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【発明の名称】 農作業機の変速装置
【発明者】 【氏名】太田 万喜

【要約】 【課題】ロータリ作業部を正・逆回転させて耕耘作業または草刈り作業を行う農作業機で駆動軸から従動軸への動力伝達を簡単に切り替えられるようにする。

【解決手段】トラクタの後部に3点リンクヒッチ機構を介して昇降可能に装着され、トラクタのPTO軸から変速ギヤボックスに動力を受け、水平方向に延びる回転軸の軸周に多数の耕耘・刈取り刃を装着したロータリ作業部を、正・逆回転させて耕耘作業または草刈り作業を行う農作業機であり、変速ギヤボックス4には、トラクタのPTO軸から動力を受ける駆動軸24と従動軸25とを前後方向に並設し、これら両軸24,25の後端側にチェンジギヤ26,28を挿入差替え可能に設け、両軸24,25の後端側からチェンジギヤ26,28のギヤ幅より前側にアイドルギヤ31を設け、駆動軸24からアイドルギヤ31を介して従動軸25に動力伝達し、またはチェンジギヤ26,28を差替えて両チェンジギヤ26,28を直接歯合させて駆動軸24から従動軸25に動力伝達する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 トラクタの後部に3点リンクヒッチ機構を介して昇降可能に装着され、トラクタのPTO軸から変速ギヤボックスに動力を受け、水平方向に延びる回転軸の軸周に多数の耕耘・刈取り刃を装着したロータリ作業部を、正・逆回転させて耕耘作業または草刈り作業を行う農作業機において、上記変速ギヤボックスには、トラクタのPTO軸から動力を受ける駆動軸と従動軸とを前後方向に並設し、これら両軸の後端側にチェンジギヤを挿入差替え可能に設け、該両軸の後端側からチェンジギヤのギヤ幅より前側にアイドルギヤを設けると共に、駆動軸からアイドルギヤを介して従動軸に動力伝達し、またはチェンジギヤを差替えて両チェンジギヤを直接歯合させて駆動軸から従動軸に動力伝達するようにしたことを特徴とする農作業機の変速装置。
【請求項2】 上記変速ギヤボックスの後端部に、チェンジギヤ及びアイドルギヤの挿入差替えが可能で、かつ簡易に開閉できるカバーを設けたことを特徴とする請求項1記載の農作業機の変速装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ロータリ作業部を正・逆回転させて耕耘作業または草刈り作業を行う農作業機における駆動軸から従動軸への動力伝達を簡単に切り替えられるようにした農作業機の変速装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、トラクタの後部に3点リンクヒッチ機構を介して昇降可能に装着され、トラクタのPTO軸から変速ギヤボックスに動力を受け、水平方向に延びる回転軸の軸周に多数の耕耘・刈取り刃を装着したロータリ作業部を、正・逆回転させて耕耘作業または草刈り作業を行う農作業機が周知である。
【0003】この従来の農作業機は、■変速ギヤボックスのトラクタのPTO軸から動力を受ける入力軸を2本並設し、ピニオン、ベベルギヤを2組組み合わせてPTO軸からの伝動ジョイントを差し替えるもの、■変速ギヤを5個組み合わせて変速レバーにより変速操作するもの、などの構成を有していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記■、■とも、変速ギヤボックスの構造が複雑であり、変速装置の大きさが大きくなり、重量も重く、製造コストが高くなる。また、変速ギヤの交換ができないので、農作業機を装着するトラクタによっては所望の回転数の変更ができない、といった問題点があった。さらに、■においては、農作業機を3点リンクヒッチ機構を用いることなくトラクタに直接装着する、いわゆる2点連結式の場合には、PTO軸からの伝動ジョイントの差し替えができない、という問題点があった。
