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【発明の名称】 コンデンサ内蔵セラミック多層基板
【発明者】 【氏名】福田 順三

【氏名】柴田 耕次

【要約】 【課題】コンデンサ内蔵セラミック多層基板において、焼成時の内蔵コンデンサの絶縁特性の劣化や誘電体層のクラックの発生を防止できるようにする。

【解決手段】各層の低温焼成セラミック層11に形成するビア導体13,14,14aの中で、少なくとも内蔵コンデンサ16の電極導体17のうちの誘電体層18と直接接する部分に一部分でも直接接するビア導体13については、Pd含有率が5%以上のAg/Pd合金により形成すると共に、電極導体17をAu又はAg/Pd合金により形成する。また、誘電体層18をPbペロブスカイト化合物により形成する。この場合、ビア導体13に用いるAgをPdと合金化することで、焼成時にビア導体13中のAg成分が電極導体17を通じて誘電体層18に拡散する現象が抑制され、誘電体層18の絶縁特性の劣化が防止されると共に、焼成時のPdの酸化・膨張が少なくなり、誘電体層18のクラックが防止される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 Ag系のビア導体を形成した複数層の低温焼成セラミック層の間に、誘電体層の両面に電極導体を形成した内蔵コンデンサを挟み込んで、これらビア導体、低温焼成セラミック層、誘電体層及び電極導体を同時焼成してなるコンデンサ内蔵セラミック多層基板において、少なくとも前記内蔵コンデンサの電極導体のうちの前記誘電体層と直接接する部分に一部分でも直接接するビア導体は、Pd含有率が5%以上のAg/Pd合金により形成されていることを特徴とするコンデンサ内蔵セラミック多層基板。
【請求項2】 前記電極導体は、Au又はAg/Pd合金により形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコンデンサ内蔵セラミック多層基板。
【請求項3】 前記誘電体層は、Pbペロブスカイト化合物により形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンデンサ内蔵セラミック多層基板。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、積層された低温焼成セラミック層と、その層間に挟み込まれた内蔵コンデンサとを同時焼成して形成したコンデンサ内蔵セラミック多層基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】この種のコンデンサ内蔵セラミック多層基板においては、例えば特開平9−92983号公報に示すように、内蔵コンデンサの電極導体をAu系導体又はAg/Pdで形成し、内層配線導体やビア導体をAg系導体で形成したものがある。ここで、Agは高伝導率(低抵抗値)という特長があるが、マイグレーションや焼成反りが発生しやすいという欠点がある。そこで、内層配線導体やビア導体を形成する導体ペーストして、マイグレーションや焼成反りを抑制するためにPd粉を添加したAg/Pdペーストが用いられることが多い。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記構成のセラミック多層基板を内蔵コンデンサと共に同時焼成すると、内蔵コンデンサの絶縁特性が劣化したり、誘電体層にクラックが発生することがあり、品質低下や歩留り低下の問題が生じた。この原因は、内蔵コンデンサの電極導体と接合されるビア導体がAg系導体の場合、同時焼成する過程で、ビア導体中のAg成分が内蔵コンデンサの電極導体を通じて誘電体層に拡散し、誘電体層の絶縁特性を劣化させるためと考えられる。また、Ag粉とPd粉とを混合したAg/Pdペーストを用いた場合、同時焼成する過程で、Pd成分が酸化して体積膨張するため、その膨張力で誘電体層にクラックが発生する。
【0004】本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、従ってその目的は、焼成時の内蔵コンデンサの絶縁特性の劣化や誘電体層のクラックの発生を防止でき、品質向上、歩留り向上を実現できるコンデンサ内蔵セラミック多層基板を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、積層された低温焼成セラミック層と、その層間に挟み込まれた内蔵コンデンサとを同時焼成して形成したコンデンサ内蔵セラミック多層基板において、少なくとも内蔵コンデンサの電極導体のうちの前記誘電体層と直接接する部分に一部分でも直接接するビア導体については、Pd含有率が5%以上のAg/Pd合金により形成するようにしたものである(請求項1)。このように、誘電体層と電極導体を介して直接接するビア導体に用いるAgをPdと合金化することで、従来のようなAg粉とPd粉との混合物を用いる場合とは異なり、焼成時にビア導体中のAg成分が内蔵コンデンサの電極導体を通じて誘電体層に拡散する現象が抑制され、誘電体層の絶縁特性の劣化が防がれる。更に、PdをAgと合金化することで、焼成時のPdの酸化・膨張が少なくなり、誘電体層のクラックの発生が防止される。
