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【発明の名称】 田植機の転倒防止機構
【発明者】 【氏名】井上 誠

【要約】 【課題】従来安全域を越えて本機が傾斜すると、警報装置のみが作動してたので、回避行動はオペレーター自身が行わなければならなかった。

【解決手段】乗用田植機の本機に傾斜センサー55を配置し、設定角度以上本機が傾くと傾斜センサーからの信号により警報を発すると同時に、昇降バルブ50を下降側に作動させて植付部を下降するようにし、前記傾斜センサーは制御手段41と接続し、前記昇降バルブのスプール61を摺動可能とするアクチュエーター59を配置し、該アクチュエーターを前記制御手段と接続して、前記傾斜センサーの検出値が設定範囲を越えるとアクチュエーターにて昇降バルブを下降側に切り換えるように制御した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 乗用田植機の本機に傾斜センサーを配置し、設定角度以上本機が傾くと傾斜センサーからの信号により警報を発すると同時に、昇降バルブを下降側に作動させて植付部を下降するようにしたことを特徴とする田植機の転倒防止機構。
【請求項2】 乗用田植機の本機に傾斜センサーを配置して制御手段と接続すると共に、植付部の昇降を制御する昇降バルブのスプールを摺動可能とするアクチュエーターを配置し、該アクチュエーターを前記制御手段と接続して、前記傾斜センサーの検出値が設定範囲を越えるとアクチュエーターにて昇降バルブを下降側に切り換えるように制御したことを特徴とする田植機の転倒防止機構。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、乗用田植機の本機に傾斜センサーを配置して、設定角度以上傾斜すると植付部を下降させて転倒を回避する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より乗用田植機の本機側に傾斜センサーを配置して、設定角度以上傾斜すると、警報を発するようにした技術は公知となっている。例えば、特開平10−164927の技術である。該技術は、走行機体の水平に対する前後左右の全方位の傾斜を検出して、各方向に対する安全基準範囲を外れると搭乗者に報知するようにしていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前記技術ではブザーやランプ等の警報装置によって、オペレーターに転倒するおそれがあることを知らせるようにしているだけであるので、転倒を回避するための操作はオペレーター自身が行わなければならない。一方、田植機が非作業時においては、植付部は上昇させた状態としているから、その重量の文だけ重心は高くなっている。従って、機体が転倒角度近くまで傾斜したときに植付部を下げると、重心が下がり転倒を回避できる。従って、機体が設定範囲以上傾斜したときに、転倒を回避するためには、機体を停止させて、植付部を下げる操作することが望ましい。しかし、機体が傾いたときに、一度に二つ以上の操作をすることは大変難しかったのである。そこで、本発明は本機が設定範囲以上傾くと自動的に植付部を下降させて転倒を回避できるようにする技術を提供しようとする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。即ち、乗用田植機の本機に傾斜センサーを配置し、設定角度以上本機が傾くと傾斜センサーからの信号により警報を発すると同時に、昇降バルブを下降側に作動させて植付部を下降するようにした。
【0005】また、乗用田植機の本機に傾斜センサーを配置して制御手段と接続すると共に、植付部の昇降を制御する昇降バルブのスプールを摺動可能とするアクチュエーターを配置し、該アクチュエーターを前記制御手段と接続して、前記傾斜センサーの検出値が設定範囲を越えるとアクチュエーターにて昇降バルブを下降側に切り換えるように制御した。
【0006】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態を添付の図面を用いて説明する。図1は本発明の転倒防止機構を装備した田植機の全体側面図、図2は同じく平面図、図3は制御ブロック図と油圧回路図、図4は制御バルブの操作部を示す図、図5は油圧ポンプ駆動部の断面図である。
