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【発明の名称】 散布用種子床および種子床散布法
【発明者】 【氏名】笹原 則之

【要約】 【課題】比較的に大型で柔らかい種子を用いたときに種子を破損することなく、また、極乾期にも発芽が可能なドライ式の散布用種子床を提供する。

【解決手段】復元力のある繊維状物を含む材料をリング状に圧縮成形した養生材成形体、並びに、前記養生材成形体のリング状中空部に含まれる、種子、培養基材およびバインダーを含む種子含有成形体からなる散布用種子床。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 復元力のある繊維状物を含む材料をリング状に圧縮成形した養生材成形体、並びに、前記養生材成形体のリング状中空部に含まれる、種子、培養基材およびバインダーを含む種子含有成形体からなる散布用種子床。
【請求項2】 前記養生材成形体は凝集剤および粘土鉱物を含む、請求項1記載の散布用種子床。
【請求項3】 前記凝集剤はポリアクリルアマイド加水分解物であり、そして、粘土鉱物がゼオライトである、請求項2記載の散布用種子床。
【請求項4】 前記バインダーは脂肪族高級アルコールである、請求項1〜3のいずれか1項記載の散布用種子床。
【請求項5】 前記種子床の養生材成形体が脂肪族高級アルコールでコーティングされている、請求項1〜4のいずれか1項記載の散布用種子床。
【請求項6】 請求項1〜5のいずれか1項記載の散布用種子床をバイブレータ付きホッパー型散布装置に装填し、前記ホッパー型散布装置をヘリコプターに装着し、ホッパーの底から前記種子床を散布することを含む、種子床散布法。
【請求項7】 請求項1〜5のいずれか1項記載の散布用種子床をヒッター型散布装置に装填し、ヒッターにより打撃して種子床を飛散させることにより散布することを含む、種子床散布法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は大規模な荒廃裸地に対して緑化を復元するための植生基盤の造成のための散布用種子床およびこのような種子床の散布法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、山間部等の大規模な荒廃裸地は、車両等の乗り入れができないことが多く、水に種子や肥料等を混合したスラリー液を空中からヘリコプターにより散布することによる種子散布工が施工される。この種子散布工は、大量の用水を必要とするため、経済的でなく、また、薄層の植生基盤しか造成できない。この為、薄層の植生基盤でも導入が可能である草本類、主に発芽または初期生育が旺盛な外来草本を主体とした緑化復元に限定されてしまう。ところが、草本類は一時的な緑化復元しか期待できないため、恒久的な緑化復元のためには木本類による緑化復元が望ましい。
【0003】このような観点から、本願の発明者は種子入り圧縮成形物を開発し(特願平10−157507号)、恒久的な緑化復元が期待できる木本類の導入と、ドライ方式による水運搬の経費節減を可能にした。これにより、広大な荒廃地に対する大規模樹木化への一応の成果を上げることに成功した。先願による種子入り圧縮成形物は、成形時において、種子を混入する部分に対する圧力を低く抑えるように圧密度を変えて圧縮し、それにより、種子の破損を防止することを発明の要旨とするものであるが、松等の大型で柔らかな種子を用いたときには、この技術を用いても破損を回避することができない、という問題がある。また、圧縮成形物中に混入された種子は、圧縮成形物の形態復元時に地表から離れてしまうので、地表からの水分の供給ができず、極乾期には発芽が抑制されるという欠点もある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的は比較的に大型で柔らかい種子を用いたときに種子を破損することなく、また、極乾期にも発芽が可能なドライ式の散布用種子床を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明によると、復元力のある繊維状物を含む材料をリング状に圧縮成形した養生材成形体(2)、並びに、前記養生材成形体のリング状中空部に含まれる、種子(4)、培養基材(5)およびバインダー(6)を含む種子含有成形体(3)からなる散布用種子床(1)が提供される。
