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【発明の名称】 田植機
【発明者】 【氏名】西 陽一朗

【氏名】松岡 秀樹

【氏名】塩谷 和久

【氏名】笠原 敏章

【要約】 【課題】田植機において、高回転・大減速比での低速走行を防止して、燃費や騒音の増大を防止し、更に、上記状態での低速走行時に負荷が急激に増大した際の動力伝達系の破損を防止する。

【解決手段】走行速度を走行速度変更手段の操作により変更可能とし、同走行速度変更手段の操作と連携して、エンジンの出力特性を変更可能する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 走行速度変更手段(F) の操作により走行速度を変更可能に構成した田植機(A) において、上記走行速度変更手段(F) の速度変更操作と連携して、エンジン(E) の出力特性を変更可能としたことを特徴とする田植機。
【請求項2】 エンジン(E) の出力特性を、高出力モードと低出力モードとに変更可能とし、走行速度変更手段(F) により操作される無段変速機(41)の減速比が大きいときは、エンジン(E) の出力特性を高出力モードとし、同減速比が小さいときは、エンジン(E) の出力特性を低出力モードとすることを特徴とする請求項1記載の田植機。
【請求項3】 上記エンジン(E) を低出力モードで運転しているときに、同エンジン(E) の回転数が予め設定した値よりも低下した場合、同エンジン(E) の出力制御手段を、一時的に最大出力に自動操作することを特徴とする請求項1又は2記載の田植機。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、田植機に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、エンジンの出力を変速機を介して走行部に伝達して、圃場内を走行しながら植付作業を行うようにした田植機があり、エンジンの出力の大部分が補助内での走行に消費されており、高速での植付走行では高出力を要するが、低速走行時には必ずしも高出力を要しないものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記エンジンの出力制御手段(アクセルレバー等)の操作によって、エンジンがその時に出せる出力が一義的に決まるため、例えば、エンジンの回転数を最高にセットし、変速機の減速比を最大にした場合には、ブレーキ操作をしたり、車輪がぬかるみにはまり込んだ場合などに、トランスミッションや車軸等の走行駆動系に過大なトルクが作用して、これらを破損させる恐れがあった。
【0004】また、上記とは逆に、変速機の減速比を小さくし、エンジンを低速回転させて、高速で植付走行をすると、僅かな負荷の増加でエンジンがストールする恐れがある。
【0005】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明では、走行速度変更手段の操作により走行速度を変更可能に構成した田植機において、上記走行速度変更手段の速度変更操作と連携して、エンジンの出力特性を変更可能としたことを特徴とする田植機を提供せんとするものである。 また、次のような特徴を併せ有するものである。
【0006】エンジンの出力特性を、高出力モードと低出力モードとに変更可能とし、走行速度変更手段により操作される無段変速機の減速比が大きいときは、エンジンの出力特性を高出力モードとし、同減速比が小さいときは、エンジンの出力特性を低出力モードとすること。
【0007】上記エンジンを低出力モードで運転しているときに、同エンジンの回転数が予め設定した値よりも低下した場合、同エンジンの出力制御手段を、一時的に最大出力に自動操作すること。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態は、エンジンの出力を制御するコントローラを設けてエンジンの出力特性を高出力モードと低出力モードとに切換可能とし、上記コントローラに、エンジンに連動連結した無段変速機の変速比を操作する走行速度変更手段としての副変速兼植付クラッチレバーを高速側(減速比小)に操作したときに接触してONする出力モード切換スイッチと、アクセルレバーの操作位置を検出するアクセルレバーセンサとを接続し、上記出力モード切換スイッチがONしているときは、エンジンを高出力モードにし、OFFのときは低出力モードにして、大きな出力を要する高速走行時にはエンジンを高回転させ、小さな出力ですむ低速走行時にはエンジンを高回転させないですむようにしている。
【0009】また、小さい減速比での低速走行時に、負荷が増大してエンジンの回転数が予め設定した値よりも低下した場合は、一時的にエンジンに供給する燃料を最大値まで増加させてエンジンのストールを防止するようにしている。
【0010】
【実施例】本発明の実施例について図面を参照して説明する。
