| 【発明の名称】 |
移植用結合性培土 |
| 【発明者】 |
【氏名】石岡 信也
【氏名】山口 哲彦
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| 【要約】 |
【課題】少量の添加で培土を固化でき、苗根に対する生長阻害作用がなく、施肥によって吸水性が低下しない吸水性樹脂を用いた移植用結合性培土の提供。
【解決手段】(1)Ν−ビニルカルボン酸アミドの単独重合体架橋物または共重合体架橋物の粉末と、水に不溶性の材料粉末とを含有する土壌からなる移植用結合性培土、 (2)前記 (1)の培土に栽培植物の種子を播き育苗してなる栽培植物の苗と一体化した移植用結合性培土、 (3)前記 (1)の培土に播種、灌水して育苗した後、乾燥する栽培植物の苗と一体化した移植用結合性培土の製造方法、 (4)前記(1)の培土にて栽培植物を育苗し、乾燥、固化させた後、栽培植物をその根周辺の培土と一体化した状態で移植する移植方法、及び (5)前記 (1)の培土に保持された苗。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 Ν−ビニルカルボン酸アミドの単独重合体架橋物または共重合体架橋物の粉末と、水に不溶性の材料粉末とを含有する土壌からなることを特徴とする移植用結合性培土。 【請求項2】 Ν−ビニルカルボン酸アミドがΝ−ビニルアセトアミドである請求項1に記載の移植用結合性培土。 【請求項3】 Ν−ビニルカルボン酸アミドの共重合体架橋物が、Ν−ビニルカルボン酸アミドと、イオン性モノマーおよび/または非イオン性モノマーとの共重合体架橋物である請求項1または2に記載の移植用結合性培土。 【請求項4】 イオン性モノマーの比率が非イオン性モノマーに対して30モル%以下である請求項3に記載の移植用結合性培土。 【請求項5】 Ν−ビニルカルボン酸アミドの単独重合体架橋物または共重合体架橋物の架橋密度が10-5〜0.01である請求項1乃至4のいずれかに記載の移植用結合性培土。 【請求項6】 水に不溶性の材料粉末が有機系材料粉末、または無機系材料粉末である請求項1乃至5のいずれかに記載の移植用結合性培土。 【請求項7】 有機系材料粉末がセルロース、レーヨン、ポリエステル、ナイロン、ポリアクリロニトリル、ビニロン、親水化処埋ポリオレフィンから選択される請求項6に記載の移植用結合性培土。 【請求項8】 Ν−ビニルカルボン酸アミドの単独重合体架橋物または共重合体架橋物の粉末と水に不溶性の材料粉末との混合物を土壌に混合して得られる請求項1乃至7のいずれかに記載の移植用結合性培土。 【請求項9】 請求項1乃至8のいずれかに記載の培土に、栽培植物の種子を播き育苗してなる栽培植物の苗と一体化した移植用結合性培土。 【請求項10】 Ν−ビニルカルボン酸アミドの単独重合体架橋物または共重合体架橋物の粉末と水に不溶性の材料粉末とを含有する土壌からなる培土に、播種、灌水して育苗した後、乾燥することを特徴とする栽培植物の苗と一体化した移植用結合性培土の製造方法。 【請求項11】 請求項1乃至9のいずれかに記載の移植用結合性培土にて栽培植物を育苗し、培土が結合し固化するに充分な含水量となる状態まで乾燥した後、栽培植物をその根周辺の培土と一体化した状態で移植することを特徴とする移植方法。 【請求項12】 請求項1乃至8のいずれかに記載の移植用結合性培土に保持された栽培植物の苗。 【請求項13】 含水量が40重量%以下である請求項12に記載の移植用結合性培土に保持された苗。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、農園芸分野の育苗に用いられる移植用結合性培土に関する。更に詳しくいえば、苗をその根周囲の培土と一体化した状態で容易に移植できる結合性培土、その移植用結合性培土の製造方法、その移植用結合性培土を用いる移植方法、およびその移植用結合性培土に保持された苗に関するものである。 【0002】 【関連技術の説明】従来より、農園芸作業において、ポット、トレーなどの育苗用容器に培土を充填し、この培土に播種し、苗を集中生育させた後、この生育苗を機械を用いて移植する方法が広く行われている。一般に苗の移植作業にあたっては、苗の活着率を向上させるために、苗の根の周囲の培土を崩壊させないことが好ましく、特に、機械移植の場合は、作業性を向上させ、根の損傷を防止するために、苗の根の回りの培土を結合させることが望まれている。 