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【発明の名称】 水田作業車の走行変速構造
【発明者】 【氏名】越智 竜児

【氏名】木村 浩人

【要約】 【課題】水田作業車において、畦越え時やトラックの荷台への積み降ろし時に安定して機体を移動させることができるように構成する。

【解決手段】走行用の第1変速装置8と、水田での作業走行位置よりも低速の走行速度を現出させる低速位置を備えた走行用の第2変速装置とを、直列に配置し、走行用の第2変速装置が低速位置に操作されると、これに連動して走行用の第1変速装置8が低速側に操作されるように構成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 走行用の第1変速装置と、水田での作業走行位置よりも低速の走行速度を現出させる低速位置を備えた走行用の第2変速装置とを、直列に配置すると共に、前記走行用の第2変速装置が低速位置に操作されると、これに連動して前記走行用の第1変速装置を低速側に操作する減速手段を備えてある水田作業車の走行変速構造。
【請求項2】 前記減速手段を作動状態及び停止状態に設定自在な設定手段を備えてある請求項1記載の水田作業車の走行変速構造。
【請求項3】 前記走行用の第1変速装置を操作するもので人為的に操作される人為変速操作具を備えて、前記人為変速操作具が操作されると前記減速手段の作動を解除して、前記人為変速操作具の操作位置に対応する変速位置に、前記走行用の第1変速装置を操作する復帰手段を備えてある請求項1又は2記載の水田作業車の走行変速構造。
【請求項4】 前記走行用の第1変速装置を操作するもので人為的に操作される人為変速操作具を備えて、前記走行用の第2変速装置が低速位置に操作されてから元の変速位置に操作されると、前記人為変速操作具の操作位置に対応する変速位置に、前記走行用の第1変速装置を操作する復帰手段を備えてある請求項1又は2記載の水田作業車の走行変速構造。
【請求項5】 前記人為変速操作具の操作位置に対応する変速位置に、前記走行用の第1変速装置を漸次的に操作するように、前記復帰手段を構成してある請求項3又は4記載の水田作業車の走行変速構造。
【請求項6】 前記復帰手段の作動開始を所定時間だけ遅らせる遅延手段を備えてある請求項3〜5のうちのいずれか一つに記載の水田作業車の走行変速構造。
【請求項7】 前記減速手段が作動した状態において走行伝動系に備えられた走行クラッチが伝動遮断側に操作されていると、前記復帰手段の作動を牽制阻止する牽制手段を備えてある請求項3〜6のうちのいずれか一つに記載の水田作業車の走行変速構造。
【請求項8】 前記走行用の第2変速装置が低速位置に操作されると、これに連動してエンジンのアクセル位置を低速側に操作するアクセルダウン手段を備えてある請求項1〜7のうちのいずれか一つに記載の水田作業車の走行変速構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、乗用型田植機や乗用型直播機等の水田作業車における走行変速構造に関する。
【0002】
【従来の技術】水田作業車の一例である乗用型田植機では一般に、水田で苗の植え付けを行いながら走行する植付走行速度、並びに路上走行等のように植付走行速度よりも高速で走行する高速走行速度に、変速自在な走行用の変速装置を備えたものが多くある。
【0003】水田では水田内(耕盤)と畦との間に高低差があるので、水田内(耕盤)から畦に出る場合や畦から水田内(耕盤)に入る場合等の畦越え時に、低速で安定して機体を移動させることができるように構成することが提案されている。又、運搬用のトラックの荷台から水田作業車を、歩み板を介して下ろす場合やトラックの荷台に載せる場合においても、低速で安定して機体を移動させることができるように構成することが提案されている。この場合に、植付走行速度よりも低速の低速移動用の低速位置を走行用の変速装置に備えたり、植付走行速度及び高速走行速度に変速自在な走行用の第1変速装置に加えて、低速移動用の低速位置に変速自在な走行用の第2変速装置を直列に配置したりする。