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【発明の名称】 廃タイヤ利用の電波音波吸収体
【発明者】 【氏名】渋谷 茂一

【要約】 【課題】電子機械情報産業や医療機器、交通運輸の発展に伴い、不要電波障害と騒音の防止が重要課題になっている。この障害防止に必要な電波音波吸収体が高価で普及が困難なので、豊富なリサイクル資源を活用して低価格化を図る。

【解決手段】廃タイヤのゴム片を主材とし、発泡プラスチックと接着剤、塗料等を加えて集積成型して電波音波吸収体を形成する。図に、実施例を示す。(1)は、廃タイヤ踏面部の1/8カット片を素材とする基底部。(2)は、ゴムチップ、ゴム粉、発泡プラスチックを素材とする中層部。(3)は、ゴム粉の粗粒子により形成した表層粗面部。(4)は、音波吸収用の孔あきボード。 適用例として、高速道路や鉄道線路付近の電磁障害と騒音防止用として、これを路側に並列設置すれば、TV、移動無線、ミリ波レーダの近傍反射偽像障害、走行騒音障害の同時救済が可能になる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 廃タイヤゴム片を発泡プラスチックや塗料等の融合接着材と共に、集積成型した廃タイヤ利用の電波音波吸収体【請求項2】 廃タイヤゴム片と発泡プラスチック等の混合比の異なるマット状集積体を重ね合わせて成る請求項1の廃タイヤ利用の電波音波吸収体【請求項3】 電波入射正面の廃タイヤゴム片の先端の包絡面の深さが約1/10波長以上の凹凸をもつ粗面を形成するようにした請求項1の廃タイヤ利用の電波音波吸収体【請求項4】 廃タイヤゴム片を集積成型することにより、横断面が三角形の電波スクリーンを複数列交差させて格子状とした請求項1の廃タイヤ利用の電波音波吸収体【請求項5】 廃タイヤゴム片の外周に電気抵抗物質を付着させた請求項1の廃タイヤ利用の電波音波吸収体【請求項6】 フェライト粉等のポリアイアン材を混入して成る請求項1の廃タイヤ利用の電波音波吸収体【請求項7】 基盤に、フェライト板等の磁気的電波吸収材を付設した請求項1の廃タイヤ利用の電波音波吸収体【請求項8】 前面に、孔あきボードを付設した請求項1の廃タイヤ利用の電波音波吸収体
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、第1に、電子機器より放射される電波の反射と透過を防止するための電波吸収体に関するもので、電波伝搬と電気物理応用の技術分野に属する。次に、この電波吸収体の材質がゴムを主体とするため、音波に対する吸収減衰能力を併せもつので、音波吸収体を実現するために音響物理学を活用する。
【0002】
【従来の技術】従来の電波吸収体は、大多数が焼結フェライト板、もしくは、フェライト粉やカーボンブラックを発泡プラスチックに混和して長方体、円錐、ピラミッド形等に成型したものである。
【0003】廃タイヤゴム片を素材とする電波音波吸収体に関する従来の技術は存在しない。本発明におけるごとく、不定形不等大のゴム片を用いる事により、熱損失のみならず、散乱損失、表皮損失を増加させて、電波吸収体としての広帯域性と通過損失向上を図る方法は、従来の技術にはない。
【0004】さらに、本発明の請求項4と実施例(図3)に関し、基底部より見て逆ピラミッド形の空隙(8)をもつ格子型構造の電波吸収体の提唱は、吸収損失の外に回折損失の加重効果を予測するもので、原理的にも前例がない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】電子産業の発展に伴い、電磁環境の悪化が社会問題になっている。例えば、TV電波の建物反射によるゴースト障害、携帯電話が医療機器や航空機の制御システムに及ぼす妨害、近傍建物の反射によるレーダーやナビゲータの偽像障害、床面や近接物の反射による妨害波計測システムの誤差等の問題である。
【0006】電磁障害を防止もしくは軽減する対策の一つに、反射妨害を及ぼす建造物の外壁や路面、内壁面、床面、天井に電波吸収体を付設する方法がある。それには、電波吸収体の性能が良好で、できるだけ安価なことが望まれる。
【0007】本発明が解決しようとする課題は、任意の入射電波に対して表面反射が小さく、侵入波に対しては通過損失が大きく、物理化学的に安定で、対候性が良く、材料が安価で入手が容易、できるだけ軽量で付設工事が簡単な電波吸収体を実現すること。併せて、音波の吸収または遮蔽体としての機能を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】本発明による電波吸収体の材料は、その主要部分を「廃タイヤのゴム片(ゴムカット片、ゴムチップ、ゴム粉、再生ゴム等)」、残余を「発泡プラスチック、塗料、接着剤、補助吸収材、保持材等」とする。