【0003】培土の土壌粒子を結合させる方法としては、培土にバインダーとなる樹脂などの物質を添加する技術が開発されている。例えば、吸着性を有する吸水性樹脂である、酢酸ビニル−アクリル酸メチル共重合体ケン化物、ポリアクリル酸ナトリウム架橋物、ビニルアルコール−アクリル酸塩共重合体などのイオン系吸水性樹脂を培土に混合して、保水剤とバインダーの両方の機能をもたせる方法が開発されている(特開昭58-31919号公報参照)。 【0004】ところが、このようなイオン系吸水性樹脂には、通常イオン性モノマーが30モル%を超える割合で含まれ、イオン化度が高い。このようなイオン化度の高い吸水性樹脂は、植物の根に対する生長阻害作用があることが知られており、収穫量が低下したり、栽培期間が長期化するという不都合があった。また、上記イオン系吸水性樹脂は、脱イオン水を非常に良く吸水するものの、イオン性化合物を含有する水溶液の吸水性能が低い。一般に使用される肥料はイオン性化合物を多く含んでいるので、施肥によって肥料由来のイオン性化合物がイオン系吸水性樹脂の吸水性を低下させ、十分な保水機能を発揮できないという問題があった。 【0005】ノニオン系のN−ビニルカルボン酸アミド系吸水剤をバインダーとして使用する人工培土あるいは土壌基盤結合剤とする技術も報告されている。例えば、特開平8-256592号公報には、N−ビニルカルボン酸アミド系吸水剤と土壌および/または砂と混合して人工培土として用いることが開示されているが、育苗用の結合性培土としての提案はされていない。また、特開平8-298859号公報には、N−ビニルカルボン酸アミドを主成分とする水溶性高分子が傾斜地を緑化する際に吹き付けられる基盤材の土壌結合剤として用いられることが開示されているが、単なる結着剤としての使用であり、育苗用の結合性培土としての提案はされていない。さらに、特開平7-163648号公報には、N−ビニルカルボン酸アミド系吸水剤と10〜1000μmの有機高分子を混合したものが、培土との混合時に吸水剤が団子状に固まるママコを防止するのに有効である旨の開示がされているが、土壌との混合等の具体的例示はない。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の課題は、少量の添加で培土を固化でき、植物に対する生長阻害作用がなく、施肥によって吸水性が低下しない吸水性樹脂を用いた移植用結合性培土、その製造方法、その結合性培土を用いる移植方法、およびその移植用結合性培土に保持された苗を提供することにある。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明者らはN−ビニルカルボン酸アミドの単独重合体架橋物または共重合体架橋物の粉末と、水に不溶性の有機あるいは無機材料粉末とを土壌に配合した培土により上記の課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は下記の移植用結合性培土、その製造方法、移植方法、および移植用結合性培土に保持された苗を提供するものである。 【0008】1)Ν−ビニルカルボン酸アミドの単独重合体架橋物または共重合体架橋物の粉末と、水に不溶性の材料粉末とを含有する土壌からなることを特徴とする移植用結合性培土。 2)Ν−ビニルカルボン酸アミドがΝ−ビニルアセトアミドである前記1に記載の移植用結合性培土。 3)Ν−ビニルカルボン酸アミドの共重合体架橋物が、Ν−ビニルカルボン酸アミドと、イオン性モノマーおよび/または非イオン性モノマーとの共重合体架橋物である前記1または2に記載の移植用結合性培土。 4)イオン性モノマーの比率が非イオン性モノマーに対して30モル%以下である前記3に記載の移植用結合性培土。 【0009】5)Ν−ビニルカルボン酸アミドの単独重合体架橋物または共重合体架橋物の架橋密度が10-5〜0.01である前記1乃至4のいずれかに記載の移植用結合性培土。 6)水に不溶性の材料粉末が有機系材料粉末、または無機系材料粉末である前記1乃至5のいずれかに記載の移植用結合性培土。 7)有機系材料粉末がセルロース、レーヨン、ポリエステル、ナイロン、ポリアクリロニトリル、ビニロン、親水化処埋ポリオレフィンから選択される前記6に記載の移植用結合性培土。 8)Ν−ビニルカルボン酸アミドの単独重合体架橋物または共重合体架橋物の粉末と水に不溶性の材料粉末との混合物を土壌に混合して得られる前記1乃至7のいずれかに記載の移植用結合性培土。 