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】水田によっては畦が高かったり畦の傾斜が急角度であったりすることがあり、トラックの荷台においても荷台の高さが高かったり、歩み板の傾斜が急角度であったりするので、走行用の変速装置(走行用の第2変速装置)を低速移動用の低速位置に操作するだけでは不充分な場合があり、安定して機体を移動させることが困難な場合がある。本発明は水田作業車の走行変速構造において、畦越え時やトラックの荷台への積み降ろし時に、安定して機体を移動させることができるように構成することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】[I]水田作業車では、走行用の第1変速装置、及び水田での作業走行位置よりも低速の走行速度を現出させる低速位置を備えた走行用の第2変速装置を、直列に配置して、走行用の第2変速装置を低速位置に操作することにより、畦越えやトラックの荷台への積み降ろしを行うように構成したものがある。
【0006】このような水田作業車において請求項1の特徴によれば、走行用の第2変速装置が低速位置に操作されると、これに連動して減速手段により走行用の第1変速装置も自動的に低速側に操作される。このように走行用の第2変速装置に加えて走行用の第1変速装置も低速側に操作されるように構成することにより、充分な低速状態を得ることができて、例えば畦やトラックの荷台が高かったり畦や歩み板の傾斜が急角度であったりしても、充分な低速状態で安定して機体を移動させることができる。この場合、走行用の第2変速装置が低速位置に操作された際、走行用の第1変速装置を手動で低速側に操作しなくても、減速手段によって自動的に走行用の第1変速装置が低速側に操作される。
【0007】[II]請求項2の特徴によると、請求項1の場合と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。水田によっては畦やトラックの荷台があまり高くなかったり、畦や歩み板の傾斜があまり急角度でなかったりすることがあるので、このような状態で前項[I]に記載のように走行用の第2変速装置に加えて、走行用の第1変速装置も低速側に操作されると、機体の走行速度が不必要に低速になることがある。請求項2の特徴によると、前述のような場合に設定手段によって減速手段を停止状態に設定しておけば、走行用の第2変速装置が低速位置に操作されても、走行用の第1変速装置が自動的に低速側に操作されることはない。
【0008】[III]請求項3の特徴によると、請求項1又は2の場合と同様に前項[I][II]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。水田作業車では、例えば畦越えが終了し水田内(耕盤)から畦に出た場合(又は畦から水田内(耕盤)に入った場合、トラックの荷台から降ろした場合)、適切な機体の走行速度を得る為に、走行用の第1変速装置の人為変速操作具を操縦者が操作して、走行用の第1変速装置を操作することがある。
【0009】走行用の第2変速装置の低速位置への操作に伴って、減速手段により走行用の第1変速装置が自動的に低速側に操作された状態で、畦越えやトラックの荷台への積み降ろしが終了した場合、請求項3の特徴によれば、走行用の第1変速装置の人為変速操作具が操作されると、低速側に操作されていた走行用の第1変速装置が、復帰手段によって人為変速操作具の操作位置に対応する変速位置に自動的に操作される。従って、この後に人為変速操作具を操作することによって、走行用の第1変速装置を所望の変速位置に操作して、適切な機体の走行速度を得ることができる。
【0010】[IV]請求項4の特徴によると、請求項1又は2の場合と同様に前項[I][II]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。走行用の第2変速装置の低速位置への操作に伴って、減速手段により走行用の第1変速装置が自動的に低速側に操作された状態で、畦越えやトラックの荷台への積み降ろしが終了した場合、請求項4の特徴によれば、走行用の第2変速装置が元の変速位置に操作されると、低速側に操作されていた走行用の第1変速装置が、復帰手段によって人為変速操作具の操作位置に対応する変速位置に自動的に操作される。従って、畦越えやトラックの荷台への積み降ろしが終了してから、走行用の第1変速装置の人為変速操作具を操作して、人為変速操作具の操作位置と走行用の第1変速装置の変速位置とを対応させると言うような操作を行わなくてもよい。