【0007】まず、図1、図2を用いて全体構成から説明する。乗用田植機の本機となる走行機体1は、機体フレーム10の前部に左右一対の前輪11・11をアクスルケースを介して支承し、後部に左右一対の後輪12・12をリアアクスルケースを介して支承している。機体フレーム10前部上にエンジン4やバッテリーや燃料タンク等を載置してボンネット13にて覆い、ボンネット13後部のダッシュボード14上にステアリングハンドル15を突出している。該ダッシュボード14の(進行方向に向かって)右側にはアクセルレバー16が配置され、その下方のステップ上には左右のブレーキペダル17L・17Rが配置され、左側のステップ上にはクラッチペダル18が配置されている。
【0008】前記機体フレーム10の後部上には座席20が配置され、該座席20の右側には植付部昇降レバー21が配置され、その後部に感度調節レバー22が配置され、左側には変速レバー23が配置されている。
【0009】そして、機体フレーム10の後部に昇降リンク機構3を介して植付部2が装着されている。該植付部2は昇降リンク機構3の基部(座席20下方)に設けた油圧シリンダー5を伸縮することにより昇降可能としている。また、前記植付部2は前記昇降リンク機構3の後部にヒッチを介して植付駆動ケース24がローリング可能に装着され、該植付駆動ケース24の後部に伝動ケース25を複数突出して、該伝動ケース25にロータリー式の植付爪26・26を取り付けている。また、植付駆動ケース24の後部上に苗台レールを設けて苗載台27を左右摺動可能に載置し、植付駆動ケース24下方にサイドフロート28とセンターフロート29を配置している。
【0010】次に油圧回路構成について説明する。図3に示すように、エンジン4の出力軸30上にはミッションケースに動力を伝えるための出力プーリー6と、割りプーリー式無段変速装置31の駆動割りプーリー33が装着され、該割りプーリー式無段変速装置31を介して油圧ポンプ32が駆動される。該割りプーリー式無段変速装置31は図5に示すように、駆動割りプーリー33と従動割りプーリー35とベルト36よりなり、前記出力軸30上に駆動割りプーリー33が取り付けられている。該駆動割りプーリー33は固定プーリー33aと摺動プーリー33bからなり、固定プーリー33aは出力軸30上に固定され、摺動プーリー33bは出力軸30上を軸方向に摺動可能に外嵌されて、バネ34によって固定プーリー33a側に付勢されている。
【0011】また、割りプーリー式無段変速装置31を構成する従動割りプーリー35は固定プーリー35aと摺動プーリー35bからなり、固定プーリー35aはポンプ軸37上に固定され、摺動プーリー35bは固定プーリー35aのボス部(またはポンプ軸37)上に摺動可能に外嵌されて、該摺動プーリー35bはレバー39の回動によって摺動可能とされ、該レバー39はワイヤーやリンク等の伝動機構を介して前記アクセルレバー16と連結されている。但し、レバー39を駆動割りプーリー33側に、バネ34を従動割りプーリー35側に配置することも可能である。そして、アクセルレバー16が低回転の時には、従動割りプーリー35のプーリー幅が広げられ、油圧ポンプ32の駆動回転数を高めるようにし、アクセルレバー16を回動してエンジン4が高回転のときにはプーリー幅を狭めて、油圧ポンプ32へは駆動回転数を低くするように構成している。
【0012】このように構成することによって、エンジン4の回転数が低い場合には、割りプーリー式無段変速装置31によってポンプ軸37の回転が高くなるように変速され、エンジン4の回転数が高い場合には、ポンプ軸37の回転が低くなるように変速される。こうして、ポンプ軸37の回転数が略一定となるようにしているのである。よって、エンジン4の回転数の高低に関係なく、ポンプ軸37が略一定の回転数で駆動されるようになり、油圧ポンプ32から常時略一定量の圧油が吐出され、植付部2を上昇させたり、ローリングさせたりするときに、略一定のスピードで作動させることができ、制御遅れとなって泥押しやハンチング等を防止することができるのである。
【0013】但し、図3に示すように、割りプーリーの幅をシリンダーやソレノイド等のアクチュエーター40によって変更する構成とすることも可能であり、該アクチュエーター40を制御手段となるコントローラ41と接続し、また、エンジン4の回転数をセンサー42によって検知して、該センサー42をコントローラ41と接続し、該センサー42の検出値に応じてアクチュエーター40を作動させて、前記同様に、エンジン4の回転数が高いときには低速側に、回転数が低い時には高速側に変速するように構成することも可能である。
【0014】前記油圧ポンプ32の吐出側には、図3に示すように、フローデバイダー45が接続されて、該フローデバイダー45より一方は、パワーステアリング用油圧バルブ46を介してパワステシリンダー47と、昇降バルブ50を介して昇降油圧シリンダー5に送油して駆動可能とされ、他方はローリングバルブ51を介してローリングシリンダー52に送油して駆動可能とされている。
