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【発明の名称】 乗用田植機
【発明者】 【氏名】青木 荘吾

【氏名】山下 綱丈

【要約】 【課題】クラッチの入・切及び機体を停止させることができる操作レバーで確実に機体を制動できるようにした乗用田植機を得ることを課題とする。

【解決手段】機体後部に植付部を昇降自在に配設した乗用田植機において、クラッチの入・切及び機体を停止させることができる操作レバーと、後輪にブレーキをかける制動機構とを連動させ、前記操作レバーをクラッチ切にしたときに前記制動機構が作動するように構成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 機体後部に植付部を昇降自在に配設した乗用田植機において、クラッチの入・切及び機体を停止させることができる操作レバーと、後輪にブレーキをかける制動機構とを連動させ、前記操作レバーをクラッチ切にしたときに前記制動機構が作動するように構成したことを特徴とする乗用田植機。
【請求項2】 ブレーキペダルによって前記制動機構を作動させても前記操作レバーには影響を与えないように構成したことを特徴とする請求項1に記載の乗用田植機。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、乗用田植機の制動機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の乗用田植機は、クラッチの入・切ができる操作レバーによって、ミッションケースの入力軸の回転にブレーキがかけられるようになっている。すなわち、操作レバーをクラッチ「切」位置へシフトすることにより、ミッションケースの入力軸に固設されている従動プーリーへのエンジンからの動力伝達を断ち、かつその従動プーリーの回転にブレーキをかけられるように構成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このとき、主変速レバーを中立位置に変速すると、操作レバーによる機体制動機構の伝達経路下手側に変速機構が配設されているため、その制動機構が作動しているにもかかわらず、機体が動き出すおそれが生じる。そこで、本発明は、クラッチの入・切及び機体を停止させることができる操作レバーで確実に機体を制動できるようにした乗用田植機を得ることを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】以上のような目的を達成するために、本発明は、次のような乗用田植機を提供するものである。すなわち、機体後部に植付部を昇降自在に配設した乗用田植機において、クラッチの入・切及び機体を停止させることができる操作レバーと、後輪にブレーキをかける制動機構とを連動させ、前記操作レバーをクラッチ切にしたときに前記制動機構が作動するように構成したことを特徴とする乗用田植機である。そして、ブレーキペダルによって前記制動機構を作動させても前記操作レバーには影響を与えないように構成したことを特徴とするものである。
【0005】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に示す実施例を基に説明する。図1は本発明にかかる乗用田植機(A)の全体を示す概略側面図である。乗用田植機(A)は走行車両(1)と、走行車両(1)の後部に連結した植付部(9)とで構成されており、図1で示すように、走行車両(1)の前部及び後部にはそれぞれ前輪(2)と後輪(3)が懸架され、車体フレーム(4)の前部には動力部であるエンジン(5)が搭載されている。そして、エンジン(5)後方の車体フレーム(4)の左右略中央には前後方向に長く延出したミッションケース(6)が配置されており、ミッションケース(6)の前部に前輪(2)が支持され、後部に後輪(3)が支持されている。エンジン(5)を覆うボンネット(22)の両側には予備苗載台(90)が配設され、オペレーターが搭乗する車体カバー(20)によってミッションケース(6)等が覆われている。そして、車体カバー(20)の後上部に運転席(7)が設けられ、車体カバー(20)前部のボンネット(22)の後方に操向ハンドル(8)が配設されている。