【0011】[V]請求項5の特徴によると、請求項3又は4の場合と同様に前項[I]〜[IV]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。畦越えやトラックの荷台への積み降ろしが終了してから、低速側に操作されていた走行用の第1変速装置が、復帰手段によって人為変速操作具の操作位置に対応する変速位置に自動的に操作される場合、請求項5の特徴によると、低速側に操作されていた走行用の第1変速装置が、人為変速操作具の操作位置に対応する変速位置に急激に操作されるのではなく漸次的に操作される。これにより、請求項5の特徴によると、畦越えやトラックの荷台への積み降ろしが終了してからの急激な加速が防止される。
【0012】[VI]請求項6の特徴によると、請求項3〜5のうちのいずれか一つの場合と同様に前項[I]〜[V]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。畦越えやトラックの荷台への積み降ろしが終了してから、低速側に操作されていた走行用の第1変速装置が、復帰手段によって人為変速操作具の操作位置に対応する変速位置に自動的に操作される場合、請求項6の特徴によれば、走行用の第1変速装置の人為変速操作具が操作された際(走行用の第2変速装置が元の変速位置に操作された際)、低速側に操作されていた走行用の第1変速装置が直ぐに人為変速操作具の操作位置に対応する変速位置に操作され始めるのではなく、所定時間が経過してから人為変速操作具の操作位置に対応する変速位置に操作され始める。これにより、請求項6の特徴によると、畦越えやトラックの荷台への積み降ろしが終了してからの急激な加速が防止される。
【0013】[VII]請求項7の特徴によると、請求項3〜6のうちのいずれか一つの場合と同様に前項[I]〜[VI]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。走行用の第2変速装置の低速位置への操作に伴って、減速手段により走行用の第1変速装置が自動的に低速側に操作された状態で、畦越えやトラックの荷台への積み降ろしを行った場合、走行クラッチを伝動遮断側に操作して機体を一時停止させることがある。
【0014】請求項7の特徴によれば、走行クラッチが伝動遮断側に操作された機体の停止状態では、走行用の第1変速装置の人為変速操作具が操作されても(走行用の第2変速装置が元の変速位置に操作されても)、低速側に操作されていた走行用の第1変速装置が、人為変速操作具の操作位置に対応する変速位置に操作されることはなく、走行クラッチが伝動側に操作されてから(機体が移動している状態で)、走行用の第1変速装置の人為変速操作具が操作されると(走行用の第2変速装置が元の変速位置に操作されると)、低速側に操作されていた走行用の第1変速装置が、人為変速操作具の操作位置に対応する変速位置に操作される。これにより、請求項7の特徴によると、畦越えやトラックの荷台への積み降ろしが終了してからの急激な加速が防止される。
【0015】[VIII]請求項8の特徴によると、請求項1〜7のうちのいずれか一つの場合と同様に前項[I]〜[VII]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。請求項8の特徴によれば、走行用の第2変速装置が低速位置に操作されると、これに連動して減速手段により走行用の第1変速装置が自動的に低速側に操作されるのに加えて、エンジンのアクセル位置も低速側に操作されて、エンジンの回転数が落とされる。このように走行用の第2変速装置に加えて走行用の第1変速装置が低速側に操作され、エンジンの回転数も落とされるように構成することにより、充分な低速状態を得ることができて、例えば畦やトラックの荷台が高かったり畦や歩み板の傾斜が急角度であったりしても、充分な低速状態で安定して機体を移動させることができる。