9)前記1乃至8のいずれかに記載の培土に、栽培植物の種子を播き育苗してなる栽培植物の苗と一体化した移植用結合性培土。 【0010】10)Ν−ビニルカルボン酸アミドの単独重合体架橋物または共重合体架橋物の粉末と水に不溶性の材料粉末とを含有する土壌からなる培土に、播種、灌水して育苗した後、乾燥することを特徴とする栽培植物の苗と一体化した移植用結合性培土の製造方法。 【0011】11)前記1乃至9のいずれかに記載の移植用結合性培土にて栽培植物を育苗し、結合性培土の含水量を40重量%以下まで乾燥し固化させた後、栽培植物をその根周辺の培土と一体化した状態で移植することを特徴とする移植方法。 【0012】12)前記1乃至8のいずれかに記載の移植用結合性培土に保持された栽培植物の苗。 13)含水量が40重量%以下である前記12に記載の移植用結合性培土に保持された栽培植物の苗。 【0013】 【発明の実施の形態】本発明は、先に本出願人が開発した保水性バインダーであるN−ビニルカルボン酸アミドの単独重合体架橋物または共重合体架橋物(単独重合体架橋物または共重合体架橋物を、以下単に(共)重合体架橋物と略記する。)のうち特定の架橋密度のものは高い保水性を有するだけでなく、吸水状態において表面粘着性を示し、この吸水状態を経て乾燥させると接着効果を示すことに着目し、樹脂の粒子径を小さくすることで接着効果を増大させ、さらに水不溶性の有機または無機微粒子を混合することにより、培土との混合時に吸水性樹脂が団子状に固まる、いわゆる「ママコ」の形成を防止したものである。なお、本発明において、培土の結合とは、培土が機械移植時の外力に耐えるに十分な強度に固化された状態、すなわち、育苗容器の底面を軽く外側から押圧して容器を変形させたときに、根の周囲の培土が崩壊せずに容器の形を保ったまま容器から外れる状態をいう。 【0014】本発明の結合性培土は、加水前の状態、および加水して吸水した状態においては、培土中の土壌粒子は結合されていないが、培土が吸水した状態から乾燥するのに伴い、土壌粒子が接着されて、多孔質体としてー体化され、機械による移植作業において育苗した植物の根周辺の培土が根と遊離せずに一体化した状態で容易に移植できるものである。 【0015】本発明において用いられる、保水性バインダーは、特開平3-223304号公報、特開平4-230250号公報および特開平4-346833号公報に記載されている、下記の式(I)で表わされるN−ビニルカルボン酸アミドの(共)重合体架橋物である。 【0016】 【化1】
式中、R1 及びR2 は、水素原子またはメチル基であり、R3 は水素原子、メチル基、またはエチル基であり、R2 とR3 とは一緒になって炭素数3〜5のアルキレン基を形成していてもよい。 【0017】具体的例としては、Ν−ビニルアセトアミド、Ν−メチルーΝ−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、Ν−メチル−N−ビニルホルムアミド、Ν−ビニルプロピオンアミド、Ν−メチルーΝ−ビニルプロピオンアミド、N−ビニルピロリドンなどが挙げられる。これらの中でも、保水性及び接着性の高いΝ−ビニルアセトアミドの単独重合体架橋物または共重合体架橋物(以下、PNVAと略記する。)が好ましく、さらに耐候性がよいことからN−ビニルアセトアミドの単独重合体架橋物が好ましい。 【0018】N−ビニルカルボン酸アミドの共重合体架橋物において、Ν−ビニルカルボン酸アミドと共重合し得るイオン性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸、2−アクリルアミドエタンスルホン酸、2−メタクリルアミドエタンスルホン酸、3−メタクリルアミドプロパンスルホン酸、アクリル酸メチルスルホン酸、メタクリル酸メチルスルホン酸、アクリル酸−2−エチルスルホン酸、メタクリル酸−2−エチルスルホン酸、アクリル酸−3−プロピルスルホン酸、メタクリル酸−3−プロピルスルホン酸、アクリル酸−2−メチル−3−プロピルスルホン酸、メタクリル酸−2−メチル−3−プロピルスルホン酸、アクリル酸−1,1′−ジメチル−2−エチルスルホン酸、メタクリル酸−1,1′−ジメチル−2−エチルスルホン酸またはこれらの塩が挙げられる。 