【0006】植付部(9)は4条植えとした苗載台(91)や複数の植付爪(93)等から構成されており、前高後低に配設した苗載台(91)を下部レール(95)及びガイドレール(96)を介して植付伝動フレーム(92)に左右往復摺動自在に支持させるとともに、クランク機構によってクランク運動する植付爪(93)を植付伝動フレーム(92)の後部に配設している。したがって、前輪(2)及び後輪(3)を走行駆動して移動させるとともに、左右に往復摺動可能な苗載台(91)から1株分の苗を植付爪(93)によって取り出し、連続的に苗植え作業が行えるようになっている。
【0007】また、植付伝動フレーム(92)の前部にはローリング支点軸(16)を介してヒッチ(94)が設けられ、そのヒッチ(94)は、ヒッチ(94)の上部左右両側に枢支されているトップリンク(11)と、ヒッチ(94)の下部左右両側に枢支されているロワーリンク(12)とを含む昇降リンク機構(10)を介して走行車両(1)の後部に連結されている。そして、ロワーリンク(12)の前端部内側面にはリフトアーム(13)の基部が固設されており、このリフトアーム(13)をロワーリンク(12)の配設方向に対して直交する上方向に突設している。そして、昇降リンク機構(10)を昇降駆動させる昇降シリンダー(15)がこのロワーリンク(12)に連結したリフトアーム(13)に連結している。
【0008】また、リフトアーム(13)の上端部とロワーリンク(12)の後端部との間には補強リンク(14)が連結されており、ロワーリンク(12)の剛性を高めるようにしている。そして、トップリンク(11)及びロワーリンク(12)の前端部は、後部連結フレーム(44)間に横設された枢支ピンを介して枢支されており、この後部連結フレーム(44)が昇降リンク機構(10)の支持部として兼用されて、植付部(9)の安定した昇降、部品点数の削減、構成のシンプル化が図られている。
【0009】また、植付部(9)の下部には植付部(9)を一定の高さに保持する均平用のセンターフロート(97)とサイドフロート(98)が配設されており、センターフロート(97)は走行車両(1)の左右中心線上に配置され、センターフロート(97)の左右対称位置にサイドフロート(98)が配設されて、植付部(9)の左右のバランスを良好に保ち、植え付け姿勢を安定させて、正確に植え付けができるようにしている。
【0010】そして、植付部(9)の動力伝達部である植付伝動フレーム(92)の下部に植深調節軸(161)が左右のサイドフロート(98)の幅に合わせて横設されるとともに、植深調節軸(161)の適所位置より後下方の各フロートの後部に向けて支持アーム(162)が突設され、各フロートの後部上に枢支されており、植深調節軸(161)より前方に操作アーム(163)が突出され、操作アーム(163)の後端部より上方に向かって植深さ設定レバー(79)が設けられている。このため、オペレーターが運転席(7)に着座したまま植深さ設定レバー(79)を操作しやすく、容易に調整することが可能になっている。
【0011】また、フロントフレーム(40)の中央部より後下方に向かって平板状の支持部材(50)が延設されており、支持部材(50)の前部はフロントフレーム(40)に向かって上方に湾曲するように形成されている。そして、この支持部材(50)の上にエンジン(5)が載置されるが、支持部材(50)は平板状であるため、エンジン(5)下部の保護カバーとして利用でき、別途保護カバーを設ける場合に比べ、コストダウンが図れるようになっている。その他、(75)は主変速レバー、(76)は主クラッチレバー、(77)は植付昇降レバー、(74)は主クラッチペダルである。
【0012】ミッションケース(6)は前低後高に形成された車体フレーム(4)に対して、その最前部近傍と最後部近傍及び中間部近傍において固定され、ミッションケース(6)の最前部近傍は、エンジン(5)が載置される支持部材(50)に、支持部材(50)から斜め内側後下方に向かって延設されている取付部材(51)を介して固定されている。そして、更に、後部がメインステップ(32)の下面から離れていくように、車体フレーム(4)の前後方向略中央下部より車体フレーム(4)の後端部の後下方まで、前後方向に長く延出されて形成されており、図1で示す側面視において後部が斜め下方に向かって傾斜する前高後低に配置されている。
【0013】したがって、PTO軸(65)に接続されるユニバーサルジョイント部(159)を有するPTO伝動軸(158)を通すスペースを広くとることができ、そのユニバーサルジョイント部(159)及びPTO伝動軸(158)等を余裕をもって配置することが可能となっている。なお、ミッションケース(6)の上面には、PTO伝動軸(158)を支持する支持部材(160)が設けられており、PTO伝動軸(158)の両端が同じミッションケース(6)に支持されることになって、同心精度が容易に高められるようになっている。