【0011】図1は、本発明に係る田植機Aを示しており、同田植機Aは、自走可能の走行機体1の後方に、昇降リンク機構2と、左右傾動機構3とを介して、10条植えの植付装置Bを昇降及び左右傾動自在に連結して、走行機体1で植付装置Bを牽引しながら、田面に苗を植付けるようにしている。
【0012】走行機体1は、走行部Cを構成する左右前車輪4と左右後車輪5とを共に駆動する四輪駆動車に構成されており、ボンネット6の内部にエンジンEを配置し、同ボンネット6の後部にステアリングホイル7を突設し、同ステアリングホイル7の下方左側に主クラッチペダル8、同下方右側にブレーキペダル(図示せず)を設けている。
【0013】また、ステアリングホイル7の右側方にアクセルレバー9を設け、座席10の右側に走行速度変更手段Fを設けている。
【0014】走行速度変更手段Fは、座席10の右側に副変速兼植付クラッチレバーガイド溝11を設け、同副変速兼植付クラッチレバーガイド溝11を挿通して副変速兼植付クラッチレバー12を前後傾動自在に配置している。
【0015】副変速兼植付クラッチレバーガイド溝11は、図2で示すように、前後方向に伸延して形成されており、副変速兼植付クラッチレバー12の可動範囲の前部では、副変速機としての無段変速機41の変速比を、前方が高速に、後方が低速になるように操作でき、後部では、前方が植付装置Bの下げ、後方が上げになるように操作でき、前部から中途部にかけて後述する植付クラッチ46を「入」、中途部から後部にかけて植付クラッチ46を「切」に操作できる。
【0016】また、上記副変速兼植付クラッチレバーガイド溝11の中途部の前方寄りと後方寄りの位置に、それぞれ左右凹部13と後凹部14とを形成して、左右凹部13のいずれかに副変速兼植付クラッチレバー12を位置させるとその側のサイドマーカが下降し、後凹部14に位置させると植付装置Bの昇降作動を停止させるようにしている。
【0017】座席10の左側部には、主変速ガイド溝17を挿通した主変速レバー18を配設しており、上記主変速ガイド溝17は、図3で示すように、後方に拡開した略Y字状に形成されており、主変速レバー18を主変速ガイド溝の前端部17a に位置させたときは、主クラッチが「入」で、かつ、主変速機が路上走行に適した変速比になり、左側後端部17b に位置させたときは、主クラッチが「入」で、かつ、後進になり、右側後端部17c は苗継ぎ位置であって、同位置では主クラッチが「切」になるようにしている。
【0018】植付装置Bは、中央植付ケース19に左右方向に伸延した連結パイプ20を挿通し、同連結パイプ20に適宜間隔を保持して複数の植付ケース21を配置し、これらの上方に、左右方向に伸延した上下レール22,23 を介して前高後低に傾斜した苗載台24を左右往復移動自在に配設し、各植付ケース21に装着した植付爪25の作動により、苗載台24に載置した苗マットから所定量の苗を削り取って田面に植付けるようにしている。また、図1で示すように、上記苗載台24の左右端部と外側の植付ケース21とをそれぞれ上方に折畳み可能とし、植付作業時には、これらを外側に拡開して10条植えを可能としている。図中、24a は補助苗台、26はフロートである。
【0019】昇降リンク機構2は、図1及び図4で示すように、走行機体1の後部に立設した枠体27の上下部と、植付装置Bの下部前面に連設した門型フレーム28の上下部とを、それぞれトップリンク29とロアリンク30とで連結し、走行機体1に設けた昇降用油圧シリンダ31の伸縮作動により、植付装置Bを昇降作動させるようにしている。
【0020】左右傾動機構3は、図4及び図5で示すように、前記門型フレーム28と中央植付ケース19とを、軸芯を略前後方向に伸延させて配設したローリング軸32を介して回動自在に連結すると共に、前記上レール22を支持するために中央植付ケース19に立設した支柱33と、門型フレーム28の上面に立設した支持体34との間に両ロッド型の傾動用油圧シリンダ35を介設して、同傾動用油圧シリンダ35の伸縮作動により、植付装置Bを走行機体1に対して左右傾動させるようにしている。
【0021】図6は、走行部Cへの動力伝達機構Dの構成を示しており、同動力伝達機構Dは、エンジンEに無段変速機41を連動連結し、同無段変速機41に主クラッチ42を連動連結し、同主クラッチ42にトランスミッション43を連動連結し、同トランスミッション43に走行部Cに連結した車軸45を連動連結する一方、植付クラッチ46を介して植付装置Bを駆動している。
【0022】従って、走行部Cを駆動する動力は、エンジンE→無段変速機41→主クラッチ42→トランスミッション43→車軸45→走行部Cの順で伝達されることになり、走行部Cは、エンジンEの回転数を無段変速機41の減速比で割った回転数で駆動されることになる。図中、55は戻しスプリングである図7は、コントローラ40の構成を示しており、同コントローラ40は、マイクロコンピュータを内蔵して演算及び記憶機能を具備しており、同コントローラ40の入力側に、アクセルセンサ49と、回転センサ50と、燃料噴射量センサ54と、出力モード切換スイッチ47と、後述する燃料噴射量センサ54とを接続し、同コントローラ40の出力側に、燃料噴射量調節装置51を接続している。
