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【発明の名称】 きのこ類培地の製造方法
【発明者】 【氏名】篠原 伸雄

【氏名】穴水 義徳

【氏名】大谷 充宏

【要約】 【課題】従来法の圧力釜処理法と同等レベルの生育を示し、更に特別な専門的知識を必要とせず、作業性が良く、比較的簡単で製造コスト低減に繋がるきのこ類培地の製造方法を提供する。

【解決手段】きのこ類培地の原料又はこれにpH調製剤を加えたきのこ類培地原料を常圧状態又減圧状態で、120〜300℃の範囲に加熱するガス抜き口を設けた加熱帯、外部に冷却手段12を備える冷却帯、水供給部23、及び種菌供給部25を順次備える連続移送型撹拌装置10に入れて、加熱殺菌、冷却を行い、所定量の水を添加し、更に種菌を入れる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 きのこ類培地の原料又はこれにpH調整剤を加えたきのこ類培地の原料を、常圧状態又減圧状態で120〜300℃の範囲に加熱するガス抜き口を設けた加熱帯、外部に冷却手段を備える冷却帯、水供給部、及び種菌供給部を順次備える連続移送型撹拌装置に入れて、加熱殺菌、冷却、及び所定量の水を添加を行い、更に種菌を入れることを特徴とするきのこ類培地の製造方法。
【請求項2】 請求項1記載のきのこ類培地の製造方法において、前記水供給部と前記種菌供給部は一体となって、前記水と前記種菌を同時に前記きのこ類培地に入れるきのこ類培地の製造方法。
【請求項3】 きのこ類培地の原料又はこれにpH調整剤を加えたきのこ類培地の原料を、常圧状態又減圧状態で、120〜300℃の範囲に加熱する加熱帯を有する連続移送型撹拌装置に入れて、加熱殺菌する工程を有することを特徴とするきのこ類培地の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はきのこ類培地の製造方法に係わり、より正確には短時間かつ連続的に、きのこ類培地の原料である木粉等を殺菌し得る培地の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】きのこ類菌床栽培における最大の技術的課題は、培地の殺菌工程の簡素化にある。従来法におけるきのこ類培地の殺菌方法の中で、現在最も利用されておりかつ先進的な殺菌技術は、大きく分けて以下の3つの方法に分類される。
【0003】■木粉及び米糠等の栄養剤等を、培地原料として調製後袋詰めした後、蒸気による湿熱殺菌、即ち、圧力釜を用いて120℃以上で加熱する高圧殺菌法。
■(株)関西総合環境センターのKEEC方式(文献:「現代林業」1994年11月号及び特開平6−54626号公報)による、高温高圧下で成型されたオガライト状固形培地法。
■木粉等を含ませた密閉容器内へ、高温蒸気を吹き込みかつ連続的に、殺菌及び冷却を行うキッコーマン方式(特開平5−276831号公報及び特開平8−242841号公報に記載)。これらの殺菌方法はいずれも、100℃以上の高温度と1kg/cm2 以上の圧力を併用している。即ち、100℃以上の蒸気を加熱媒体として、木粉原料中の微生物を加熱殺菌する手法で、それに要する設備は耐圧性の釜及びパイプ等のシステムを必要とする方式である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記の3つの従来法は、以下の欠点があった。■の方法の欠点は、(1)圧力釜を使用するため、ボイラー等の蒸気発生器、耐圧性容器及び配管が必要であり、その取り扱いについて専門的知識が要求される、(2)木粉等培地の高温殺菌後の冷却工程において、その培地が多孔質状であることから熱伝達が遅く、加熱及び冷却に多大の時間を要する、(3)冷却後の種菌工程において袋詰培地の場合、作業上の困難さが伴う等である。■の方法の欠点は(1)オガライト状の圧縮培地に水を注入することについて、別工程が必要となる、(2)300℃の高温下では、培地の焦げ現象及び栄養成分の破壊が生じ易いこと等である。