【0014】また、ミッションケース(6)の前部には走行変速機構が内設される変速室(60)が形成され、変速室(60)の左右両側面にフロントアクスルケース(37)が一体的に固設されている。そして、フロントアクスルケース(37)の左右端部より下方に向かって車軸ケースが固設され、車軸ケースの下端部に前輪(2)を固設する前車輪軸(66)が軸支されている。一方、ミッションケース(6)の後端部には軸芯を左右方向に持つ筒状のリアアクスルケース(38)が一体的に形成され、リアアクスルケース(38)内に後車輪駆動軸(69)が軸支されている。そして、後車輪駆動軸(69)の左右両端部に後輪(3)が固設され、従来のような伝動ケースを廃止した構成になっている。
【0015】ミッションケース(6)の上下方向に膨出した前部には、内部に変速機構やPTO軸(65)が配設される変速室(60)が形成されており、この上方に膨出させた変速室(60)の上後部には前後方向に軸芯を有するPTO軸(65)が軸支されている。このように、ミッションケース(6)は後側が変速室(60)の後部より一段低く、即ち変速室(60)の上後部はミッションケース(6)の後部側上面より上方に膨出した形状に形成され、その膨出した変速室(60)の後面より後方に向かってPTO軸(65)の後端部が突出している。
【0016】また、図5で示すように、ミッションケース(6)の変速室(60)の上部には、左右方向に入力軸(56)が軸支され、入力軸(56)の左端部が外側に突出されて従動プーリー(55)が固設され、エンジン(5)の左側面より側方に突出されている出力軸(52)に固設された駆動プーリー(53)からの動力が、ベルト(54)を介してミッションケース(6)内に入力されている。そして、このベルト(54)はテンションアーム(57)の先端に取り付けられたテンションローラー(58)によって緊張されるように構成されており、主クラッチペダル(74)の踏み込み操作や後述する主クラッチレバー(76)のシフト操作に連動して動力の断接が行われるようになっている。
【0017】図2乃至図4で示すように、入力軸(56)の前下方には主変速軸(61)が軸支され、主変速軸(61)の前下方には前車輪駆動軸(62)が軸支され、入力軸(56)に入力した動力が略前下方に伝達されるようになっている。そして、入力軸(56)の前方で主変速軸(61)の上方には副変速軸(63)が軸支されており、入力軸(56)と主変速軸(61)は側面視において副変速軸(63)を頂点とする略二等辺三角形状に配置されて、ミッションケース(6)内の構成がシンプルになっている。また、後輪(3)を駆動する後車輪駆動軸(69)への駆動力は、入力軸(56)と前車輪駆動軸(62)との間の主変速軸(61)からチェーン(70)を介してミッションケース(6)後下方の後車軸駆動部に伝達されており、ミッションケース(6)の配設方向である前高後低方向に動力伝達経路が構成されている。
【0018】すなわち、このミッションケース(6)後部の後車軸駆動部にはミッションケース(6)の配設方向に沿った後下方向きに従動軸(67)、カウンター軸(68)、後車輪駆動軸(69)が順に配設されており、チェーン(70)が従動軸(67)に伝達され、カウンター軸(68)を介して後車輪駆動軸(69)に動力が伝達されて、後車輪駆動軸(69)への駆動伝達経路をミッションケース(6)の配設方向に合わせた前高後低の直線状に伝達し、シンプルかつ省スペースで効率のよい動力伝達経路の配置構成としている。また、この動力伝達経路は最短経路になるため、チェーン(70)の長さを短くすることができてコストダウンを図ることができ、更には後車輪駆動軸(69)の高さ位置が車体フレーム(4)よりも下方位置になるため、後輪(3)の車輪を小径とすることができ、走行車両の小型化が図れるようになっている。
【0019】ミッションケース(6)後部の後車軸駆動部には、動力断接機構と制動機構が配設されており、従動軸(67)の左右中央部にはボス部(101)が固設され、ボス部(101)の外周面上にスプロケット(100)が固設されてチェーン(70)が巻回されている。ボス部(101)の左右両側の従動軸(67)には摺動ギア(102)がスプライン嵌合されており、摺動ギア(102)とサイドクラッチ(103)とが歯数を同じにして一体成形されて部品点数の削減が図られるとともに、組立がしやすいように構成されている。摺動ギア(102)にはカウンター軸(68)に枢支した内ギア(104)が噛合され、内ギア(104)に一体的に形成した外ギア(105)には後車輪駆動軸(69)に固設するギア(106)が噛合されている。
