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【発明の名称】 作業車両の作業機昇降制御装置
【発明者】 【氏名】二宮 浩二

【氏名】木下 覚

【氏名】玉田 武史

【要約】 【課題】単一のレバー操作にて作業機の昇降とスロットル開度の調整を行えるようにする。

【解決手段】ハンドルポスト33の側部に前後及び上下方向へ回動可能なレバー40を取り付け、レバー40の前後回動でスロットルワイヤ44の引き量を調節し、レバー40の上下回動で作業機昇降スイッチ47を切り換える。また、スロットル用ガイド溝45にてレバー40の上下回動を規制し、レバー40がエンジン回転数最大位置のときのみ、昇降用ガイド溝46の上端部へレバー40を回動可能にしてある。レバー40を上方へ回動して作業機昇降スイッチ47を上昇位置へ切り換えたときは、スロットルワイヤ44の引き量が減少してエンジン回転数が低下する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ハンドルポスト側部に前後方向の操作でエンジンのスロットル開度を調整し、上下方向の操作で車体に連結した作業機の高さを変更する単一のレバーを設けた作業車両であって、前記レバーには、スロットルが所定値以上の開度に操作されているときにだけ上下方向の操作を可能とする規制手段を備えたことを特徴とする作業車両の作業機昇降制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はトラクタや田植機といった作業車両の作業機昇降制御装置に関するものであり、特に、エンジンのスロットル開度の調整と車体に連結した作業機の高さ調整の変更を単一のレバーで行えるようにした作業車両の作業機昇降制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】トラクタ等の作業車両は、車体に連結したロータリ等の作業機をリフトシリンダ及びリフトアーム等の昇降装置にて上下動しているが、ハンドルポストに作業機昇降用のレバーを設け、このレバーを操作して作業機昇降スイッチをオンオフすることにより、前記昇降装置が作動して作業機を短時間で地面から所定高さまで上昇、または所定高さから地面まで下降するようにしてある。
【0003】また、此種作業車両では、通常はスロットル開度を最大位置にして作業を行っているが、作業機を地面から上昇した状態では経済性及び安全性の面から、エンジン回転数を低下したほうが好ましい。このため、作業機を上昇しているときには、通常ハンドルポストに設けられているスロットルレバーを操作してスロットル開度を調整し、エンジン回転数を低下させている。
【0004】しかし、作業機昇降用のレバーとスロットルレバーを同時に操作するのは操作性が良好でなく、作業機上昇時にエンジン回転数を低下させなかったり、或いは、作業機下降時にエンジン回転数を高回転に戻し忘れることがある。また、作業に不慣れなオペレータが低回転位置で作業を行うと、作業負荷が掛かったときにはエンストする虞がある。更に、ハンドルポストに2本のレバーを配置することは、部品点数が多くなってコスト高となり、且つ、設置スペースを確保できないこともある。
【0005】一方、例えば前記作業機昇降スイッチがオンとなって作業機が上昇したときは、モータ等でスロットルワイヤを引き戻し、自動的にエンジン回転数を低下させるように制御する構成も考えられる。しかし、自動制御用のコントローラが必要となってコスト高となる。
【0006】そこで、単一のレバー操作にて作業機の昇降とスロットル開度の調整を行えるようにするために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、ハンドルポスト側部に前後方向の操作でエンジンのスロットル開度を調整し、上下方向の操作で車体に連結した作業機の高さを変更する単一のレバーを設けた作業車両であって、前記レバーには、スロットルが所定値以上の開度に操作されているときにだけ上下方向の操作を可能とする規制手段を備えた作業車両の作業機昇降制御装置を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施の形態を図面に従って詳述する。図1は作業車両の一例としてトラクタ10を示し、エンジン11の動力はミッションケース12内に収められたギヤ式変速装置13を介して後輪14へ伝達される。車体の後部にはリンク機構15を介してロータリ作業機16が連結されており、エンジン11の動力を前記ギヤ式変速装置13にて分岐し、PTO取出部17からロータリ作業機16へ伝達している。