【0006】更に、請求項2のように、内蔵コンデンサの電極導体を、Au又はAg/Pd合金により形成することが好ましい。このようにすれば、電極導体についても、ビア導体と同じく、誘電体層へのAg成分の拡散やPdの酸化・膨張が防止される。
【0007】また、請求項3のように、内蔵コンデンサの誘電体層をPbペロブスカイト化合物により形成しても良い。このPbペロブスカイト化合物は、1000℃以下で低温焼成セラミック層と同時焼成可能であると共に、誘電率が高く、内蔵コンデンサを作るのに適している。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を図1(a),(b)に基づいて説明する。まず、本実施形態におけるセラミック多層基板の構造を説明する。積層された複数層の低温焼成セラミック層11は、複数枚の低温焼成セラミックグリーンシートを積層して800〜1000℃で焼成したものである。低温焼成セラミックとしては、CaO−SiO2 −Al2 3 −B2 3 系ガラス50〜65重量%(好ましくは60重量%)とアルミナ50〜35重量%(好ましくは40重量%)との混合物を用いる。この他、例えば、MgO−SiO2 −Al2 3 −B2 3 系ガラスとアルミナとの混合物、SiO2 −B2 3 系ガラスとアルミナとの混合物、PbO−SiO2 −B2 3 系ガラスとアルミナとの混合物、コージェライト系結晶化ガラス等の800〜1000℃で焼成できる低温焼成セラミック材料を用いても良い。
【0009】各層の低温焼成セラミック層11には、層間接続用のビアホール12が形成され、各ビアホール12にビア導体13,14,14aが充填されている。各ビア導体13,14,14aは、Pd含有率が5%以上のAg/Pd合金のペーストをビアホール12に印刷して焼成したものである。
【0010】尚、後述する内蔵コンデンサ16の電極導体17から離れたビア導体14や、電極導体17のうちの誘電体層18と接しない部分に直接接するビア導体14aについては、必ずしも、Pd含有率が5%以上のAg/Pd合金のペーストを用いる必要はなく、Ag粉とPd粉とを混合したペーストを用いても良く、或は、Au、Ag、Ag/Pt、Cu等の低温焼成用の各種導体ペーストの中からいずれかを選択しても良い。要は、少なくとも電極導体17のうちの誘電体層18と直接接する部分に直接接するビア導体13(一部分が接しているものも含む)について、Pd含有率が5%以上のAg/Pd合金のペーストを用いれば良い。
【0011】また、最上層を除く各層の低温焼成セラミック層11には、内層導体パターン15が印刷・焼成されている。内層導体パターン15についても、Ag/Pd合金のペーストを用いても良いが、Ag粉とPd粉とを混合したペーストを用いても良く、或は、Au、Ag、Ag/Pt、Cu等の低温焼成用の各種導体ペーストの中からいずれかを選択しても良い。
【0012】更に、所定の低温焼成セラミック層11の層間には、内蔵コンデンサ16が次のようにして形成されている。内蔵コンデンサ16の直下の低温焼成セラミック層11(グリーンシート)の上面に、電極用導体ペーストを用いて内蔵コンデンサ16下面の電極導体17をスクリーン印刷し、その上面に誘電体ペーストを用いて誘電体層18をスクリーン印刷し、更に、その上面に電極用導体ペーストを用いて内蔵コンデンサ16上面の電極導体17をスクリーン印刷する。ここで、電極導体17を形成する電極用導体ペーストとしては、Au又はAg/Pd合金のペーストを用いる。また、誘電体層18を形成する誘電体ペーストとしては、Pbペロブスカイト化合物(例えばPbO−Fe2 3 −Nb2 5 −WO3 −ZnO)、BaTiO3 系化合物、SrTiO3 系化合物、CaTiO3 系化合物等の低温焼成セラミック誘電体材料のペーストを用いる。
【0013】このコンデンサ内蔵セラミック多層基板を製造する場合には、各層のグリーンシート(未焼成の低温焼成セラミック層11)に、ビア導体13,14,14a、内層導体パターン15、電極導体17、誘電体層18等を印刷した後に、各層のグリーンシートを積層して基板用積層体を作り、これを例えば80〜150℃、50〜250kgf/cm2 の条件で加熱圧着して一体化する。更に、図1(a)に示すように、この基板用積層体の両面に未焼成のダミーグリーンシート19を積層し、上述と同様の方法で加熱圧着する。この際、ダミーグリーンシート19は、後述する基板焼結温度では焼結しないアルミナグリーンシート等の高温焼成セラミックグリーンシートを用いる。
【0014】以上のようにして作製された積層体を、2〜20kgf/cm2 の範囲内の圧力で加圧しながら基板焼結温度である800〜1000℃(好ましくは900℃)で焼成し、内蔵コンデンサ16を内蔵したセラミック多層基板を同時焼成する。この際、基板両面に積層されたダミーグリーンシート19(アルミナグリーンシート等)は1550〜1600℃まで加熱しないと焼結しないので、800〜1000℃で焼成すれば、ダミーグリーンシート19は未焼結のまま残される。但し、焼成の過程で、ダミーグリーンシート19中の溶剤やバインダーが飛散してアルミナ粉体として残る。
