| 【発明の名称】 |
海藻増殖用緩傾斜堤ブロック |
| 【発明者】 |
【氏名】佐々木 国隆
|
| 【要約】 |
【課題】海水面上の岩礁域の潮間滞における有用な海藻の生育場を、岩礁域に代えて湾内や海浜域に安全にコンスタントに形成し、さらに生育域の拡大を図ることのできる海藻増殖用緩傾斜堤ブロックを提供する。
【解決手段】ポーラスコンクリート単体あるいは下部を普通コンクリートとの積層または桝状の複合構造体とし、上部のポーラスコンクリートの骨材粒径を調整して保水および排水機能を制御することで目的とする潮間滞に生育する海藻の生育域を拡大できるようにする。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポーラスコンクリート単体あるいは下部を普通コンクリートとの積層または桝状の複合構造体とし、上部のポーラスコンクリートの骨材粒径を調整して保水および排水機能を制御することで目的とする潮間帯に生育する海藻の生育域を拡大できるようにしたことを特徴とする海藻増殖用緩傾斜堤ブロック。 【請求項2】 上面を嵌め込み式のポーラスコンクリート板状体として取り換え自由な構造体としたことを特徴とする請求項1に記載の海藻増殖用緩傾斜堤ブロック。 【請求項3】 上面に波を高くまで打ち上げるための導波用の溝として、中央に切込溝を、あるいは両端に切欠溝を平行に複数形成したことを特徴とする請求項1〜2の何れか1つに記載した海藻増殖用緩傾斜堤ブロック。 【請求項4】 打ち上げられた海水を迅速に排出するため、底面に複数の平行あるいは交差する溝部を形成したりポーラスコンクリート層と普通コンクリート層底部とが連通する上下方向の貫通穴を形成したことを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載した海藻増殖用緩傾斜堤ブロック。 【請求項5】 ブロックの表面周囲あるいは全面に鉄平石等の天然石材を配設したり、擬岩模様として景観に配慮したことを特徴とする請求項1〜4の何れか1つに記載した海藻増殖用緩傾斜堤ブロック。 【請求項6】 板状体あるいは階段状体にして上下方向に相欠きを設け、重ね合わせたりあるいは平面状での嵌合せ構造としたことを特徴とする請求項1〜5の何れか1つに記載した海藻増殖用緩傾斜堤ブロック。 【請求項7】 ポーラスコンクリート中に補強のためのスチールファイバーやガラスファイバー、カーボンファイバー等の補強繊維部材を混入したことを特徴とする請求項1〜6の何れか1つに記載した海藻増殖用緩傾斜堤ブロック。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は海藻増殖用緩傾斜堤ブロックに係わり、海水面上の岩礁域の潮間帯における有用なフノリ類やマツモ類等の海藻の生育場を、岩礁域に代えて湾内や海浜域に安全にコンスタントに形成し、さらに生育域の拡大を図ることのできる海藻増殖用緩傾斜堤ブロックを提供しようとするものである。 【0002】 【従来の技術】我が国の沿岸岩礁域の潮間帯は、有用な海藻であるヒジキやマツモ、フノリ類等の生育場となっているが、怒濤の打ち寄せる滑りやすい岩場であるので採取にはかなりの危険を伴う。これら海藻の群落を効率的に造成し、安全に採取できる技術を確立することは、産業的に有益で地域振興にもなり、漁業生産の増大に寄与するばかりでなく、沿岸環境を健全に維持することにもなるが、今まで有効な手段が無かった。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】上記した如く有用な海藻を安全に採取できるように、怒濤の打ち寄せる岩礁域に何か製品を据え付けるにしても現場で工事を行うにしても、新たに工事道路を建設したり、海から船で行ったり、あるいは波の荒れた天候では満足に工事ができない等といった難点がある。さらに、へたにいじることで生育環境を変えてしまい、せっかくの生育場を破壊することにもなりかねなかった。そこで、磯根資源の生育場である岩礁地帯には、すぐ側に海浜や漁港を兼ねた湾が隣接していることが多く、この場所に浮遊している生殖細胞を着生させて海藻の生育場を拡大して形成できるようにすることを考えた。 