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【発明の名称】 田植機の昇降制御装置
【発明者】 【氏名】越智 竜児

【要約】 【課題】植付深さ調節を行った場合であっても、センサフロートの制御感度を変更しない構成を施すについて、構成の複雑さを招来しないで行えるものを提供する点にある。

【解決手段】センサフロート11Aと苗植付装置2との基準高さLを一定に維持するように、センサフロート11Aと苗植付装置2との高さ変位を検出するフロートセンサ18の検出値を目標値に維持するように苗植付装置2を昇降制御するものにおいて、植付深さ調節操作を行った場合にも、目標値に補正を施してセンサフロート11Aの上下揺動姿勢を維持して、制御感度が変動することのないようにする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 走行機体の後部に駆動昇降自在に連結した苗植付装置に、センサフロートを後支点周りで上下揺動自在に取り付けるとともに、前記センサフロートと前記苗植付装置との基準相対高さ変位を検出するフロートセンサを設け、前記フロートセンサの検出値を目標値に維持するように、前記苗植付装置を昇降作動させる昇降制御手段を設け、前記センサフロートの後支点を前記苗植付装置に対して高さを変更して植付深さを調節する植付深さ調節レバーを設けてある田植機の昇降制御装置であって、前記植付深さ調節レバーの操作位置を検出する植付深さ操作位置センサを設け、植付深さ調節レバーの植付深さ変更操作に基づいて、前記センサフロートの昇降制御中立時における基準の上下揺動姿勢が植付深さ調節以前の状態又はこれに近い状態を維持するように、前記植付深さ操作位置センサの検出結果に基づいて前記目標値を自動的に補正するように前記昇降制御手段を構成してある水田作業機の昇降制御装置。
【請求項2】 前記センサフロートを接地付勢する付勢手段を設けるとともに、前記付勢手段の付勢力を調節する付勢力調節手段を設け、前記昇降制御手段で、植付深さ調節操作前後で付勢力が変動しないように又はこれに近い状態に前記付勢力調節手段を制御する請求項1記載の水田作業機の昇降制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、走行機体の後部に駆動昇降自在に連結した苗植付装置に、センサフロートを後支点周りで上下揺動自在に取り付けるとともに、前記センサフロートと前記苗植付装置との基準相対高さ変位を検出するフロートセンサを設け、前記フロートセンサの検出値を目標値に維持するように、前記苗植付装置を昇降作動させる昇降制御手段を設け、前記センサフロートの後支点を前記苗植付装置に対して高さを変更して植付深さを調節する植付深さ調節レバーを設けてある田植機の昇降制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】昇降制御手段での制御形態は、センサフロートと苗植付装置との基準相対高さが変位しないように行われる。一方、植付深さ調節操作は、苗植付装置に対してセンサフロートの後支点を上下させることによって、行われる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記のような構成を採っている為に、植付深さ調節操作を浅植側に行った場合には、図6(イ)に示すように、センサフロート11Aの後支点Xが苗植付装置2に対して下降するが、センサフロート11Aの前端は基準間隔Lを維持するように昇降制御が行われるので、センサフロート11Aは前上がり姿勢になり、植付深さ調節操作前と姿勢が異なっており、鈍感側に変更されたことになる。このように、植付深さ調節操作を行うと、センサフロート11Aの感度特性が変化するという問題があった。そこで、従来は、例えば、特開平10‐290606号公報において示すように、植付深さ調節操作レバーとセンサフロート11Aとを連係し、植付深さ調節操作に対応してセンサフロート11Aの後支点と同様に前端をも上下変位可能に構成し、センサフロート11Aの上下揺動姿勢を一定に維持する構成としていた。しかし、上記構成は機械的な連係リンク機構を植付深さ調節操作レバーと連係する機構を設けている複雑な構成をとるものである為に、植付ケースの前端とセンサフロートの前端との僅かな間隔の間に複雑な構成のものを配置しなければならず、機構が複雑であるのみならず配置構成に要する設計上の負担が大きくなる問題は解消されてなかった。本発明の目的は、従来のような複雑な機構を採用することなく、植付深さ調節操作に対応してセンサフロート11Aの上下揺動姿勢の変更を抑えることのできる田植機の昇降制御装置を提供する点にある。