【0016】前述のように走行用の第2変速装置が低速位置に操作され、走行用の第1変速装置が低速側に操作されると、走行伝動系に高いトルクの動力が伝達されることになる。この場合、請求項8の特徴のようにエンジンの回転数を落としてやれば(エンジンの停止を招かない程度)、走行伝動系に伝達される動力のトルクを抑えることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】[1]図1に示すように、左右に操向操作自在な左右一対の前輪1及び左右一対の後輪2で支持された機体に、操縦部3が形成され、リンク機構4により苗植付装置5が機体の後部に昇降自在に連結されて、水田作業車の一例である四輪駆動型の乗用型田植機が構成されている。
【0018】次に、走行伝動系の構造について説明する。図1及び図2に示すように機体の前部にエンジン6が備えられ、エンジン6の後側にミッションケース7が備えられており、エンジン6の動力が両割プーリー型式のベルト式無段変速装置8及び摩擦多板式の主クラッチ9を介して、ミッションケース7の入力軸10に伝達される。図2に示すように、入力軸10に対して第1伝動軸11及び第2伝動軸12が配置され、第1シフトギヤ13がスプライン構造によって第1伝動軸11に一体回転及びスライド操作自在に外嵌されている。図2に示す状態は第1シフトギヤ13が入力軸10の第1ギヤ10aに咬合する標準位置にスライド操作された状態であり、入力軸10の動力が第1ギヤ10a及び第1シフトギヤ13を介して第1伝動軸11に伝達されている。
【0019】第1伝動軸11に相対回転自在に外嵌された第1高速ギヤ14が、第2伝動軸12に相対回転自在に外嵌された第2高速ギヤ15に咬合しており、第2シフトギヤ16がスプライン構造によって第2伝動軸12に一体回転及びスライド操作自在に外嵌されている。
【0020】図2に示す状態は、第1シフトギヤ13を入力軸10の第1ギヤ10aに咬合する標準位置にスライド操作し、第2シフトギヤ16を第1伝動軸11の低速ギヤ11aに咬合する植付位置にスライド操作している状態である。この状態で入力軸10の動力が第1ギヤ10a、第1シフトギヤ13、第1伝動軸11の低速ギヤ11a及び第2シフトギヤ16を介して第2伝動軸12に伝達されており、第2伝動軸12を介して前輪1及び後輪2に伝達されている。第1伝動軸11の動力が、株間変速装置17を介して苗植付装置5に伝達されている。この状態において、水田で苗の植え付けを行いながら走行する植付走行速度を得ることができる。
【0021】図2に示す状態から、第1シフトギヤ13を入力軸10の第1ギヤ10aに咬合する標準位置に残して、第2シフトギヤ16を第2高速ギヤ15のボス部に咬合する移動位置にスライド操作すると、入力軸10の動力が第2ギヤ10b、第1高速ギヤ14、第2高速ギヤ15及び第2シフトギヤ16を介して第2伝動軸12に伝達されて、第2伝動軸12を介して前輪1及び後輪2に伝達される。この状態において、路上走行等のように植付走行速度よりも高速で走行する高速走行速度を得ることができる。
【0022】図2に示す状態から、第1シフトギヤ13を入力軸10の第1ギヤ10aに咬合する標準位置に残して、第2シフトギヤ16を後進ギヤ対18に咬合する後進位置にスライド操作すると、入力軸10の動力が第1ギヤ10a、第1シフトギヤ13、第1伝動軸11の後進ギヤ11b、後進ギヤ対18及び第2シフトギヤ16を介して第2伝動軸12に伝達されて、第2伝動軸12を介して前輪1及び後輪2に伝達される。この状態において、機体を後進させることができる。
【0023】[2]次に、第2シフトギヤ16のスライド操作構造について説明する。図2に示すように、シフト軸19が回転自在(軸芯方向のスライドは不可)にミッションケース7に支持されており、第2シフトギヤ16に係合する第2シフトフォーク22がシフト軸19にスライド操作自在に外嵌されている。ミッションケース7の軸芯(図示せず)周りに操作アーム20が揺動自在に支持されて、操作アーム20が第2シフトフォーク22に係合しており、操縦部3に備えられた主変速レバー23(図1参照)と、操作アーム20とが機械的に連係されている。
