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【発明の名称】 水田用農作業機の作業部昇降制御装置
【発明者】 【氏名】大内 建之

【氏名】岡田 卓也

【氏名】和泉 満孝

【要約】 【課題】水田表土面から受ける圧力に応じて前部が上下動する揺動自在な接地体が作業部に設けられており、該接地体の水平面に対する角度が所定の制御目標値に近づくように走行部に対し作業部を昇降させる水田用農作業機において、土壌条件に合った適正な作業部昇降制御を行わせる。

【解決手段】作業部昇降制御装置を、向い角の制御目標値を変更する操作具16と、前記接地体34が水田表土面から受ける圧力の変動に応じて前記制御目標値を補正する第一補正手段46と、前記操作具16の操作に連動して前記第一補正手段46の補正基準を変更する第二補正手段47,48とを具備する構成とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 水田表土面から受ける圧力に応じて前部が上下動する揺動自在な接地体が作業部に設けられ、該接地体の水平面に対する角度が所定の制御目標値に近づくように走行部に対し作業部を昇降させる水田用農作業機の作業部昇降制御装置において、前記制御目標値を変更する操作具と、前記接地体が水田表土面から受ける圧力の変動に応じて前記制御目標値を補正する第一補正手段と、前記操作具の操作に連動して前記第一補正手段の補正基準を変更する第二補正手段とを設けたことを特徴とする作業部昇降制御装置。
【請求項2】 水田表土面から受ける圧力に応じて前部が上下動する揺動自在な接地体が作業部に設けられ、該接地体の水平面に対する角度が所定の制御目標値に近づくように走行部に対し作業部を昇降させる水田用農作業機の作業部昇降制御装置において、前記接地体の水平面に対する角度を意図的に大きくする操作を行ったときの実際の角度変化に基づき前記制御目標値を補正する機能を有することを特徴とする作業部昇降制御装置。
【請求項3】 水田表土面から受ける圧力に応じて前部が上下動する揺動自在な接地体が作業部に設けられ、該接地体の水平面に対する角度が所定の制御目標値に近づくように走行部に対し作業部を昇降させる水田用農作業機の作業部昇降制御装置において、車速の変化に応じて前記接地体の水平面に対する角度を変更するとともに、このときの車速変化及び接地体の水平面に対する角度の変化に基づき前記制御目標値を補正する制御を行うことを特徴とする作業部昇降制御装置。
【請求項4】 水田表土面から受ける圧力に応じて前部が上下動する揺動自在な接地体が作業部に設けられ、該接地体の水平面に対する角度が所定の制御目標値に近づくように走行部に対し作業部を昇降させる水田用農作業機の作業部昇降制御装置において、走行部の前後方向の傾斜を検出する検出手段を設け、該検出手段の検出値が所定以上であるときは、作業部を上昇操作した場合における作業部の上昇速度を遅くする制御を行うことを特徴とする作業部昇降制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、走行部に対し作業部が昇降可能な田植機等の水田用農作業機の作業部昇降制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】水田用農作業機の作業部昇降制御装置として、水田表土面から受ける圧力に応じて前部が上下動する揺動自在な接地体が作業部に設けられており、該接地体の水平面に対する角度(以下、「向い角」とする)が所定の制御目標値に近づくように走行車体に対し作業部を昇降させることにより、作業部の対地高さを一定に維持する制御を行うものがある。
【0003】この接地体を使用する制御においては、接地体が前下がりの姿勢である時の向い角を正とした場合、向い角が大きいほど、水田表土面の凹凸に対し忠実に応答して接地体が揺動するという特性がある。この特性を利用し、向い角の制御目標値を変更することで制御感度を調節する方法が従来より行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、接地体の応答性に最も大きな影響を与える外的要因は土壌の硬軟度である。すなわち、土壌が硬いと、水田表土面が接地体を持ち上げる力が強いので、接地体の応答性が良く、逆に土壌が軟らかいと、水田表土面が接地体を持ち上げる力が弱いので、接地体の応答性が悪い。そこで、作業を行う際、土壌の硬軟度を含む種々の条件を判断材料にして、オペレータが向い角の制御目標値を設定している。しかしながら、同じ水田であっても、土壌の硬軟度は場所によって異なっているので、制御目標値が一定のままであると、全域にわたり土壌条件に合った適正な昇降制御を行えない。
