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【発明の名称】 電磁波シールド用シート
【発明者】 【氏名】水元 康晴

【氏名】中田 朋之

【氏名】鈴木 利昭

【要約】 【課題】優れた電磁波シールド性を有すると共に、主として電子機器に使用できる薄くて柔軟性のある電磁波シールド材を提供する。

【解決手段】電磁波シールド用シートは、一種または複数種の金属繊維を含有する多孔質シートまたはそれを焼結した焼結多孔質シートよりなり、厚さが10〜100μm、空隙率が70〜95%、ガーレーこわさが5〜50mgである。例えば、金属繊維としてステンレス鋼繊維を用い、湿式抄紙法によって製造することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 一種または複数種の金属繊維を含有する多孔質シートよりなり、厚さが10〜100μm、空隙率が70〜95%、ガーレーこわさが5〜50mgであることを特徴とする電磁波シールド用シート。
【請求項2】 多孔質シートが、金属繊維の焼結体よりなる焼結多孔質シートである請求項1に記載の電磁波シールド用シート。
【請求項3】 金属繊維表面が、該金属繊維よりも低い抵抗率を有する金属で被覆されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電磁波シールド用シート。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電磁波シールド用シートに関し、詳しくは、電子部品、回路基板、フレキシブルプリント回路基板(FPC)等に用いられる電磁波シールド用シートに関する。
【0002】
【従来の技術】電子機器の高密度化、高集積化と機器の軽薄短小化に伴い、電子部品、電子機器同士の電磁波による障害が問題となり、各種の防止対策が講じられている。電磁波のシールドは、通常シールドしようとする対象物を、金属材料で遮蔽する方法が用いられている。この用途で用いられる金属材料としては、金属板、金網、金属箔、鍍金、蒸着金属、金属含有塗料等があり、それぞれの使用目的に応じて使い分けられている。通常、電磁波シールド特性は、体積固有抵抗の低いほど、また、素材の厚さが厚いほど優れたものとなるが、それぞれの用途に応じて、大きさ、価格、性能、加工性等で仕様が制限されるため、適宜選択されて使用されている。
【0003】しかしながら、今日の科学技術の発展は急速なものがあり、とりわけ電子機器の分野においては、高密度化、高集積化による高機能化がはかられており、製品の軽薄短小化が促進され、個々の部品材料についても高機能化が要求されている。したがってまた、電子部品に用いられる電磁波シールド材料も、金属板から、金網、金属箔と、より薄い材料が求められている。ところがこれらの材料は、加工性の問題もあり、現存の材料で間に合わせているのが現状である。例えば、電子回路基板の一つであるフレキシブルプリント回路基板では、回路の片面または両面に、電磁波シールド材を積層し、他の電子部品から発生する電波ノイズを遮蔽することが行われており、組み込み体積に制限があること、基板のフレキシブル性を損なわないこと、電磁波シールド性能を損なわないこと等を具備した電磁波シールドが求められているが、現状では、金属箔や金網しか使用できないため、フレキシブル性については不満足であるのが実情である。
【0004】ところで、金属箔としては、ステンレス鋼箔、アルミニウム箔、銅箔、金箔などがあげられ、50μm以下の厚さのシート状物を製造することは可能であるが、比重が大きいため部品の重量が重くなること、加工性が悪いこと、価格が割高であること等から、他材料への転換が望まれている。一方、金網は、箔に比べて多孔性であり、金網よりなるシート状物は、その露出表面積が箔より大きいため、電磁波シールド性能を損なわずに、全体の重量を軽くできる利点がある。しかしながら、単繊維の太さが50μm径以下のものを得ることができないため、平織り加工の場合でも100μm以下の厚さの金網を得ることが困難であり、厚さおよび柔軟性に問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の技術における上記の事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、優れたシールド性を有すると共に、主として電子機器に使用できる薄くて柔軟性のある電磁波シールド材を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の電磁波シールド用シートは、一種または複数種の金属繊維を含有する多孔質シートよりなり、厚さが10〜100μm、空隙率が70〜95%、ガーレーこわさが5〜50mgであることを特徴とする。また、本発明の電磁波シールド用シートにおいて、多孔質シートは、金属繊維の焼結体よりなるものであってもよい。
【0007】本発明における電磁波シールド用シートは、その金属繊維表面が、多孔質シートを構成する金属繊維よりも低い抵抗率を有する金属材料で被覆されていてもよい。
