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【発明の名称】 野菜の刺激性物質低減化剤
【発明者】 【氏名】稲葉 忠勝

【要約】 【課題】品種改良とは異なった手段により、辛みや目への刺激の少ないタマネギ、えぐみの少ないホウレンソウなど、刺激性物質の少ない野菜を提供することを目的とする。

【解決手段】この目的は茶種子サポニンあるいは茶種子サポニンと茶種子サポニン抽出粕との混合物を肥料に配合して野菜に施すことにより達成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 茶種子サポニンからなる野菜の刺激性物質低減化剤。
【請求項2】 茶種子サポニンと茶種子サポニン抽出粕の混合物からなる野菜の刺激性物質低減化剤。
【請求項3】 刺激性物質がタマネギの催涙性刺激性物質である請求項1記載の刺激性物質低減化剤。
【請求項4】 刺激性物質がホウレン草のえぐみである請求項1記載の刺激性物質低減化剤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は野菜の刺激性物質低減化剤に関する。さらに詳しくは本発明は、茶種子サポニンまたは茶種子サポニンと茶種子サポニン抽出粕との混合物からなる野菜の刺激性物質低減化剤に関する。
【0002】
【従来の技術】タマネギを切ったり皮を剥いたりすると目にしみたり涙が出たりするが、これはタマネギに含まれているS−プロペニルシスティンスルフォキシドが酵素と反応して揮発性の催涙性刺激性物質が発生するためであることは知られている。また、ホウレン草は蓚酸を多く含み、えぐみが強いため、生で食するには適していない。そこで目にしみないタマネギやえぐみの少ないホウレン草を得ることを目的とした品種改良は種々行われているが、現在までのところ完全に目的を達成した例は報告されていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は野菜の品種改良とは異なった手段によりこれら野菜の刺激性物質を低減化することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記目的は、茶種子サポニンまたは茶種子サポニンと茶種子サポニン抽出粕との混合物からなる野菜の刺激性物質低減化剤により達成される。本発明で用いられる茶種子サポニンは、茶種子の殻および渋皮を除いて搾油後、油粕をベンジンで脱脂し、残渣をn−ヘキサンで抽出し、抽出液にエーテルを加えて生成する沈殿を乾燥し、粉砕することによって得られる褐色の粉末である。茶種子サポニン抽出粕は、茶種子を搾油し、その油粕からサポニンを抽出した粕を粉砕したものである。
【0005】茶種子サポニンからなる野菜の刺激性物質低減化剤は、茶種子サポニンを水に溶解して野菜に噴霧することによっても適用できるが、好ましくは肥料に配合し、これを野菜に施すことにより適用される。茶種子サポニンは適当な担体に担持させて肥料に配合するのが望ましい。担体としては種々の配合肥料の増量剤として用いられるものが特に限定なく使用されるが、茶種子サポニン抽出粕の粉末と混合して肥料に配合するのが好ましい。茶種子サポニン抽出粕には茶種子サポニンが残存しているので、茶種子サポニンとして茶種子サポニン抽出粕粉末を肥料に配合して用いることもできる。
【0006】茶種子サポニンは、肥料中の濃度が0.0005〜0.6%(重量%)となるように配合するのが望ましい。0.0005%以下では効果が十分でなく、また0.6%以上では効果は十分であるが経済的に無駄である。茶種子サポニン1.0〜3.0%を含有する茶種子サポニン抽出粕粉末0.5〜2重量部を肥料9.5〜8重量部に配合するのが好ましい。
【0007】茶種子サポニンを配合した肥料は通常の肥料と同様にして野菜に施用され、その時期、回数、量は野菜によっても異なるが、野菜収穫前のおよそ10日〜2カ月に1〜3度、元肥および/または追肥として10〜40kg/10a施用される。茶種子サポニン抽出粕を配合した肥料を元肥として施用し、さらに茶種子サポニンを肥料に配合したものを追肥として1〜3回施すのが最も好ましい。
【0008】本発明の刺激性物質低減化剤が適用される野菜には特に制限はなく、キュウリ、ナス、トマト、ピーマンのような果菜類、ハクサイ、キャベツ、タマネギ、レタス、ホウレンソウのような葉菜類、ダイコン、ニンジン、ジャガイモ、サトイモのような根菜類に使用可能である。特に、タマネギのような刺激性の強い野菜やホウレンソウのようなえぐみの強い野菜に使用されると著しい効果が得られる。茶種子サポニンがこのような野菜の刺激性物質を低減化するメカニズムは不明であるが、茶種子サポニンが他感作用(アレロパシー)を有するのではないかと思われる。
【0009】
【実施例】次に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明する。実施例において%はすべて重量%を意味する。
実施例1茶種子サポニン抽出粕を配合した肥料(苦土入りクラウン有機入り化成888;清和肥料工業)を元肥として施肥(茶種子サポニン抽出粕:75kg/10aおよび150kg/10a)した畑に、タマネギ(品種:OK黄タマネギ)およびホウレンソウを植えた。タマネギには収穫前2カ月および1カ月の2回、ホウレンソウには播種20日後および30日後の2回、苦土入りクラウン有機入り化成888を追肥した。収穫したタマネギおよびホウレンソウについて45名(男女)による生食試験を実施した。タマネギについては、辛み、甘み、風味、目への刺激性、臭いの有無を、ホウレンソウについては、苦み、えぐみ、甘み、食味感を官能試験により試験した。さらにタマネギについては屈折糖度計により糖度を測定した。結果を表1および表2に示す。
【0010】
【表1】