【0005】また、機体の移動速度が速くなるほど水田表土面の凸部が接地体を押し上げる力が強くなるので、移動速度に関係なく向い角の制御目標値を一律に設定すると、作業条件に合った適正な昇降制御を行えない。
【0006】一般的に、田植機では接地体として整地用フロートが利用され、作業時には作業部の重量の一部が上記フロートによって泥面に受けられた状態となっている。このため、昇降制御が不適正であると、苗の植付深さが安定せず、整地性にも問題が生じる。そこで本発明は、土壌条件及び作業条件にあった適正な昇降制御を行えるようにすることを第一の課題としている。
【0007】さらに、作業を行いながら水田から出るとき等のように、走行部が前上りに傾いた状態で作業部が上昇する場合、その上昇速度が速過ぎると、反動で走行部の前輪が地面から浮き上がってしまうことがある。すると、機体の安定が損なわれて、進路を適正に維持できないばかりか、場合によっては転倒するという危険がある。これを解決することを第二の課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】第一の課題を解決するために、以下の各発明を行った。第一の発明にかかる作業部昇降制御装置は、水田表土面から受ける圧力に応じて前部が上下動する揺動自在な接地体が作業部に設けられ、該接地体の水平面に対する角度が所定の制御目標値に近づくように走行部に対し作業部を昇降させる水田用農作業機の作業部昇降制御装置において、前記制御目標値を変更する操作具と、前記接地体が水田表土面から受ける圧力の変動に応じて前記制御目標値を補正する第一補正手段と、前記操作具の操作に連動して前記第一補正手段の補正基準を変更する第二補正手段とを設けたことを特徴としている。
【0009】第二の発明にかかる作業部昇降制御装置は、水田表土面から受ける圧力に応じて前部が上下動する揺動自在な接地体が作業部に設けられ、該接地体の水平面に対する角度が所定の制御目標値に近づくように走行部に対し作業部を昇降させる水田用農作業機の作業部昇降制御装置において、前記接地体の水平面に対する角度を意図的に大きくする操作を行ったときの実際の角度変化に基づき前記制御目標値を補正する機能を有することを特徴としている。
【0010】第三の発明にかかる作業部昇降制御装置は、水田表土面から受ける圧力に応じて前部が上下動する揺動自在な接地体が作業部に設けられ、該接地体の水平面に対する角度が所定の制御目標値に近づくように走行部に対し作業部を昇降させる水田用農作業機の作業部昇降制御装置において、車速の変化に応じて前記接地体の水平面に対する角度を変更するとともに、このときの車速変化及び接地体の水平面に対する角度の変化に基づき前記制御目標値を補正する制御を行うことを特徴としている。
【0011】また、第二の課題を解決するために次の発明を行った。すなわち、第四の発明にかかる作業部昇降制御装置は、水田表土面から受ける圧力に応じて前部が上下動する揺動自在な接地体が作業部に設けられ、該接地体の水平面に対する角度が所定の制御目標値に近づくように走行部に対し作業部を昇降させる水田用農作業機の作業部昇降制御装置において、走行部の前後方向の傾斜を検出する検出手段を設け、該検出手段の検出値が所定以上であるときは、作業部を上昇操作した場合における作業部の上昇速度を遅くする制御を行うことを特徴としている。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、図面に表された乗用田植機の植付部昇降制御装置について説明する。図1乃至図3に示す乗用田植機1は、走行部である走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して作業部である植付部4が昇降可能に装着されている。
【0013】走行車体2は、各左右一対の前輪2a,2a及び後輪2b,2bを備えた四輪駆動車両で、機体の前部に配したミッションケース5の背面部から後方に延ばして設けたメインフレーム6の上にエンジン7が搭載されている。エンジン7の回転動力は、無段変速装置8を経由してミッションケース5内のトランスミッションに伝達され、そこから前輪2a,2a、後輪2b,2b、及び植付部4の各駆動部に伝達される。
【0014】エンジン7の上側には操縦席10が設置され、その前方にハンドル11が設けられている。また、操縦席10から操作可能な範囲内に、トランスミッションを切り替える主変速レバー12、無段変速装置8を操作する副変速レバー13、植付部4への伝動の入切と植付部4の昇降を行うための植付・昇降レバー14、植付部4を昇降させる指操作式のフィンガアップレバー15、植付部昇降制御の感度を調節する感度調節レバー16等が設けられている。
