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【発明の名称】 生分解性育苗容器およびその成形方法
【発明者】 【氏名】上田 誠一

【氏名】檜垣 成夫

【氏名】須藤 学

【氏名】八木 康介

【氏名】船木 正彦

【要約】 【課題】土壌中にそのまま移植しても苗根の成長を妨げないようにする。

【解決手段】紙繊維に澱粉およびポリビニルアルコールを添加した材料により成形した容器本体1の側壁部2および底面部3に、厚み0.05〜0.50mmの薄肉部5,6を、容器本体1の表面積に対し5〜30%の面積割合で形成して土壌中で生分解により崩壊し易くする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも紙繊維と水溶性結合材とを含有させた材料により成形した容器本体の側壁部に、薄肉部を分散させて形成した生分解性育苗容器。
【請求項2】 容器本体の外表面に凹部を有する薄肉部を形成した請求項1記載の生分解性育苗容器。
【請求項3】 薄肉部の肉厚を、0.05〜0.50mmとした請求項1記載の生分解性育苗容器。
【請求項4】 薄肉部の肉厚を、0.07〜0.30mmとした請求項1記載の生分解性育苗容器。
【請求項5】 薄肉部の面積割合を、容器本体の表面積の5〜30%とした請求項1ないし4のいずれかに記載の生分解性育苗容器。
【請求項6】 薄肉部の面積割合を、容器本体の表面積の10〜20%とした請求項1ないし4のいずれかに記載の生分解性育苗容器。
【請求項7】 少なくとも容器本体の側壁部下端から上方2/3の高さまでの範囲に、薄肉部を形成した請求項1ないし6のいずれかに記載の生分解性育苗容器。
【請求項8】 紙繊維60〜80部と、澱粉にポリビニルアルコールを配合した水溶性結合材20〜40部との混合物100部に、水40〜150部を添加した配合物100部に対し、非アルカリ金属の長鎖脂肪酸塩を0.5〜1.5部添加して混合した成形材料を、140〜200℃に加熱し、薄肉形成部を有し、固定側金型および可動側金型のパーティング面を密着させてキャビティ内に充填し、ついで前記パーティング面の間に0.1〜0.2mmの間隙を形成し、この間隙よりキャビティ内の水蒸気を放出除去して成形材料を乾燥固化させる生分解性育苗容器の成形方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、播種して発芽させた樹木,園芸植物,野菜などの苗を、育成したり、商品として展示したりするとともに、そのまま土壌に移植することができ、苗根の成長を妨げない生分解性育苗容器およびその成形方法の技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の育苗容器としては、肉厚が0.2〜0.4mmのビニル系シートを鉢形状に熱成形した、いわゆるポリポットが用いられていた。この育苗容器は、製造が容易なこと、取扱いが容易なこと、コストが低廉であることなどの利点を有しているが、そのまま土壌に移植すると、生分解性がないので、土壌中に残存して苗根の成長を阻害するという欠点があった。
【0003】そこで、生育した苗を土壌に移植する際には、その育苗容器を苗から取り除いて苗のみを移植する必要があり、大量の場合には、その取り除き作業に多大の労力が必要になり、その上、取り除く作業の際に、苗根を傷め易いという問題点があった。さらに、ダイオキシン発生に関連し、取り除いた育苗容器の廃棄処分の面からも問題点を有していた。
【0004】このような問題点を解決するために、土壌微生物により分解され易い材料、すなわち、生分解性を有する脂肪族ポリエステルまたは乳酸系プラスチックを用い、この材料を射出成形して育苗容器を成形し、苗根の成長を阻害しないように、容器自体の底や周辺部に、長方形の穴を複数個設けた育苗容器が提案されている(例えば、特開平8−98628号公報参照)。
【0005】また、生分解し易いヤシ殻の中果皮より製造した繊維乾燥粉末材料、いわゆるココナツパウダー40重量%を、脂肪族ポリエステルのような生分解性プラスチックに含有させた材料を用い、これを混練して形成したシートを、真空成形して作製したヤシ殻繊維混合生分解性プラスチックよりなる育苗容器も提案されている(例えば、プラスチックエージ 43巻 1997年4月号 159頁参照)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来の育苗容器にあっては、以下に説明するような問題点を有していた。