【0004】従来からも海岸の砂浜地帯や湾内の波打ち際の浸食を防止したり、水際部への乗り降りを容易にするため各種のコンクリートブロックや現場打ちコンクリートでスロープ部や階段部などが形成されてきているが、防波が目的の1つでもあり波の打ち上げを防ぐことから、生育域の拡大には不向きであり、また、コンクリート面も浮遊している生殖細胞を捕らえにくく、海藻の生育にはあまり適してはいなかった。 【0005】一般に岩礁域における海藻の着生状況は、海面下20cm位までをヒジキ類が、海水面前後を岩のりが、海面上から25cm位までをピリヒバ類が、25〜55cm位をマツモ類が、120cm位までをフノリ類の群落が形成されている。磯根資源として特に高価なのはマツモ類で、生育域の範囲をさらに高く遷移して拡大させることは産業的に有益であるし、安全に採取場所に近づけるのであれば子供たちに学習のための、海中の水棲生物や海藻などが豊富に生育する自然観察の場所として提供できるし、また、街の人を呼んで入場料を取って採取させることで、漁民の現金収入源にもなるし、地域振興や観光産業にも貢献できる。 【0006】 【課題を解決するための手段】本発明は、上記したような従来技術における課題を解消することについて検討を重ねて創案されたものであって、ブロック体をスロープ状あるいは波が走りやすい構造を付加した階段状として、さらに表面あるいは全体を無数の凹凸構造を持つポーラスコンクリートとすることで、胞子や遊走子等の海藻の生殖細胞を捕らえ易く、遷移の促進と生育域の拡大を図ることができ、かつ表面の凹凸構造により作業する人が滑りにくいので収穫作業がしやすくなるブロックを形成することに成功したものであって以下の如くである。 【0007】(1) ポーラスコンクリート単体あるいは下部を普通コンクリートとの積層または桝状の複合構造体とし、上部のポーラスコンクリートの骨材粒径を調整した保水および排水機能を制御することで目的とする潮間帯に生育する海藻の生育域を拡大できるようにしたことを特徴とする海藻増殖用緩傾斜堤ブロック。 【0008】(2) 上面を嵌め込み式のポーラスコンクリート板状体として取り換え自由な構造体としたことを特徴とする前記(1)項に記載の海藻増殖用緩傾斜堤ブロック。 【0009】(3) 上面に波を高くまで打ち上げるための導波用の溝として、中央に切込溝を、あるいは両端に切欠溝を平行に複数形成したことを特徴とする前記(1)〜(2)項の何れか1つに記載した海藻増殖用緩傾斜堤ブロック。 【0010】(4) 打ち上げられた海水を迅速に排出するため、底面に複数の平行あるいは交差する溝部を形成したりポーラスコンクリート層と普通コンクリート層底部とが連通する上下方向の貫通穴を形成したことを特徴とする前記(1)〜(3)項の何れか1つに記載した海藻増殖用緩傾斜堤ブロック。 【0011】(5) ブロックの表面周囲あるいは全面に鉄平石等の天然石材を配設したり、擬岩模様として景観に配慮したことを特徴とする前記(1)〜(4)項の何れか1つに記載した海藻増殖用緩傾斜堤ブロック。 【0012】(6) 板状体あるいは階段状体にして上下方向に相欠きを設け、重ね合わせたりあるいは平面状での嵌合せ構造としたことを特徴とする前記(1)〜(5)項の何れか1つに記載した海藻増殖用緩傾斜堤ブロック。 【0013】(7) ポーラスコンクリート中に補強のためのスチールファイバーやガラスファイバー、カーボンファイバー等の補強繊維部材を混入したことを特徴とする前記(1)〜(6)項の何れか1つに記載した海藻増殖用緩傾斜堤ブロック。 【0014】 【発明の実施の形態】本発明のブロックは、ポーラスコンクリートを主体に構成されているものであって、このポーラスコンクリートというのは、骨材粒子がセメントをバインダーとして連結される構造で、多様な孔径で連結していると共に、表面に微細な無数の凹凸を持つので単なるコンクリートに比べ表面積が数百倍にもなるため、海藻の生殖細胞が補足されやすく着生面積も非常に大きい。また、骨材の粒径を変化させたりバインダーであるセメントの量を変化させることで、海水の通水速度や保水性を自在に調整できる。 【0015】沿岸岩礁域における海藻の遷移は、海面付近にフノリ類、マツモ類、ピリヒバ類の順序で入植し、入植順位に合わせて徐々に海面上部に押し上げられ遷移していく。