【0009】前記リンク機構15はアッパリンク18と左右のロワリンク19,19とからなり、ミッションケース12の後上部に回動可能に設けられた左右のリフトアーム20,20の先端部と左右のロワリンク19,19とが、夫々リフトロッド21,21を介して連結されている。そして、ミッションケース12の上部に内蔵されたリフトシリンダ22の伸縮により、前記リフトアーム20,20が上下に回動すれば、リフトロッド21,21を介してロワリンク19,19が上下動する。斯くして、該リンク機構15の回動支点であるロワリンク19,19の先端部を回動中心にして、前記ロータリ作業機16が昇降する。
【0010】リフトアーム20の回動基部にはリフトアーム角センサ23が設けられ、このリフトアーム角センサ23にてリフトアーム20の回動角を検出し、ロータリ作業機16の昇降高さを演算する。また、ロータリ作業機16のリヤカバー24の回動基部にリヤカバー角センサ25が設けられ、このリヤカバー角センサ25にてリヤカバー24の角度を検出し、耕耘爪26の耕深量を演算する。
【0011】一方、運転席30の近くには、変速レバー31や作業機ポジションレバー32等の各種操作レバーが設けられ、運転席30の前方にはハンドルポスト33が立設され、車体の操舵操作部であるステアリングハンドル34が装着されている。該ステアリングハンドル34の回転操作は操舵装置35へ伝達され、操舵量に応じて前輪36が回向する。
【0012】ここで、前記ハンドルポスト33の側部に、前後方向と上下方向へ回動可能なレバー40を横向きに取り付けてある。図2乃至図4に示すように、該レバー40は基端部近傍にて分割されており、ピン41を中心に前後方向(図2乃至図4では紙面の左右方向)へ略水平に回動自在なアーム部40aと、このアーム部40aにピン42にて上下方向へ回動自在に枢着したレバー部40bとからなり、アーム部40aとレバー部40bとの間に引張コイルばね43を介装してある。更に、レバー部40bにはスロットルワイヤ44の先端が係止されている。
【0013】前記ハンドルポスト33の側面には、規制手段となるスロットル用ガイド溝45を前後方向へ開穿し、このスロットル用ガイド溝45から前記レバー40のレバー部40bをハンドルポスト33の側方へ突出させて、該レバー40の上下方向への回動を規制している。
【0014】図2及び図3の二点鎖線で示すように、該レバー40がスロットル用ガイド溝45の一端部(ハンドルポスト33の前部側)に位置するときは、スロットルワイヤ44の引き量を最小にしてエンジン回転数が最低となるようにし、同図の実線で示すように、該レバー40がスロットル用ガイド溝45の他端部(ハンドルポスト33の後部側)に位置するときは、スロットルワイヤ44の引き量を最大にしてエンジン回転数が最高回転となるようにする。通常の作業時には、該レバー40をスロットル用ガイド溝45の他端部に位置させて、エンジン回転数を最高回転の状態にしておく。
【0015】一方、スロットル用ガイド溝45の他端部には、規制手段となる昇降用ガイド溝46を延設してあり、該昇降用ガイド溝46は略上向きで且つスロットルガイド溝45の一端部方向(ハンドルポスト33の前方向)に傾斜しており、前記ハンドルポスト33内の昇降用ガイド溝46の上部に作業機昇降スイッチ47が設けられている。該作業機昇降スイッチ47としては、例えばリミットスイッチなどを使用し、図4及び図5の実線で示すように、前記レバー40が昇降用ガイド溝46の下端部に位置するときは、該作業機昇降スイッチ47がオフとなって前述のリフトシリンダ22がリフトアーム下げ位置となり、ロータリ作業機16が下降した状態となる。