【0020】また、摺動ギア(102)にはミッションケース(6)下面に枢支した操作軸(107)に固設するフォークが嵌合され、操作軸(107)下部に固設するアーム(108)を回動操作することで、操作軸(107)が回動し、摺動ギア(102)が摺動される。摺動ギア(102)を内側に摺動させると、摺動ギア(102)内側がボス部(101)内に係合されて動力が伝達され、後車輪駆動軸(69)が駆動される。摺動ギア(102)を外側に摺動させると、ボス部(101)と摺動ギア(102)との係合が外れ、動力の伝達が離脱されると同時に、摺動ギア(102)の外側端部に形設したパットと挟持体によって構成されるブレーキ機構(130)が作動し、摺動ギア(102)の回動が制動されて後車輪駆動軸(69)の回動が停止する。
【0021】一方、入力軸(56)の後方にPTO入力軸(64)が軸支され、そのPTO入力軸(64)からベベルギア(64a)(65a)を介して前後方向に軸芯を有する伝達軸(65b)に動力を伝達し、PTOクラッチ(109)を介してPTO軸(65)に動力を伝達しており、入力軸(56)より水平方向後方に向けて動力を伝達し、後方の植付部(9)に動力を伝達するようにしている。また、PTO軸(65)への動力の断接を行うPTOクラッチ(109)にはギア式クラッチが用いられており、伝達軸(65b)には前後方向中央部に筒体(65c)が遊嵌され、筒体(65c)が遊嵌されていない伝達軸(65b)の前部にクラッチギア(110)が固設され、筒体(65c)の前部に摺動クラッチギア(111)がスプライン嵌合されている。
【0022】摺動クラッチギア(111)にはミッションケース(6)側面に軸支される操作軸(112)に固設するフォークが嵌合され、操作軸(112)が運転席(7)の近傍位置に配置されるPTOクラッチレバーを兼用する植付昇降レバー(77)に連動連結されており、植付昇降レバー(77)を操作してクラッチギア(110)と摺動クラッチギア(111)とが噛合され、伝達軸(65b)の動力が後方のPTO軸(65)に伝達されるようになっている。なお、筒体(65c)後部にはギア式クラッチの摺動クラッチギア(113)が摺動自在にスプライン嵌合され、圧縮バネ(114)によってPTO軸(65)の前部に固設するクラッチギア(115)に噛合する方向に付勢されており、PTO軸(65)に動力を伝達する安全クラッチ(116)が形成されている。この安全クラッチ(116)は植付部(9)側の動力伝達機構に負荷がかかった場合に、ミッションケース(6)側で動力伝達を離脱するようになっている。
【0023】入力軸(56)には走行用ギア(117)と後進用ギア(120)が固設され、副変速軸(63)には走行用の第1変速ギア(118)と第2変速ギア(119)が固設されている。また、PTO軸(65)への動力は、入力軸(56)の動力が株間変速される変速機構を介して伝達されており、従来の植付ミッションケースが廃止されている。すなわち、入力軸(56)の端部にはミッションケース(6)側面より側方に突出して株間変速を行う第1減速ギア(121)が固設されるとともに、PTO入力軸(64)の端部にもミッションケース(6)の側面より側方に突出して株間変速を行う第2減速ギア(122)が固設され、第2減速ギア(122)と第1減速ギア(121)とを噛合させることで株間変速が行われ、PTO軸(65)への動力を伝達している。また、この株間変速を行う第1減速ギア(121)と第2減速ギア(122)の側面は着脱自在にカバー(123)で被装され、カバー(123)を外すことで容易に第1減速ギア(121)と第2減速ギア(122)を組み替えることができ、仕様に合わせた株間変速が行えるようになっている。
【0024】また、入力軸(56)の前下方に配置した主変速軸(61)には軸芯方向に摺動される走行変速ギア(124)がスプライン嵌合されており、走行変速ギア(124)は大径ギア(125)と小径ギア(126)とを横方向に一体的に固設するギアで構成されるとともに、主変速レバー(75)の操作に連動して左右方向に摺動するフォークに嵌合されている。主変速軸(61)のミッションケース前後方向左側にはスプロケットとギアが一体となった動力分岐ギア(127)が固設されており、この動力分岐ギア(127)のギアには左右の前車輪駆動軸(62)を駆動するデフ機構(128)のリングギアが噛合され、動力分岐ギア(127)を用いて動力を2方向に分岐している。そして、デフ機構(128)の側部にはデフロック機構(129)が配置されている。