更に特開平6−54626号公報の実施例1によれば、回転式の熱乾燥機で処理した後、再度300℃で1.5トン/cm2 の圧力をかけ圧力釜にて処理している。即ち、100℃以上の加熱を3回も実施しており、その作業性に難点がある。そして、■の方法の欠点は(1)高圧の飽和水蒸気が常時高速で流れているため、耐圧性のパイプ等の設備が必要であり、小規模経営の場合過大設備となる、(2)木粉等の高温殺菌工程で生じる、フェノール及びテルペン類のガス抜きがない、(3)pH調製を行った木粉培地では、均一な加水分解性が得られない、(4)ボイラー等の飽和水蒸気発生装置を別に設ける必要があること等である。
【0005】即ち、これらの欠点が生じる理由は、■及び■の場合、木粉等の多孔質培地を別工程で発生させた蒸気で殺菌すること、及び袋詰状の培地を加熱冷却すること等、別工程を設けなければならない点にある。また■の場合、300℃の高温条件の必要性は、木粉等への効果的な熱伝達が得られないことが欠点である。本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、従来法の圧力釜処理法と同等レベルの生育を示し、更に特別な専門的知識を必要とせず、作業性が良く、比較的簡単で製造コスト低減に繋がるきのこ類培地の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記目的に沿う第1の発明に係るきのこ類培地の製造方法は、きのこ類培地の原料又はこれにpH調整剤を加えたきのこ類培地の原料を、常圧状態又減圧状態で120〜300℃の範囲に加熱するガス抜き口を設けた加熱帯、外部に冷却手段を備える冷却帯、水供給部、及び種菌供給部を順次備える連続移送型撹拌装置に入れて、加熱殺菌、冷却、及び所定量の水を添加を行い、更に種菌を入れている。ここで、第1の発明に係るきのこ類培地の製造方法において、水供給部と種菌供給部は一体となって、水と種菌を同時にきのこ類培地に入れることもできる。また、前記目的に沿う第2の発明に係るきのこ類培地の製造方法は、きのこ類培地の原料又はこれにpH調整剤を加えたきのこ類培地の原料を、常圧状態又減圧状態で、120〜300℃の範囲に加熱する加熱帯を有する連続移送型撹拌装置に入れて、加熱殺菌する工程を有している。
【0007】以下に、上記記載の発明を完成するに至った経緯について詳細に説明する。発明者らは、木粉等の熱伝達率の小さい多孔質培地を、効果的に加熱殺菌するために、加熱帯を有する連続移送型撹拌装置、例えばエクストルーダによる処理を検討した。ここで加熱帯を有する連続移送型撹拌装置とエクストルーダについて説明する。エクストルーダは以下の理由により、加熱帯を有する連続移送型撹拌装置の一方式と考えられる。エクストルーダは一般的に押し出し機として利用されているが、その設備の構成の一部に圧縮部がある。例えば麺類、スナック菓子、ペットフード及び配合飼料の製造には、エクストルーダの主要な機能である圧縮装置(ダイス等利用による圧力を利用して押し出す作用)を応用して製品化したものを使用している。また逆に、エクストルーダの圧縮作用を積極的に必要としない利用方法に関する文献及び製品はみられない。しかし発明者らはエクストルーダの利用において、圧縮装置の機能を必要とせず、主として加熱、攪拌、混合等の連続作業性を応用したもので、従って、「押し出し機能」よりも「送り出し(移送)攪拌機能」を重視したものである。
【0008】この圧縮装置が不要な理由として、きのこ類培地に必要な性状は、木粉原料中に一定量の空気を均一に含む多孔質の状態が望ましいため、培地中に含有する空気を排除する圧縮工程は不要であることによる。更に本実施例に述べるように、木粉原料と加熱面との伝熱効率を上げるために、レンズ型混合エレメントを多く組み合わせると同時に、その回転数が最高200rpm程度の高速回転を行っている。この理由は加熱内部において伝熱効果を上げるため、木粉原料が加熱部内のわずかな間隙で飛散及び撹拌する状態を保つことによる。例えばスクリューの形態について、押し出し作用を重視するボール型のみを用いた場合は、飛散及び撹拌能力が小さいため熱伝達は遅い結果となる。以上の理由により、本発明はエクストルーダを使用しているが、その利用は加熱帯を有する連続移送型撹拌装置として加熱殺菌処理するものである。このことから以下の説明について、加熱殺菌処理する加熱帯を有する連続移送型撹拌装置を、単にエクストルーダと称している。