【0015】昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク20及び左右一対の下リンク21,21を備えている。これらリンク20,21,21は、その基部側がメインフレーム6の後端部に立設したリンクベースフレーム22に回動自在に取り付けられ、その先端側に連結枠23が枢結されている。連結枠23には植付部4をローリング自在に連結するローリング軸23aが設けられている。メインフレーム6に固着した支持部材と上リンク20に一体形成したスイングアーム24の先端部との間に昇降用油圧シリンダ25が介装されており、該シリンダを油圧で伸縮させることにより、上リンク20が上下に回動し、連結枠23に装着した植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。昇降用油圧シリンダ25は、リンクベースフレーム22に取り付けた油圧バルブ26によって制御する。
【0016】植付部4は6条植えの構成となっていて、フレームを兼ねる伝動ケース30に、6条分の苗を載せておく苗載台31と、該苗載台上の苗を水田面に植え付ける6組の植付装置32,…等が組み付けられている。植付部4の下側には整地用のセンターフロート34及びサイドフロート35,35が設けられ、これらフロートを水田の泥面に接地させた状態で機体を進行させると各フロートが泥面を整地しつつ滑走する。
【0017】各フロート34,35,35は、左右横向きに配したフロート支持パイプ37に固着されたフロート支持アーム38,…の後端部に、水田表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように揺動自在に取り付けられている。フロート支持パイプ37は伝動ケース30に回動自在に支持されており、これを植付深さ調節レバー39で回動させることにより、フロートの取付高さを変え、苗の植付深さを調節するようになっている。植付深さ調節レバー39に固着の係合片40を伝動ケース30に固定されたレバーガイド41の複数の凹部のいずれかに選択的に係合させ、植付深さ調節レバー39を所望の植付深さ位置に固定する。
【0018】植付深さ調節レバー39は、フロート支持パイプ37と一体回動する固定部分39aと、その中間部に回動軸43により回動自在に連結された回動部分39bとからなり、回動部分39bに固着されたワイヤ取付プレート44の長穴44aに固定部分39aの先端部が遊嵌している。よって、固定部分39aと回動部分39bとは、回動軸43を支点にして長穴44aの範囲内で互いに回動可能になっている。固定部分39aの先端部にはU字金具45が固着されており、その片方の端部に後述する第一連動ワイヤ46の一端が取り付けられ、他方の端部に後述する第二連動ワイヤ47の一端が面圧スプリング48を介して取り付けられている。面圧スプリング48は、フロート34,35,35を水田表土面に押し付ける方向に固定部分39aを付勢している。通常は該スプリングの張力と水田表土面からの圧力とが釣り合っており、両者の強さに差が生じるとそれに応じて固定部分39aが回動する。
【0019】センターフロート34は水田表土面の凹凸を検出するための接地体でもあり、その向い角θの変動が下記の検出機構に検出され、その検出結果に基づいて前記制御バルブ26を駆動するようになっている。検出機構は、前後中間部を支点にして上下回動自在な天秤アーム50を備え、その後端部とセンターフロート34の前部上面とを連結リンク51を介して連結し、その前端部にスプリング52を介して自動昇降ワイヤ53を取り付けている。天秤アーム50は、伝動ケース30に基部が上下に回動自在に枢支された上リンク55及び下リンク56の先端部に縦リンク57を枢結した平行リンク機構に支持されている。そして、上リンク55の基部に一体に設けたアーム58と植付深さ調節レバー39とが連動ロッド59で連結されている。これにより、植付深さ調節レバー39を操作すると、それに連動してフロート取付高さの変化分に相当するだけ天秤アーム50の支点位置が変位する。
