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【発明の名称】 食用植物の水耕栽培兼水質浄化及び生態礁となるイカダ
【発明者】 【氏名】藤本 治生

【要約】 【課題】イカダにクワイ、エンサイ等の有用植物を植栽し、富栄養化水域に浮かべることにより、食料生産、水域の浄化及び生態系の回復、酸性化防止が出来るイカダの提供とその方法。

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】図1の様な簀の子状イカダの上板(1)、ケタ(2)上に釘状フック(3)を取り付け、上板とケタで囲まれた空間部分にネット(4)をへこみを持たせた状態で吊り下げ、貝殻倍地(5)を入れ、有用植物を貝殻倍地中に植栽し、富栄養化水域に浮かせることにより水耕栽培兼水質浄化、生態系回復及び湖沼酸性化対策を行うことを特徴とするイカダ。
【請求項2】請求項1のようなイカダを使うことなく単なる浮力体にネットをへこみを持たせた状態で吊り下げ、このへこみに貝殻培地を入れ、有用植物を植栽し富栄養化水域に浮かせることにより、水耕栽培兼水質浄化、及び生態系回復を行うことを特徴とするイカダ。この場合、浮力体は浮き輪形状で、ネットは魚を捕るタモの様なものでもよい。
【請求項3】この様なイカダにおいて、風力エネルギー応用構造として、受風板(6)、及び、風力伝達用の受風板支持棒(7)、ロープ(8)、及び、風力によりイカダが傾いたとき、傾きとは反対側の水中に吊された底層水揚水体(9)が底層水をかき揚げること特徴とするイカダ。
【請求項4】上記のようなイカダの倍地中にクワイ、エンサイを植栽し、富栄養化水域で水耕栽培する方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】富栄養化の進んだ水域における、有用植物の水耕栽培兼水質浄化及び生態系回復技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、食用植物の水耕栽培、水質浄化、生態系回復はそれぞれ独立した技術として取り扱われてきた。水耕栽培であればハウス内で培養液を用いて行う方法が一般的であった。また、イカダ上に水生植物を植栽し水質浄化を行う手法は多数存在するが、そこで用いられる植物は、葦、ケナフなど回収コストに見合うだけの経済価値の無いものが殆どで、結果的には回収されることなく通年放置され、チッ素、リン、その他栄養塩の水域からの除去には結びつかなかった。つまり、請求項にあるようなイカダを用いてのクワイ、エンサイの富栄養化水域での栽培技術は存在しなかった。また、イカダに使用する資材の大半は樹脂、又は強化プラスチック製など高価である反面、自然界では容易に分解されず、廃棄における新たな問題が懸念されるものが一般的であった。生態系回復に関するものとしては、従来技術でも魚礁や鳥類の休息場所としてのイカダは存在したが酸性雨に対する直接的な解決手段は存在しなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、主に廃棄物を再利用したイカダと有用植物を用いて、富栄養化水そのものを培養液とし、経済価値の高い有用植物の水耕栽培技術の確立、及び水質浄化、周辺生態系の回復、酸性雨による水域の酸性化防止となる技術の提供である。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明において、ネットに入れられた貝殻培地付きイカダとそこに植栽された有用植物を富栄養化水域に設置し、チッ素、リンその他栄養塩を含んだ水を培養液として利用する。植栽する植物は吸収した栄養分の回収理由を確立するため、クワイ、エンサイ等の経済性の高い植物を用いる。植物は生長と共に水域汚濁の原因である栄養分を吸収するのは勿論であるが、同時にイカダ本体や貝殻培地に形成された微生物膜が水溶性有機物を分解し、植物の根が無機化した栄養分を吸収、吸着し、ヘドロ発生を押さえる。貝殻培地は酸性雨による水域の酸性化防止となる。イカダ周辺は小魚、両棲類、甲殻類、蜘蛛類等の生物空間や鳥類の餌場となる。以上のようにして課題解決のための手段が確立した。