【0009】ここで木粉等の固形培地をエクストルーダにより、加熱するメリットは以下のとおりである。(1)エクストルーダは比熱伝達係数の高い加熱装置とされ、食品及び肥飼料の製造を目的として、汎用的に利用されている機械である。この機械の加熱効果は、エクストルーダ内に設置されているシリンダー及びスクリューにより、投入された木粉等が常時回転しながら加熱されること、及びスクリューの形状及びピッチ幅を変えることにより、培地中のミクロな部分の均一な加熱が得られることにある。更に加熱媒体である蒸気の送り込みを必要とせず、エクストルーダ内の加熱板によって、加熱殺菌がなされることが特徴である。
【0010】このことにより耐圧装置が必要でなく、目標とする加熱温度に短時間で達することが可能であり、かつ木粉の均一な加熱により、従来法の欠点である「加熱ムラ」が生じない長所が得られる。即ち、以下の特徴が得られる。
(1)120〜300℃の高温度が、電気加熱等により常圧下で得られることから、耐圧性の釜及び配管等がいらない。(2)120℃以上の高温殺菌により、殺菌時間の大幅な短縮化が可能である。(3)高温短時間殺菌により栄養成分の破壊が小さい。(4)低pH域の設定により、針葉樹等の木粉の加水分解が容易となる。(5)エクストルーダのバレルに設けた開放部より、ガス抜き即ち、木粉の加熱時に生じるフェノール、テルペン類及び過剰水分の除去が容易にできる。(6)木粉の混合、殺菌、ガス抜き、冷却、種菌工程の無人化及び連続化が可能である。
【0011】
【発明の実施の形態】続いて、添付した図面を参照し、本発明を具体化した実施の形態について説明する。ここに、図1は本発明の一実施の形態に係るきのこ類培地の製造方法の工程説明図である。まず、図1を参照しながら、本発明の一実施の形態に係るきのこ類培地の製造方法に使用した連続移送型攪拌装置であるエクストルーダ10について概略説明する。
【0012】エクストルーダ10は、内部に連通するレンズ型のスクリュー11を備える第1バレル12及び第2バレル13と、スクリュー11を回転駆動する動力部(減速モータ)14とを有している。第1バレル12の周囲には電熱ヒータ15が設けられ内部を通過する培地原料を所定の温度(高温)に加熱する加熱帯を形成するようにしており、第2バレル13の外側はウォータージャケット16となって内部を冷却水が循環し、内部を通過する培地原料を所定の温度まで冷却する冷却帯を形成するようになっている。第1バレル12には、上流側から原料投入口17と、コック18を供給路の中間に備え、第1バレル12に水を供給できる水供給ポンプ19と、第1バレル12内に発生したガスを外部に逃がすガス抜き口20とが順次設けられている。第2バレル13には上流側から、コック21及び無菌フィルター22を介して第2バレル13内に水を供給できる水供給ポンプ23(水供給部を構成)と、第2バレル13の全体を冷却する冷却水を循環させる冷却水ポンプ24と、特定の菌(きのこ菌をいう)を第2バレル13内に供給できる種菌供給部の一例である種菌供給口24とが順次設けられている。なお、冷却水ポンプ24とウォータージャッケット16によって冷却手段が構成されている。