【0024】これにより、主変速レバー23によって操作アーム20を揺動操作し、第2シフトフォーク22を介して第2シフトギヤ16を前項[1]に記載の移動位置、植付位置及び後進位置にスライド操作する。第2シフトフォーク22にデテントボール22aが備えられ、シフト軸19に4箇所の位置決め溝部19aが形成されており、第2シフトフォーク22のデテントボール22aがシフト軸19の位置決め溝部19aに入り込むことによって、第2シフトギヤ16及び第2シフトフォーク22が、移動位置、植付位置、植付位置と後進位置との間の中立位置及び後進位置に保持される。
【0025】[3]次に、第1シフトギヤ13のスライド操作構造について説明する。図2に示すように、第1シフトギヤ13に係合する第1シフトフォーク21がシフト軸19にスライド自在に外嵌されている。第1シフトフォーク21のボス部にカム部21aが形成され、操作ピン24が直径方向に貫通するようにシフト軸19に固定されて、シフト軸19の操作ピン24が第1シフトフォーク21のカム部21aに接当しており、第1シフトフォーク21をシフト軸19の操作ピン24側に付勢するバネ25が備えられている。
【0026】操縦部3に備えられた畦越えレバー26(図1参照)と、シフト軸19とが機械的に連係されて、畦越えレバー26によりシフト軸19を所定角度(例えば90°程度)の範囲で回転操作できるように構成されている。図2に示す状態は、畦越えレバー26を標準位置に操作している状態であり、シフト軸19の操作ピン24が第1シフトフォーク21のカム部21aに接当しバネ25に抗して、第1シフトギヤ13が入力軸10の第1ギヤ10aに咬合する標準位置にスライド操作されている状態である(前項[1]参照)。
【0027】図2に示す状態から、畦越えレバー26を畦越え位置に操作してシフト軸19を所定角度だけ回転操作すると、シフト軸19の操作ピン24と第1シフトフォーク21のカム部21aとの接当作用及びバネ25の付勢力により、第1シフトフォーク21がシフト軸19の操作ピン24側にスライド操作されて、第1シフトフォーク21により第1シフトギヤ13が第1高速ギヤ14の側面に咬合する畦越え位置にスライド操作される。
【0028】このように第1シフトギヤ13が入力軸10の第1ギヤ10aから離れて第1高速ギヤ14の側面に咬合すると、入力軸10の動力が第2ギヤ10b及び第1高速ギヤ14を介して第1伝動軸11に伝達される状態となり、前項[1]に記載のように入力軸10の動力が第1ギヤ10a及び第1シフトギヤ13を介して第1伝動軸11に伝達される状態よりも、低速の動力が入力軸10から第1伝動軸11に伝達される。
【0029】前述のように第1シフトギヤ13を第1高速ギヤ14の側面に咬合する畦越え位置にスライド操作した状態で、前項[1][2]に記載のように第2シフトギヤ16を移動位置、植付位置及び後進位置にスライド操作することができる。この場合、第1シフトギヤ13の畦越え位置及び第2シフトギヤ16の移動位置での速度は、第1シフトギヤ13の標準位置及び第2シフトギヤ16の移動位置よりも低速で、第1シフトギヤ13の標準位置及び第2シフトギヤ16の植付位置よりも高速である。第1シフトギヤ13の畦越え位置及び第2シフトギヤ16の植付位置での速度は、第1シフトギヤ13の標準位置及び第2シフトギヤ16の植付位置よりも低速であり、第1シフトギヤ13の畦越え位置及び第2シフトギヤ16の後進位置での速度は、第1シフトギヤ13の標準位置及び第2シフトギヤ16の後進位置よりも低速である。
【0030】[4]次に、ベルト式無段変速装置8の変速操作構造について説明する。図1及び図3に示すように、操縦部3に無段変速レバー27が備えられ、無段変速レバー27の操作位置を検出する位置センサー28の検出値が制御装置29に入力されており、ベルト式無段変速装置8を操作する操作シリンダ30が備えられている。これにより、無段変速レバー27を最高速位置及び最低速位置の間で操作することにより、無段変速レバー27の操作位置に対応する変速位置に、制御装置29及び操作シリンダ30によってベルト式無段変速装置8が操作される。