【0019】またN−ビニルカルボン酸アミドの共重合体架橋物において用いられる非イオン性モノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリルアミド、メタアクリルアミド、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、ビニルアセテート、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレー卜、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどが挙げられる。 【0020】イオン性モノマーの共重合体中の比率は、非イオン性モノマーに対して、30モル%以下が好ましく、20モル%以下がより好ましい。イオン性モノマーの共重合の比率が、非イオン性モノマーに対して30モル%以下ならば、植物の成長阻害を起こすことなく、保水性が低下しない。また、イオン性モノマーの共重合の比率が30%を超えると、耐候性が悪くなる。さらに土壌のpH、金属イオンの影響を受けやすくなる。保水性バインダーとしては、前記したモノマーの中から選ばれる一種または二種以上の混合物を使用できる。 【0021】PNVAは、Ν−ビニルアセトアミドと1分子中に重合可能な不飽和基を少なくとも2個以上有する化合物である架橋剤とを、必要により共重合モノマーとを酸素の存在しない条件下でラジカル重合開始剤を用いて製造することができる。重合プロセスについては必ずしも限定されないが、ポリアクリル酸ソーダ架橋物の製造方法として、従来特開平3-223304号公報、特開平4-230250号公報、および特開平4-346833号公報等に記載されている水溶液重合、逆相懸濁重合等を採用することができる。 【0022】Ν−ビニルカルボン酸アミドの(共)重合体架橋物の製造において使用される架橋剤としては、テトラアリルオキシエタン、ペン夕エリスリトールテトラアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、エチレングリコールジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、トリエチレングリコールジアリルエーテル、ジアリルエーテル、単糖類、二糖類、多糖類、セルロースなどの水酸基を1分子内に2個以上有する化合物から誘導されるポリアリルエーテル、トリメリット酸トリアリル、クエン酸トリアリル、シュウ酸ジアリル、コハク酸ジアリル、アジピン酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、フマル酸ジアリル等、1分子中にカルボキシル基を2個以上有する化合物から誘導されるポリアリルエステル、ジアリルアミン、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレートなどの1分子内にアリル基を2個以上有する化合物、シュウ酸ジビニル、マロン酸ジビニル、コハク酸ジビニル、グルタル酸ジビニル、アジピン酸ジビニル、マレイン酸ジビニル、フマル酸ジビニル、クエン酸トリビニル、ピロメリッ卜酸テトラビニルなどの1分子内にビニルエステル構造を2個以上有する化合物、N,N′−ブチレンビス(Ν−ビニルアセトミド)、N,N′−ジアセチル−N,N′−ジビニル−1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサンなどのビス(N−ビニルカルボン酸アミド)化合物、N,Ν′−メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の、複数個のアクリルアミド構造や(メタ)アクリル基を有する化合物、ジビニルベンゼン、ジビニルエーテル、(メタ)アクリル酸アリル等の、1分子中に不飽和基を2個以上有する化合物など公知の架橋剤が使用可能である。これらの架橋剤は一種または必要により二種以上用いることもできる。 【0023】架橋剤の使用量は、(共)重合成分を基準として10-3〜1モル%、好ましくは10-2〜 0.1モル%の範囲である。架橋剤の使用量が10-3モル%未満では架橋点が少なく、樹脂が水に溶解し保水性が発揮できず、また1モル%を超えると樹脂の粘着性が低下し好ましくない。 【0024】Ν−ビニルカルボン酸アミドの(共)重合体架橋物の製造において使用される重合開始剤は、従来知られている過酸化物、有機あるいは無機過酸もしくはそれらの塩、アゾビス系化合物の単独あるいは還元剤との組み合わせによるレドックス系のものが用いられる。