【0013】以上の構成となったエクストルーダ10を用いて、本発明の一実施の形態に係るきのこ類培地の製造方法について説明すると、第1バレル12の周囲に取付けられている電熱ヒータ15をオンにし、動力部14を駆動してスクリュー11を40〜200rpm程度の回転速度で回転駆動した状態で、きのこ類培地の原料(以下、培地原料という)を原料投入口17から入れる。培地原料の投入量は、エクストルーダ10の内部を通過する培地原料が圧縮されず、しかも内部のスクリュー11で十分に攪拌できる量とする。原料供給口17から投入された培地原料は、第1バレル12の周囲に設けられた電熱ヒータ15によって120〜300℃(好ましくは120〜200℃)に加熱される。ここで、120℃より低い場合には、培地原料の滅菌処理が十分に行われず、300℃を超えると培地原料が焦げるからである。そして、水供給ポンプ19によって、水及びpH調整剤を供給され、培地原料の加水分解が促進される。発生したガスは、ガス抜き口20より排出される。このガス抜きの目的は高温加熱により、木粉等から発生したテルペン類及びフェノール等、きのこ類成長に悪影響を及ぼす揮発成分の除去を行う。これらの操作により、第1バレル12を通過した培地原料(木粉)は高温に加熱され、従って材料中の雑菌は完全に殺菌されている。
【0014】この高温加熱された培地原料は、そのままスクリュー11によって下流側に搬送されて、第2バレル13内に入る。第2バレル13に入ると水供給ポンプ23より無菌フィルター22を通じて水が供給され、冷却構造となった第2バレル13によって冷却される。水供給ポンプ23より供給される水の量は、最終的な培地の水の量が60〜70%になるように調整されている。以上において、水供給部と種菌供給部を一体とすることもできる。第2バレル13で培地原料は常温に冷却され、下流側に設けられている種菌供給口25からきのこ類(例えば、しいたけ)の種菌を供給する。第2バレル13内のスクリュー11の回転によって培地原料内に種菌が均等に混合されて、排出される。排出された培地は、酸素を通すが雑菌は通さない構造の半密閉容器に充填され、これによって一応の作業は完了する。
【0015】
【実施例】次に、本発明の作用、効果を確認するための実施例について説明する。使用したエクストルーダは、日本製鋼所製小型試験機(商品名:ラボルダーマークII)を使用した。この試験機は、例えば、混合、加熱殺菌、水分調整、減圧、冷却及び成形等の工程を連続的に処理するもので、図1に示す、第1バレルまでの機能を有している。この試験機(エクストルーダ)の出口より排出された培地原料(木粉)の冷却及び種菌操作(植菌操作)は、エクストルーダへ連結したクリーンベンチ内で処理した。更に種菌(植菌)した培地を恒温室(温度25℃、湿度60%)で30日間保持し、しいたけ菌の伸長観察を行った。
【0016】<実施例1> 広葉樹を培地原料としたしいたけの生育広葉樹(ぶな)180gへ米糠20g及び水を適量混合し、このものを前記エクストルーダの原料投入口へ投入し、表1に示す条件でエクストルーダ処理を行った。その後エクストルーダ排出口より排出された直後の培地を、無菌的にクリーンベンチ内へ運び入れ、水分濃度が約60%となるように滅菌水を加え撹拌後、滅菌したシリコンゴム付きガラス試験管(外径20mm×長さ200mm)へ40g封入した。その後、試験管へ封入した培地の表面へ、滅菌したコルクポーラ(外径6mm)により、予めポテトデキストロース寒天培地にて前培養したしいたけ菌を、釣菌し接種した。接種した試験管を恒温室(温度25℃、湿度60%)で30日間培養し、菌糸の伸長量を測定した。菌糸の伸長量測定方法は、試験管中培地中で下部方向に伸びた菌糸の下端部分の距離を、試験管外周にマーキングし、培地表面部より計測した。測定日数は10日目及び30日目とした。なお計測用側線は1本の試験管に3本マーキングし、かつ試験管の本数を5本とし、その平均値(合計15本の合計値)を菌糸の伸長率とした。また比較試験区(以下対称区)として、従来法処理である圧力釜〔トミーセイコー(株)製:モデルSD−30N〕により、120℃ー60分の加熱処理を行った培地における伸長率を測定した。試験管の本数はそれぞれ5本とし、その平均値を求め結果を表2に示した。
【0017】
【表1】

【0018】
【表2】