【0008】本発明の電磁波シールド用シートは、金属繊維同士が接触しているか、または焼結により互いに融着されているので、薄くて柔軟性があり、かつ、優れた電磁波シールド特性を有している。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の多孔質シートを構成する材料としては、金属材料であれば、磁性、非磁性を問わないが、高周波域のシールドのためには高透磁性を有する金属が好ましい。したがって、本発明に用いられる金属繊維としては、極細線加工が可能なステンレス鋼繊維、ニッケル繊維、銅繊維、アルミニウム繊維、銀繊維、金繊維、チタン繊維等があげられるが、導電性があり、細線加工が可能な金属であれば如何なるものでもよく、金属の種類に限定されるものではない。これらの金属繊維は、繊維径が細いものほどシートに形成したときの柔軟性がよく、ガーレーこわさ測定値を低減することができるが、繊維径が細いほど加工度が高くなり、コスト面で不利になるので、通常5〜50μm、好ましくは20μm以下の範囲で目的に応じて選択される。また、金属繊維の長さは、特に限定されるものではないが、湿式抄紙法によりシートを作製する場合には、地合構成の観点から2〜6mmの範囲が最適である。金属材料による電磁波のシールドは、主に反射によるため、露出表面が多いほど単位体積当たりのシールド効果が大きいものと考えられ、また放熱性も向上する。ところで多孔質シートの露出表面積は、シートに孔が開いているほど、また個々の孔径が小さいほど大きくなり、構成する繊維径や繊維長が小さいほど大きくなるので、これらの条件を適宜選択、調整してシートを作製すればよい。
【0010】多孔質シートの製造は、湿式抄紙法によって行うことが好ましいが、その他にも編組や織布の作製方法によって得ることもできる。湿式抄紙法による場合について、具体的に説明すると、短繊維にカットした一種または複数種の金属繊維を水中に離解分散させ、適量のバインダーと必要に応じて助剤を添加し、混合した後、ワイヤー上で脱水処理し、プレス工程、乾燥工程を得てシート化し、真空または非酸化性雰囲気下で加熱してバインダー等を熱分解して除去すればよい。バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、セルロースパルプ等が使用でき、また、助剤としては、一般に湿式抄紙法に使用されている分散剤、界面活性剤、消泡剤等が使用できる。非酸化性雰囲気としては、アルゴンガス、窒素ガス、水素ガス等を使用することができる。
【0011】また、電磁波シールド特性および品質向上の目的から、上記多孔質シートの金属繊維同士を焼結してもよい。焼結は、真空または非酸化性雰囲気中で金属繊維の融点近くの温度において、例えば、ステンレス鋼繊維の場合、1120℃で1〜2時間加熱処理を行えばよい。
【0012】本発明において、多孔質シートの金属繊維表面は、その金属繊維よりも低い抵抗率を有する金属で被覆させることができる。それにより、所望の導電性その他の特性を、より少量の金属を用いて得ることができ、優れた電磁波シールド効果が達成される。
【0013】金属繊維表面の被覆は、電解メッキ法、無電解メッキ法、スパッタリング法、蒸着法、プラズマ溶射法等、公知の方法によって行うことができる。また、金属繊維よりも低い融点を有する低抵抗の他の金属繊維を共存させて焼結することによって、焼結と同時に金属繊維の表面を低抵抗の金属で被覆するようにしてもよい。
【0014】上記の方法で得られる多孔質シートは、厚さ10〜100μm、空隙率70〜95%、ガーレーこわさ5〜50mgであることが必要である。厚さを10〜100μmの範囲に限定した理由は次の通りである。すなわち、電子機器等の部品は、高機能高集積化に推移し、各部品の占有体積が次第に小さくなる傾向にあるので、これに対応した部品に対応させる必要があること、さらにフレキシブルプリント回路基板等に対して用いる場合には、柔軟性が求められること等の理由から、上記の範囲に設定する必要がある。すなわち、厚さが上記の範囲より厚くなると、占有体積が増加し、ガーレーこわさが増加する。また、10μmより薄くなると、シートの強度が低下して耐久性に劣ったり、電磁波シールド効果も低下する。
【0015】空隙率が70%より低いと、シートの密度が高くなり、柔軟性が低下してガーレーこわさが増加する。また、空隙率が95%よりも高くなると、シートを構成する繊維の本数が少なくなり、シートの強度や電磁波シールド性能が低下する。また、ガーレーこわさが5より低いと、柔らかすぎて加工時のハンドリング性が悪く、また、50mgより高いと、フレキシブル性が低下する。
【0016】なお、本発明において、空隙率およびガーレーこわさは、次の測定方法によって求めた値である。
(空隙率)シートの多孔性の度合を示す値であり次の式で示される。
空隙率(%)={1−(シートの見掛けの密度/シートの真の密度)}×100式中、シートの見掛けの密度は、シートの坪量と厚さから計算される値である。シートの真の密度は、繊維自体(被覆金属も含む)の密度を意味する。
【0017】(ガーレーこわさの測定)こわさの測定は、ガーレーこわさ試験器(熊谷理機工業社製)を用い、試験片として、幅2インチ、長さ1.5インチの大きさのものについて、下記表1に示す荷重を表1に示す荷重位置(W1、W2およびW4は、それぞれ振り子の中心のピボットより1インチ、2インチおよび4インチの位置)にかけることにより測定を行い、得られた目盛りの値を次式に代入して、標準試験片(幅1インチ、長さ3.5インチ、荷重5g、1インチの位置のとき)を用いたときのこわさ(mg)で算出する。
【0018】
【表1】