【0006】
【発明の実施の形態】(リング状養生材成形体)本発明の養生材成形体は復元力のある繊維状物を含むリング状に圧縮成形したものである。復元力のある繊維状物とは、散布後の一定期間経過後に、降雨等による水分を吸収することにより膨潤し、圧縮成形前の形態に復元しようとする能力を有する繊維状の物質である。このような復元力のある繊維状物は、例えば、木質部を含む樹皮である。この樹皮としては杉皮が特に好適である。杉皮の木質部は有機物の分解能の高い球菌が他の樹木皮よりも多く生息しており、その生活条件、例えば、水分条件を満たすとその機能を発揮する。また、杉の樹皮部分は分解が遅く、繊維質を長期間維持する。このような木質部を含む樹皮、特に杉皮は、その繊維と植生基盤との絡み合いにより植生基盤を保護し、また、有機物分解機能により、周辺の生態系を活性化することができる。また、復元力のある繊維状物としは、さらに、ココナツファイバー、鋸屑等が挙げられ、これらの材料は好適には杉皮と混合されて用いられる。
【0007】リング状の養生材成形体は、散布後の土壌を安定化させ、降雨等による侵食を防止するために凝集剤を含んでよい。このような凝集剤としてはポリアクリルアマイド加水分解物が挙げられ、例えば、三洋化成社製のAH210Pは好適である。養生材は、さらに、保肥性、保水性および土壌改良を目的として、粘土鉱物を含んでよく、例えば、ゼオライト、パーミュキュライト等を含んでよい。養生材成形体は、さらに、肥料、保水剤、界面活性剤等を含んでよい。肥料としては緩効性肥料であるCDU窒素、熔性リン肥等、保水剤としては高吸水性樹脂が挙げられる。界面活性剤は繊維状物の親水性を増大させるために使用されてよく、例えば、オクチルアルコールリン酸エステル等を用いることができる。培養基材としては、ピートモスおよびゼオライトを用いることができる。また、培養基材を活性化するための活性剤としてアルギン酸ソーダ、VA菌根菌等をも含んでよい。養生材成形体は、水分の吸収により形態が復元するが、この復元が速すぎると、養生材中に含まれる有効成分が流れ出して、種子の発芽および育成に悪影響を及ぼすおそれがある。このような場合には、水分の吸収による形態復元の速度を遅らせるための処理が施されてよい。このような処理としては、リング状の養生材成形体の外側に、例えば、ワックス状材料のコーティングを施すことが考えられる。ワックス状材料は養生材の形態復元を抑制するために疎水性であるが、完全に撥水性であると水分吸収による繊維状物の復元ができなくなるおそれがあるため、水酸基等の親水基を含む化合物であることが好ましい。このようなコーティング用の材料としては、脂肪族高級アルコール(例えば、三洋化成社製PEG4000S)が挙げられる。
【0008】(種子含有成形体)養生材成形体のリング状中空部には種子、培養基材およびバインダーを含む種子含有成形体が形成されている。種子としては、恒久的な緑化復元のために木本類の種子が好ましい。特に、本発明の種子床には、いずれの種子を含んでもよい。しかし、従来の方法では種子が死滅するために使用できなかった大型で柔らかい種子も使用可能であり、例えば、このような種子として松の種子が挙げられる。また、肥料木となるヤマハギおよびイタチハギの種子を用いることもできる。しかし、同じ種子床に発芽や初期生育等の性質の異なる樹種を混合すると、発芽や初期生育の早い樹種が遅い樹種を被圧して、遅い樹種の成立を阻害する恐れがあるため、種類別に個別の種子床を形成することが好ましい。バインダーとしては、ワックス状材料のバインダーを用いることができる。このようなバインダーとしては、上記のような脂肪族高級アルコール(例えば、三洋化成社製PEG4000S)を用いることができる。このようなバインダーを用いると、水溶性のバインダーを用いた場合と比較して、水を一切用いず、従って、保存中に種子の死滅させることがなく、そして成形体製造時に乾燥工程を要しないこと等の利点がある。バインダーとして脂肪族高級アルコール、例えば、PEG4000Sを用いたときには、成形体の容積を基準として10容積%の量のバインダーを含むときに良好な結果が得られることが判った。