【0016】そして、同図の二点鎖線で示すように、該レバー40が昇降用ガイド溝46の上端部に位置するときは、作業機昇降スイッチ47が該レバー40のレバー部40bに押されてオンに切り換わり、前記リフトシリンダ22がリフト上げ位置となって、ロータリ作業機16を短時間で地面から所定高さまで上昇させることができる。更に、該レバー40を昇降用ガイド溝46の下端部へ戻せば、作業機昇降スイッチ47がオフに切り換わり、再びリフトシリンダ22がリフトアーム下げ位置となって、ロータリ作業機16を短時間で所定高さから地面まで下降させることができる。
【0017】ここで、前述したようにアーム部40aとレバー部40bとの間に引張コイルばね43を介装してあるので、前記レバー40を昇降用ガイド溝46の上端部へ回動したときは、該引張コイルばね43の引張により前記レバー40を上昇方向へ付勢して、作業機昇降スイッチ47をオン状態に保持する。そして、前記レバー40を昇降用ガイド溝46の下端部へ回動したときは、該引張コイルばね43が死点越えして前記レバー40を下降方向へ付勢し、作業機昇降スイッチ47をオフ状態に保持する。
【0018】而して、図2及び図3に示したように、前記レバー40をスロットル用ガイド溝45に沿って前後方向へ回動すれば、スロットルワイヤ44が押し引きされてエンジン回転数を調節することができる。該レバー40がスロットル用ガイド溝45の他端部以外の位置にあるとき、即ち、エンジン回転数が最高回転の状態にセットされていない場合は、該レバー40を上方へ回動することはできず、前記作業機昇降スイッチ47がオフ状態となってロータリ作業機16を上昇することはできない。
【0019】ロータリ作業機16を上昇する場合は、図4及び図5に示したように,前記レバー40をスロットル用ガイド溝45の他端部へ回動した後に、該レバー40を昇降用ガイド溝46に沿って上端部へ回動すれば、作業機昇降スイッチ47がオンに切り換わって、ロータリ作業機16が上昇する。
【0020】ここで、前記昇降用ガイド溝46は前方向へ傾斜しているので、前記レバー40が昇降用ガイド溝46の上端部に位置するときは、昇降用ガイド溝46の下端部に位置するときよりもスロットルワイヤ44の引き量が少なくなる。従って、該レバー40を上方へ回動してロータリ作業機16を上昇したときは、通常作業時のエンジン回転数よりもエンジン回転数が自動的に低下し、該レバー40を下方へ回動してロータリ作業機16を下降したときは、通常作業時のエンジン回転数に自動的に復帰する。
【0021】尚、前記レバー40の位置をポテンショメータなどで検出してスロットル開度を演算し、所定以上のスロットル開度領域のときのみ作業機の昇降を可能とするように、電気式の構成としてもよい。
【0022】図6は作業機昇降制御装置のブロック図であり、前記作業機ポジションレバー32の設定位置はポテンショメータ50にて検出し、コントローラ51は作業機ポジションレバー32の設定位置に応じて、前記リフトシリンダ22を伸縮させる電磁比例弁の上昇用ソレノイド52または下降用ソレノイド53へ指令信号を出力する。また、前記作業機昇降スイッチ47がオンであれば、コントローラ51から上昇用ソレノイド52へ指令信号を出力し、ロータリ作業機16を短時間で地面から所定高さまで上昇させる。ロータリ作業機16の上昇高さは、上げ位置設定器54にて設定する。
【0023】また、前記変速レバー31若しくは前後進切換レバー(図示せず)を後進位置に切り換えたときは、後進検出スイッチ55がオンとなり、コントローラ51は車体が後進状態に入ったと判定する。更に、前記ロワリンク19の回動基部に作業機重量センサ56を設け、ロータリ作業機16を地面から上昇させたときに、作業機重量センサ56の検出値から作業機の重量を演算する。
【0024】図7は作業機昇降制御のフローチャートであり、先ず各種センサやスイッチ類の状態をコントローラ51へ読み込む(ステップ1)。前記レバー40が昇降用ガイド溝46の上端部に位置するときは作業機昇降スイッチ47がオンとなり(ステップ2)、上げ位置設定器54の設定値と現在のリフトアーム角センサ23の検出値とを比較して、ロータリ作業機16が所定の上昇位置にあるか否かを判別する(ステップ3)。ロータリ作業機16が下降位置にあると判定されたときは、前記上昇用ソレノイド52へ指令信号を出力してロータリ作業機16を上昇させる(ステップ4)。