【0031】[5]次に、畦越えレバー26を畦越え位置に操作した際の制御の流れについて、図4に基づいて説明する。図3に示すように、畦越えレバー26が畦越え位置に操作されているか否かを検出する畦越えセンサー32が備えられ、畦越えセンサー32の検出信号が制御装置29に入力されている。図2に示す主クラッチ9を伝動側及び伝動遮断側に操作するクラッチペダル35が備えられ、クラッチペダル35が踏み操作されて主クラッチ9が伝動遮断側に操作されていることを検出するクラッチセンサー33が備えられており、クラッチセンサー33の検出信号が制御装置29に入力されている。作動位置及び停止位置に操作自在な設定スイッチ31が操縦部3に備えられており、設定スイッチ31の信号が制御装置29に入力されている。
【0032】これにより、設定スイッチ31が作動位置に操作され(ステップS1)、畦越えレバー26が標準位置に操作されている状態で、畦越えレバー26が畦越え位置に操作されると(ステップS2)、図3に示す操作シリンダ30によりベルト式無段変速装置8が自動的に最低速位置に操作され(ステップS3)、操作シリンダ36によりエンジン6のガバナ34(アクセル位置)が、自動的に所定の低速位置(例えばエンジン6の回転数が2500rpmになるような位置)に操作される(ステップS4)。この場合に無段変速レバー27は、ベルト式無段変速装置8が自動的に最低速位置に操作される前の操作位置に残されるのであり、エンジン6のハンドアクセルレバー(図示せず)も、エンジン6のガバナ34(アクセル位置)が自動的に所定の低速位置に操作される前の位置に残される。
【0033】このように畦越えレバー26が畦越え位置に操作されて(図2に示す第1シフトギヤ13が第1高速ギヤ14の側面に咬合する畦越え位置)、ベルト式無段変速装置8が最低速位置に操作され、エンジン6のガバナ34(アクセル位置)が所定の低速位置に操作された状態(主変速レバー23は植付位置又は後進位置に操作しておく)で、前進しながら又は後進しながら畦越えやトラックの荷台への積み降ろしを行う。
【0034】前述のように畦越えやトラックの荷台への積み降ろしが終了した後、ベルト式無段変速装置8が自動的に最低速位置に操作される前の操作位置から別の操作位置に、無段変速レバー27が操作されると(ステップS6)、タイマー(図示せず)がカウントを開始して(ステップS8)、所定時間(例えば2〜5秒)が経過すると(ステップS9)、図3に示す操作シリンダ30によりベルト式無段変速装置8が、無段変速レバー27の操作位置に対応する変速位置にゆっくりと漸次的に操作され(ステップS10)、操作シリンダ36の作用が消えてエンジン6のガバナ34(アクセル位置)が、ハンドアクセルレバーの操作位置に対応する位置に自動的に戻る(ステップS11)。
【0035】畦越えやトラックの荷台への積み降ろしが終了した後、前述のように無段変速レバー27が操作されなくても、畦越えレバー26が畦越え位置から標準位置に操作されると(ステップS7)、タイマー(図示せず)がカウントを開始して(ステップS8)、所定時間(例えば2〜5秒)が経過すると(ステップS9)、図3に示す操作シリンダ30によりベルト式無段変速装置8が、無段変速レバー27の操作位置(ベルト式無段変速装置8が自動的に最低速位置に操作される前の操作位置)に対応する変速位置にゆっくりと漸次的に操作され(ステップS10)、操作シリンダ36の作用が消えてエンジン6のガバナ34(アクセル位置)が、ハンドアクセルレバーの操作位置に対応する位置に自動的に戻る(ステップS11)。
【0036】畦越えやトラックの荷台への積み降ろしが終了した後において、クラッチペダル35が踏み操作されて主クラッチ9が伝動遮断側に操作されていると(ステップS5)、前述のように無段変速レバー27が操作されたり、畦越えレバー26が畦越え位置から標準位置に操作されても、ベルト式無段変速装置8が最低速位置に保持され、エンジン6のガバナ34も所定の低速位置に保持されている。これにより、クラッチペダル35を戻し操作し主クラッチ9を伝動側に操作してから(ステップS5)、無段変速レバー27を操作したり、畦越えレバー26を畦越え位置から標準位置に操作することによって、ベルト式無段変速装置8が無段変速レバー27の操作位置に対応する変速位置に戻り(ステップS10)、エンジン6のガバナ34(アクセル位置)がハンドアクセルレバーの操作位置に対応する位置に戻る(ステップS11)。