一方、干出傾度は上にいくほど湿度が低い乾燥状態となり、下の海面に近づくほど湿度が高い常に濡れた状態であるので、ピリヒバ類は乾燥に弱いことになる。そこで、海岸部の緩傾斜堤に有用な海藻の着生域を形成し拡大させるためには、海面付近では打ち寄せる波を迅速に排出させるためポーラスの粒径を大きくして通水しやすい構造とすることで、ブロック表面が濡れていない単なる湿度の高い湿潤状態に保つことができ、有用でない海藻であるピリヒバ類の着生を防止して生育域を減少させることができる。 【0016】逆に、干満の潮の満ち引きにより引き潮時は長く乾燥状態にさらされることから、上部にいくほどポーラスの粒径を小さくして遡上波を保水できるようにすることで、日中の太陽光の照り返しでも乾燥しにくい構造とすることができ、フノリ類、マツモ類等の有用海藻の生育域を拡大できる。このように、ポーラスコンクリートの粒径の大きさを変化させたブロックをスロープ状に下部から上部に配置することで、効率よく目的とする海藻の増産に寄与できる。 【0017】上記したような本発明によるものの具体的な実施態様を添付図面に示すものについて説明する。最初に、海岸の砂浜地帯や湾内の波打ち際、および漁港の船着き場で船を陸揚げするために一様勾配で傾斜させて形成された堰堤の、比較的使用頻度の少ない両端部の箇所等に使用して、有用な海藻の生育場を設営して漁業生産増大の一助ともなるスロープ状に形成されたブロックについて説明する。図1は全体をポーラスコンクリートとした海藻増殖用緩傾斜堤スロープブロック1で、ブロック同士を段重ねするための前面の相欠き部8、後面の相欠き段部8aが形成され、さらに千鳥状に設置して相互に強固に連結するための連結筋12を、前面のコーナー部の角取り部11および後面の中央部の切り欠け部11aに設け、図9に示すようにシャックル等の連結具12aで適宣連結され、目的とする施工面に対し安定して設定される。その連結部に適宣モルタルやコンクリートを間詰めして使用されることは従来の他のコンクリートブロックと同様である。 【0018】但し、ポーラスコンクリートは無数の空隙を有することから普通コンクリートに比べ強度が不足しており、波浪が怒濤の如く打ち寄せる箇所での使用に当たっては、強度不足を補うためにガラスファイバーやカーボンファイバー、スチールファイバー等の各種補強繊維を混入することで所用の強度を得ることができる。これは、以後説明するポーラス全般にわたっていえることでもある。 【0019】図2は、上部をポーラスコンクリート層6とし、下部を普通コンクリート層7の積層構造としてポーラスの強度不足を普通コンクリートで補強したスロープブロック1aで、下部の普通コンクリート層7に十字に交差して組み合わせた排水溝9と、図3の断面図に示す如く交差部にポーラス層と連通する凹部9aを形成したもので、ブロック表面のポーラス部に到達した波浪は、下部の凹部から迅速に流下して排水溝を通って海中に排出される。また、波が引き返す時に、ブロックを引き起こそうとする揚圧力が作用するが、ポーラスの連通孔や排水溝でエネルギーを吸収して揚圧力を減圧し、緩傾斜堤の安定性をアップする。 【0020】図4は、ポーラス部の周囲四端を普通コンクリートで補強すると共に、保水力をアップするため桝状の嵌凹部10として形成し、後からポーラスコンクリート塊6aとして図5に示す如く一体的に成形したスロープブロック1bで、別々に製造することからセットしやすいし、また、海況条件が変わって粒径分布を変えなければならなくなった場合や、万一破損した場合でも取り換えが容易である。連結方法および排水溝対応は図2に示すブロックに同じである。また、当然のことながら製造時に一体に成形して良いことは言うまでもないことである。 【0021】緩傾斜堤が長く、波をさらにブロック上部に打ち上げる必要がある場合においては、図6に記載のスロープブロック1cを使用することで解決できる。すなわちブロック1cは図示の如く、図4のブロック1bの上面に導波用の溝として、両端に切欠溝14あるいは中央に切込溝14aを設けたもので、波が射出流としてさらに上段に打ち上げられるように形成してある。