【0004】
【課題を解決するための手段】〔構成〕請求項1に係る発明の特徴構成は、植付深さ調節レバーの操作位置を検出する植付深さ操作位置センサを設け、植付深さ調節レバーの植付深さ変更操作に基づいて、前記センサフロートの昇降制御中立時における基準の上下揺動姿勢が植付深さ調節以前の状態又はこれに近い状態を維持するように、前記植付深さ操作位置センサの検出結果に基づいて前記目標値を自動的に補正するように前記昇降制御手段を構成してある点にあり、その作用、及び、効果は次の通りである。
〔作用効果〕つまり、植付深さ調節レバーを操作すると、植付深さ操作位置センサがその操作状態を検出し、この検出結果に基づいて、フロートセンサの目標値を補正する。具体的方法としては、図6(ロ)に示すように、浅植側に植付け深さを変更すると、後支点Xが下降すると同時に昇降感度設定器への変更操作を行うことなく、昇降制御手段において目標値を補正し、フロートセンサの目標値が図示するように変更されて、センサフロートは調節前の状態を維持する。これによって、センサフロートの制御感度は変化しない。しかも、従来のように機械的な構成を用いることなく、ソフト的な処理のみによって機械的な構成のものと同様の機能を達成することにより、機器構成の簡素化に寄与できる。尚、フロートセンサの目標値に補正を施すだけであるので、植付深さの変更に伴って、センサフロートの制御感度を調節前の状態よりやや敏感側或いは鈍感側に変更することもでき、制御としての調節範囲を広げることができる。
【0005】〔構成〕請求項2に係る発明の特徴構成は、前記センサフロートを接地付勢する付勢手段を設けるとともに、前記付勢手段の付勢力を調節する付勢力調節手段を設け、前記昇降制御手段で、植付深さ調節操作前後で付勢力が変動しないように又はこれに近い状態に前記付勢力調節手段を制御する点にあり、その作用、及び、効果は次の通りである。
〔作用効果〕この構成においては、センサフロートの上下揺動姿勢を維持することができるだけでなく、付勢手段の付勢力の変更も回避できるので、センサフロートの制御感度の変更をより確実に防止できる。尚、付勢力調節手段を変更するだけであるので、植付深さの変更に伴って、付勢手段の付勢力を敏感側にやや弱くする或いは鈍感側にやや強く変更することもでき、圃面の硬軟状態に応じた感度設定を行える。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1及び図2に示すように、田植機は、座席9を備えた操縦部1を有する走行機体10の後端に、油圧シリンダ3によって駆動される平行四連リンク式の昇降リンク機4を介して、苗植付装置2を取り付けるとともに、その後面に施肥装置5を装着して構成してある。苗植付装置2には、左右に往復スライド移動する苗載せ台6、回転式苗植付機構7を軸支した植付ケース8、植付ケース8の下方に整地フロート11を設けてある。
【0007】苗植付装置2の昇降制御について説明する。整地フロート11の内のセンタに位置するセンタフロート11Aをセンサフロートとして選定し、センサフロート11Aを植付ケース8より下斜め後方に向けて延出された支持アーム12の先端を後支点Xとして上下揺動自在に支持する。植付ケース8を左右に複数列配設し、植付ケース8同士を連結する横向き連結フレーム13を走行機体10からの動力を受けるフィードケース14に取り付けてある。フィードケース14の前面に第1ブラケット15Aを立設するとともに、フィードケース14の前面とセンサフロート11Aの前端部とに亘って屈折リンク機構16を架設して、後支点X周りでセンサフロート11Aを上下揺動自在に構成する。一方、センサフロート11Aの前端部と第2ブラケット15Bとに亘ってセンサリンク機構17を架設し、第2ブラケット15Bに取り付けたポテンショメータ式のフロートセンサ18でセンサリンク機構17を介してセンサフロート11Aの昇降作動を検出する構成にしてある。