これらの中で特に好ましいものはアゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2′−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩などのアゾビス系開始剤である。 【0025】重合開始剤の使用量は、(共)重合成分を基準として0.0005〜5モル%、特に好ましくは0.005 〜 0.5モル%である。重合開始温度は通常−10℃〜80℃程度であり、反応時間は30分〜30時間程度である。 【0026】本発明の育苗用培土に用いられるN−ビニルカルボン酸アミドの(共)重合体架橋物の架橋密度については、PNVAの場合、10-5〜0.01が好ましい。ここで架橋密度とは、架橋高分子中の架橋している構造単位(架橋点)の数の全体の構造単位の数に対する割合をいう。 【0027】架橋密度が10-5より低いと充分な保水性能が発現せず、架橋密度が0.01より高いと土壌粒子を結合させる接着力が弱くなり、さらに保水性能も発揮できなくなる。また、結合培土に含まれるΡNVAの架橋密度が高いと、培土に加水してPNVAを膨潤させた時に、培土がポットの内面にフィットしにくい。使用するN−ビニルカルボン酸アミドの(共)重合体架橋物粉末は平均粒径 1.0mm以下の細かいものものが好ましい。 【0028】本発明において、N−ビニルカルボン酸アミドの(共)重合体架橋物粉末と共に土壌に混合される有機高分子粉末あるいは無機材料粉末は、水に実質的に不溶性であって、かつ粉末状または繊維状であれば特に限定されるものではない。 【0029】有機高分子粉末としては、例えばセルロース、レーヨン、ポリエステル、ナイロン、ポリアクリロニトリル、ビニロン、親水化処埋ポリオレフィン(親水化処埋ポリエチレン、ポリプロピレン等)の高分子粉末が使用できる。この中で特に好ましいものは、自重の 0.2〜10倍程度の水を吸収できる親水性高分子粉末であり、特にセルロース、ビニロン、親水化処埋ポリオレフィンが好ましい。親水性高分子粉末を添加することにより培土への吸水性樹脂混合時に、吸水性樹脂同士の互着が防止でき、混合性が改善される。 【0030】また、水に不溶性の無機粉末としては、パーライト、ゼオライト、ケイソウ土、バーミキュライト、セラミック、シリカあるいは細砂等が挙げられる。これらの中で特に好ましいのはケイソウ土である。前記有機高分子あるいは無機物は、平均粒径1.0 mm以下のものが好ましい。 【0031】本発明においては、Ν−ビニルカルボン酸アミドの(共)重合体架橋物粉末と水に不溶性の材料粉末との混合物を予め調製し、この混合物を土壌に均一に配合することにより、「ママコ」の形成が効果的に防止できる。水に不溶性の材料粉末とΝ−ビニルカルボン酸アミドの(共)重合体架橋物との混合割合は、培土が機械移植時の外力に耐えるに十分な強度に固化され得るように、水に不溶性の材料粉末の種類、培土の種類、育苗の対象となる植物の種類に合わせて選択される。 【0032】また、本発明の結合性培士には、必要により、バインダー(皮膜形成物質)、増量剤、防腐剤、殺菌剤、殺虫剤、酸化防止剤、脱臭剤、除草剤、土壌殺虫剤、肥料、活力剤、pH調整剤などを含有または混合することもできる。本発明の結合性培土においては、ΡNVAに加えて、土壌の硬度を調整することなどを目的に水溶性のポリマーを併用しても良い。水溶性ポリマーとしては、周知のものを使用することができる。 【0033】本発明において、土壌に混合するN−ビニルカルボン酸アミドの(共)重合体架橋物の混合量は、土壌や苗の種類、大きさにより適宜選択されるが、0.01〜 5.0重量%程度が好ましく、 0.1〜3重量%程度がより好ましい。混合割合が0.01重量%未満である場合は粘着力が不足し、培土の土壌粒子が結合しにくくなる。また、 5.0重量%を超える場合は吸水した架橋物の膨潤により土壌が盛り上がってしまい、植物の生育上好ましくない。従って、前記範囲のN−ビニルカルボン酸アミドの(共)重合体架橋物を添加することにより、根に対する生育阻害作用がなく、かつ保水性を付与することができ、苗の生育を促進させることができる。 【0034】なお、本発明におけるΝ−ビニルカルボン酸アミドの(共)重合体架橋物の脱イオン水に対する吸水倍率は、10〜200が好ましく、20〜100倍がより好ましい。