【0009】(社)日本自動車タイヤ協会発行の『タイヤリサイクルハンドブック』によれば、1995年の廃タイヤ発生量は9900万本、94万トンで、リサイクル率93%、内訳は、熱利用分53%、原形または加工利用分40%。後者の内、ゴム粉(ゴム粒)が6%(56000トン)となっている。ゴムカット片は、廃タイヤの踏面部(トレッド)を4〜32分割したもの。また、ゴムチップは、廃タイヤを破砕して得られるゴム砕片で、再生ゴムにリサイクルするかさらに細分してゴム粉にする。ゴム粉のリサイクル製品には、マット類、弾性舗装、ブロック、アスファルト改質材があり、応用分野拡大の研究が進められているが、過去に、電波吸収体は対象になっていない。電波吸収体の材料としての、廃タイヤゴム片は安価で豊富で入手が容易な利点がある。
【0010】廃タイヤのゴムには平均25%のカーボンブラックが含まれている。これは、熱損失型(抵抗型)電波吸収体として充分な炭素含有率である。比重は約1.2で、軽く、生ゴムに比べればはるかに硬いが弾力性があり、切削、穴あけ、集積、成型、接着等の加工が容易である。ゴムチップ、ゴム粉は不定形で、ゴムチップは数cm〜20cm以上、ゴム粉は1mm以下〜20mm程度(規格品は、約5、3、2、0.7mm以下)の大きさである。寸法に幅があるので、電波の波長や電波吸収体の構成形式に合わせて、材料とするゴム片の大きさが自由に選択できる。ゴム片は、不定形のままか、使用目的により所要の形に成型して用いる。
【0011】電波吸収体に要求される電気的条件中、無反射にするためには、入射面の波動インピーダンスを自由空間値に整合させる必要がある。これには、電波吸収体の表層付近の電波の屈折率を1に近付けることと、表層を粗面にして、入射波を散乱させることが実質的に有効である。粗面散乱による反射低減効果は、実用上、粗面の段差が約1/10波長以上必要で、段差が大きいほど顕著なことが知られている。1/10波長の値は、電波については、300MHzでは10cm,1GHzでは3cm、10GHzでは3mm、60GHzならば0.5mmに相当する。空気中の音波については、1/10波長の相当値が300Hzで11cm、1000Hzで3.3cm、10000Hzならば3.3mmになる。すなわち、MHz単位の電波と、Hz単位の音波の波長はほぼ等しい。ゴム片自体が不定形であるため短い波長帯での粗面条件は自然に獲得できるし、段差付けの加工も容易である。(電磁波は横波、音波は縦波で、両者は質的に異なるが、対象範囲の波長がほぼ一致し、粗面効果については類似性がある)本発明では、例えば、吸収体の正面表層付近のゴム片と発泡プラスチックの混合率を調整(ゴム片の比率を小さく)して電波の屈折率をできるだけ1に近付けると共に、表面に凹凸の段差を付けることによって、電波の散乱効果を高めている。高周波数帯に対しては、ゴム粒を表層に並べるだけで必要な粗度がえられる場合もあり、表層に多数の突起を設けたり、穴を開ける方法もある。
【0012】電波吸収体は、厚みが薄くて通過(吸収、散乱)損失が大きいことが望ましい。それには、正面表層付近を除き、ゴム片の混合率を高める必要がある。吸収損失は、カーボン含有率に比例する。散乱損失はゴム片が不定形のための付加効果である。また、ゴム片が不定形であることは、表面積が大きく、表皮電流に対する損失が増える効果も期待できる。本発明では、例えば、電波吸収体の正面表層から内側に向かって、ゴム片と発泡プラスチックの混合率に関してゴム片の比率を順次大きくする(限度の比率1のとき、カーボン含有率25%)設計方法を採るか、または、同様の観点に立ち数種のマットを準備し、それらを重ねて一体の電波吸収体にする。
【0013】電波吸収体は、電波の入射方向が正面以外のばあいにも、有効に機能しなければならない。任意方向の斜め入射波の透過を阻止するには電波スクリーンを格子状に配置する方法が効果的である。図3において、電波スクリーンの横断面を三角形にしたのは内側ほど減衰が増加するようにしたためである。電波スクリーン列の遮蔽効果は、波長の長いVHF帯(30MHz〜300MHz帯に対しても有効で、電波吸収体の厚みを縮小できる利点がある。
【0014】本発明は、廃タイヤゴム片を主成分とする以外は、電波吸収体として有用ならば、何を加えても構わない。例えば、ゴム片の表面や混合材にカーボンブラックを加えれば抵抗減衰能力が増強できるし、フェライト粉を加えれば磁気的減衰効果が期待できる。基盤にフェライト板や再生ゴム板を付設する場合も同様である。
【0015】本発明の電波吸収体は、ゴムを主材にしているので、機械的振動や音を吸収する能力を併有しており、電波音波吸収体といえるが、さらに、既知技術の孔あきボードを前面に付設すれば、音波吸収性の向上と音域の調整ができる。
【0016】