【0020】油圧バルブ26はスプール弁であって、スプール26aを押し込むと油圧シリンダ25が植付部上昇側に作動(伸び作動)し、スプール26aが突出すると油圧シリンダ25が植付部下降側に作動(縮み作動)するようになっている。スプール26aには、軸61に回動自在に取り付けられた自動昇降アーム62の作用部が当接している。この自動昇降アーム62の先端部に設けた取付プレート62aに前記自動昇降ワイヤ53のセンターフロートと反対側の端部が繋着されており、センターフロート34の前部が上動してフロート向い角が小さくなると、自動昇降ワイヤ53を介して自動昇降アーム62がスプール26aを押し込む側に回動させられる。また、センターフロート34の前部が下動してフロート向い角が大きくなると、リターンスプリング63の作用で自動昇降アーム62が反対側に回動させられ、スプール26aが突出する。これにより、植付作業時、水田表土面の凹凸に応じて植付部4が昇降し、苗の植付け深さを一定に維持する。
【0021】自動昇降アーム62を支持する軸61は、軸65を支点として回動自在な感度調節アーム66に設けられている。感度調節アーム66の支点軸65には、向い角の制御目標値を変更する操作具である前記感度調節レバー16が一体に取り付けられている。感度調節レバー16を操作すると、自動昇降アーム62の支点(61)が移動し、フロート向い角の制御目標値が変更される。ここで、「制御目標値」はフロートが基準位置にあるときの向い角を意味する。「従来の技術」で説明した如く、フロート向い角が大きいほど制御感度が敏感になる。
【0022】前記取付プレート62aは自動昇降アーム62の本体部に回動自在に連結されており、これに第一補正手段である前記第一連動ワイヤ46の植付深さ調節レバーと反対側端部が繋がっている。これにより、フロート34,35,35が水田表土面から受ける圧力の変動に応じて、第一連動ワイヤ46を介して取付プレート62aが回動させられ、該プレートと自動昇降ワイヤ53との連結点の位置が変わることにより、フロート向い角が変更される。具体的には、水田表土面から受ける圧力が面圧スプリング48の張力よりも大きくなるとフロート向い角が大きくなり、圧力が張力よりも小さくなるとフロート向い角が小さくなる。フロートの水田表土面から受ける圧力が大きいということは、フロートが沈み気味であり、走行部機体が前上りになっていることを意味する。そのような状態は湿田等の土壌が軟弱な圃場で生じるものであるから、その時にはフロート向い角の制御目標値を大きくして制御感度を敏感にするのである。また、フロートの水田表土面から受ける圧力が小さいということは、上記と逆の場合であり、その時にはフロート向い角の制御目標値を小さくして制御感度を鈍感にするのである。
【0023】また、感度調節アーム66には、第二補正手段である前記第二連動ワイヤ47の植付深さ調節レバーと反対側端部が繋がっている。このため、感度調節レバー16を操作して制御感度の調節を行う場合、フロート向い角を小さくして制御感度を鈍感にする時には面圧スプリング48の張力が大きくなり、逆にフロート向い角を大きくして制御感度を敏感にする時には面圧スプリング48の張力が小さくなる。このことは次のように説明される。すなわち、フロート向い角を小さくするのは土壌が軟らかい場合であるから、この時、走行部機体が前上りとなり、フロートが沈み気味となっている。そこで、面圧スプリング48の張力を大きくすることにより、フロートの沈み込み量を適正に戻すのである。フロート向い角を大きくする時には、上記と逆に作用する。また面圧スプリング48の張力を変更することにより、前記第一連動ワイヤ46を介して、フロート向い角の制御目標値も補正される。このように、感度調節レバー16を操作すると、直接的に向い角が変更されるだけでなく、フロートが水田表土面から受ける圧力の変動に基づく向い角の変更の基準も変えられるので、両者があいまって圃場条件に合った適正な昇降制御を行える。
【0024】なお、油圧バルブ26のスプール26aには、感度調節アーム66とは別に、主変速レバー12、植付・昇降レバー14、及びフィンガアップレバー15の操作に連動する図示しない油圧アームが当接しており、オペレータの支持に従って植付部4を昇降させるとともに、主変速が後進になると植付部4を自動的に上昇させるようになっている。
【0025】図4は異なる昇降制御装置を表している。図3の昇降制御装置と同じ構造部分については同符号を記し、図3の昇降制御装置と異なる点についてだけ説明する。この昇降制御装置は、自動昇降アーム62に直接自動昇降ワイヤ53のセンターフロートと反対側の端部が繋がれている。そして、一端が植付深さ調節レバーの固定部分39aに繋がれた第一連動ワイヤ46の他端が、可変リターンスプリング63′を介して感度調節アーム66に繋がれている。可変リターンスプリング63′は、固定リターンスプリング63と逆向きに感度調節アーム66を付勢している。固定リターンスプリング63による付勢力の方が可変リターンスプリング63′による付勢力よりも大きく、全体的にはスプール26aが突出する側に感度調節アーム66を付勢している。