【0007】生分解性を有する脂肪族ポリエステルまたは乳酸系プラスチックにより作製した育苗容器の場合は、土壌中で崩壊するのに数カ月の期間が必要であるため、その間における苗根の成長が阻害されないように、長方形の穴を複数個設ける必要がある。そして、この穴の大きさは、苗根の成長を促進する上からは大きいほど有効であるが、反面、育苗容器の強度を低下させる要因になって容器自体の形状を保持するのが難しくなるという問題点があった。さらに、育苗させている間において、灌水や移動などにより容器中の土壌が流出し易くなり、また穴から苗根が露出し易くなったりして、苗根を傷めるという問題点があった。
【0008】また、ヤシ殻繊維混合生分解性プラスチックにより作製した育苗容器の場合は、肉厚が80μmでも土壌中で崩壊を開始するのに3週間もかかるので、土壌に移植した苗にとって、育苗容器の中に3週間も閉じ込めて置くことは苗の成長の上から好ましいことではないという問題点があり、土壌中での崩壊を早めるために、肉厚を薄くすると、強度が弱くなり、育苗中に苗根を傷めたりするという問題点もあった。
【0009】そこで、出願人は、従来における育苗容器に較べ、育苗期間中は灌水や移動などに耐えるだけの耐水性と強度を備え、苗とともに土壌に移植した後は、生分解により速やかに崩壊するような育苗容器として、少なくとも紙繊維と水溶性結合材とを含有させた成形材料により成形したものを提案している。
【0010】そして、本発明は、土壌中に移植した後は、容器本体の少なくとも一部が生分解により速やかに崩壊され易くして、苗根の成長が妨げられないようにした育苗容器を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するために、本発明の育苗容器においては、紙繊維と水溶性結合材とを含有させた生分解性の材料を用いて容器本体を成形し、この容器本体の側壁部には、生分解により崩壊し易い薄肉部を分散させて形成することとしている。
【0012】そして、このようにすることにより、結合材で強固に結合された紙繊維が絡み合った状態で容器自体を形成しているので、移動などに耐える強度を有し、しかも、多数の気孔および透孔を有して通気性,通水性を備えているので、苗に灌水する際に容器が濡れても、その表面から速やかに水分が蒸発されて乾燥し、灌水によっては崩壊しない耐水性を示すことができる。また、紙繊維および水溶性結合材は、雨水あるいは土壌中の水分を吸水して容易に軟化し、ついで、土壌中の細菌,微生物により分解されて崩壊することにより土壌化されるが、側壁部に形成した薄肉部はより速やかに崩壊され易いので、苗根の成長が妨げられることがなくなる。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の生分解性育苗容器は、少なくとも紙繊維と水溶性結合材とを含有させた材料により成形した容器本体の側壁部に、薄肉部を分散させて形成したものである。
【0014】そして、紙繊維と水溶性結合材とを含有させた材料は、吸水性で生分解性を備えているので、土壌中では雨水などを吸水して湿潤状態となって細菌や微生物が繁殖し易くなり、生分解により崩壊する速度が速くなる。しかも、より容易に破損して崩壊し易くなっている薄肉部が分散して形成されているので、土壌中では苗根の成長が妨げられることがなくなる。さらに、結合材により強固に結合された紙繊維が絡み合った状態で容器自体を形成しているので、育苗期間中は移動などに耐える強度を有し、しかも、多数の気孔および透孔を有して通気性,通水性を備えているので、苗に灌水する際に容器が濡れても、その表面から速やかに水分が蒸発されて乾燥し、灌水によっては崩壊しない耐水性を示すことができる。育苗容器が具備すべき強度,耐水性,崩壊性は、育苗する苗の種類により異なるが、一般的な苗の育苗に用いる場合には、育苗期間中は少なくとも1カ月程度は強度,耐水性を保持することが好ましく、移植後は少なくとも1カ月程度以内には崩壊することが好ましい。
【0015】なお、薄肉部は、苗根を周囲に均一に成長させるようにするには、容器本体の中心軸線に対して対称状に分散させて形成するのが効果的であり、また、その形状は、容器本体の底部から側壁部の上方に向かってほぼ長方形状にするのが、細い苗根から太い苗根に至るまで均一に成長させるには効果的である。