【0025】主変速レバー(75)を中立位置より前方に回動させると、走行変速ギア(124)がミッションケース前後方向左側に摺動され、小径ギア(126)と副変速軸(63)上の第2変速ギア(119)とが噛合されて主変速軸(61)を高速回転させることにより、各車輪(2)(3)を高速で回動させる通常走行が行われる。また、主変速レバー(75)を中立位置より1段階後方に回動すると、走行変速ギア(124)がミッションケース前後方向右側に摺動されて、大径ギア(125)と副変速軸(63)上の第1変速ギア(118)とが噛合され、主変速軸(61)が低速回転されて各車輪(2)(3)を作業速度で駆動するとともに、前進側に2段階の変速が行われる。
【0026】また、主変速レバー(75)を後方に回動すると、走行変速ギア(124)がミッションケース前後方向右側に更に摺動され、入力軸(56)上の後進用ギア(120)が図示しない主変速軸(61)上のギアと噛合され、主変速軸(61)が逆転回動されて、各車輪(2)(3)を後進回動させている。このように、入力軸(56)を後進変速用のギアを有するカウンター軸として使用し、ミッションケース内の変速機構をPTO側への入力軸であるPTOカウンター軸を省いたシンプルな変速機構に構成しても、通常走行、作業走行、後進走行といった必要最小限の走行変速を行うことができるようになっている。
【0027】ミッションケース(6)の前部下端部より内方側、即ち変速室(60)の下部でサクション(156)の前方には左右のブレーキロッド(131)を作動させるブレーキシャフト(132)を通す貫通孔(133)が穿設されており、ミッションケース(6)でブレーキ機構を支持するようになっている。ブレーキ機構にはブレーキペダルが1本である1ブレーキ機構とブレーキペダルが2本である2ブレーキ機構がある。1ブレーキ機構の場合は、ブレーキペダル(73)を踏み込み操作すると、それに連動してブレーキシャフト(132)が回動し、ブレーキシャフト(132)に連動連結されているブレーキロッド(131)が両方同時に作動して、ブレーキロッド(131)後端部に連動連結されているアーム(108)が両方同時に回動し、摺動ギア(102)が左右両側に摺動して動力伝達が離脱されると同時に、両方のブレーキ機構(130)が作動して左右両後車輪駆動軸(69)が制動され、走行車両(1)を停止させるようになっている。
【0028】また、2ブレーキ機構の場合には、図7、図8で示すように、左右に分かれたブレーキペダル(73a)(73b)のどちらか一方を踏み込み操作すると、それに連動して2重の筒体で構成されたブレーキシャフト(132)のどちらか一方の筒体が回動するようになっており、それぞれの筒体に連動連結された左右のブレーキロッド(131)が別々に作動するようになって、左右別々にブレーキ機構(130)が作動するようになっており、1ブレーキ機構のように両方同時にブレーキをかけたいときには、左右のブレーキペダル(73)を連結する連結具(135)を用いるようになっている。
【0029】また、機体進行方向に向かって左側に配設される主クラッチペダル(74)の近傍にはクラッチの「入」・「切」ができる主クラッチレバー(76)が設けられ、主クラッチペダル(74)や主クラッチレバー(76)の操作により、エンジン(5)からミッションケース(6)内へ動力を伝達するベルト(54)のテンションを「切」状態にできるように構成されている。そして、それらの操作系において、一方の操作具を操作しても、他方の操作具には影響を与えないように、融通機構が設けられている。この融通機構は、例えば図5の側面視で示すように、主クラッチレバー(76)の回動支軸(141)に設けられたブラケット(142)に枢支されている連動ロッド(140)に長孔(140a)を穿設して構成するもので、ベルトテンションを「入」・「切」するテンションアーム(57)に突設されたピンなどの嵌入部材(143)をその長孔(140a)に挿通して構成している。