【0037】図3に示す設定スイッチ31を停止位置に操作しておくと(ステップS1)、畦越えレバー26を標準位置から畦越え位置に操作しても、図3に示す操作シリンダ30によりベルト式無段変速装置8が自動的に最低速位置に操作されることはなく、操作シリンダ36によりエンジン6のガバナ34(アクセル位置)が、自動的に所定の低速位置の操作されることはない。この場合、操縦者は畦やトラックの荷台の高さ、畦や歩み板の傾斜の角度に応じて、無段変速レバー27を操作してベルト式無段変速装置8を所望の変速位置に操作したり、ハンドアクセルレバーを操作して、エンジン6のガバナ34(アクセル位置)を所望の位置に操作すればよい。
【0038】[発明の実施の別形態]図4に示すステップS3において、ベルト式無段変速装置8が最低速位置ではなく、最低速位置の少し手前の低速位置に操作されるように構成してもよい。図4に示すステップS10において、ベルト式無段変速装置8をゆっくりと漸次的に一次関数的に操作するのではなく、ベルト式無段変速装置8の変速位置を階段状に段階的に、無段変速レバー27の操作位置に対応する変速位置に操作するように構成してもよい。
【0039】図4においてステップS8,S9を削除して、無段変速レバー27が操作されたり(ステップS6)、畦越えレバー26が畦越え位置から標準位置に操作されたりすると(ステップS7)、直ぐにステップS10,S11に移行するように構成してもよい。ベルト式無段変速装置8に代えて、静油圧式無段変速装置や、テーパーコーンを備えて構成された無段変速装置を使用してもよい。
【0040】
【発明の効果】請求項1の特徴によれば、水田作業車の走行変速構造において走行用の第2変速装置が低速位置に操作されると、これに連動して走行用の第1変速装置も自動的に低速側に操作されるように構成することにより、充分な低速状態を得ることができて、畦越えやトラックの荷台への積み降ろしが充分な低速状態で安定して行うことができるようになり、水田作業車の走行性能及び取扱性を良いものにすることができた。請求項1の特徴によれば、走行用の第2変速装置が低速位置に操作されると、これに連動して走行用の第1変速装置が自動的に低速側に操作されるので、水田作業車の操作性も良いものにすることができた。
【0041】請求項2の特徴によると、請求項1の場合と同様に前述の請求項1の「発明の効果」を備えており、この「発明の効果」に加えて以下のような「発明の効果」を備えている。請求項2の特徴によると、機体の走行速度をあまり低速にしなくても畦越えやトラックの荷台への積み降ろしが安定して行える場合に、走行用の第2変速装置が低速位置に操作されても、走行用の第1変速装置が自動的に低速側に操作されないようにすることができるので、機体の走行速度を不必要に低速にすることなく、畦越えやトラックの荷台への積み降ろしが行えるようになって、水田作業車の作業性を良いものにすることができた。
【0042】請求項3の特徴によると、請求項1又は2の場合と同様に前述の請求項1又は2の「発明の効果」を備えており、この「発明の効果」に加えて以下のような「発明の効果」を備えている。請求項3の特徴によると、走行用の第2変速装置の低速位置への操作に伴って走行用の第1変速装置が自動的に低速側に操作された状態で、畦越えやトラックの荷台への積み降ろしが終了した場合、走行用の第1変速装置の人為変速操作具が操作されると、低速側に操作されていた走行用の第1変速装置が、人為変速操作具の操作位置に対応する変速位置に自動的に操作されるので、この後に人為変速操作具によって走行用の第1変速装置を操作し、適切な機体の走行速度を容易に得ることができるようになって、水田作業車の操作性をさらに良いものにすることができた。