【0006】
【実施の形態】図1のようなイカダの上板(1)、ケタ(2)の上に釘状フック(3)を取り付け、ネット切断片(4)を数カ所で引っかけ吊り下げる。ネット切断片の取り付け方は上板とケタで囲まれる空間部分にへこみが出来るように行い、へこみ部分に貝殻培地(5)を入れる。貝殼は植物の種の大きさ、種類により選定する。貝殻は細かく砕くこともできる。この様にしてセットされたイカダ上の貝殻培地中にクワイ、エンサイ等の有用植物の種、塊茎、苗等を植栽し、富栄養化水域に浮かべる。イカダは数枚単位でロープ等で連結し杭、アンカー等の適当な方法で水域に固定する。植栽時期は植物の種類、気象条件により異なるが、クワイなどであれば4〜7月の期間中に栄養体、もしくは苗の状態で植栽すれば7〜10月にかけて成長し、11月下旬〜12月にかけて収穫が可能となる。図4に示すような受風板(6)とこれと連動して作用する底層水揚水体(9)は底泥付近に堆積した栄養分の循環を促したり、水域の溶存酸素濃度を物理的に増加させたり、ネット切断片内の培地中にたまる浮遊物質を洗い流し培地上微生物膜の活性化を行う。
【0007】
【実施例】本発明では図1のような、貨物輸送で一般的に使われている簀の子状木製パレットの表面をバーナー等であぶり軽く炭化したものをイカダ本体に用いる。表面を炭化することにより微生物膜の形成を促すと共に、含水によるイカダの腐れを防ぐ事が出来る。この様なイカダの上板(1)とケタ(2)に釘状フック(3)それにネット切断片(4)を図2に示すように取り付ける。ネット切断片は上板とケタで囲まれる空間部分にへこみができる様に吊す。へこみの深さは植栽植物により調整する。このへこみ部分にアオヤギ等の貝殻倍地(5)を入れる。木製の簀の子状イカダは通常、貝の重量により沈下する。そこで、沈下防止と水面の高さ調整のため、ペットボトル等を用いた浮力体をイカダに取り付ける。これによりイカダ全体の水位を下げたいときは、ペットボトルに水を注入し水位調整を行う事が出来る。つぎにイカダ上の貝殻培地にクワイ、エンサイ等の種、塊茎、苗を植栽する。この様なイカダをロープ等で数枚単位で連結し、アンカー、杭等により富栄養化水域に設置する。エンサイは6から7月にかけて種の状態で貝殻培地中に蒔くか、スポンジ体に固着した状態の苗を培地上に植栽する。8月から10月頃にかけ根元から20cm程残し上部を2から3週間置きに収穫する事が出来る。クワイは関東地方では4月中に根茎を培地に埋め込んでおけば5月下旬くらいまでには発芽し、12月には収穫することが出来る。クワイの収穫の際は、ネット切断片を釘状フックから外し貝殻培地ごと陸揚げし、食用になる塊茎部分だけを回収する。回収後、塊茎の一部を貝殻培地中に残しイカダに再セットしておけば、翌年の植栽の手間が省ける。千葉県手賀沼西岸の農業排水路における継続試験では約1.1mx1.2mのイカダから約1.6kgの青クワイ収量と、乾燥重量で6キロ近い不活性SSを回収した。水域の硝酸態、アンモニア態のチッ素やリン酸態リンの除去だけでなく、イカダ本体、及び貝殻培地に形成された微生物膜による水溶性有機物の好気的分解が行われる。また、イカダ上や水中に繁茂した根域での魚類、甲殻類、両棲類、蜘蛛類の繁殖が認められた。4月から6月にかけてイカダ上に多数の魚卵が付着し、その後稚魚が多数確認された。蜘蛛は汚濁水中から発生するユスリカ、ウンカを捕食するための増加であった。両棲類はコンクリート護岸の水路などでは繁殖が難しいがイカダ上では多数確認された。この両棲類も周辺に集まる昆虫などを餌としての増殖であった。エンサイの様に植栽種が小さ目なものを風波、流れの大きい場所に設置する場合は、別の場所で育苗し、その後貝殻培地に移植したり、目の荒いスポンジの様なものに予め育苗し根をスポンジ体に活着させておき、スポンジ体ごとイカダ上貝殻培地中に植栽することも出来る。