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【発明の名称】 苺の栽培槽とその形成方法
【発明者】 【氏名】両角 智徳

【要約】 【課題】栽培槽の苺株の花梗が伸びて,培地上から枠体の外に真果がぶら下がるようになるが,アーム部分に花梗が曲がり押し付けられるようになって,その部分で花梗が折れ養分が真果へ行かなくなる。この花梗の折れを防止したい。

【解決手段】支柱と水平に設置されるアーム2等にて枠体を構成し,苺株を栽植する培地,それへの培養液供給装置及び温・冷風供給装置等をそれぞれ内包するようにした各シート体の両辺が,アーム2で受けられ吊り下がるようにして成る苺の栽培槽において,枠体の最下層のシート体を可撓性のある合成樹脂製シート体8として,その両側辺部がアーム2の長さ方向に沿って外方向へ,折り目11を境に適当幅の延伸部7を設けるようにしたことを特徴とする苺の栽培槽。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 支柱(1)と水平に設置されるアーム(2)等にて枠体を構成して,苺株を栽植する培地(3),それへの培養液供給装置(4)及び温・冷風供給装置(5)等をそれぞれ内包するようにした各シート体の両辺が,アーム(2)で受けられ吊り下がるようにして成る苺の栽培槽において,上記枠体の最下槽のシート体(6)の両側辺部が,上記アーム(2)の長さ方向に沿って上記培地(3)から上記枠体の外方向へ,適当幅の延伸部(7)を設けるようにしたことを特徴とする苺の栽培槽。
【請求項2】最下槽のシート体(6)が,可撓性を有する合成樹脂製シート体(8)であり,かつ,花梗(9)や真果(10)に対して表面がソフトタッチとなり得,また,幾つかの真果(10)の成長による自重によって下方に撓むような厚さであり材質である請求項1記載の苺の栽培槽。
【請求項3】結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂発泡シート体である請求項2記載の最下槽のシート体。
【請求項4】支柱(1)と水平に設置されるアーム(2)等にて枠体を構成して,苺株を栽植する培地(3),それへの培養液供給装置(4)及び温・冷風供給装置(5)等をそれぞれ内包するようにした各シート体の両辺を,アーム(2)で受けて吊り下げるようにして順次組立てて成る苺の栽培槽の形成方法において,上記枠体内の最下槽のシート体(6)である合成樹脂製シート体(8)が素材として一枚のシート状体であるときに,長さ方向の両辺近傍に,適当幅の延伸部(7)とした折り目(11)を上記アーム(2)に沿うよう予め設けておき,苺の栽培槽の設置時に,上記折り目(11)を上記アーム(2)に沿うよう押し当て,適宜な間隔で止め具(12)にて上記アーム(2)に固定して,適当幅の上記延伸部(7)を現出させるようにして組立てる苺の栽培槽の形成方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は,苺の高設式養液栽培システムの裁培槽であり,特に簡便・安価で増収が狙えるよう,培地並びに諸装置を各シート体で枠体内に吊り下げるようにして成る裁培槽であって,更に,良質な苺が得られるよう改良するものである。
【0002】
【従来の技術】昨今,苺の裁培は,その増収高効率化と作業の容易性を狙って,高設式養液栽培システムを採用するようになった。その基本構成は,支柱とアーム等にて枠体を構成した内部に,培地,培養液供給装置,温・冷風供給装置等を設けたものであるが,施工費が馬鹿にならない。そこで,比較的安価にできるものとして,上記の培地や諸装置それぞれを,各シート体で受けて,そのシート体の両辺をアームに固定し,吊り下げるようにして成るものがある。この裁培槽は,それぞれの装置を載置する手段が,箱体ではなく単なるシート体だから,安価にし得るのである。
【0003】この裁培槽の一例を図2にて説明すると,支柱1と水平に設置されるアーム2等にて枠体を構成し,苺株を栽植する培地3,それへの培養液供給装置4及び温・冷風供給装置5等を内包するように,それぞれを各シート体の両辺部を止め具12である通称パッカーにてアーム2に固定し栽培槽を形成している。パッカーとは,長さはいろいろあるが,200mm程の筒体で,その筒体周上の一部が長さ方向に欠落しており,この欠落部を,シート体の上からアーム2上に押圧し嵌着させるものである。
【0004】なお,13は培地5を受けると共に,培養液の余剰分は通すが,苺株の根は通さない不透根シートである。また,最下槽のシート体6は余剰液を受け集水し,その排水口14を端部に持つため,防水性の合成樹脂製シート体8としている。