【0009】(種子床製造法)本発明の種子床のためのリング状養生材成形体(2)は、圧縮しながら押出す押出成形によって中空の棒状材を製造し、それを切断することにより得られる。従来からよく知られているオガ炭を製造するためのオガライト製造機は用いられてよい。オガライト製造機は、一般に、スクリューおよびシリンダーが先細りしている一軸押出機であり、これにより、成形体が圧縮されて押し出される。一般に、1/5〜1/10の圧縮比で圧縮されて中空の棒状材を形成する。図3に一般的なオガライト製造機(8)の略図を示す。得られた中空の棒状材を切断してリング状養生材成形体(2)が得られる。その後、種子(4)、培養基材(5)およびバインダー(6)を混合し、そして例えば、バインダーの融点より高い温度に加熱して液体混合物とする。これをリング状養生材成形体のリング状中空部に装填し、冷却し、固化することにより本発明の種子床(1)が得られる。図1には六角形の形状の種子床が示されているが、円形等、他の形状であってもよい。
【0010】(散布法)本発明の散布用種子床は、図4に示すようなバイブレータ付きホッパー型散布装置(ホッパー)(9)を用いて、ヘリコプター等の飛行体から散布できる。散布に用いる容器は従来の種子含有スラリーを散布するために用いる容器に若干の変更を加えたものが考えられる。例えば、図5において、ホッパー(9)の底には、一般に、円錐状のホッパー底(10)が具備されている。ホッパー底(10)は、通常、閉止しているが、種子床(1)を散布する時に開放されて、ホッパー本体(11)とホッパー底(10)との間にできるホッパー底開口部(12)を通して種子床(1)が散布される。ホッパー底の開閉は、例えば、モータ駆動等による上下開閉装置(14)の上下の移動により行える。ホッパー本体(11)の下部末端には、種子床(1)の散布速度を調節するための落下調節ブラシ(13)が付いている。また、ホッパー底(10)を振動するためのバイブレータ(15)が具備されており、種子床(1)の目詰まりを防止するようになっている。このようなホッパー型の散布装置は比較的に大規模の散布に適する。
【0011】また、種子床(1)の散布は図6に示すようなヒッター型散布装置(16)を用いて地上またはヘリコプター等の飛行体から散布することもできる。散布装置(16)は中空筒(17)およびヒッター(18)を具備しており、中空筒(17)上に積み上げられた種子床(1)をヒッター(18)で打ち出すことにより散布される。このような散布装置(16)は、ホッパー型の散布装置よりも小規模の散布に適する。
【0012】次に、図7に、散布された種子床の経時変化の概要を示す。(a)は散布直後のようすであり、落下した種子床は荒廃地の凹部に定置する。(b)散水または降雨により水分を吸収し、養生材成形体は形態復元を開始する。この復元時に、水滴または雨滴の衝撃および強い復元力により、養生材は周囲に飛散する。中央部の種子含有成形体は形態復元がないので、地表から離れずに接触した状態を維持する。従って、その後に降雨がなくても(例えば、極乾期)、地山から水分を補給できるので水分の枯渇による種子の死滅は起こらない。(c)さらなる水分により、さらに復元する。リング状に成形された養生材は、復元によって種子含有成形体を完全に覆い、種子からの水分の蒸発を抑制し、寒暖の変化を緩和するマルチング効果を発揮する。また、所望により養生材中に含まれる凝集剤は周囲の地面の表層を団粒化し、植生条件を良好にすることができる。(d)このような植生条件下で発芽が開始され、緑化が行われる。このように、種子床の周辺の表層土砂は安定化されるので、発芽や初期生育の遅い木本類の導入を容易に行うことができる。
【0013】
【実施例】以下において、本発明の実施例を例示する。