【0016】また、薄肉部が容器本体の内面側に存在し、外表面には凹部が存在するようにすると、育苗期間中の強度や耐水性の保持および移植後の崩壊性の点からは効果的になる。すなわち、容器本体の内表面が平滑となっているので、育苗期間中は、培養土を容器本体に詰め込んだ時あるいは灌水した時に発生する内部からの応力が、薄肉部に集中することがなく、強度保持の点から有利となる。また、土壌中に移植した後は、凹部の存在により表面積が大きくなるので、外部からの細菌などの作用が受け易くなり、その結果、崩壊し易くなる。
【0017】また、形成する薄肉部の肉厚は、厚すぎると土壌中での破損,崩壊に時間がかかり、薄すぎると育苗中に崩壊したり、移動などに耐える強度がなくなるので、育苗に要する期間中は、灌水に耐え得る耐水性と移動に耐え得る強度とを備え、苗とともに土壌中に移植した後は、生分解により速やかに崩壊し易くするには、0.05〜0.50mm、好ましくは、0.07〜0.30mmの範囲が効果的である。
【0018】また、薄肉部の面積割合は、大きいほど土壌中で、苗根を外部へ成長させるのを妨げないという点からは好ましい。しかし、大きすぎると容器本体が強度的に弱くなるので、育苗中の移動などによっても苗を傷つけ易くなり、また、一方小さすぎると、崩壊した場合でも苗根の一部が育苗容器内に閉じ込められるようになり、苗根の成長を妨げるようになる。そこで、育苗に要する期間中は、ある程度の強度を備え、土壌中に移植した後では、苗根の成長を妨げないようにするには、容器本体の表面積の5〜30%、好ましくは、10〜20%の範囲が効果的である。
【0019】また、苗根は、育苗容器の余り上部に相当する部分には生長しないので、この部分に薄肉部を形成する必要はなく、容器本体の強度を保持し、細い苗根および太い苗根を効果的に容器本体の外部にも成長させるようにするには、薄肉部は、容器本体の底面部および側壁部の下端から上方2/3の高さまでの範囲に形成するのが好ましい。
【0020】さらに、生分解性育苗容器は、紙繊維60〜80部と、澱粉にポリビニルアルコールを配合した水溶性結合材20〜40部との混合物100部に、水40〜150部を添加した配合物100部に対し、非アルカリ金属の長鎖脂肪酸塩を0.5〜1.5部添加して混合した成形材料を、140〜200℃に加熱し、薄肉形成部を有し、固定側金型および可動側金型のパーティング面を密着させたキャビティ内に充填し、ついで前記パーティング面の間に0.1〜0.2mmの間隙を形成し、この間隙よりキャビティ内の水蒸気を放出除去して成形材料を乾燥固化させるものである。成形方法として、射出成形法および圧縮成形法どちらも使用できる。
【0021】そして、上記のように配合した成形材料により成形した育苗容器は、育苗期間中は灌水などに耐え得る耐水性と移動時などに苗を傷めない強度とを備え、土壌中に苗とともに移植した後は、雨水などを吸収して湿潤され、細菌などを繁殖させて容易にかつ速やかに生分解して薄肉部から崩壊させることができる。また、成形材料を充填する際は、加熱されて密閉状態になっているキャビティに充填するので、充填圧力を増大させると、水が多量に添加されていることによる成形材料の流動性で、キャビティにおける薄肉部を形成する狭い部分にも確実に充填することができる。さらに、キャビティに充填された成形材料に添加されている水は、金型が加熱されていることにより容易に水蒸気となり、パーティング面の間に形成した間隙より速やかに放出逸散されて乾燥固化するので、成形サイクルを短縮することができる。
【0022】なお、育苗容器には薄肉部を形成して土壌中では生分解により容易に崩壊して苗根の成長が妨げられないようにしているが、育苗に長い期間を要する苗に使用する場合は、上記成形材料の配合割合の範囲内で水の添加量を少なくすることにより、容器本体の密度を高くして吸水性を比較的少なくし、育苗期間中には充分な強度および耐水性を保持させることが好ましい。また、育苗の期間が短い苗に使用する場合は、育苗期間中の強度や耐水性は余り必要でないので、土壌中での崩壊を促進するために、水溶性結合材としては生分解され易い澱粉の配合割合を多くしたものを用い、水の添加量を多くして薄肉部の崩壊を容易にすることが好ましい。
【0023】つぎに、その実施例について、具体的に説明する。
【0024】
【実施例】その実施例について、育苗容器の上面図を示す図1およびその育苗容器の要部を切欠した側面図を示す図2を参照して詳述する。