【0005】図示省略したが,他の従来例としては,培養液供給装置4をドリップチューブとして培地3上に配置し,そこからの培養液を均一に提供するため浸潤性シートを培地3上へ載置したり,最上部にはマルチシートを被せたりするものがある。そして,不透根シート13と最下槽のシート体6との間に,温・冷風供給装置5であるダクトを配管して,最下槽のシート体6に保温・保冷役をも務めさせているものがある等いろいろなものがある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】苺株が成長すると花梗(花柄)9が伸びて行く。そして,やがて結実し果実である真果10が育つにしたがって,図2に示すように,培地3上や,不透根シート13上をはみ出して枠体の外にぶら下がるようになる。
【0007】育って大きく重くなった真果10においては,表面が軟らかな培地3上で育つものでも,真果10の接した部分が傷みやすい。不透根シート13の上面をはみ出してぶら下がった真果10は,不透根シート13が固定されているアーム2部分に,花梗9が曲がって押し当てられるようになるから,その部分の花梗9が折れやすいことになる。そして,花梗9が折れると養分が真果10の方へ行かなくなるのである。
【0008】このことを防止するために,不透根シート13や最上部に用いるマルチシート等の下なり上を,固定しているアーム2部分の長さ方向にわたって,曲率半径を大にすべく,かつ,軟らかな表面とすべく,タオルやスポンジを置いたり巻いたりして対応しているのが実状である。
【0009】また,苺の栽培槽を形成する際に割合面倒な問題が一つある。それは,前述した防水性の最下槽のシート体6は,余剰液を受けるし,排水口14を端部に持つため,枠体へ吊るす際には,水平性の確かさが必須要項である。ところが,なかなか面倒で,取り付け後、水を流してみては吊り直すということを,何回も繰り返すのが実状である。この最下槽のシート体6を,容易に水平性が得られるように,予めその手段を講じた合成樹脂製シート体8としたいのである。マルチシートや不透根シート13は,材質的にも軟らかく,また,水平性はそれ程厳格には必要としない。
【0010】
【課題を解決するための手段】この発明の構成を図1と図2に基づいて説明する。支柱1と水平に設置されるアーム2等にて枠体を構成し,苺株を栽植する培地3,それへの培養液供給装置4及び温・冷風供給装置5等をそれぞれ内包するようにした各シート体の両辺が,アーム2で受けられ吊り下がるようにして成る苺の栽培槽において,その枠体の最下槽のシート体6の両側辺部が,アーム2の長さ方向に沿って培地3から枠体の外方向へ適当幅の延伸部7を設けるようにしたことを特徴とする苺の栽培槽とした。上記において,延伸部7は,次述する理由で枠体のアーム2からやや下方に向けて延伸したものとなる。
【0011】すなわち,最下槽のシート体6が,防水性の可撓性を有する合成樹脂製シート体8であるものとする。そして,表面は花梗9や真果10に対してソフトタッチとなり得て,また,腰のある材質であって,しかも,成長した幾つかの真果10の自重によって下方に撓むような程度の硬さと厚さのものであるものを選定する必要がある。
【0012】マルチシートのような軟らかなものでは腰がなく全く駄目である。さりとて発泡スチロールでは,培養液の余剰分が漏れてしまうから防水性の薄いシートを重ねる必要がある。第一,合成樹脂製シート体8として薄くしなければならないから簡単に折れてしまいこの場合は使い物にならない。
【0013】勿論,合成樹脂製シート体8を,大部分は単に防水性のシート体であるとし,その長さ方向両辺部のみを,上記の必要条件を備えた材質のものにして,両者を接着剤や高周波溶着で貼り合わせたものとしてもよい。それならば,この最下槽のシート体6部分だけを金属板製とし,両辺部のみに上記同様の必要材質のものを接着剤等で貼り付けたものとすることもできる。
【0014】また,この発明の苺の栽培槽の形成方法について以下に説明する。支柱1と水平に設置されるアーム2等にて枠体を構成し,苺株を栽植する培地3,それへの培養液供給装置4及び温・冷風供給装置5等をそれぞれ内包するようにした各シート体の両辺を,アーム2で受けて吊り下げるようにして順次組立てて成る苺の栽培槽の形成方法において,その枠体内の最下槽のシート体6である合成樹脂製シート体8が,素材として一枚のシート状体であるときに,長さ方向の両辺近傍に,適当幅の延伸部7とした折り目11を,固定するアーム2に沿うことができるように予め設けておき,苺の栽培槽の設置時に,その折り目11をアーム2に沿うよう押し当て,適宜な間隔で止め具12にてアーム2に固定し,適当幅の延伸部7を現出させるようにして組立てる苺の栽培槽の形成方法とする。
【0015】
【発明の実施の形態】図示省略したが,この発明の実施の基本的な形態について,前述した不透根シート13と最下槽のシート体6との間に,温・冷風供給装置5であるダクトを配管した枠体の横幅が600mmの1槽式の例を説明する。基本的には従来例の図2のものと,要部以外は全体として大きく変わるものではないから,この図を参照すればよい。