【0025】前記レバー40が昇降用ガイド溝46の下方部またはスロットル用ガイド溝45内に位置するときは作業機昇降スイッチ47がオフとなり、ステップ2からステップ5へ進む。ロータリ作業機16が地面に接地して下降位置にあるときは、このときのリフトアーム角を記憶する(ステップ6)。これに対して、ロータリ作業機16が上昇位置若しくは下降途中であるときは、後進検出スイッチ55がオンであるか否かを判別する(ステップ7)。
【0026】ステップ2に於いて、後進検出スイッチ55がオフであれば車体が前進または停止状態であるから、前記下降用ソレノイド53へ指令信号を出力してロータリ作業機16を下降させるとともに(ステップ8)、下降速度減速制御を行う(ステップ9)。下降速度減速制御とは、作業機の下降途中までは所定の下降速度で下降させ、作業機が地面に接地する直前位置で下降速度を減速させるものであり、作業機の下降時間を短縮すると同時に作業機接地時のショックを軽減する。そして、ステップ6にて記憶した作業機下降位置でのリフトアーム角に至ったときに下降出力を停止する(ステップ10)。
【0027】一方、ステップ7に於いて、後進検出スイッチ55がオンであれば車体が後進状態であるから、前記下降用ソレノイド53へ指令信号を出力してロータリ作業機16を下降させるとともに(ステップ11)、下降速度減速制御を行う(ステップ12)。車体の後進時には、ステップ6にて記憶した作業機下降位置よりやや上方位置で下降出力を停止する(ステップ13)。これは、例えばロータリ作業中に圃場の隅などで回り耕耘する際に、前進と後進及び旋回操作等を繰り返すときに、ロータリ作業機16の位置合せを容易にするためである。従来では、作業機ポジションレバー32にて操作していたが、このように、後進時に下降速度減速制御の下げ位置を規制することにより、前記レバー40による作業機昇降操作が可能となって作業性を向上できる。
【0028】また、車体の走行状態に拘らず、前記レバー40の操作によってロータリ作業機16を上昇する際、ロータリ作業機16を地面から上昇させたときに、前記作業機重量センサ56の検出値から作業機の重量を演算し、予め設定されている重量を超えているときは、上昇用ソレノイド52への指令信号を出力しない。このように、作業機の重量超過時に作業機上昇を規制することにより、前輪36の分担荷重が極端に減少して車体の前方が浮き上がるなどの危険を回避できる。
【0029】尚、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【0030】
【発明の効果】本発明は上記一実施の形態に詳述したように、ハンドルポストに設けた単一のレバーを前後方向の操作でエンジンのスロットル開度を調整するとともに、上下方向の操作で車両に連結した作業機の高さを変更するようにし、且つ、スロットルが所定値以上の開度に操作されているときにだけレバーの上下操作を可能としてあるので、エンジン回転数の低下時に作業機を上昇させたり、作業に不慣れなオペレータが低回転位置で作業を行ってエンストを起す等の不具合が解消され、安全性並びに経済性を確保できる。
【0031】また、単一のレバーにてスロットル開度の調整と作業機の高さの変更操作が可能となり、操作性が著しく向上するとともにコストダウンにも寄与できる等、正に著大な効果を奏する発明である。
【出願人】 【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
【出願日】 平成11年2月26日(1999.2.26)
【代理人】 【識別番号】100060575
【弁理士】
【氏名又は名称】林 孝吉
【公開番号】 特開2000−245202(P2000−245202A)
【公開日】 平成12年9月12日(2000.9.12)
【出願番号】 特願平11−49567