また、打ち上げられてポーラス部6aに保水された海水はそのまま溜めておけるようにブロック下部には排水溝を設置していない。 【0022】ブロックの連結は後面の相欠き段部8aに前面の突出した相欠き部8を段重ねする事は前述の通りであるが、ブロック同士の端面における連結は、連結筋に代えて角取り部11や切り欠け部11aに連結用インサート部体13が埋設されており、図10に示すように3カ所に連結穴を有する薄肉のリング13aを介してボルト13bで一体的に適宣連結され安定して施工面に設定される。これらの連結方法は、図9や図10あるいは他の類似する方法の中から適宣に選ぶことができることは言うまでもない。 【0023】つぎに、これらの海藻増殖用緩傾斜堤スロープブロック1〜1bを使用した実施例の平面図を図7に、断面図を図8に示す。緩傾斜堤の下部の波打ち際にはポーラスの粒径を20〜30mm前後と大きくして全体をポーラスコンクリートとしたスロープブロック1が、中央部には中位の粒径10〜20mmとしたスロープブロック1aが、上段部には小さな粒径の5mm前後として保水力をアップしたスロープブロック1bが採用された場合で、海水は満水時にスロープの傾斜面を走って高く打ち上げられ上段部に保水され、干潮時の太陽に照らされる日中でも、着生した海藻に水分を補給するので脱水によって乾燥して死滅することを防止できる。また、波打ち際の下段部は速やかに排水されるのでピリヒバ類などの生殖細胞が着生しにくい構造となっており、入植順位の早い有用なマツモ類で覆われたまま生育域を拡大してくれるので増産に寄与する。なお、スロープ面が長い場合には、使用される各種ブロックに図6に示す切込溝や切欠溝を形成することで、射出流となってより遠くまで波を打ち上げることができることは前述の通りである。 【0024】図11〜15には、連結金具や段重ねによるブロックとは別の安定手段を用いた例を示したもので、図11にはブロックの平行する2面をくびれた谷形状18とし全体をポーラスとしたブロック2が示されており、これを複数個組み合わせて波形状に嵌め合わせたものが図12に平面図として示されている。 【0025】図13には六角形状として中央に排水のための貫通穴15を形成したポーラスコンクリートと普通コンクリートの積層構造としたブロック3が図示してあり、そのブロック3を蜂の巣のように嵌合して組み合わせた状況を図14に平面図として示してある。 【0026】さらに、桝状とした普通コンクリートの板状体にポーラス塊6aを組み合わせたものとして、縦方向の1面に半円の突起16を設け、他方の面を半円の凹部16aとして嵌合溝を形成し、桝部上面を景観に配慮して鉄平石等の天然石材を埋設したり擬石模様17としたスロープブロック4を示す。緩傾斜堤としての使用方法やポーラス塊を交換できることなどは前述した通りである。 【0027】今まで説明してきたスロープブロックは、沿岸岩礁域に代えて漁民が生活の糧とする漁港の船着き場の一部や湾内の別な場所、あるいは近くの砂浜の海岸部に海藻の増殖場を形成して海に慣れた漁民が海藻を採取したりするのに使用されるが、湾内の波打ち際や海岸の砂浜にこのブロックを設置して、自然観察を勉強する場所として学童に提供したり、観光場所として都会の人々を呼ぶには多少安全面で問題がある。それは、ブロック表面が海藻に覆われ海に不慣れな人が歩くには多少滑りやすくなっているので、非常に緩い1:10〜1:20の傾斜面の構造体として設営される場合には表面のポーラスの凹凸構造で問題が少なくなると思われるものの、こうするには非常に長い砂浜が必要となるが、日本はすぐ山が迫る急峻な地形であるため一般には1:3〜1:5といった少しきつい勾配としなければならない場合が多く、そうした場合都会人や子供といった海に不慣れな人たちには歩きにくく危険が伴う。そこでその場合の対処法として形状を階段状とすることが考えられ、以下にその採用例について説明する。 【0028】図16は全体をポーラスとして、斜めとした底面に対し上面をほぼ水平となるよう形成し、底面の前面前方にいくほど厚くして相欠き部8、相欠き段部8aを段重ねして使用することで階段状に形成できるようにした緩傾斜堤階段ブロック5で、ブロック同士を連結する手段は図1に示すスロープブロック1に同じである。