【0015】次に本発明の転倒防止機構について説明する。前記走行機体1の任意位置に傾斜センサー55とコントローラ41が配置され、本実施例では座席20の近傍に配置され、該コントローラ41には、図3に示すように、傾斜センサー55とブザーやランプ等からなる警報装置56と安全範囲の傾斜角を設定する設定器57とシリンダーやソレノイド等からなるアクチュエーター59が接続されている。
【0016】前記アクチュエーター59は図4に示すように、昇降バルブ50のスプール61に対してアクチュエーター59のピストン59aを連結するように配置し、該アクチュエーター59を作動させることによって、ピストン59aを縮小させてスプール61を摺動させ、昇降バルブ50を下げ側に切り換えるのである。
【0017】また、前記スプール61の先端側には更に前記植付部昇降レバー21とバルブアーム62が配置されて、植付部昇降レバー21の回動によりスプール61を摺動して昇降バルブ50を切り換えられるとともに、前記バルブアーム62にはワイヤー63を介して前記センターフロート29前部に配置した植深検知部64と連結され、センターフロート29前部の上下回動によって昇降バルブ50を切り換えて植付部2を昇降して植付深さが一定となるように調節するようにしている。また、植深検知の感度を調節するために、前記ワイヤー63のアウター65の端部にはリンク等を介して前記感度調節レバー22と連結されて、該感度調節レバー22の回動によって感度を変更可能としている。
【0018】このように構成することによって、傾斜センサー55で本機の傾斜が検知されて、コントローラ41に入力されて、該コントローラ41で設定角度と比較されている。そして、傾斜地を走行している時や、圃場に入る時や、畦越えする時や、移動するためにトラック等の荷台に積み込む時や降ろす時に、本機が傾き、傾斜センサー55からの値が設定範囲を越えると、コントローラ41から警報装置56に信号が送られて警報が発せられると同時に、コントローラ41からアクチュエーター59に駆動信号が送られて作動される。そして、ピストン59aが昇降バルブ50のスプール61を引いて下降側に切り換え、油圧シリンダー5内の圧油が昇降バルブ50を介してドレンされて、油圧シリンダー5が伸長されて、植付部2が下降し、機体全体の重心が下がり転倒を回避できるのである。なお、植付部2を下降した状態で転倒域になると更に警報を発するように、二段階で警報を発するように構成することもできる。
【0019】また、前記昇降バルブ50を電磁バルブにより構成して、該電磁バルブのソレノイドをコントローラ41と接続して、設定角度以上傾斜すると、下降側のソレノイドを作動させて植付部2を下降するように構成することも可能である。
【0020】
【発明の効果】本発明は以上の如く構成したので、以下の効果を奏するものである。即ち、請求項1の如く、乗用田植機の本機に傾斜センサーを配置し、設定角度以上本機が傾くと傾斜センサーからの信号により警報を発すると同時に、昇降バルブを下降側に作動させて植付部を下降するようにしたので、設定角度以上本機が傾くと警報によって転倒するおそれがあると、オペレーターに知らせて回避行動に移すことを認識させることができると同時に、植付部が下降することによって機体全体の重心が下がり、即座に転倒域に達することを防止でき、オペレーターは走行の停止操作だけでよく、複数の操作を行う必要がなく、容易に転倒回避行動に移すことができる。
【0021】また、請求項2の如く、乗用田植機の本機に傾斜センサーを配置して制御手段と接続すると共に、植付部の昇降を制御する昇降バルブのスプールを摺動可能とするアクチュエーターを配置し、該アクチュエーターを前記制御手段と接続して、前記傾斜センサーの検出値が設定範囲を越えるとアクチュエーターにて昇降バルブを下降側に切り換えるように制御したので、従来の傾斜センサーと制御手段に加えて、アクチュエーターを昇降バルブに配置するだけで、転倒防止機構を構成することが可能となり、簡単な構成で追加することができ、安価に構成することが可能となるのである。
【出願人】 【識別番号】000006851
【氏名又は名称】ヤンマー農機株式会社
【出願日】 平成11年2月16日(1999.2.16)
【代理人】 【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
【公開番号】 特開2000−232807(P2000−232807A)
【公開日】 平成12年8月29日(2000.8.29)
【出願番号】 特願平11−37324