【0005】本発明は、回転軸の軸周に多数の耕耘・刈取り刃を装着したロータリ作業部を正・逆回転させて耕耘作業または草刈り作業を行う農作業機において、ロータリ作業部の正・逆回転切り替えが簡易に行え、しかもロータリ作業部の回転数を耕耘作業時は低速回転(200rpm前後)に、草刈り作業時は高速回転(1100rpm前後)にでき、また、PTO軸の回転数が異なる各種のトラクタに対してチェンジギヤの交換により対応でき、かつ安価に製造できる農作業機の変速装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために本発明は、A.トラクタの後部に3点リンクヒッチ機構を介して昇降可能に装着され、トラクタのPTO軸から変速ギヤボックスに動力を受け、水平方向に延びる回転軸の軸周に多数の耕耘・刈取り刃を装着したロータリ作業部を、正・逆回転させて耕耘作業または草刈り作業を行う農作業機において、上記変速ギヤボックスには、トラクタのPTO軸から動力を受ける駆動軸と従動軸とを前後方向に並設し、これら両軸の後端側にチェンジギヤを挿入差替え可能に設け、該両軸の後端側からチェンジギヤのギヤ幅より前側にアイドルギヤを設けると共に、駆動軸からアイドルギヤを介して従動軸に動力伝達し、またはチェンジギヤを差替えて両チェンジギヤを直接歯合させて駆動軸から従動軸に動力伝達するようにしたことを特徴としている。
【0007】B.上記変速ギヤボックスの後端部に、チェンジギヤ及びアイドルギヤの挿入差替えが可能で、かつ簡易に開閉できるカバーを設けたことを特徴としている。
【0008】
【作用】上記の構成により本発明の農作業機の変速装置は、以下の作用を行う。
■.上記A.の構成により、変速ギヤボックスの駆動軸にトラクタのPTO軸が正転して動力伝達されると、駆動軸と従動軸に嵌挿されているチェンジギヤにアイドルギヤが歯み合っていることで、駆動軸からアイドルギヤを介して従動軸に動力伝達され、ロータリ作業部を高速で正転させて草刈り作業を行う。耕耘作業を行うときは、駆動軸と従動軸のチェンジギヤを差替えて、両チェンジギヤを直接歯合させて駆動軸から従動軸に減速して動力伝達し、ロータリ作業部を低速で逆回転させて耕耘作業を行う。
【0009】■.上記B.の構成により、チェンジギヤ及びアイドルギヤの挿入差替えを行うときは、カバーを簡易に開けてギヤの挿入差替えを行い、作業終了後はカバーを閉じる。カバーの開閉操作は簡単に短時間で行われる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を添付の図面を参照して具体的に説明する。図1ないし図5において、符号1は左右方向の長さが長く耕耘及び草刈り機能を持つ耕耘・草刈り機である。この耕耘・草刈り機1は、前部に、図示しないトラクタのトップリンクとロアーリンクとからなり、ロアーリンクが油圧機構により上下回動する周知の3点リンクヒッチ機構に連結されるロアーリンク連結部2が設けられ(トップリンク連結部は図示省略)、トラクタの後部に昇降可能に装着される。また、トラクタのPTO軸から、ユニバーサルジョイント、伝動シャフト等の伝動部3を介して、耕耘・草刈り機1の前側左右中央部に設けられた変速ギヤボックス4から前方に突出している入力軸5(図3参照)に動力が伝達される。
【0011】上記ギヤボックス4から左右両側に、本体フレームを兼ね、伝動シャフト33を内装した伝動フレーム6及び中空の支持フレーム7が水平方向に延設されている。この伝動フレーム6の側端部にはチェン伝動ケース8が垂設され、また、支持フレーム7の側端部には側部フレーム9がチェン伝動ケース8と対向して垂設されている。このチェン伝動ケース8の下端部と側部フレーム9の下端部との間に回転軸10が軸架されている。この回転軸10の軸周には放射方向に多数の耕耘・草刈り刃11が取付けられてロータリ作業部12を構成している。そして、ギヤボックス4に伝達された動力はギヤボックス4内でギヤ変速され、伝動シャフト33を回転させてチェン伝動ケース8を介して回転軸10を正・逆回転駆動し、ロータリ作業部12により耕耘または草刈り作業を行う。
【0012】ロータリ作業部12の上側はシールドカバー13により覆われ、このシールドカバー13には、左右両側端部に側部カバー14、前部に前部カバー15がそれぞれ装着され、後端部にリヤカバー16の前端部が上下回動可能に枢着されている。このリヤカバー16の後端部の左右両側端部には、ロータリ作業部12により草刈り作業を行う際に用いられるゲージ輪17が設けられていて、リヤカバー16の後端部と圃場面との間に所定の間隙があいている。なお、ゲージ輪17は、車輪に限らずローラ状のものにしてもよく、また、ソリ状のものにしてもよいもので、ロータリ作業部12により耕耘作業を行う際にはゲージ輪17を取り外してリヤカバー16の下端部を耕土面に接した状態で作業する。