また、ポーラスの粒径を海水面に近い下段ほど大きくして波打ち際に打ち上げられた波の早期の排水や揚圧力の低減を図り、上段にいくほど小さくして保水性を高める構造として使用されることは前述の通りである。 【0029】図17は、ポーラスコンクリートと普通コンクリートの積層構造とした階段ブロック5aで、階段部の上面の前部を山形状19として景観を考慮して見た目に変化を設けると共に、海藻の生育域の拡大を図っている。図2同様迅速な排水を図るため下面に排水溝9とポーラス層に連通する凹部9aを形成してある。この排水溝9および凹部9aは、緩傾斜堤の上段部に使用する場合には設けないなど、設定する箇所によって変更して使用されることは言うまでもない。 【0030】図18は、この排水溝や凹部を設けないもので、上面のポーラス層を5〜15cmの凹凸のある擬岩模様17aとした階段ブロック5bで、表面積を増やして生殖細胞の補足率をアップすると共に、保水量をも大幅に増加できる。また、緩傾斜堤の上段部に使用することで打ち上げられた波をさえぎり、堤を越えて背面の民家の方へ溢流することが防止できるなどの利点を有する。 【0031】また、階段状にブロックを段重ねして使用した場合には、段々に形成された突起部が壁となって波の打ち上げを防ぐので波が高くまで運ばれないし、波浪の圧力が強いところではブロックが破壊される危険を伴う。そこで図19には、図6に示すスロープブロック1c同様階段ブロック上面両端部に導波用の溝として切欠溝14および中央部に切込溝14aを、前方にいくほど溝が深く後方にいくほど浅く、さらにブロックとして段重ねして施工された状態において、これらの溝の底部が斜めに一直線になるよう形成した緩傾斜堤階段ブロック5cを示す。 【0032】このことによって、打ち上げられた波は、打ち上げ時に一段ごとに少しずつブロック上面の後方の左右に扇形に拡散し、波が戻るときは逆に上面の前方左右に扇形に拡散して、波に運ばれてきた生殖細胞がブロックの階段面の全面に均等にばらまかれると共に生育のために必要な水分を補給するし、波浪を分散してブロックに作用する圧力を減少してくれる。なおブロック上面は、周囲四端を普通コンクリートで桝状に形成してあり、ポーラス塊6aを補強すると共に桝状に形成されていることから保水力のアップが図れることは前述の通りである。 【0033】つぎに、これらの海藻増殖用緩傾斜堤階段ブロックを数種類組み合わせて使用した、比較的波浪が強くない海岸の砂浜や湾内の波打ち際で、奥行きが短い箇所での実施例で、ブロックの段重ね数も少なく波が階段部で妨げられるとしても上部まで打ち上げられる緩傾斜堤とした施工断面図が図20として示されている。ブロックの組み合わせは図7や図8と同様、波打ち際にあたる下段部には、全体を粒径の大きいポーラス構造とした階段ブロック5を、中段部は粒径を中位としてブロック下部に排水溝および凹部を形成した階段ブロック5aを、上段部は粒径を小さくして保水性をアップさせる構造とした階段ブロック5d等を組み合わせて使用されることは前述の通りである。 【0034】さらに、海浜や大きな湾内の波打ち際で、奥行きが長くブロックの段重ね数も多く、水際部よりできるだけ奥行き深くまで波を打ち上げて、有用海藻の生育域を拡大できるようにした実施例として、使用するすべてのブロックに切込溝14aおよび切欠溝14を形成したものとして図21に平面図を、図22と図23に断面図を示す。 【0035】ブロックの組み合わせは図20同様、波打ち際の下段部には上層を粒径の大きいポーラスコンクリート層、下層を排水溝や凹部を形成した普通コンクリートの積層構造として早期の排水や揚圧力の低減を図った階段ブロック5fを、中段部には粒径が中位のポーラスブロック塊を嵌凹部に嵌合すると共に下部に排水溝や凹部を形成した階段ブロック5cを、上段部には粒径の小さいポーラスコンクリート塊を嵌凹部に嵌合すると共に排水溝や凹部を設けない構造として保水性を高めた階段ブロック5e等として使用する。図22に示す如く、波は切込溝14aや切欠溝14を通って少しずつ各段ごとに波を分散させながら上段まで到達した後、さらに引き返しながら再度少しずつ分散させて階段部全面を波で覆うことができる。 