【0043】請求項4の特徴によると、請求項1又は2の場合と同様に前述の請求項1又は2の「発明の効果」を備えており、この「発明の効果」に加えて以下のような「発明の効果」を備えている。請求項4の特徴によると、走行用の第2変速装置の低速位置への操作に伴って走行用の第1変速装置が自動的に低速側に操作された状態で、畦越えやトラックの荷台への積み降ろしが終了した場合、走行用の第2変速装置が元の変速位置に操作されると、低速側に操作されていた走行用の第1変速装置が、走行用の第1変速装置の人為変速操作具の操作位置に対応する変速位置に自動的に操作されるので、畦越えやトラックの荷台への積み降ろしが終了してから、走行用の第1変速装置の人為変速操作具の操作位置と走行用の第1変速装置の変速位置とを対応させると言うような操作を行わなくてもよくなって、水田作業車の操作性をさらに良いものにすることができた。
【0044】請求項5の特徴によると、請求項3又は4の場合と同様に前述の請求項3又は4の「発明の効果」を備えており、この「発明の効果」に加えて以下のような「発明の効果」を備えている。請求項5の特徴によると、畦越えやトラックの荷台への積み降ろしが終了してから、低速側に操作されていた走行用の第1変速装置が、人為変速操作具の操作位置に対応する変速位置に漸次的に自動的に操作されるので、畦越えやトラックの荷台への積み降ろしが終了してからの急激な加速が防止されて、水田作業車の安定性及び乗り心地を向上させることができた。
【0045】請求項6の特徴によると、請求項3〜5のうちのいずれか一つの場合と同様に請求項3〜5の「発明の効果」を備えており、この「発明の効果」に加えて以下のような「発明の効果」を備えている。請求項6の特徴によると、畦越えやトラックの荷台への積み降ろしが終了してから、低速側に操作されていた走行用の第1変速装置が、少し遅れて人為変速操作具の操作位置に対応する変速位置に自動的に操作され始めるので、畦越えやトラックの荷台への積み降ろしが終了してからの急激な加速が防止されて、水田作業車の安定性及び乗り心地をさらに向上させることができた。
【0046】請求項7の特徴によると、請求項3〜6のうちのいずれか一つの場合と同様に請求項3〜6の「発明の効果」を備えており、この「発明の効果」に加えて以下のような「発明の効果」を備えている。請求項7の特徴によると、畦越えやトラックの荷台への積み降ろしが終了した場合、走行クラッチが伝動側に操作されていないと(伝動側に操作されてからでないと)、低速側に操作されていた走行用の第1変速装置が、人為変速操作具の操作位置に対応する変速位置に自動的に操作されないので、畦越えやトラックの荷台への積み降ろしが終了してからの急激な加速が防止されて、水田作業車の安定性及び乗り心地をさらに向上させることができた。
【0047】請求項8の特徴によると、請求項1〜7のうちのいずれか一つの場合と同様に請求項1〜7の「発明の効果」を備えており、この「発明の効果」に加えて以下のような「発明の効果」を備えている。請求項8の特徴によれば、走行用の第2変速装置が低速位置に操作されると、これに連動して走行用の第1変速装置が自動的に低速側に操作され、エンジンのアクセル位置も低速側に操作されて、エンジンの回転数が落とされるように構成することによって、さらに充分な低速状態を得ることができて、畦越えやトラックの荷台への積み降ろしが充分な低速状態で安定して行うことができるようになり、水田作業車の走行性能及び取扱性をさらに良いものにすることができた。請求項8の特徴のように、エンジンの回転数を落としてやれば(エンジンの停止を招かない程度)、走行伝動系に伝達される動力のトルクを抑えることができるので、走行伝動系の耐久性の面でも有利なものとなった。
【出願人】 【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
【出願日】 平成11年3月24日(1999.3.24)
【代理人】 【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
【公開番号】 特開2000−270626(P2000−270626A)
【公開日】 平成12年10月3日(2000.10.3)
【出願番号】 特願平11−80084