【0011】
【表2】

【0012】表1から、茶種子サポニン抽出粕粉末150kg/10aを適用したタマネギ(150kg区)は、茶種子サポニン抽出粕粉末75kg/10aを適用した場合(75kg区)および茶種子サポニン抽出粕粉末を適用しない場合(対照区)に比較して、辛み、臭い、目への刺激性が低減化され、他方甘みは増加し、糖度が約2倍に上昇することが明らかである。表2から、150kg区は、75kg区や対照区に比較して苦み、えぐみともに著しく減少し、他方甘みは増加することが明らかである。
【0013】実施例2茶種子サポニン抽出粕粉末を配合した肥料(苦土入りクラウン有機入り化成888;清和肥料工業)を元肥として施肥(茶種子サポニン抽出粕粉末:150kg/10a)した畑に、タマネギおよびホウレンソウを植えた。茶種子サポニン抽出粕粉末にティーポニン(粗茶種子サポニン粉末の商品名;居初油化工業社製)を5%の濃度となるように配合し、この混合物を肥料(苦土入りクラウン有機入り化成888;清和肥料工業)に配合し、追肥として施肥(茶種子サポニン混合物20g/m2)した。タマネギには収穫前1カ月1回(1回区)または収穫前1カ月と2カ月の2回(2回区)、ホウレンソウには播種20日後1回(1回区)または20日後と30日後の2回(2回区)、上記肥料を追肥した。タマネギはOK黄とアースの2品種について実施し、ホウレンソウは露地栽培と施設栽培の2種について実施した。収穫したタマネギおよびホウレンソウについて45名(男女)による生食試験を実施した。タマネギについては、辛み、甘み、風味、目への刺激性、臭いの有無を、ホウレンソウについては、苦み、えぐみ、甘み、硝酸態窒素、食味感を官能試験により試験した。またタマネギについては屈折糖度計により糖度を測定した。結果を表3および表4に示す。さらに、ホウレンソウ(対照区および施設栽培、2回区)についてその成分分析を行った。その結果を表5に示す。ダイコン、ニンジンまたはピーマンを露地栽培し、上記と同様にして茶種子サポニン配合肥料を施肥した結果、辛み、苦み、青臭さが低減化し、甘みが増した野菜が収穫された。
【0014】
【表3】

【0015】
【表4】

【0016】表3から、1回区および2回区のタマネギは対照区のものに比較して、辛み、臭いが減少し、他方甘みが増し、生で食するに適したものになることが明らかである。表4から、1回区および2回区のホウレンソウは対照区のものに比較して、苦み、えぐみが著しく減少し、他方甘みが増加し、生で食するに適したものになることが明らかである。また表5は、施設栽培の2回区ホウレンソウは、えぐみの原因である蓚酸成分が劇的に減少していることを示しており、官能試験の結果を化学的に裏付けている。
【0017】
【発明の効果】本発明の茶種子サポニンからなる野菜の刺激性物質低減化剤を肥料に配合して野菜に施すことにより、辛み、苦み、目への刺激性が軽減され、甘みが増した野菜を収穫することができる。例えば、本発明の刺激性物質低減化剤をタマネギに適用すると、目にしみなくて、辛みが少なく、甘みに富んだものが得られる。ホウレンソウに適用すると、ホウレンソウ特有の強いえぐみや苦みのない、生で食することができるものが収穫される。野菜のえぐみや苦みは、野菜に含まれる硝酸態窒素や蓚酸などのあくに起因するが、本発明の刺激性物質低減化剤をホウレンソウに適用することにより、その硝酸態窒素や蓚酸の含量を著しく減少させることができる。
【出願人】 【識別番号】592000565
【氏名又は名称】稲葉 忠勝
【出願日】 平成10年7月23日(1998.7.23)
【代理人】 【識別番号】100091731
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 千嘉 (外1名)
【公開番号】 特開2000−37138(P2000−37138A)
【公開日】 平成12年2月8日(2000.2.8)
【出願番号】 特願平10−207981