【0025】図1および図2において、1は容器本体、2は容器本体1の側壁部、3は容器本体1の底面部、4は底面部3に形成した円形の台座、5は容器本体1の側壁部2に形成した薄肉部である。この薄肉部5は、容器本体1の側壁部2の内面側に存在し、表面側には凹部7が存在するようにして形成され、容器本体1の側壁部2の下端に相当する台座4から上方に向かって容器本体1の高さの2/3の高さに相当する部分までほぼ長方形状に形成されており、容器本体1の中心軸線に対して対称的で等間隔に分散して8個配置されている。6は容器本体1の底面部3に形成した薄肉部である。この薄肉部6は、容器本体1の底面部3の内面側に存在し、表面側には凹部7が存在するように形成され、容器本体1の側壁部2の下端に相当する台座4から底面部3の中心部に向かってほぼ長方形状に形成されており、薄肉部5と連続するように等間隔に分散させて4個配置されている。8は底面部3に形成した排水孔である。なお、薄肉部5および薄肉部6は、表面側に凹部7を存在させて容器本体1の内面側に存在するようにしているので、容器本体1の内表面は平滑になっている。
【0026】容器本体1を成形する成形材料の素材には、紙繊維として牛乳パックを組立加工する際に発生するスライス粉、いわゆる紙粉末を用い、水溶性結合材としてとうもろこし澱粉[王子コーンスターチ(株)製コーンY]にポリビニルアルコール[日本合成化学工業(株)製ゴーセノールNM14]を配合したものを用い、非アルカリ金属の長鎖脂肪酸塩としてステアリン酸亜鉛[キシダ化学(株)製]を用いている。なお、非アルカリ金属の長鎖脂肪酸塩は内部滑剤として機能させている。
【0027】つぎに、成形材料の調製について説明する。なお、この実施例においては、育苗に長い期間を要する苗に使用できるように、密度を高くして吸水性を低くし、かつ充分な強度を有する育苗容器を成形する成形材料を調製している。
【0028】素材は、紙繊維:澱粉:ポリビニルアルコール:水の配合割合を重量比で7:2.1:0.9:5として配合し、この配合物100部に対してステアリン酸亜鉛を1部添加している。この配合割合では、固形成分/水の割合が10/5となって水の量が比較的少ないので、育苗容器の密度は、約0.70〜0.75g/cm3 となり、吸水性が低く、強度が高いものとなる。
【0029】内容量が約20リットルのいわゆるポリエチレン製バケツに、前記の紙繊維,澱粉,ポリビニルアルコール,水およびステアリン酸亜鉛を、合計量が1kgになるように順次秤取し、撹拌して混合する。ついで、この混合物を、ボルグワーナ社製の同方向回転,二軸混練押出機により押し出した後、圧縮して直径約70mm,重量約28gの成形用タブレットとした。この二軸混練押出機は、スクリュウ径28mm,L/D32で、混練条件としては、シリンダおよびダイの温度を70℃、スクリュウの回転速度を200rpmとしている。
【0030】つぎに、以上説明した成形材料よりなる成形タブレットを用い、図1および図2に示すような形状の育苗容器を圧縮成形法により成形した。この育苗容器は、容器本体1の上部内径が98mm、下部内径が80mm、高さが76mm、内容積が約470cm3 であり、表面積が約270cm2 、側壁部2および底面部3の厚みは1.00mm、薄肉部5,6の厚みは、0.03mm(比較例1),0.05mm(実施例1),0.07mm(実施例2),0.10mm(実施例3),0.20mm(実施例4),0.30mm(実施例5),0.50mm(実施例6),0.70mm(比較例2)のものを、それぞれ作製した。なお、側壁部2に形成されている8個の薄肉部5は、下端が台座4と接し、上端が容器本体1の高さの2/3、すなわち51mmの高さに相当する部分まで10mmの幅で形成されており、その長さは61mmになっている。また、底面部3の台座4の内側に形成されている4個の薄肉部6は、幅10mm,長さ14mmで形成されている。
【0031】したがって、幅10mm,長さ61mmの薄肉部5が8個、幅10mm,長さ14mmの薄肉部6が4個形成されることになるので、薄肉部5,6の面積は約54cm2 となり、その割合は、容器本体1の表面積、すなわち側壁部2および底面部3の面積である約270cm2 に対して約20%となっている。
【0032】その育苗容器の圧縮成形について説明する。なお、育苗容器を圧縮成形する装置としては、(株)丸七鉄工所製の複動式50トン圧縮プレスと、フラッシュタイプの圧縮金型とを用い、余分に供給された成形材料はパーティング面より流出させ、容器本体1における側壁部および底面部ならびに薄肉部の厚みが正確に制御できるようにした。