【0030】したがって、主クラッチレバー(76)を後方に向けて図示の矢印方向に回動操作すると、連動ロッド(140)が下方に向かって移動し、長孔(140a)に挿通された嵌入部材(143)を介してテンションアーム(57)を下方に回動して、テンションアーム(57)に取り付けられているテンションローラー(58)をベルト(54)から離し、ベルトテンションを「切」状態にするようになっている。一方、主クラッチペダル(74)を踏み込むと、図5、図6で示すように、ペダル支柱(74a)に固設されたL字型ブラケット(144)に取り付けられたピンなどの押圧部材(145)が、テンションアーム(57)の回動軸(59)に固定されたカム(146)を押してテンションアーム(57)を下方に回動させるようになっており、これによってベルトテンションを「切」状態にするようになっている。
【0031】このため、主クラッチペダル(74)を踏み込んでもテンションアーム(57)の嵌入部材(143)が連動ロッド(140)に穿設された長孔(140a)内を移動するだけで主クラッチレバー(76)には何の影響も与えないし、主クラッチレバー(76)を操作しても主クラッチペダル(74)に影響を与えないのは言うまでもない。何れにしても、全動力を停止させる同一操作となる手動操作具である主クラッチレバー(76)と足動操作具である主クラッチペダル(74)の2つを設けたので、機体に乗ったまま又は降りたままでもそれらの操作が可能となり、また、手動操作具であるレバーと足動操作具であるペダルなので、両者を識別して操作することが容易になって誤操作がない。
【0032】また、テンションアーム(57)には、図5、図6で示すように、ミッションケース(6)側の従動プーリー(55)の回転を停止させるブレーキ部材(147)が固設されており、このブレーキ部材(147)は、テンションアーム(57)が下方に向かって回動することによって従動プーリー(55)を押圧するように構成されている。ブレーキ部材(147)の押圧部分は、バネ(148)などで従動プーリー(55)側に向けて付勢されたゴムなどの弾性体(149)で構成されており、押圧側より後退可能に構成されている。このように、ブレーキ部材(147)の弾性体(149)が従動プーリー(55)を押圧することによって、その回転を停止させ、機体にブレーキがかかるように構成すると、坂道でも走行車両(1)を停止させることができるようになって非常に安全になる。
【0033】なお、このブレーキ部材(147)は主クラッチレバー(76)を操作してベルトテンションを「切」状態にしたときにのみ作用するもので、主クラッチレバー(76)で機体を停止させることができるようになっているものである。すなわち、主クラッチペダル(74)の踏み込み操作ではブレーキ部材(147)が非作用状態となるように、それぞれの操作具を使用したときのテンションアーム(57)の回動範囲が考慮され、高速時において主クラッチペダル(74)を踏み込んでもブレーキ部材(147)が作用することがないようにして、機体が急停止するのを防止するようにしている。また、ブレーキ部材(147)の弾性体(149)はバネ(148)によって後退可能になっているため、主クラッチレバー(76)の操作でも急激に停止することがなく安全である。また、弾性体(149)は摩耗したときのために交換可能に構成されており、メンテナンスが容易にできるようになっている。
【0034】また、主クラッチレバー(76)のクラッチ「切」操作によって、後輪(3)のブレーキ機構(130)が作動するように構成されており、次にその説明をする。図5、図8、図9で示すように、ブレーキ連動アーム(80)がテンションアーム(57)と連動ロッド(140)を挟んで対向するように配置され、連動ロッド(140)の長孔(140a)に挿通したテンションアーム(57)の嵌入部材(143)と対向するように、ブレーキ連動アーム(80)の一端にピンなどの嵌入部材(81)が突設されて、連動ロッド(140)の長孔(140a)に挿通されている。そして、ブレーキ連動アーム(80)の他端には係合管(82)が固設されており、左側方へ延設されたブレーキ支点シャフト(83)の端部にその係合管(82)を嵌合係止して、ブレーキ連動アーム(80)がブレーキ支点シャフト(83)を中心に回動するように構成している。