【0019】表2に示す通り、エクストルー処理ダ及び圧力釜処理の違いが、しいたけ菌の伸長率に及ぼす影響について、大きな差は認められなかった。即ち、エクストルーダ処理法が、従来法の圧力釜処理法と比較して、同等な殺菌効果を有することが認められた。一般的に培地の加熱殺菌が不足する場合、耐熱性のトリコデルマ(糸状菌)の発生が見られる場合が多い。そのため従来法の中で、最も使用される圧力釜処理法では、培地の殺菌処理において、120℃以上の加熱温度で1時間以上の長時間加熱処理が行われている。この場合その冷却工程に、長時間を要することが大きな欠点であった。例えば、圧力釜処理法については、培地を耐熱性を有するポりプロピレン栽培袋へ封入して加熱殺菌する場合、殺菌及び冷却に1時間以上の長時間を要した。
【0020】しかしエクストルーダ処理法では、圧力釜処理法による耐圧性容器が必要でなく、かつ連続的に短時間で殺菌及び冷却ができる。このエクストルーダ処理法が、木粉材料である培地の殺菌に有効な理由は、高温度であるにもかかわらず、殺菌時間が数分間の短時間であるため、焦げ付きが少ないことによる。更にエクストルーダの加熱方式は、高温度の雰囲気内でスクリューが常時回転しながら、木粉原料を搬送しているため均一な熱伝達が得られると同時に、加熱ムラが少ないことが大きな特徴である。即ち、スクリューにより搬送される原料は、エクストルーダ内の加熱表面部へ常時接触していることから、熱伝達の効果が大きい特徴がある。
【0021】一方連続式で蒸気を送り込む殺菌方式で、キッコーマン方式(特開平5−276831号公報、特開平8−242841号公報)があるが、この方法は以下の欠点がある。■木質系材料を加熱する時に、生じる揮発成分等のガス抜きができないこと、■パイプ中の原料の移動において、高圧の蒸気を送る方式を採用しており、ミクロレベルの均一な撹拌ができにくいこと、■別工程で蒸気を生成させる装置を用いること、又は蒸気配管を耐圧性とするため、装置が大型化となること等の欠点を生じる。またキッコーマン方式と本発明との大きな違いは、加熱装置内で原料の撹拌及び搬送のためのスクリューを用いているものの、搬送される原料と接触する加熱媒体に違いがある。即ち、キッコーマン方式は、加熱媒体が過熱蒸気であり原料と蒸気との接触による加熱であるが、本発明では蒸気との接触による加熱ではなく、加熱板と原料との接触によっている。またエクストルーダの場合、ガス抜きはバレルの一部に開放部を設けることにより、容易に行うことができること、操作において高圧力が必要でなく、常圧下(又は、減圧下)で処理できること等の特徴がある。
【0022】なお本実施例の如く、工程を簡略化する場合、加熱中に蒸発した水分の補給及び種菌を、クリーンベンチ(無菌室)内にて、無菌水の添加及び種菌操作を行うことが可能である。このように本発明の特徴は、殺菌工程が常圧下(又は、減圧下)で処理できることにあり、従来法における蒸気利用による高圧処理に必要とする耐圧性設備を必要としないことにある。
【0023】<実施例2> 針葉樹を木質源としたしいたけの生育このこ類の培地材料として、広葉樹が一般的に使用されている。しかし針葉樹では、加熱時に発生するフェノール類及びテルペン類等の揮発性ガスの影響により、しいたけ菌糸の成長が、困難なものとされている。そこで本実施例では、針葉樹をpH調製剤として有機酸であるクエン酸を用いて酸性化させ、加水分解を行わせることにより、揮発性ガスの発生を促進すると同時に、エクストルーダの開口部より大気中へ容易に蒸発させた。まず針葉樹180gへ、pH調製剤としてクエン酸水を加え、培地原料のpHを4.8に調製した。このものを実施例1と同様な方法で、エクストルーダ処理した。種菌(植菌)、培養及び伸長率測定方法は、実施例1と同様に行った。
【0024】
【表3】