【0016】支柱1やアーム2は,鉄製の直径22mmの直管パイプを使用し,それぞれが長さ900mmの支柱1の頂上近辺に,水平に設置されるアーム2にて枠体を構成する。培地3には,例えばクリプトモス・ミックス,難分解バークミックス,ロックウールなど適当な人工培地を採用する。この培地3を,苺株の根は透さずに培養液の余剰液だけを透す不透根シート13としてポリエステル製のシートで受けて,その下方に温・冷風供給装置5である300mm幅のダクトを配設して,最下槽の受け体としてのシート体6は,余剰液を受け排水口14を端部に持つために,防水性の可撓性を有する合成樹脂製シート体8であるPET樹脂発泡体を採用した。
【0017】このPET樹脂発泡体は,本来,単一組成からなる高分子化合物,すなわちホモポリマーであるが,強靭性・耐熱性・電気特性等に優れた結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂発泡体であり,焼却時に有毒ガスの発生がなく環境にもやさしいものである。しかし,ポリスチレンのような非晶性高分子ではないので,押出発泡が難しかったが,最近になって押出発泡シートの製造が可能となったものである。
【0018】上記の各シート体の幅は当然枠体の幅600mmよりも広く,両アーム2間に吊り下げるようにして,それぞれの両辺部をアーム2上に沿うように重ねて押し当てて,適宜な間隔で止め具12であるパッカーでアーム2に固定する。その際,水平性を必要とする最下槽のシート体6は,採用する合成樹脂製シート体8に,予め設けてある適当幅の延伸部7を区分した折り目11を,アーム2に沿うよう押し当て,その延伸部7を図1に示したように現出させるようにして固定する。その時,延伸部7の露出長が大き過ぎるようだったら鋏で切除すればよい。
【0019】苺株が成長すると花梗9が伸びて,やがて結実し果実である真果10が育つにしたがって,当然自重が大きくなり最上部のマルチシートや不透根シート13上をはみ出してぶら下がるようになる。このことは,図1に示すように,合成樹脂製シート体8は可撓性があるから,その延伸部7上に真果10が増えて来て,その重さで延伸部7が撓み下方に傾斜するようになる。
【0020】したがって,アーム2に固定するときに,必ずしも下方に傾斜させることはなく水平でもよい。最も止め具12同士の間隔次第で,傾斜度は自由に調整できる。
【0021】
【実施例】実施例として,枠体は前述した構造の1槽式とし,培地3には廃材利用としてロックウールより安価な杉・桧の粉砕樹皮を採用した。不透根シート13としては日東紡績製(商品名「BKS−0812」)を採用,最下槽のシート体6である合成樹脂製シート体8には,積水化成工業製の再生PET樹脂発泡体(商品名「セルペットF」)の厚さ1.3mm物を,延伸部7の幅を170mmとした折り目11を設けたものを用いた。なお,この合成樹脂製シート体8自体の移動は,両側の折り目11で両辺を内側に折り畳んだ上で巻き込んだものとするもよい。
【0022】当然ながら,花梗9の折れの発生は少なく,収量は,苺株を片側に2条ずつ栽植したこともあって,従来の平均収量の約50%増を得た。施工費も20%程安価にできるから相当に有利である。なお,前記の両アーム2間600mmを半分の300mmとし,250mmの間を空けて2連式としても作業上問題はなかった。
【0023】
【発明の効果】この発明は,苺株が成長して花梗9が伸び,真果10が枠体からはみ出しても,真果10はまだ延伸部7上にあるから,花梗9は折れないでいて養分は真果10へと供給される。
【0024】延伸部7上に多くの真果10が増えて来て重くなれば,これらの自重にて延伸部7は曲がり下方へ傾斜するようになる。その時は,真果10等はぶら下がって,花梗9の一部が下方へ傾斜した延伸部7面に接するようになるが,延伸部7面は腰がある材質のものだから,曲率半径も大きく,また,軟らかな表面だから花梗9が折れることはない。したがって,真果10への養分供給は止まることがないから,従来のようにアーム2にタオルやスポンジを巻いたりする必要がなくなる。
【0025】この発明は,合成樹脂製シート体8の材質の選定には苦労したが,それこそ最下槽のシート体6の長さ方向の両辺に,予め折り目11を設けて,適当幅の延伸部7を設けただけの至極単純なアイディアだけで,花梗9の折れ防止ができて増収に大いに貢献できる。
【0026】また,苺の栽培槽を形成するときは,折り目11を両アーム2にあてがうだけで,水平性が容易に得られるようになって,完成後の余剰液の流れ等の調整に気を揉むことがなくなるなど,効果の大きい素晴らしい発明と言える。
【0027】なお,苺の栽培槽の構成要素としてシート類を採用しているから,施工費が安くできることは勿論,それぞれのシート類も簡単な止め具12で両アーム2間に嵌着させているだけなので,シート類が傷んだときは,どのシートも容易に交換できるなど維持費も節約でき,収量向上と合わせて大変有利である。
【出願人】 【識別番号】000125462
【氏名又は名称】笠原工業株式会社
【出願日】 平成10年7月23日(1998.7.23)
【代理人】 【識別番号】393019768
【氏名又は名称】393019768 中沢 恒雄
【公開番号】 特開2000−37135(P2000−37135A)
【公開日】 平成12年2月8日(2000.2.8)
【出願番号】 特願平10−223644