【0008】一方、フロートセンサ18からの信号を受けて昇降制御を行う昇降制御装置19を設けてあり、センサフロート11Aの上下揺動姿勢、つまり、図2に示す、センサフロート11Aの前端部とフロートセンサ18設置位置との間隔Lを一定に維持するように昇降制御を行う。間隔Lの値は、ポテンショメータ式の昇降感度設定器20からの設定値を目標値とする。間隔Lを目標値とし、圃面の硬度が増す場合や苗植付装置2自体が下降してセンサフロート11Aが押し上げられ上向きに傾斜した場合には、センサフロート11Aの上下揺動姿勢を目標状態に維持する(フロートセンサ18の検出値と昇降感度設定器20との設定値とが同一値であるように)為に、苗植付装置2を上昇させる。反対に圃面の硬度が落ちた場合や苗植付装置2自体が圃面より上昇した場合にはフロート先端が下向き傾斜することになるので、苗植付装置2を下降させてセンサフロート11Aの上下揺動姿勢を目標値に維持する。昇降感度設定器20は鈍感から敏感まで7つの設定ポジションがあり、その設定位置に対応して、フロートセンサ18の検出値をフィードバックして、対応した数値に維持するような制御になる。
【0009】図中27は電磁制御弁28に対する強制昇降操作具であり、その操作具の操作軸に設けたレバーセンサ29の操作位置検出結果に基づいて、苗植付装置2を任意に強制昇降させる操作具である。強制昇降操作具は、植付クラッチレバーとも呼ばれ、「自動」「上昇」「中立」「下降」「植付入り」「植付切り」の各操作位置に操作される。
【0010】次に、植付深さ調節構造について説明する。図2に示すように、複数の植付ケース8の先端面に亘って横向きに伸びる回転可能な支軸21を架設し、支軸21に前記したセンサフロート11Aの後支点Xを吊り下げる支持アーム12を一体揺動可能に取り付けてある。横向きに伸びる支軸21の中間位置には植付深さ調節レバー22を取り付けてあり、植付深さ調節レバー22の操作部を操縦部1の後方に配置してある。
【0011】図2及び図3に示すように、植付ケース8の前面より延出されたブラケット23に、植付深さ調節レバー22の操作移動を案内する溝23Aを設けているとともに、溝23Aに操作位置を確定する係止部23aを複数段設けてあり、植付深さ調節レバー22を上下方向に操作して植付深さを選定し、その位置で操作を停止すると、植付深さ調節レバー22が図示しない付勢手段の付勢力によって係止部23aに係合するようになり、操作位置が確定する。植付深さ調節レバー22を深植位置に設定すると、センサフロート11Aの後支点Xが基準位置より上昇し、苗植付装置2に対してセンサフロート11Aが近接する状態になる。植付深さ調節レバー22を浅植位置に設定すると、センサフロート11Aの後支点Xが基準位置より下降し、苗植付装置2に対してセンサフロート11Aが離れる状態になる。植付深さ調節レバー22がどの位置に操作されているかは、植付深さ調節レバー22の揺動軸芯位置Yに設けてある植付深さ操作位置センサ24によって検出する。検出センサとしてはポテンショメータが用いられ、検出電圧の特性は、図5に示すように、浅植から深植まで変化するものとなる。
【0012】植付深さ調節操作と昇降制御との連係について説明する。図6(イ)に示すように、例えば、植付深さを浅い側に変更すると、センサフロート11Aの後支点Xが苗植付装置2に対して下降する。但し、昇降制御においては、苗植付装置2とセンサフロート11A前端との間隔Lを一定に維持するような制御を行うので、その制御形態を維持することにすると、図6(イ)に示すように、センサフロート11Aは前上がり姿勢となる。この状態では、センサフロート11Aの昇降感度性が鈍感側に変化する。そこで、次のような制御形態を採る。昇降感度設定器20によって設定された目標値となるようにフロートセンサ18の検出値を一致するようにしてあるが、植付深さ調節を上記のように行うと、昇降感度設定器20での設定を変更せずに、目標値のみに補正を加えて変更するようにする。このように、目標値に補正を加えるとすると、フロートセンサ18の目標値が図6(ロ)に示すように、基準状態では“4”であったものが、敏感側の“3”に切り換えられ、基準間隔Lが大きくなって下降した後支点Xと高さのつり合いがとれ、センサフロート11Aの姿勢が植付深さ調節前と変わらない状態になる。
【0013】以上の関係を制御フローに表すと、次のようになる。
■ 図7に示すように、まず、昇降感度設定器20によって、目標値を設定する。昇降感度としては敏感側から鈍感側に掛けて7段階に設定することができるが、ここでは、目標値を基準状態(V0 )に便宜上設定する(#101)。