【0035】ブレーキ支点シャフト(83)は2重の筒体で構成されており、右側のブレーキペダル(73a)のペダル支柱(73c)が外側の筒体(以下、外筒という)(84)に固設され、左側のブレーキペダル(73b)のペダル支柱(73d)が外筒(84)に穿設された開口部(84b)を通して内側の筒体(以下、内筒という)(85)に固設されている。なお、この開口部(84b)は左側のブレーキペダル(73b)のペダル支柱(73d)の回動に支障がないよう大きく穿設されている。また、図10で示すように、左側方へ延設した外筒(84)と内筒(85)の端部をそれぞれ所定長(図示のものは約半分)切り欠いて段差部(84a)(85a)を形成し、ブレーキ支点シャフト(83)に係合管(82)を嵌合するときに、係合管(82)の内面に突設された突起部(86)が、その段差部(84a)(85a)に係合するように構成している。したがって、ブレーキ連動アーム(80)が下方へ回動することによって係合管(82)が図示の矢印方向に回動すると、突起部(86)によって外筒(84)と内筒(85)が両方同時に回動する。
【0036】つまり、主クラッチレバー(76)をクラッチ「切」の位置に移動させると、連動ロッド(140)によってブレーキ連動アーム(80)が下方に向かって回動し、係合管(82)を図9の側面視で反時計方向に回動させ、ブレーキ支点シャフト(83)の外筒(84)と内筒(85)を両方同時に同じ反時計方向へ回動させる。すると、ブレーキシャフト(132)が時計方向に回動し、前述のようにブレーキロッド(131)が作動してブレーキ機構(130)が作動する。このような構成によれば、主クラッチレバー(76)によって、後輪(3)にブレーキをかけることができるようになるので、誤って主変速レバー(75)を中立位置に変速しても機体が動き出すような不具合は生じず、確実に機体を制動することができる。また、構造が簡単なので、部品点数が少なくて済む利点もある。
【0037】そして、通常のブレーキペダル(73a)(73b)の踏み込みによるブレーキ操作で外筒(84)又は内筒(85)が回動しても、係合管(82)の内面に突設した突起部(86)には何の作用もしないので、主クラッチレバー(76)には全く影響を与えない。したがって、ブレーキペダル(73a)(73b)で左右独立にブレーキをかけることに何ら支障はない。また、主クラッチペダル(74)を踏み込んでもブレーキ連動アーム(80)には何の作用もしないので、前述と同様に主クラッチペダル(74)による急ブレーキの心配もない。なお、主クラッチレバー(76)によってブレーキ支点シャフト(83)の外筒(84)及び内筒(85)を両方同時に回動させる手段は前述したものに限定されるものではなく、右側のブレーキペダル(73a)によって外筒(84)が回動し、左側のブレーキペダル(73b)によって内筒(85)が回動する構成をそのままに、主クラッチレバー(76)によって外筒(84)及び内筒(85)を同時に回動させることができるものであれば、任意の手段を採用して構わない。
【0038】その他、図11で示すように、ミッションケース(6)の主変速軸(61)と前車輪駆動軸(62)の間に、デフ機構(128)のリングギアと噛合するギア(89)が固設されたカウンター軸(87)を設け、そのカウンター軸(87)にミッションケース(6)の外側でプーリー(88)を設けるとともに、そのプーリー(88)の回転を停止させることができるブレーキ部材(147)を前述と同様に主クラッチレバー(76)によって作動するように設けると、主変速レバー(75)のシフト位置に関係なく、前車輪駆動軸(62)にブレーキをかけることができるようになり、機体を確実に制動させることができるようになる。また、カウンター軸(87)を設けるのではなく、図4で示すように、前車輪駆動軸(62)の任意の位置に直接プーリー(88)とブレーキ部材(147)を設けて、前輪(2)にブレーキがかかるように構成してもよい。
【0039】
【発明の効果】本発明によれば、クラッチの入・切及び機体を停止させることができる操作レバーと、後輪にブレーキをかける制動機構とを連動させ、操作レバーをクラッチ切にしたときにその制動機構が作動するように構成したので、操作レバーによるクラッチ切操作と共に確実に機体を制動することができる。そして、ブレーキペダルによってその制動機構を作動させても操作レバーには影響を与えないように構成したので、通常のブレーキ操作には全く支障がない。
【出願人】 【識別番号】000006851
【氏名又は名称】ヤンマー農機株式会社
【出願日】 平成11年6月16日(1999.6.16)
【代理人】 【識別番号】100090893
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 敏
【公開番号】 特開2000−354408(P2000−354408A)
【公開日】 平成12年12月26日(2000.12.26)
【出願番号】 特願平11−169532