【0033】成形用タブレットを金型のキャビティ内に投入充填して金型を閉じる。この成形用タブレットの充填が終了した時点では、パーティング面は密着しているが、成形用タブレットに添加されている水により発生する水蒸気を金型外に放出するために、充填が終了した後に、パーティング面に0.2mmの間隙を形成するようにしている。この間隙よりの水蒸気の放出は、充填終了後10〜15秒で完了し20秒後に金型を開いて成形した育苗容器を取り出した。なお、金型の温度は195℃に設定した。
【0034】薄肉部5および6は、金型のキャビティ壁面に、薄肉部と同じ形状の凸状部を設けることにより形成できるが、比較例および実施例のような肉厚の薄肉部を有する育苗容器を成形するには、まず0.03mmの厚みの薄肉部を形成する凸状部を設けて成形し、ついで、順次凸状部を研削してその高さを低くすることにより、0.05mm,0.07mm,0.10mm,0.20mm,0.30mm,0.50mm,0.70mmの厚みの薄肉部を有するそれぞれの育苗容器を成形して試験容器とした。
【0035】以上のようにして得られたそれぞれの育苗容器について、つぎに説明するような方法により評価した結果は、表1に示す通りである。
【0036】それぞれの育苗容器に、園芸用土[太陽殖産(株)製スーパーガーデン20]を87部に、腐葉土10部,綿実粕3部を添加し、約1カ月間熟成したものを培養土として約400cm3 充填してビニルハウス内に設置する。ついで、一日に一回の割合で灌水し、1カ月後,2カ月後,3カ月後および6カ月後における薄肉部の破損状況を調べて育苗期間中の薄肉部の破損崩壊状況とした。なお、薄肉部に破損が発生しておらない状態の場合、すなわち、耐水性を有し、移動に耐える強度を有する場合を印で表し、薄肉部の一部に破損が発生して容器本体を持ち上げただけで内部の培養土が漏れ出す状態の場合、すなわち、移動に耐える強度を有さない状態の場合を×印で表している。
【0037】また、上記培養土を充填したそれぞれの育苗容器を、上記と同じ培養土の中に埋め込む。ついで、一日に一回の割合で灌水し、3日後,7日後,14日後および28日後における薄肉部の破損状況を調べて移植後の土壌中の薄肉部の破損崩壊状況とした。なお、薄肉部に破損が発生しない場合、すなわち、崩壊し難く苗根の成長が抑えられている場合を×印で表し、薄肉部が破損崩壊して容器の内部と外部との培養土が一体化した状態になっている場合、すなわち、苗根の成長が抑えられなく妨げられない状態になっている場合を印で表している。
【0038】
【表1】

【0039】実施例1の場合、育苗期間1カ月後では薄肉部は保全されており、2カ月後では薄肉部の一部が崩壊を開始し、手により持ち上げると培養土の一部がこぼれ落ちる状態となり、移植した3日後には崩壊が開始しており、育苗容器の内部と外部との培養土を区分するのが難しい状態になっていた。
【0040】また、実施例2の場合は、育苗期間3カ月後に崩壊が開始しており、移植した後7日で崩壊が開始している状態となり、実施例3の場合は、育苗期間6カ月後に崩壊が開始しており、移植した後7日で崩壊が開始している状態となり、実施例4の場合は、育苗期間6カ月後に崩壊が開始しており、移植した後14日で崩壊が開始している状態となり、実施例5の場合は、育苗期間6カ月後でも薄肉部は保全されており、移植した後14日で崩壊が開始している状態となり、実施例6の場合は、育苗期間6カ月後でも薄肉部は保全されており、移植した後28日で崩壊が開始している状態となっていた。
【0041】したがって、薄肉部の厚みにより崩壊の状況は異なるが、実施例1,2の育苗容器は、比較的に育苗期間が短く、成長速度が速い苗、例えば、園芸植物や野菜などに適し、実施例5,6の育苗容器は、育苗期間が長く、成長速度が遅い苗、例えば、樹木などに適し、実施例3,4の育苗容器は、育苗期間および成長速度が上記の中間のものに適している。
【0042】一方、比較例1の場合は、薄肉部の厚みが薄過ぎて1カ月後には内部の培養土がこぼれる状態となり、育苗期間を充分に維持することができなく、実用上の使用に耐えることができない。また、比較例2の場合は、移植した4週間後でも薄肉部の崩壊が開始しないので、苗根の成長を妨げない育苗容器としては、不適当で汎用的に使用することはできない。なお、比較例2の場合と、薄肉部を形成しない育苗容器(薄肉部の厚み1.00mmに相当)の場合とを比較して確認したところ、崩壊の状況については余り差異がなかったので、薄肉部が厚くなると余り効果がないことがわかる。