■ 次に、フロートセンサ18からの検出値(V)を基準状態(V0 )と比較して、制御フローで示すように苗植付装置2の昇降制御を行う。ここで、基準状態(V0 )としては補正後の(V0 ’)(V0 ’’)も含める(#102〜#105)。
■ このような昇降制御に対して、植付深さ調節レバー22の操作位置によって次のような制御感度の目標値に対して補正を加える。つまり、植付深さ操作位置センサ24からの信号によって、設定が深植か浅植かを判断し、判断結果に基づいて図7に示すようにフロートセンサ18での目標値(V0 )を変更する。植付深さが浅植側に操作されていれば、目標値(V0 )に対して補正値(α)を差し引いて目標値を敏感側(V0 ’=V0 −α)に自動的に調整する。このことは、昇降感度設定器20での制御感度は変更されていないが、フロートセンサ18の目標値だけが調整されることになる。したがって、センサフロート11Aの前端部とフロートセンサ18設置位置との間隔Lが大きくなる方向に調節されて、浅植状態に設定されて後支点Xが苗植付装置2より離れた状態にあっても、その間隔Lを大きくできるので、結果的にセンサフロート11Aの上下揺動姿勢を植付深さを調節する以前の状態と同一にできる。このことによって、植付深さの調節操作にもかかわらず昇降感度を一定に維持できる(#106〜#109)。
■ 上記■においては、植付深さの調節操作にもかかわらず昇降感度を一定に維持する制御構成について説明したが、植付深さ調節を行うことが、圃面の硬度等と関連する場合もある。浅植状態に設定するということは、圃面が柔らかい為に植付られる苗が圃面に植え込み易いところから、浅植状態に切り換える、というように考えることもできる。又、反対に、圃面が硬い為に植付られる苗が圃面内に入りにくくなるので、浅植状態に切り換える、というようにも考えることができる。このように、その考え方は種々できるのであるが、いずれにしても、植付深さと圃面の硬さとは連係した部分もあるので、センサフロート11Aの上下揺動姿勢を植付深さ調節前と略一定した状態でありながらやや前上がり状態或いは前下がり状態に幾分変位させるように制御してもよい。
【0014】図2に示すように、センサフロート11Aのセンサリンク機構17に対しては付勢手段としての付勢バネ25が設けてあり、センサフロート11Aを接地方向に付勢している。付勢バネ25は一端をセンサリンク機構17のベルクランク17Aに連結し、他端を付勢力変更用の電動シリンダ26に連結してある。上記した植付深さ調節操作を行った場合には、基準間隔Lが変化することになるので、付勢力も変動する。ここで、電動シリンダ26により付勢バネ25の張設長さを変更することによって、植付深さ調節操作を行う以前の付勢力を維持できることになる。尚、この場合に、付勢力を同一状態に戻すのではなく、多少強弱が変動する略同一の状態に切り換えてもよい。電動シリンダ26を付勢力調節手段と称する。
【0015】〔別実施の形態〕
(1) 上記実施の形態においては、センサフロート11Aの上下揺動姿勢を検出するのに、センサフロート11Aの前端と苗植付装置2との間隔の変化を捉えるようにしてあるが、図8に示すように、フロートセンサ18の取り付け位置としてはセンサフロート11Aの前端に限定されず後支点Xの前方に設けてもよく、又、後支点Xに設けてセンサフロート11Aの上下揺動量を検出するようにしてもよい。
(2) 付勢手段としては、引っ張りバネだけでなく圧縮バネであってもよく、また、バネとダンパー機構を併用したものであってもよい。
(3) 制御形態としては、植付深さ調節が行われても、センサフロート11Aの揺動姿勢、及び、付勢手段の付勢力は調節前の状態を維持するように行われるのが原則であるが、制御感度が敏感側又は鈍感側に変位する状態を作り出してもよい。
【出願人】 【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
【出願日】 平成11年3月25日(1999.3.25)
【代理人】 【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
【公開番号】 特開2000−270624(P2000−270624A)
【公開日】 平成12年10月3日(2000.10.3)
【出願番号】 特願平11−80859