【0025】表3に示すとおり、圧力釜処理による試験区及びエクストルーダ処理区とも、10日目において、pH無調製区よりも菌糸の伸長率が大であることが認められた。即ち、一般的に菌糸の生育が遅いとされている針葉樹においても、エクストルーダ処理法が、従来法と同様に菌糸の生育がみられることがわかった。しかし針葉樹を用いた試験区は、エクストルーダ処理及び従来法とも、広葉樹の試験区である実施例1と比較して、菌糸の成長は遅かった。以上の結果から、エクストルーダ処理の条件は、圧力釜処理法である120℃−60分の加熱条件と比較して、同等レベルの菌糸発育効果が認められ、エクストルーダ処理が培地の加熱殺菌に対して、有効な方法であることがわかった。また本実施例では、pH調製剤として有機酸であるクエン酸を用いたが、pH降下を目的とした場合、無機酸よりも緩衝作用が大きい有機酸の利用が有効的である。例えばクエン酸でpHを4.8に調製した培地原料は、エクストルーダ処理後ではpH4.9〜5.0となる。一方無機酸として塩酸を用いた場合、pHを4.8に調製した培地原料は、エクストルーダ処理後ではpH5.8〜6.0となる。即ち、木粉の加水分解を安定的に作用させるためには、有機酸の利用が望ましいことがわかった。更にpH調製剤として、水の電気分解により生成される酸性水を用いてもよい。例えばpH2.7の酸性水を、重量比で木粉原料の2倍量に混合したものを、エクストルーダ処理した場合、pHは4.5前後となる。
【0026】<実施例3> 廃菌床におけるしいたけの生育エクストルーダ処理による広葉樹培地の殺菌効果が認められたので、廃菌床について殺菌効果及び菌糸の成長率を検討した。まずエクストルーダ処理及び従来法(圧力釜処理法)により、高温殺菌した廃培地100gを、実施例1と同様に大型試験管へ封入した。植菌、培養及び伸長率測定方法は実施例1と同様に行った。
【0027】
【表4】

【0028】その結果表4に示すように、エクストルーダ処理区は、従来法と比較して10日目及び30日目において、良好な菌糸の生育率がみられた。一般的に廃菌床は、きのこ類培地として一度使用したものであるため、使用前の培地よりも水分及び雑菌が増加していることから、従来法による圧力釜処理法では、水分調製及び殺菌が困難であるとされていた。即ち、廃菌床あるいはおから等における水分60%以上の原料を培地として利用する場合、従来法では生育に適正な水分濃度(55〜60%)の調製が、困難であった。その理由は従来法では、密閉した容器内で加熱処理されているため、水分の散逸がないことによるものである。しかしエクストルーダ処理では、120℃以上の高温加熱処理されると同時にガス抜き口から、水分の揮発による除去が容易にできる。その後水供給部より無菌水を供給することにより、培地の水分調製が容易となる。即ち、原料中の水分量に関係なく殺菌及び水分調製できることから、水分量を多く含む食品廃棄物の培地原料としての利用が可能となる。
【0029】以上の結果より、きのこ類培地の殺菌方法として、従来法による培地原料と蒸気との接触による加熱方式でなく、培地原料と加熱板との接触加熱による処理について殺菌効果を認めた。このことから、従来法における設備である耐圧性容器及び蒸気取り扱いについて、その専門的知識が不要であること等の特徴を得ることができた。
【0030】
【発明の効果】従来の培地の殺菌方法は、圧力釜による蒸気殺菌又は別工程で発生させた蒸気を殺菌装置内へ、送り込む方式が主流であったが、本発明による連続移送型攪拌装置(エクストルーダ)での処理によって、きのこ類培地の原料(例えば、木粉)を培地する場合、別工程による蒸気発生装置が必要でなく常圧、高温度(300℃まで容易)の発生、冷却及びガス抜き等の工程が、連続的に達成できることが認められた。また、連続移送型攪拌装置の加熱殺菌により、得られた培地におけるきのこ類の成長について、従来法の圧力釜処理法と同等レベルの生育を示した。このことにより特別な専門的知識を必要とせず、作業性の省力化、容易化及びきのこ類製造のコスト低減につながるメリットを得ることができた。
【出願人】 【識別番号】391016082
【氏名又は名称】山口県
【識別番号】598127077
【氏名又は名称】株式会社コウミ
【出願日】 平成10年8月31日(1998.8.31)
【代理人】 【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
【公開番号】 特開2000−69844(P2000−69844A)
【公開日】 平成12年3月7日(2000.3.7)
【出願番号】 特願平10−262452