ここで、(共)重合体架橋物の脱イオン水に対する吸水倍率とは、(共)重合体架橋物の粉体を少なくとも1時間以上、脱イオン水中に浸潰し、(共)重合体架橋物に脱イオン水を飽和するまで含浸させたときの(共)重合体架橋物(自重)に対する吸水量の割合として求めたものである。 【0035】本発明において用いられる土壌とは、植物を栽培するための土壌、土壌混合物、調製培土として通常用いられるものであれば特に限定されず、例えば、庭土、畑土、黒土、赤玉土、腐葉土、堆肥、ピートモス、砂、川砂、日向石、鹿沼土、桐生砂、富士砂、壌土、バーミキュライト、パーライト、ゼオライト、珪藻土、シリカ等、およびこれらの混合物を含む。また土壌には、水分、肥料、有機質、pΗ調節剤、保水性物質などが含有されていてもよい。また、本発明において用いられる土壌は、粉末状、顆粒状のいずれでもよいが、結合させた状態において、培土の通気性を確保して根腐れ等を防止するためには、団粒構造を有する土壌を用いることが好ましい。 【0036】次に本発明による苗の移植方法について説明する。前記した構成の移植用結合性培土を、育苗用容器に充填する。容器としては特に限定されず、ポット、トレーなどの育苗用容器、プランター、鉢などを用いることができる。ついでこの充填培土に、通常の栽培方法に従い、播種、灌水して苗を生育させる。苗を生育させて移植が可能になった時点で灌水を停止する。そして、培土が結合し固化するに充分な含水量となる状態まで乾燥させ、機械移植時の外力に耐えるに十分な強度に結合させる。すなわちポットの底面を軽く外側から押圧したときに、培土が苗の根部を保持しつつポットの形に成形された状態で、崩壊せずにポットから外れることが必要である。培土は乾燥度が高いほど固くなるが、移植できれば十分であり、乾燥し過ぎると生育に悪影響を及ぼすので、培土の水分含有量は40重量%以下、好ましくは30重量%以下であることが好ましい。 【0037】培土が乾燥固化した時点で、圃場などへ苗の移植を行う。移植後も苗の根部の周囲には、保水機能を備えた培土が存在するので、苗の生育が良好となる。本願の対象となる発明には、移植用結合性培土に保持された、移植時の作業性が改善され、苗の損傷が防止された培土と一体化された各種の苗も含まれる。苗の種類は特に限定されず、野菜、花卉(かき)、苗木、稲などに広く適用されるが、特にタマネギ、ネギなどの根の本数が少なく根の回りの安定した結合性培土(根鉢)の形成がこれまで困難であった直根系の植物の根鉢をも確実に形成できる。 【0038】 【作用】本発明の移植用結合性培土においては、苗の栽培のための灌水によってN−ビニルカルボン酸アミドの(共)重合体架橋物が水分を吸収し、これを保持する。その後、周囲の培土が乾燥するのに伴って、保水層に保持された水分は徐々に放出され、周囲の培土に拡散される。従って、培土の過度の乾燥および過湿を防止できるため、培土の水分含有量を栽培に適した範囲に容易に制御でき、灌水の管理が容易である。 【0039】 【実施例】以下に、N−ビニルカルボン酸アミド(共)重合体架橋物の製造例、試験例、本発明の実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、下記の例により本発明は何等制限されるものではない。 製造例:N−ビニルカルボン酸アミド共重合体架橋物の製造30℃に保った浴中で、窒素の導入管と温度計、排気管を備えた三つ口の1リットル容量セパラブルフラスコにN−ビニルアセトアミド250g、N,N′−ジアセチル−N,N′−ジビニル−1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン 0.5gを脱イオン水740gに溶解し、 1.0リットル/分で系内に窒素を約1時間導入して脱気した。その後、脱気水10mlに溶解した2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩600mgを加え、12時間静置した。得られたゲルをミキサーで裁断して50℃で12時間真空乾燥したのち、機械粉砕して粒径1mm以下の架橋物樹脂粉末を得た。この架橋物樹脂粉末の脱イオン水の吸液倍率は自重の50倍であり、生理食塩水の吸液倍率は自重の50倍であった。 【0040】試験例:上記で製造したN−ビニルカルボン酸アミド共重合体架橋物(乾燥状態)を透明ポリエチレン製の袋に入れて吸湿を防ぎ、25℃で紫外線を照射し(照射線量350μW/cm2 )、所定時間毎にサンプリングして脱イオン水の吸液倍率を測定したところ、100日間の照射後も50倍の吸液倍率を維持していた。