【0015】焼成後、基板両面に付着したダミーグリーンシート19(アルミナ粉体)を研磨等により除去した後、基板表面に、Au、Ag、Ag/Pd、Ag/Pt、Cu等の表層用導体ペーストを用いて表層導体20をスクリーン印刷し、これを1000℃以下で焼成する。これにより、内蔵コンデンサ16を内蔵したセラミック多層基板の製造が完了する。
【0016】このようにして、コンデンサ内蔵セラミック多層基板を加圧焼成すれば、基板の反りやクラック、ゆがみを防ぎ、且つ焼成後の絶縁体層と誘電体層の緻密度を向上させることができて、信頼性の高いコンデンサ内蔵セラミック多層基板を製造できる。
【0017】
【実施例】本発明者らは、内蔵コンデンサ16の電極導体17やこれに接合されるビア導体13の組成が内蔵コンデンサ16の絶縁特性やクラックの有無に及ぼす影響を評価する試験を行ったので、その試験結果を次の表1に示す。
【0018】
【表1】

【0019】誘電体層は、実施例1,2と比較例1,2では、いずれもPbペロブスカイト化合物を用い、実施例3では、BaTiO3 系化合物を用いた。電極導体は、実施例1,3と比較例1,2では、いずれもAg/Pd合金を用い、実施例1,3と比較例1は、いずれもAg/Pd比が9/1であり、比較例2は、Ag/Pd比が8/2である。実施例2の電極導体は、Au粉100%である。
【0020】ビア導体は、実施例1,2,3では、いずれもAg/Pd合金を用い、Ag/Pd比がそれぞれ8/2,7/3,9.5/0.5である。比較例1のビア導体は、Ag粉100%であり、比較例2のビア導体は、Ag粉とPd粉との混合物であり、Ag/Pd比が8/2である。電極導体とビア導体を形成するペーストは、いずれも、導体成分100重量部、エチルセルロース(バインダ樹脂)3重量部、テレピネオール(溶剤)22重量部の配合比で作製した。
【0021】この評価試験における合格基準は、内蔵コンデンサの絶縁性については107Ω・cm以上であること、また、ビアホール周辺のクラックが無いことである。実施例1,2,3については全て合格基準を満たしたが、比較例1,2はいずれも絶縁性が不足し、更に、比較例2ではクラックも発生した。
【0022】合格基準を満たした実施例1,2,3は、いずれも、電極導体をAg/Pd合金又はAuで形成している。この試験結果から、電極導体は、Ag/Pd合金又はAuとすることが好ましい。
【0023】また、実施例1,2,3は、いずれも、ビア導体をAg/Pd合金で形成し、Ag/Pd比が9.5/0.5〜7/3である。この試験結果から、ビア導体は、Pd含有率が5%以上のAg/Pd合金とすることが好ましい。このように、ビア導体に用いるAgをPdと合金化することで、焼成時にビア導体中のAg成分が電極導体を通じて誘電体層に拡散する現象が抑制され、誘電体層の絶縁特性の劣化が防がれる。更に、PdをAgと合金化することで、焼成時のPdの酸化・膨張が少なくなり、クラックの発生が防止される。
【0024】これに対し、比較例1,2は、ビア導体をAg粉を配合したペーストで形成しているため、焼成時にビア導体中のAg成分が電極導体を通じて誘電体層に拡散し、誘電体層の絶縁特性を劣化させてしまう。更に、比較例2では、ビア導体をPd粉を配合したペーストで形成しているため、焼成時にPd成分が酸化して体積膨張し、クラックが発生してしまう。
【0025】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明のコンデンサ内蔵セラミック多層基板によれば、ビア導体のうち、少なくとも内蔵コンデンサの誘電体層に電極導体を介して直接接するビア導体については、Pd含有率が5%以上のAg/Pd合金により形成するようにしたので、低温焼成セラミック層の間に、クラックのない絶縁特性に優れた内蔵コンデンサを形成することができ、品質向上、歩留り向上を実現できる(請求項1)。
【0026】更に、請求項2では、電極導体をAu又はAg/Pd合金により形成したので、電極導体から誘電体層へのAg成分の拡散や電極導体内のPdの酸化・膨張を防止でき、絶縁性劣化やクラックをより確実に防止できる。
【0027】また、請求項3では、誘電体層をPbペロブスカイト化合物により形成したので、誘電体層の誘電率を高めることができて、コンデンサの容量増大と小型・薄型化とを両立させることができる。
【出願人】 【識別番号】391039896
【氏名又は名称】株式会社住友金属エレクトロデバイス
【出願日】 平成10年(1998)2月2日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】加古 宗男
【公開番号】 特開平11−220261
【公開日】 平成11年(1999)8月10日
【出願番号】 特願平10−20838