【発明の実施の形態】発明の実施の形態を実施例にもとづき図面を参照して説明する。図1は、3層構成の実施例の説明図で、分かり易いように各層の構造を露出して示してある。符号の(1)は、廃タイヤ踏面の1/8カット片を敷き並べた基底部、(2)は、ゴムチップ、ゴム粉、発泡プラスチックを素材とする中層部で、(3)は、その表層に形成したゴム粉の粗粒子を用い、または整形した波状粗面。(4)は、音波吸収のための孔あきボード。(5)は、空隙。(2)は、請求項2に示すように、異種マットの多重構造でもよい。図2は、2層構成の実施例の説明図。(1)は前同様の基底部。(6)は、突起と孔を交互に設けたゴム片を素材とする前面部で、電波と音波の吸収性を兼ね備える。
【0017】この2実施例を基本にする形式の電波音波吸収体の適用範囲は広く、劇場、公会堂、会議室の電磁・音響対策、シールドルームや半電波暗室の完全電波暗室化、オープンサイトの自由空間化用に適合する。 さらに、高速道路や鉄道線路の側壁に並列設置すれば、TV,移動無線、ミリ波レーダーの近傍反射と偽像障害防止、走行騒音防止が同時に達成できる。なお、丈夫で柔軟性があるのでガードレールの反射防止用のものは、交通安全の助けにもなる。
【0018】図3は、波長の長いVHFまでの広い周波数帯域に適応できる形式で、原理的には、複数の電波スクリーン(電波障壁)による遮蔽と回折損失の相乗効果を利用したものである。全体の形状は、上方が開いた格子状の枠のある箱型で、ゴム片を圧着成型するか部材を作って組み立てる。図3の(a)は平面図、(b)は(a)のX−Y断面図。符号の(7)は、断面が三角形の電波スクリーン。(8)は、空隙の部分で、立体的には「截頭の逆ピラミッド」になる。(市販のピラミッド形電波吸収体とは逆の立体形式で”逆転の発想”による)
【0019】図1〜3の実施例の形式をうまく組み合わせれば、VHF,UHF,SHF〜の全てをカバーする電波吸収体の応用システムが、低価格で構築できる。
【0020】
【発明の効果】(1) 本発明は、廃タイヤのリサイクルを通じて貴重な資源の再利用に寄与すると共に、電子科学産業機器、医療システム、情報化システムにおける電波干渉防止、放射妨害計測システム、電波暗室の構築が低コストで実現できる。
【0021】(2) 本発明による「電波障害騒音防止用パネル」を道路や線路の側壁として設けることにより、車両用レーダー、ナビゲータ、携帯電話等の反射障害防止、列車の車体反射によるTV、ポケットベル、PHS等に対する電波障害防止、ならびに、自動車や列車の騒音防止が同時に達成できる。
【0022】(3) 電子応用機器の試験、調整、検査、不要放射計測、電磁耐性試験を実施するには「電波暗室」が必要で、今後需要の急増が見込まれる。しかし、現在は、電波暗室を構成する電波吸収体が高価なため普及が進まず、建造費や借用費の製品価格への転嫁のウエイトが無視できない状況にある。本発明の電波音波吸収体は、大量生産されるリサイクルゴムを使用するので、低価格な電波暗室の普及に貢献できる。
【0023】(4) 従来、大型建設機械、大型電子制御産業機器、航空機等を対象とする放射妨害試験用の特大型電波暗室は、高価すぎて民間ベースでは建設できなかった。 本発明によれば、価格が1/3〜1/5以下に低減できるので、政府民間を問わず、建設要求に応じうる可能性が高まる。
【0024】(5) 現行の、焼結フェライト板系電波吸収体は、剛体で比重が大きい(鉄に近似)ため、壁面と天井面の保持には特別な工夫が要る。既設の、高層ビルの外壁に貼られたTV反射防止用のもの、劇場、公会堂、講堂、会議室等の天井と壁面に付設された外来電波防止、情報漏洩防止用のものは、大多数が阪神大地震以前に設計されたもので、震度7の新耐震基準には適合しない。高層建物の柔構造を失わせ荷重が偏るなど、問題が多く、もし、崩落すれば公衆を襲う凶器になり変わる。
【0025】本発明の電波音波吸収体は、軽量で柔軟性があり、地震災害に強いので、前記の、公共諸施設への安全な適用が期待できる。 また、既設の建物内に電波暗室を設置し、あるいは、シールドルームを電波暗室に改装することも容易になる。
【0026】(6) 現行CISPR(国際無線障害特別委員会)勧告による放射妨害計測用のオープンサイト(野外式)と半電波暗室(屋内式)は、床面が金属のため、強い反射波が存在する。近年この形式の欠陥が指摘され、改善のために、反射波防止スクリーンと電波吸収体を敷設することにより、床面反射波を抑制して自由空間化する必要性が浮上している。すなわち、「自由空間型オープンサイト(オープンフリーサイト)」と「完全電波暗室」への転換で、そのためには、国内的国際的に膨大な量の電波吸収体の床面敷設が必要になる。本発明による電波音波吸収体を使用すれば、遥かに低経費で短期間に自由空間化の目的が達成でき、社会経済上の寄与は計り知れない。
【出願人】 【識別番号】591151152
【氏名又は名称】渋谷 茂一
【出願日】 平成10年(1998)1月12日
【代理人】
【公開番号】 特開平11−204985
【公開日】 平成11年(1999)7月30日
【出願番号】 特願平10−37898