】(実施例1:エリンギの栽培)本実施例では、Pleurotus eryngii(以下、エリンギ)の子実体の栽培について記載する。このキノコは、その子実体がマツタケに似た歯ごたえの良さを有する点から、最近、最も有望視されているキノコであるが、従来の栽培方法で培養を行うと、奇形の子実体の発生率が高いことが知られている。子実体が奇形になるのは、芽出し工程中の雑菌汚染が一因であろうと示唆されている。
【0089】1.培地の作製以下の表2に示す培地成分を混合し、口径58mm、容量850ccのポリプロピレン製のビン1,152本に詰め、常法に従って、培地中央に直径18mmのホールをあけ、キャップをはめた。次いで、118℃、45分間の高圧蒸気滅菌を行い、その後、清浄な室内で培地温度が18℃となるまで一晩冷却した。
【表2】

【0090】2.エリンギの接種市販のPleurotus eryngiiの子実体から胞子を採取し、ポテトデキストロース寒天培地(PDA培地)上で発芽および菌糸の増殖を行った。発芽および菌糸の増殖の条件は、温度25℃、湿度65%RH、暗黒条件下で25日間培養した。培養菌糸片5mm角を新たにPDA培地に接種し、同条件下で培養を行った。この操作を計3回繰り返して菌を純化した。そして米ヌカおよび専管フスマを栄養源として含む針葉樹オガクズ培地に接種し、種菌を作製した。このようにして得られた菌糸とオガクズ培地の混合物を種菌として用いた。種菌を、常法に従って上記の培地に1ビンあたり約12g接種した。
【0091】3.子実体の栽培3.1 培養暗黒下、温度22℃、湿度70%RH、CO2濃度2,000ppmの条件で培養し、菌床を形成させた。菌糸は20日間で菌回りが完了したが、その後3日間の熟成期間をとり、総培養日数は23日間とした。
【0092】3.2 菌掻き培養終了後、菌掻き操作を行なった。栽培ビンのキャップをはずし、菌床表面を約10mm掻きとり、新たに露出した菌床表面に水を1ビンあたり5cc噴霧した。
【0093】3.3 芽出し菌掻き後、芽出し操作を行った。栽培ビンのキャップをはめ、これを45cm×45cmのコンテナに16本ずつ並べた。このコンテナを、150cm×50cmの台車上に3列で8段に積み上げた。この時コンテナの各段の間には、1.5cm×1.5cm×145cmの桟木を両端に通し、コンテナの各段の間に隙間をあけた。栽培ビンは、台車に載せた状態で芽出室に搬入し芽出しを行った。芽出しの条件は、昼12時間50〜100Lux、夜12時間暗黒下の照明下、温度16℃、湿度70%RH、CO2濃度1,500ppmであった。芽出室は、ファンクーラーを用いて空気を常時流通させた。菌糸が再生し幼子実体が形成されるまでに10日間かかった。
【0094】3.4 子実体の生育3.3で得られた幼子実体を、生育室に移し、生育させた。生育室の棚は上下の棚間隔34cm、段数6段の棚にコンテナを載せ、生育を行った。生育室の環境は、温度16℃、湿度85〜90%RH、CO2濃度1,000〜1,500ppm、光照射は、12時間明(50〜100Lux)12時間暗黒下の日周期であった。収穫期は生育6〜8日間であった。1ビンあたりで収穫された子実体の収量は平均160gであった。結果を表3に示す。
【0095】(比較例)芽出し工程以外は実施例と同様に行った。比較例での芽出し工程は以下のように行なった。比較例では、芽出室の上下の棚間隔34cm、段数6段の棚にコンテナを載せ、芽出しを行った。芽出室の環境は温度16℃、湿度95%RH、炭酸ガス1,500ppm、照明は昼12時間50〜100Lux、夜12時間暗黒下であった。発芽は10〜12日間で確認された。なお、芽出し後の生育工程での収穫適期は、生育6〜10日間であった。結果を表3に示す。
【0096】
【表3】

※子実体の等級の判定基準は、子実体の背丈が8〜10cmに揃っており、茎が純白で傘の反り返りがなく、水っぽさがない(つまり、子実体の水分が84〜87%である)のであればA級品であり、子実体の背丈が不揃いで茎がやや黄変し、水っぽさが感じられる(つまり、子実体の水分が88%以上である)のであればB級品と判断した。以上のように、本発明の方法により子実体を栽培すると、従来法で栽培した場合と比較して、不発芽の比率が減少し、子実体の収量が増加した。さらに、本発明の方法により子実体を栽培すると、A級品の比率も高くなった。
【0097】
【発明の効果】本発明により、栽培容器を閉鎖した状態で芽出しを行う工程を含むキノコの子実体の栽培方法が提供される。
【0098】本発明の栽培方法では、芽出室を加湿する必要がないので、従来不衛生になりがちであった環境が一新され、加湿による漏電の危険性もない。また、従来方法では加湿ムラ、つまり加湿の多い箇所と少ない箇所の差が場所によって激しく、菌床の管理が困難であったが、本発明によれば、そのような管理の必要もない。さらに、菌掻きによってキズついた菌床表面が芽出室で露出されないので雑菌汚染が極めて少ない。
【0099】さらに、本発明の方法では、栽培容器を並べたコンテナを台車に衛生的な状態で積み上げ得、そしてそのまま芽出室に搬入し得るので、基本的に芽出室の棚は不要であり、コンテナの棚への上げ下ろし作業がなく労働力を省くことができる。
【0100】本発明の方法を用いれば、立体空間を有効に利用して芽出しを行い得る。従来方法で棚を用いる場合、棚間隔を30〜40cm開ける必要があるので、栽培ビンを20,000本収容するためには約420m3(有効高さ3.2m)必要であったが、本発明の方法ではコンテナに並べて積み上げ得るので同じ本数を約260m3で収容し得る。
【0101】本発明の方法では、芽出しの際に栽培ビンが閉鎖されるので、芽出室に風が流れていてもよく、従ってファンクーラーを用いて空調を行い得る。ファンクーラーは、フィンクーラーと比較して安価であり、かつ消費電力も少ないので、コストが少ないという利点がある。
【0102】このように、本発明の方法は、従来方法で問題であった加湿工程の諸問題が解決するばかりでなく、立体空間を従来以上に有効に利用でき、さらに従来方法と比較して均一な芽出し、栽培日数の短縮化、不発芽の減少、および子実体の増収が可能である。本発明の方法は、現在ビン栽培されるあらゆる種の食用および薬用のキノコに応用可能である。
【出願人】 【識別番号】597019665
【氏名又は名称】アイ・エム・ビー株式会社
【出願日】 平成10年9月2日(1998.9.2)
【代理人】 【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
【公開番号】 特開2000−69845(P2000−69845A)
【公開日】 平成12年3月7日(2000.3.7)
【出願番号】 特願平10−248853