【数1】

Rg:目盛りの読みW:試験片の幅(インチ)
L:試験片の長さ(インチ)・・・実際の長さより0.5インチを引いた値W1、W2、W4:各加重位置の使用重りの重さ(g)
【0019】
【実施例】実施例1繊維径8μm、繊維長4mmのステンレス鋼繊維(材質:SUS316L、商品名:サスミック、東京製鋼社製)95重量部、および水中溶解温度70℃のポリビニルアルコール繊維(商品名:フィブリボンドVPB105−1、クラレ社製)5重量部からなるスラリーを、湿式抄紙法によって抄造し、脱水プレス、加熱乾燥して、米坪量62g/m2 のシートを得た。得られたシートを、表面温度が160℃の加熱ロールを用いて、線圧300kg/cm、速度5m/minの条件で加熱圧着し、ステンレス鋼繊維加熱圧着シートを得た。得られたシートについて、電磁波シールド効果を測定し、評価を行った。このシートは、加熱圧着により厚さが薄く、そのためシートに柔軟性があり、さらに熱圧着により金属繊維間の距離が縮まるため、電磁波シールド効果も高いものであった。
【0020】実施例2実施例1と同様にして湿式抄紙法で得られたシートを、加熱圧着することなく、水素ガス雰囲気の連続焼結炉(メッシュベルト付きろう付け炉)を用い、熱処理温度1120℃、速度15cm/minで焼結処理を行い、米坪量45g/m2 のステンレス鋼繊維焼結シートを得た。得られたシートについて、実施例1と同様にして、電磁波シールド効果を測定し、評価を行った。このシートは、焼結による脱脂効果および金属繊維間の接合により、バインダーによるこわさがなく、そのためシートに柔軟性があり、さらに金属繊維間が直接結着されているため、電磁波シールド効果も高いものであった。
【0021】実施例3米坪量の点以外は、実施例2におけるステンレス鋼繊維焼結シートの製造方法と同様にして、米坪量80g/m2 のステンレス鋼繊維焼結シートを得た。得られたシートについて、実施例1と同様にして電磁波シールド効果を測定し、評価を行った。このシートは、実施例2のシートに比べて、米坪量が増加した分こわさの値が高くなり、柔軟性に劣るが、焼結による金属繊維間の接合および金属繊維分の増加により、金属繊維間が直接結着されているため、電磁波シールド効果も高いものであった。
【0022】実施例4繊維径8μm、繊維長4mmのステンレス鋼繊維(材質:SUS316L、商品名:サスミック、東京製鋼社製)60重量部、繊維径30μm、繊維長4mmの銅繊維(商品名:カプロン、エスコ社製)20重量部、および水中溶解温度70℃のポリビニルアルコール繊維(商品名:フィブリボンドVPB105−1、クラレ社製)20重量部からなるスラリーを、湿式抄紙法によって抄造し、脱水プレス、加熱乾燥して、米坪量75g/m2 のシートを得た。得られたシートを、表面温度が160℃の加熱ロールを用いて、線圧300kg/cm、速度5m/minの条件で加熱圧着した。次に、得られた圧着金属繊維シートを、水素ガス雰囲気の連続焼結炉(メッシュベルト付きろう付け炉)を用い、熱処理温度1120℃、速度15cm/minで焼結処理を行い、米坪量60g/m2 のステンレス鋼繊維表面に銅が融着して被覆された金属繊維焼結シートを得た。得られたシートについて、実施例1と同様にして電磁波シールド効果を測定し、評価を行った。このシートは、加熱圧着により厚さが薄く、さらに焼結による脱脂効果および金属繊維間の接合により、バインダーおよび厚さによるこわさがなく、そのためシートに柔軟性があり、さらに金属繊維間が直接結着されており、その上より低抵抗の銅でステンレス鋼繊維が被覆されているため、電磁波シールド効果もより優れたものであった。