【0036】今までは階段ブロックとスロープブロックをそれぞれ単独に組み合わせてなる実施例のみを説明してきたが、海面上を階段ブロックとしてきつい勾配に対応すると共に歩行者の安全を図り、海面下をスロープブロックとして海藻の生育域の拡大に寄与させるなど、それぞれのブロックを適宣に組み合わせて使用できることは言うまでもない。 【0037】また、本発明による海藻増殖用緩傾斜堤ブロックを潮位以下の漸深帯にまで延長して使用することで、2〜3m深さの海中のブロック表面に、アラメ、カジメ、ホンダワラ、コンブ等の大型の海藻群落が形成され、アワビ、サザエ、ウニ等の棲息場やハタハタ等の魚の産卵場や人間の食用として磯根資源の増産や回復に寄与することができる。 【0038】上記したような本発明によるものは海藻増殖用緩傾斜堤ブロックの全体をポーラスコンクリートとしたり、あるいは上部をポーラスコンクリート層として下部を普通コンクリート層とする積層構造として形成される。また、漁港の船着き場のスロープブロックとしたり、海浜や港湾への階段ブロックとして使用したりすることで、ブロック表面に有用な海藻であるフノリやマツモ類が着生し、生育域を岩礁域外にも拡大せしめ、漁業生産量の増大、子供たちが学習するための自然観察場所の提供、ならびに地域振興にも一役買うことができる。 【0039】また、上記したようなブロック上面のポーラス層の粒径を、緩傾斜堤に使用するブロックの下段部を大きく、中段部を中位に、上段部を小さくするなどの調整をして、打ち上げられる波浪の迅速な排水および保水を制御することで目的とする海藻の生育域を拡大させることができる。 【0040】さらに、ブロックの下部に排水溝を設けたり、ポーラス層に連通する凹部を形成することで、打ち上げられた波が迅速にブロック下部に流下して溝を通って海中に排出されるとともに、引き返し時の波による揚圧力を低減してブロックの安定化を図れる。 【0041】ポーラス塊の周囲四端を普通コンクリートで補強した桝状とすることで保水力のアップを図るとともに、取り換え自由に形成したことで各種の海況条件や経年劣化による対応が自在にできる利点を有する。 【0042】ブロック上面に波を高くまで打ち上げるための導波用の溝として、両端部の切欠溝や中央部の切込溝を形成することで、射出流あるいは遡上、降下による波の各段ごとの分散機能を有し、生殖細胞のブロック全面への均等な拡散と生命を維持するための水分の補給ができ、有用海藻がコンスタントに生育できるとともに、波浪の強い箇所でのエネルギーの減衰効果も期待できる。 【0043】ポーラスコンクリート中にガラスファイバーやカーボンファイバー、スチールファイバー等の各種補強繊維を混入することで、強度アップを図って波浪が怒濤の如く打ち寄せる場所での使用にあたっても強度的に安定して長期にわたって使用可能ならしめる。 【0044】スロープブロックとして漁港の船着き場の一部として使用することで、有用海藻の生育域を形成でき、漁民に新たな収入源を提供するし、あるいは階段ブロックとして海水浴場や港湾の波打ち際の一部に生育域を形成することで、子供たちに安全な海辺の生物などの自然観察の場所として、または街の人を呼び込んでの海藻刈り場ともなり、地域振興や観光産業の掘り起こしにもなる。 【0045】 【発明の効果】上記したような本発明によるときは、岩礁域での潮間帯に代えて、海浜や湾内や漁港にブロックを使用することで、安定かつ効果的な海藻類着生層を形成し、フノリ類やマツモ類等の目的とする有用な海藻類の有効かつ合理的で恒久的な着生や生長が図られると共に、生育域が拡大して海藻の生産量の増大が図られる。さらに、学童のための自然観察場所や一般の人の海藻採取場として開放することで、地域振興や観光産業にも貢献できるものであることから、商業的にその効果の大きい発明である。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】592263506 【氏名又は名称】株式会社ホクエツ
|
| 【出願日】 |
平成10年6月17日(1998.6.17) |
| 【代理人】 |
|
| 【公開番号】 |
特開2000−35(P2000−35A) |
| 【公開日】 |
平成12年1月7日(2000.1.7) |
| 【出願番号】 |
特願平10−169482 |
|