【0043】ついで、容器本体1の表面積、すなわち底面部3および側壁部2の面積に対する薄肉部5,6の面積の割合について、以下に記載するようにして検討した結果は表2に示す通りである。
【0044】厚さ0.10mm,幅10mm,長さ61mmの薄肉部5が8個、厚さ0.10mm,幅10mm,長さ14mmの薄肉部6が4個それぞれ形成され、薄肉部5,6の面積の割合が、容器本体1の表面積、すなわち側壁部2および底面部3の面積に対して約20%としている実施例3の場合を基準として面積割合を変化させて検討した。
【0045】そして、薄肉部5および6の幅を15mmにして面積割合を30%とした場合を実施例7、幅を5mmにして面積割合を10%にした場合を実施例8、幅を5mmにし、長さをほぼ半分にして面積割合を5%とした場合を実施例9、幅を3mmにし、長さをほぼ半分にして面積割合を3%とした場合を比較例3、実施例7において、薄肉部5,5の間の中央部に、厚さ0.10mm,幅5mm,長さ32mmの薄肉部を8個配置して面積割合を35%とした場合を比較例4、直蒔きの場合を比較例5としている。なお、実施例9および比較例3において、薄肉部5および6の長さのほぼ半分としては、薄肉部5の長さを31mmに、薄肉部6の長さを7mmにしている。また、比較例4において薄肉部5,5の間に配置した薄肉部の上端は、薄肉部5の上端、すなわち容器本体1の高さの2/3の位置と一致させている。
【0046】実施例3,7〜9および比較例3,4におけるそれぞれの育苗容器に、園芸用土[太陽殖産(株)製スーパーガーデン20]を87部に腐葉土10部、綿実粕3部を添加し、約1カ月熟成したものを培養土として充填して7月1日に大豆を播種し、7月15日に育苗容器とともに上記と同じ培養土に移植した。育苗期間中は毎日灌水し、移植した後は3日毎に灌水している。そして、播種1カ月後の7月末,2カ月後の8月末,3カ月後の9月末,4カ月後の10月末および5カ月後の11月末に、それぞれの生育状況を比較検討した。なお、比較例5の場合は、7月1日に、大豆を直接土壌に播種している。
【0047】移植後の生育状況および収穫量については、比較例5の場合を基準に比較して評価し、生育状況は遜色ないと判断されたものを印、成長がやや劣っていると判断されたものを△印、成長が明らかに遅れていると判断されたものを×印でそれぞれ表し、収穫量は比較例5の場合を100%としている。
【0048】また、容器本体1の成形に使用した成形材料は、耐水性および強度に優れた配合組成にしているので、育苗中に容器本体が崩壊することはないが、薄肉部5,6の面積割合によってはやや強度不足になり、移動時などの取扱いに注意が必要になるものもあるので、強度上、全く問題がないものを強度A、やや軟らかくなるが実用可能なものを強度B、軟らか過ぎて実用に供し難いものを強度Cとしている。
【0049】
【表2】

【0050】表2から薄肉部5および6の面積割合が、容器本体1の表面積の5〜30%の範囲にある実施例3,7〜9の場合、比較例3,4の場合と比較して、苗の生育状況および収穫量ならびに育苗期間中の容器本体1の耐水性,強度などにおいて優れていることがわかる。なお、実施例8,9の場合、実施例3,7の場合と比較すると生育状況,収穫量において僅かに劣っているが、薄肉部の面積割合が小さく、育苗期間中の強度の保持性が優れているので、使用目的によっては実施例7の場合よりも好ましいこともあり、薄肉部の面積割合は、容器本体の表面積の5〜30%の範囲が効果的であることがわかる。なお、比較例3の場合は、面積割合が小さいので、生育状況や収穫量において実施例の場合に劣り、比較例4の場合は、面積割合が大き過ぎ、育苗中における移動などの取扱い易さに問題があることがわかる。
【0051】
【発明の効果】本発明は、以上説明したような形態で実施され、以下に記載されるような効果を奏する。
【0052】生育期間中は、移動などにより苗根を損傷させない強度、および灌水などによって崩壊することがない耐水性を有し、移植後は生分解により容易に崩壊して苗根の成長を妨げない育苗容器を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000207757
【氏名又は名称】大宝工業株式会社
【出願日】 平成10年6月16日(1998.6.16)
【代理人】
【公開番号】 特開2000−32(P2000−32A)
【公開日】 平成12年1月7日(2000.1.7)
【出願番号】 特願平10−185655