【0023】比較例1米坪量以外は、実施例1におけるステンレス鋼繊維焼結シートの製造方法と同様にして、米坪量32g/m2 のステンレス鋼繊維シートを得た。得られたシートについて、実施例1と同様にして電磁波シールド効果を測定し、評価を行った。このシートは、実施例1のものに比べて、加熱圧着していない分こわさの値が高くなり、柔軟性に劣り、さらに空隙率が高いため金属繊維間の距離が長く、電磁波シールド効果に劣るものであった。
【0024】比較例2アルミニウム箔(厚さ27μm)を比較用の電磁波シールド材として使用し、実施例1と同様にして電磁波シールド効果を測定し、評価を行った。このアルミニウム箔は、電磁波シールド効果が高いが、空隙がないため、こわさは金属本来の性質と厚さに依存し、したがって、高い柔軟性を得ることが困難であった。
【0025】比較例3ステンレス鋼製の200メッシュ金網を比較用の電磁波シールド材として使用し、実施例1と同様にして電磁波シールド効果を測定し、評価を行った。この金網は、繊維密度が高いため、電磁波シールド効果は得られたが、柔軟性に欠けるものであった。なお、柔軟性を得るために繊維密度が低くなるように編んだ金網は、穴が大きくなるため電磁波シールド効果に劣るものとなった。
【0026】上記実施例および比較例のものについて、物理特性および評価結果をまとめて下記表2に示す。なお、表2中、厚さおよび密度はJIS P8118、坪量はJIS P8124による測定結果である。また、電磁波シールド効果の評価は、下記の測定方法によって行った。
【0027】(シールド特性の測定)電磁波シールド効果を評価するためのシールド特性の測定は、図1に示すアドバンテスト社製のTR17301およびTR4172を用いて行った。図1において、10はシールドボックス(TR17301)であって、送信アンテナ12および受信アンテナ13が配置されており、その間に15cm角の試料11が金属ホルダーにセットされる。14はスペクトラムアナライザー(TR4172)である。電界波および磁界波シールド特性の測定は、付属のロッドアンテナ(電界波用)およびループアンテナ(磁界波用)を使用して、10〜1000MHzの周波数領域におけるシールド特性を測定した。
【0028】表2におけるシールド特性は、スペクトラムアナライザーに記録されたチャートから求めたものであって、周波数500MHzにおけるシールド効果の値を示す。例えば、実施例2の場合、電界波および磁界波についての周波数(横軸)に対するシールド効果(縦軸)を記録した図2に示すグラフについて、周波数500MHzにおける電界波のシールド効果の値51dBおよび磁界波のシールド効果の値40dBがシールド特性として示されている。
【表2】

評価基準は次の通りである。
電磁波シールド効果:○は許容レベル、×は不良。
総合評価:○は許容レベル、×は実用不能。
【0029】
【発明の効果】本発明の電磁波シールド用シートは、厚さが薄くて軽く、柔軟性に優れ、かつ良好な電磁波シールド効果を示すものであり、電磁波シールド材料として総合的に優れた材料である。したがって、本発明の電磁波シールド用シートは、軽薄短小化された電子機器の電磁波シールドのために極めて有用である。
【出願人】 【識別番号】000153591
【氏名又は名称】株式会社巴川製紙所
【出願日】 平成10年(1998)1月30日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 剛 (外1名)
【公開番号】 特開平11−220282
【公開日】 平成11年(1999)8月10日
【出願番号】 特願平10−18354