【0026】この構成によれば、フロート34,35,35が水田表土面から受ける圧力の変動に応じて、第一連動ワイヤ46を介して可変リターンスプリング63′の張力が変更され、それによって両リターンスプリング63,63′のトータルとしての付勢力が変わる。これにより、水田表土面から受ける圧力が大きくなるとフロート向い角を大きくし、圧力が小さくなるとフロート向い角を小さくするように作動する。このように、土壌の硬軟に応じてフロート向い角を自動的にを調節することにより、土壌条件の変化に合わせて適正な制御感度で昇降制御を行える。
【0027】上記2例はメカ的機構の昇降制御装置である。次に、電子制御式の昇降制御装置について説明する。電子制御式の昇降制御装置を備えた田植機の全体構成は図1及び図2に示すものとほぼ同じであるが、感度調節レバー16の代わりに感度調節ダイヤル16′(図5に図示)が設けられ、走行部2の前後傾斜を検出する前後傾斜センサ79(図5に図示)が別に設けられている点が異なっている。また、昇降用油圧シリンダ25を伸縮制御する油圧バルブ26としては、ソレノイド制御弁が使用されている。
【0028】図5は電子制御式の昇降制御装置を表している。この装置も、フロート支持パイプ37に固着されたフロート支持アーム38,…の後端部に、各フロート34,35,35が揺動自在に取り付けられている。そして、植付深さ調節レバー39でフロート支持パイプ37を回動させることにより、苗の植付深さを調節するようになっている。この装置の植付深さ調節レバー39は、前記メカ的機構の昇降制御装置とは異なり、一体物の棒材で成形されている。
【0029】接地体であるセンターフロート34の向い角検出機構は、前後中間部を支点にして上下回動自在な天秤アーム50を備え、その後端部とセンターフロート34の前部上面とを連結リンク51を介して連結し、その前端部と向い角センサ70の検出アーム70aとを連結ロッド71を介して連結している。これにより、センターフロート34の向い角が向い角センサ70に検出される。
【0030】天秤アーム50及び向い角センサ70は、向い角調節プレート73に基部が上下に回動自在に枢支された上リンク55及び下リンク56の先端部に縦リンク57を枢結した平行リンク機構に支持されている。そして、上リンク55の基部に一体に設けたアーム58と植付深さ調節レバー39とが連動ロッド59で連結されている。これにより、植付深さ調節レバー39を操作すると、それに連動してフロート取付高さの変化分に相当するだけ天秤アーム50の支点位置が変位する。
【0031】向い角調節プレート73は、取付軸74を支点にして回動自在に伝動ケース30に取り付けられいる。そして、向かい角調節プレート73に形成されたギヤ75に、向い角調節モータ76で回転駆動させるピニオン77が噛み合っている。モータ76を作動させると、向い角調節プレート73が回動することにより、平行リンク機構ごと向い角検出機構が変位し、フロート向い角が変更される。向かい角調節プレート73の回動位置は、ポジションセンサ78に検出される。
【0032】制御部80の入力側に主変速レバー12、副変速レバー13、植付・昇降レバー14、フィンガアップレバー15、感度調節ダイヤル16′、向い角センサ70、向い角ポジションセンサ78、前後傾斜センサ79が接続され、出力側に油圧バルブ駆動用のソレノイド26a,26b、向い角調節モータ76が接続されている。
【0033】主変速レバー12、植付・昇降レバー14、及びフィンガアップレバー15からの信号が制御部80に入力されると、制御部80はその信号に基づき油圧バルブ駆動用のソレノイド26a,26bに出力し、メカ的機構の昇降制御装置と同様に、オペレータの支持に従って植付部4を昇降させるとともに、主変速が後進になると植付部4を自動的に上昇させる。
【0034】植付作業時には、向い角センサ70に検出される実際のフロート向い角が感度調節ダイヤル16′で設定された制御目標値に近づくように油圧バルブ駆動用のソレノイド26a,26bに出力する。例えば、水田表土面が高くなっているところでは、センターフロート34の前部が押し上げられ、フロート向い角が小さくする。すると、上昇用ソレノイド26aに出力して、植付部4を上昇させる。逆に、水田表土面が低いところでは、センターフロート34の前部が下がり、フロート向い角が大きくなる。すると、下降用ソレノイド26bに出力して、植付部4を下降させる。このように、水田表土面の凹凸に応じて植付部4の対地高さを制御することにより、苗の植付深さを一定に維持する。