【0014】実施例1まず、養生材成形体を圧縮比が1/10となるように押出成形した。養生材成形体は、復元力のある繊維物、凝集剤および粘土鉱物を含んだ。復元力のある繊維物として、ココナッツファイバーと、鋸屑と、杉皮の粉砕物とを混合したものを用いた。凝集剤としては、ポリアクリルアマイド加水分解物(三洋化成社製AH201P)を用い、粘土鉱物としてはゼオライトを用いた。さらに、若干の化成肥料(CDU窒素、熔性リン肥)を用いた。オガライト製造機(オリオンコール(有)社製)を用いて、図1に示すような、対角線が6cmの六角柱であって、リング内径が2cmである中空の棒状物に成形し、その後、2cm厚さに切断して、リング状の養生材成形体を得た。次に、加熱して融解した脂肪族高級アルコール(三洋化成社製PEG4000S)であるバインダーに、ピートモスおよびゼオライトからなる培養基材を添加した。このバインダーは、混合物の重量を基準として約10重量%の量であった。その後松の種子を混合し、これを、上記のリング状の養生材成形体のリング状中空部に充填し、外気温で冷却し、固化させた。上記の通りに作製した種子床の配合比を下記の表1に示す。
【0015】
表1:種子床1000個当たりの材料比項目 使用材料名 使用量(kg)
養生材 ココナッツファイバー 15(リング状成形体) 鋸屑 15 杉皮粉砕物 15 ゼオライト 14 AH201P 1 CDU窒素 1 熔性リン肥 2種子含有成形体 ピートモス 3(リング内成形体) ゼオライト 5 種子(松) 2 PEG4000S 1【0016】上記の通りに得られた種子床のリング状養生材成形体の外側を、加熱して融解した脂肪族高級アルコール(三洋化成社製PEG4000S)によりコーティングした。コーティングの厚さは平均約1mmであった。
【0017】比較例1上記のリング状養生材成形体およびリング内成形体を構成する材料を混合して、特願平10−157507号に記載された方法を用いて種子入り圧縮成形体を形成した。上記の成分からなる植生基材を、弾み車を用いた円形シリンダー方式の圧縮成形機を用いて成形し、直径6cm×1.5cmの成形体を得た。詳細には、円形のプレス室の上側半分(第一部分)に少量の材料を入れ、下側半分(第二部分)に多量の材料を入れて圧縮成形した。投入量は合計で200mlであった。材料の投入割合は第一部分1に対して、第二部分1.5の重量比とした。これにより、第二部分の圧密度の高い成形体が得られた。
【0018】1.種子床散布種子床散布用の専用ホッパー(図4および5)を用いて、ヘリコプターから種子床を、45度の荒廃裸地斜面に対して散布した。1m2 当たり10個の種子床の散布量を目安として、専用ホッパーに5000個(約350kg)入れ、1回の散布面積を500m2 とした。ヘリコプターからホッパーをつり下げ、散布目的地の上空で、モーター駆動により、送出装置付きホッパー底を下げて、ホッパー底の裏側に設置したバイブレータを始動して、開口部を通して種子床を落下させた。落下量の調節はバイブレータの振動強度を調節することにより行った。
【0019】2.種子床の発芽試験実施例1および比較例1により得られた種子床を上記の通り、散布し、発芽状況の試験を行った。散布直後に、50mm/時で1時間散水した。その後、1日1回、1m2 当たり約1リットルの散水量で散水を行った。
【0020】試験結果を図8に示す。実線は実施例1の種子床、破線は比較例1の種子入り圧縮成形体の発芽率と経過日数の関係を示すものである。図8から明らかなように、本発明の種子床中に含まれる種子は、大型で比較的に柔らかい松の種子であっても、死滅することなく、良好に発芽することが判る。
【0021】
【発明の効果】大型で比較的に柔らかい種子を用いたときに種子を破損することなく、また、極乾期にも発芽が可能なドライ式の散布用種子床を形成することができる。
【出願人】 【識別番号】592015190
【氏名又は名称】株式会社天地恩
【出願日】 平成10年11月26日(1998.11.26)
【代理人】 【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬 (外4名)
【公開番号】 特開2000−157008(P2000−157008A)
【公開日】 平成12年6月13日(2000.6.13)
【出願番号】 特願平10−336041