【0023】アクセルセンサ49は、前述したアクセルレバー9の基端部にアクセルワイヤ52を介して連動連結しており、同アクセルレバー9の操作量を検出してコントローラ40に出力するようにしている。
【0024】回転センサ50は、エンジンEに付設されており、同エンジンEの回転数をコントローラ40に出力するようにしている。
【0025】燃料噴射量調節装置51は、エンジンEに燃料を供給する燃料噴射ポンプ53に付設されており、コントローラ40からの制御信号により燃料噴射ポンプ53の燃料噴射量を調節するようにしており、この燃料噴射量を燃料噴射量センサ54で検出するようにしている。
【0026】図8は、コントローラ40による出力制御を示しており、コントローラ40に入力したアクセルセンサ49からの信号と、出力モード切換スイッチ47からの信号とから目標回転数を算出し、同目標回転数から目標燃料噴射量を算出し、同目標燃料噴射量を制御信号に変換して燃料噴射量調節装置51に出力し、燃料噴射量センサ54の検出値から負荷率を算出して目標回転数算出にフィードバックし、燃料噴射量センサ54の検出値に基づいて燃料噴射量調節装置51をフィードバック制御し、回転センサ50からの検出値が上記目標回転数と一致するように燃料噴射量をフィードバック制御している。
【0027】かかる構成によって、副変速兼植付クラッチレバー12を高速側に操作すると、無段変速機41の減速比が大きくなり、出力モード切換スイッチ47がONしてエンジンEの出力特性が高出力モードになり、大出力を要する高速走行に適した状態になる。逆に、副変速兼植付クラッチレバー12を低速側に操作すると、無段変速機41の減速比が小さくなり、出力モード切換スイッチ47がOFFしてエンジンEの出力特性が低出力モードになり、小出力ですむ低速走行に適した状態になる。
【0028】図9は、低出力走行時のエンジンE出力制御の手順を示しており、エンジンEの目標回転数が1000rpm の場合、エンジンEの実回転数Nが 870rpm 以下になると(101Y)、燃料噴射量調節装置51に一時的に燃料噴射量を最大にする制御信号を出力して(102) 、ステップ(101) に戻る。また、実回転数Nが 870rpm 〜 995rpm であると(103Y)、燃料噴射量調節装置51に通常の噴射量増加信号を出力して(104) 、ステップ(101) に戻る。また、実回転数Nが1005rpm を超えると(105Y)、燃料噴射量調節装置51に通常の噴射量減少信号を出力して(106) 、ステップ(101) に戻る。
【0029】従って、低出力モードでの走行中、負荷が急激に増大してエンジンEの回転数が予め設定した値(870rpm)よりも低下した場合、コントローラ40から燃料噴射量調節装置51に、一時的に燃料噴射量を最大にする制御信号を出力して、エンジンEの出力を急速に増大させて、エンジンEのストールを防止することができる。
【0030】
【発明の効果】本発明によれば次のような効果を得ることができる。
【0031】請求項1記載の発明では、走行速度変更手段の操作により走行速度を変更可能に構成した田植機において、上記走行速度変更手段の速度変更操作と連携して、エンジンの出力特性を変更可能としたことによって、エンジンの回転数を、高速・高負荷での植付走行や、低速・低負荷でのUターン走行等に適した回転数に制御することができる。
【0032】請求項2記載の発明では、エンジンの出力特性を、高出力モードと低出力モードとに変更可能とし、走行速度変更手段により操作される無段変速機の減速比が大きいときは、エンジンの出力特性を高出力モードとし、同減速比が小さいときは、エンジンの出力特性を低出力モードとすることによって、大きなトルクを要する高速走行時にはエンジンを高回転させ、小さなトルクで十分な低速走行時にはエンジンを高回転させないですみ、燃料消費と騒音とを減少させることができ、更に、高回転大減速比での走行が防止され、ブレーキ操作や、ぬかるみに車輪がはまり込んだ際など、急激に負荷が増大した際に、過大なトルクが走行部駆動系に作用せず、同走行駆動系の破損を防止することができる。
【0033】請求項3記載の発明では、上記エンジンを低出力モードで運転しているときに、同エンジンの回転数が予め設定した値よりも低下した場合、同エンジンの出力制御手段を、一時的に最大出力に自動操作することことによって、低速走行時の急激な負荷の増大によるエンジンのストールを防止することができる。
【出願人】 【識別番号】000006851
【氏名又は名称】ヤンマー農機株式会社
【出願日】 平成10年6月17日(1998.6.17)
【代理人】 【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
【公開番号】 特開2000−4612(P2000−4612A)
【公開日】 平成12年1月11日(2000.1.11)
【出願番号】 特願平10−170392