【0013】リヤカバー16の上面に、複数の連結穴18aを有する連結杆18が突設されており、この連結杆18に、センサアーム19の下端部が連結穴18aを選択して連結される。センサアーム19の上端部は、支持フレーム21に軸22を介して前後回動自在に枢支されたベルクランク20の後端部に枢着され、ベルクランク20の前端部に、前端部を3点リンクヒッチ機構の油圧機構に連繋する油圧機構連繋ロッド23の後端部が枢着されている。この油圧機構連繋ロッド23は、長さ調節が可能である。そして、リヤカバー16が上下揺動すると、その揺動が連結杆18及びセンサアーム19により感知され、ベルクランク20、油圧機構連繋ロッド23を介して油圧機構に伝達され、リヤカバー16の上下揺動と連動して耕耘・草刈り機1を上下動させ、ロータリ作業部12による作業高さが自動的に調節される。
【0014】上記変速ギヤボックス4には、トラクタのPTO軸から動力を受ける入力軸5と一体の駆動軸(PICシャフト)24と従動軸(ピニオンシャフト)25とを前後方向に並設し、これら両軸24,25の後端側にチェンジギヤ26,28をスプラインにより挿入差替え可能に設けている。チェンジギヤ26は、ギヤボックス4の後端部に設けられたカバー35にボスを介して固定された抜け止めカプラ27により抜け止めされ、チェンジギヤ28の外側は、カバー35側にボスを介して回り止めピン29aにより固定されたチェンジギヤ29により抜け止めされている。これらチェンジギヤ26,28,29は、それぞれ軸24,25に対して前後両側から挿入差替え可能である。
【0015】軸24,25間に、両軸24,25に沿ってアイドル軸30を軸支し、このアイドル軸30に、軸24,25の後端側からチェンジギヤ26,28のギヤ幅より前側にアイドルギヤ31を嵌挿してチェンジギヤ26,28と歯合させ、駆動軸24からアイドルギヤ31を介して従動軸25に動力伝達し、従動軸25に固定されたピニオン32と伝動シャフト33の端部に固定したベベルギヤ34を歯合させて伝動シャフト33を回転駆動するようにしている。図1ないし図5の状態では、トラクタのPTO軸が正転して駆動軸24に動力伝達されると、チェンジギヤ26,28にアイドルギヤ31が歯み合っていることで、駆動軸24からアイドルギヤ31を介して従動軸25に動力伝達され、ロータリ作業部12を高速で正転させて草刈り作業が行われる。
【0016】図6及び図7に示すように、図3ないし図5におけるチェンジギヤ26,28を軸24,25から抜取り、チェンジギヤ29をカバー35から取り外して、軸24にチェンジギヤ28を、軸25にチェンジギヤ29を、それぞれギヤのボス部が前になるようにして嵌挿し、両チェンジギヤ28,29を直接歯合させてアイドルギヤ31とは歯み合わないようにする。こうすることで、駆動軸24から従動軸25に減速して動力伝達する。そして、トラクタのPTO軸が正転して駆動軸24に動力伝達されると、ロータリ作業部12を低速で逆転させて耕耘作業が行われる。
【0017】カバー35は、抜け止めカプラ27や予備のチェンジギヤを支持し、軸24,25に嵌挿されているチェンジギヤの抜け止めの働きをするが、ギヤボックス4のケースに対して一端側を止めネジ35aにより止め、他端側をフックアーム36により係止して軸38により回動するカムレバー37によって係脱操作し、カバー35を開閉するようにしている。従って、カバー35を開けた状態でチェンジギヤ及びアイドルギヤの挿入差替えが可能であり、かつカバー35は、簡易に開閉できる。
【0018】ここで各ギヤの歯数は、チェンジギヤ26が27枚、チェンジギヤ28が18枚、チェンジギヤ29が35枚、アイドルギヤ31が20枚、ピニオン32が15枚、ベベルギヤ34が20枚である。そして、図3ないし図5の場合には、ロータリ作業部12を1090rpmの高速で正転させて草刈り作業が行われる。また、図6及び図7の場合には、ロータリ作業部12を206rpmの低速で逆回転させて耕耘作業が行われる。