【0035】この対地制御中、車速変化に対応させるために図6のフローチャートに示す制御を行う。すなわち、副変速レバー13の操作位置から判定される車速の監視を継続して行い、車速が高速側に変化した場合はフロート向い角を小さくする側に向い角調節モータ76を作動させ、車速が低速側に変化した場合はフロート向い角を大きくする側に向い角調節モータ76を作動させる。車速が速いほど水田表土面の凸部がフロートを押し上げる力が大きいという傾向があるので、車速が速くなるほどフロート向い角を小さくすることで、車速が変化しても一定した制御感度を維持させるのである。なお、副変速レバー13の操作位置以外の別の方法で車速を検出するようにしてもよい。
【0036】また、向い角調節モータ76を作動させる前の向い角センサ値Aと作動後の向い角センサ値Bをそれぞれ入力し、両者A,Bの値と前記車速変化値より感度補正値を算出する。そして、この感度補正値の算出値と、予めデータテーブルに記憶されている感度補正値の理論値とを比較し、両者がほぼ等しい場合はそのままにし、算出値の方が理論値よりも大きい場合はフロート向い角を大きくする側に向い角調節モータ76を作動させ、算出値よりも理論値の方が大きい場合はフロート向い角を小さくする側に向い角調節モータ76を作動させる。これは土壌の硬軟に合わせた補正である。一般的に、土壌が軟らかいとフロートを持ち上げる力が小さく、逆に土壌が硬いとフロートを持ち上げる力が大きいが、上記のように補正することにより制御感度を適正にできる。
【0037】土壌の硬軟の違いに対応させるためには、図7のフローチャートに示す制御を行う。すなわち、フロート向い角が小さくなる側に向い角調節モータ76を一定角度だけ作動させ、作動前の向い角センサ値Aと作動後の向い角センサ値Bとから感度補正値を算出する。そして、この感度補正値の算出値と、予めデータテーブルに記憶されている感度補正値の理論値とを比較し、両者がほぼ等しい場合はそのままにし、算出値の方が理論値よりも大きい場合はフロート向い角を大きくする側に向い角調節モータ76を作動させ、算出値よりも理論値の方が大きい場合はフロート向い角を小さくする側に向い角調節モータ76を作動させる。この補正も、図8のフローチャートに示す制御の補正と同じ原理に基づいている。
【0038】走行部の前後傾斜に対する走行安定性を確保するために、図8のフローチャートに示す制御を行う。すなわち、植付部上昇操作があった場合、前後傾斜センサ値が所定値以下なら、上昇用ソレノイド26aに連続出力して通常速度で植付部4を上昇させ、前後傾斜センサ値が所定値を超えるなら、上昇用ソレノイド26aにパルス出力してゆっくりした速度で植付部4を上昇させる。これにより、植付作業しながら圃場から出るとき等のように走行部2が大きく前上りになった状態で植付部を急激に上昇させることによる転倒等の事故を未然に防止できる。
【0039】さらに、上記制御において、図9のフローチャートに示すように、フロートが所定角度以上に前下がり、すなわち垂れ下がった状態になった時点で、植付部を自動的に上昇させるように制御すると、苗植付けを行いながら圃場から出るとき、走行部の操縦に専念することができ安全である。
【0040】
【発明の効果】以上に説明した如く、本発明にかかる水田用農作業機の作業部昇降制御装置は、接地体が水田表土面から受ける圧力の変動に応じた向い角の制御目標値の補正と、向い角を変更する操作具の操作に連動した補正とを併用することにより、土壌条件に合った適正な作業部昇降制御を行えるようになった。
【0041】接地体の水平面に対する角度を意図的に大きくし、このときの変更前と変更後との角度変化に基づき向い角の制御目標値を補正する構成としても、土壌条件に合った適正な作業部昇降制御を行える。
【0042】また、車速の変化に応じて接地体の水平面に対する角度を変更するとともに、このときの車速変化及び接地体の水平面に対する角度の変化に基づき向い角の制御目標値を補正することにより、機体の移動速度に合った適正な作業部昇降制御を行えるようになった。
【0043】さらに、走行部の前後方向の傾斜が大きい時には作業部の上昇速度を遅くするように制御することにより、作業を行いながら圃場から出る場合等に機体がバランスを崩すことを防止できるようになった。
【出願人】 【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
【出願日】 平成11年2月17日(1999.2.17)
【代理人】 【識別番号】100083611
【弁理士】
【氏名又は名称】菅原 弘志
【公開番号】 特開2000−232808(P2000−232808A)
【公開日】 平成12年8月29日(2000.8.29)
【出願番号】 特願平11−38665