比較のため、市販のポリアクリル酸塩系吸水剤について、同様の条件で試験したところ、初期の120倍の吸液倍率が20日後に30倍、35日後に10倍に低下した。 【0041】実施例:水分含量9%のナイスマット(商品名、三井東圧肥料(株)製;粒状)500gに、飽和吸水倍率約50重量倍、粒径50μm以下であるPNVA(昭和電工(株)製:Ν−ビニルカルボン酸アミドの単独重合体架橋物,架橋密度:0.005 )と水に不溶性のセルロース粉末(KCフロック(商品名):日本製紙(株)製,粒径150μm以下)を80:20(重量比)に混合したもの 5.0g添加混合して、タマネギ育苗用培土を調製し、育苗ポット160鉢に充填した。ついで、この育苗ポットに灌水し、PNVAを膨潤させた後、ここにタマネギ種子を播種し、常法により60日間育苗した。苗が移植可能な大きさに生育した段階で、灌水を1週間停止し、培土を自然乾燥させた。ついでポットの底面を軽く外側から押圧すると、苗の根部を保持しつつポットの形に成形された状態で、培土を崩壊せずにポットから外すことができた。苗の根の生育は良好であった。ついで、ポットから外した10株を選んで、1mの高さから自然落下させたが、10株とも培土の崩壊は起こらなかった。残りの苗は、培土の崩壊なしに圃場に機械移植することができた。移植後も、苗は良好に生育し、灌水停止による生育の影響はなかった。 【0042】比較例:吸水性樹脂として実施例1のPNVAとセルロースの混合物の代わりに、アクリル酸塩系吸水性樹脂(スミカゲルS−50(商品名):住友化学工業(株)製)5.0gを用いたほかは実施例1と同様にして、タマネギ育苗用培土を調製し、育苗ポッ卜に充填し、タマネギの育苗を行った。苗が移植可能な大きさに生育した段階で、灌水を1週問停止し、培土を自然乾燥させた。ついでポットの底面を軽く外側から押圧すると、苗の根部を保持しつつポットの形に成形された状態で、培土を崩壊せずにポットから外すことができた。実施例の苗と比較すると、苗の根の長さ、培土への根張りの量はともに少なかった。ついで、ポットから外した10株を選んで、1mの高さから自然落下させたところ、4株で培土の崩壊が見られた。残りの苗は、移植後実施例と同様な生育結果を示した。 【0043】 【発明の効果】以上説明したように、本発明の移植用結合性培土は、Ν−ビニルカルボン酸アミドの単独重合体架橋物または共重合体架橋物の粉末と、水に不溶性の材料粉末とを含有する土壌を容器に充填してなる培土に、種子を播き育苗してなるものであって、吸水状態からの乾燥により土壌を構成する粒子が育苗された根の周囲に安定して結合されたものである。本発明の移植用結合性培土は、保水性バインダーとしてN−ビニルカルボン酸アミド(共)重合体架橋物を含むので、吸水状態における表面の粘着性が高く、乾燥させたときの結合度が高い。アクリル酸の(共)重合体と比較して、耐光、耐候性等に優れて安定であり、栽培中に保水性、粘着性が低下することがなく、植物に対する成長阻害作用がない。従って、本発明の結合性培土を用いて育苗すれば、培土への根張りが良好であり、タマネギ、ネギなどの根の本数が少なく根の回りの安定した結合性培土(根鉢)の形成が困難であった直根系の植物についても活着率の高い苗を得ることができ、栽培期間の短縮化、収穫量の増加が実現される。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000002004 【氏名又は名称】昭和電工株式会社
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| 【出願日】 |
平成10年7月21日(1998.7.21) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100081086 【弁理士】 【氏名又は名称】大家 邦久 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開2000−32843(P2000−32843A) |
| 【公開日】 |
平成12年2月2日(2000.2.2) |
| 【出願番号】 |
特願平10−204547 |
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