【0019】図8はトラクタのPTO軸が逆回転して草刈り作業を行うときの変速ギヤボックス4の内部部分平面図(a)、チェンジギヤ39,40の噛み合い状況を示す側面図(b)であり、チェンジギヤ39を駆動軸24に、チェンジギヤ40を従動軸25にそれぞれ嵌挿し、チェンジギヤ40は抜け止めカプラ27aにより抜け止めしている。チェンジギヤ39の歯数は36枚、チェンジギヤ40の歯数は17枚である。この場合には、ロータリ作業部12を1102rpmの高速で正転させて草刈り作業が行われる。
【0020】図9はトラクタのPTO軸が逆回転して耕耘作業を行うときの変速ギヤボックス4の内部部分平面図(a)、チェンジギヤ39,40の噛み合い状況を示す側面図(b)であり、チェンジギヤ40を駆動軸24に、チェンジギヤ39を従動軸25にそれぞれ嵌挿し、チェンジギヤ39は抜け止めカプラ27aにより抜け止めしている。この場合には、ロータリ作業部12を206rpmの低速で正転させて耕耘作業が行われる。
【0021】図10ないし図13は本発明の他の実施例を示しており、歯数29枚のアイドルギヤ41を嵌挿したアイドル軸30は、チェンジギヤ26,28の外周が干渉しない位置に配設され、ロータリ作業部12を正転させるときは、アイドルギヤ41を挿入してチェンジギヤ26,28と歯合させ、ロータリ作業部12を逆回転させるときはアイドルギヤ41を取り外してチェンジギヤ26,28を歯合させるている。図10はトラクタのPTO軸が正転で草刈り作業時のチェンジギヤ26,28とアイドルギヤ41の噛み合い状況を示す平面図(a)、及び側面図(b)であり、ロータリ作業部12は1090rpmの高速で正転して草刈り作業を行う。図11はトラクタのPTO軸が正転で耕耘作業時のチェンジギヤ28,29の噛み合い状況を示す平面図(a)、及び側面図(b)であり、ロータリ作業部12は206rpmの低速で逆転して耕耘作業を行う。
【0022】図12はトラクタのPTO軸が逆転で草刈り作業時のチェンジギヤ39,40の噛み合い状況を示す平面図(a)、及び側面図(b)であり、ロータリ作業部12は1102rpmの高速で正転して草刈り作業を行う。図13はトラクタのPTO軸が逆転で耕耘作業時のチェンジギヤ39,40の噛み合い状況を示す平面図(a)、及び側面図(b)であり、ロータリ作業部12は206rpmの低速で逆転して耕耘作業を行う。
【0023】
【発明の効果】以上説明したように本発明の農作業機の変速装置によれば、以下の作用効果を奏することができる。
【0024】■.変速ギヤボックスには、トラクタのPTO軸から動力を受ける駆動軸と従動軸とを前後方向に並設し、これら両軸の後端側にチェンジギヤを挿入差替え可能に設け、該両軸の後端側からチェンジギヤのギヤ幅より前側にアイドルギヤを設けると共に、駆動軸からアイドルギヤを介して従動軸に動力伝達し、またはチェンジギヤを差替えて両チェンジギヤを直接歯合させて駆動軸から従動軸に動力伝達するようにしたので、各メーカのPTO軸の回転数が異なるトラクタや、逆転可能のPTO軸を有するトラクタ等に装着して、ロータリ作業部の正・逆回転の切り替え及び回転数の切り替えが簡単に行うことができる。また、変速ギヤボックスは、従来のものよりアイドルギヤ関係とチェンジギヤが増えるだけであり、コンパクトに構成でき、重量の増加もわずかであり、機体とのマッチングバランスが良く、製造コストも安くできる。また、草刈り作業、耕耘作業に適した回転数を容易に選択できる。
【0025】■.変速ギヤボックスの後端部に、チェンジギヤ及びアイドルギヤの挿入差替えが可能で、かつ簡易に開閉できるカバーを設けたので、チェンジギヤ及びアイドルギヤの挿入差替えを行うときは、カバーを簡易に開けてギヤの挿入差替えを行い、作業終了後はカバーを閉じればよい。また、カバーの開閉操作は簡単、容易であり、短時間に行うことができる。
【出願人】 【識別番号】390010836
【氏名又は名称】小橋工業株式会社
【出願日】 平成11年4月8日(1999.4.8)
【代理人】 【識別番号】100063565
【弁理士】
【氏名又は名称】小橋 信淳
【公開番号】 特開2000−287504(P2000−287504A)
【公開日】 平成12年10月17日(2000.10.17)
【出願番号】 特願平11−101087