この様な場合ネット切断片だけで貝殻培地は必要としない事もある。イカダ本体部分は、その一部又は全部が簀の子形状になっているものであればよく、また、仮にそうなっていなくても貝殻培地を保持するネット切断片が適度のへこみを持ち、貝殻培地の上端をわずかに水面上に出すのに十分な浮力と風波に対する安定性があればよい。イカダは木製以外の材質でもよい。ネットを引っかけるための釘状フックもネット切断片をしっかり固定し、取り外しが容易な構造であれば紐で縛り付けても、洗濯バサミの様なもので挟んで固定してもよい。本実験においてはゼロ・エミッションの考え方により資源の投入を極力抑えるため、イカダ本体に木製廃パレット、ネット切断片に廃漁網、植栽培地に貝殻、浮力調整用バラストにペットボトル等を用いた。これらの資材は強度、経済性、安定供給性を満たすものであり、本発明が実用化可能な技術であることを裏付けるものである。また、植食性の大バン、カルガモ等の鳥が付近に生息する場所では、鳥による種や植物そのものの捕食を防ぐため、4角に適当な長さの支柱を立て、その上に防鳥ネットを被せる。また、水流が弱く根域が十分な水溶性養分に触れることが出来ない水域などでは、受風板(6)と風力を伝達する受風板支持棒(7)、ロープ(8)及びロープの先で底層水をかき揚げる働きをする底層水揚水体(9)による根域水の循環促進を行うことが出来る。ネット切断片のへこみ中に入れる培地は貝殻以外にも小石、木炭、セラミック片その他バクテリアが繁殖し易いものであればよく、これらのいずれか、又は全ての混合物を用いることも出来る。又、ネット切断片は樹脂製かごの様なもので代用する事も出来る。
【0008】
【発明の効果】この発明によれば次のような効果が発生する。
1.イカダを用いる水耕栽培であるので洪水、大雨などの水位変動の影響を受けない。
2.クワイ植栽においてはネット切断片ごと塊茎部を回収するため、従来の土中よりの回収より作業が大幅に軽減される。
3.植栽植物が水域の窒素、リンその他栄養塩類を吸収するためアオコの発生を押さえる事が出来る。
4.表面炭化したイカダ、あるいは貝殻培地に付着した微生物群が、酸素の多い水面付近で有機物を好気的に分解するのためBOD除去効果がある。
5.貝殼培地中の植物根域が水域の遮光原因物質である不活性SS等を吸着するため、光の入光深度が増し、沈水性植物の復活、及び水域全体の好気化をもたらす。
6.貝殻培地が酸性雨による水域の酸性化を押さえ、底層堆積物中からの重金属、アルミイオンの溶出を妨げる効果がある。
7.投入資材に木製廃パレット、ペットボトル、廃漁網、貝殻など他産業の廃棄物を再利用し、投入エネルギーに太陽光、風力を用いているため、資材投入費、運転管理費が大幅に削減できる。
8.コンクリート護岸の水域では魚礁、ビオトープをしての効果がある。
9.礫間浄化法などの微生物膜応用技術では容易に目詰まりを起こし、微生物活性機能が損なわれやすい。しかし、本発明はイカダ上での礫間浄化法的形態であるため、風波による生物膜洗浄効果があり、生物膜活性が持続する。
10.受風構造物と底層水揚水体により、湖沼における溶存酸素濃度の低い底泥付近の水をかき揚げ水域全体の溶存酸素量増加とヘドロ分解促進、植栽植物根域への栄養分の供給効果がある。
11.汚濁水域においては底泥で発生するユスリカ、ウンカ等を捕食する蜘蛛の発生がイカダ上植物で顕著に見られ、害虫対策としての効果がある。
12.植物体が葉より大量の水分を蒸散させるため、周辺環境の冷却効果がある。
13.光合成による二酸化炭素吸収効果がある。
14.廃棄物を資材として用いることによりゴミの減量効果がある。
15.農業的には給水、除草、肥料、農薬等全て不要である。
【出願人】 【識別番号】597033889
【氏名又は名称】藤本 治生
【出願日】 平成10年7月23日(1998.7.23)
【代理人】
【公開番号】 特開2000−37144(P2000−37144A)
【公開日】 平成12年2月8日(2000.2.8)
【出願番号】 特願平10−239387