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【発明の名称】 電波吸収体およびその製造方法
【発明者】 【氏名】若松 浩一

【氏名】畑島 仁

【氏名】山崎 治雄

【氏名】山内 一宏

【要約】 【課題】特性に優れ、ばらつきが小さく、製造が容易で安価な電波吸収体およびその製造方法の提供。

【解決手段】誘電体の表層部に、長さ方向に連続して形成された導電体収容部に導電体を保持せしめてなる長尺状物を所定間隔をおいて並設すると共に、その背後に電波の反射体を配設してなることを特徴とする電波吸収体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 誘電体の表層部に、長さ方向に連続して形成された導電体収容部に導電体を保持せしめてなる長尺状物を所定間隔をおいて並設すると共に、その背後に電波の反射体を配設してなることを特徴とする電波吸収体。
【請求項2】 導電体が、炭素系物質を主成分とする請求項1記載の電波吸収体。
【請求項3】 炭素系物質がカーボンブラックである請求項2記載の電波吸収体。
【請求項4】 導電体が、導電物質の粉体または短繊維を結合材で結合してなる請求項1〜3いずれかに記載の電波吸収体。
【請求項5】 結合材が、樹脂である請求項4記載の電波吸収体。
【請求項6】 結合材が、熱硬化性樹脂である請求項4記載の電波吸収体。
【請求項7】 長尺状物が絶縁体である請求項1〜6いずれかに記載の電波吸収体。
【請求項8】 長尺状物がガラス物質または合成樹脂からなる請求項1〜6いずれかに記載の電波吸収体。
【請求項9】 長尺状物が管状体である請求項1〜8いずれかに記載の電波吸収体。
【請求項10】 導電体を収容した長尺状物の全断面積が0.2〜80mm2 である請求項1〜8いずれかに記載の電波吸収体。
【請求項11】 誘電体がコンクリート、モルタル、ケイカルまたは陶磁器である請求項1〜10いずれかに記載の電波吸収体。
【請求項12】 長さ方向に連続した導電体収容部が形成された長尺状物に導電物質の粉体または短繊維と結合材とを含有する導電性材料を充填して固化し、得られた長尺状物を誘電体の表層部に並設すると共に、その背後に電波の反射体を配設することを特徴とする電波吸収体の製造方法。
【請求項13】 パイプ状の長尺状物に、導電物質の粉体または短繊維と結合材とを含有する導電性材料を充填し固化して得られた長尺状物を使用する請求項12記載の電波吸収体の製造方法。
【請求項14】 導電物質の粉体または短繊維と結合材とを含有する導電性材料を長尺状に成形し、その表面を合成樹脂で被覆して得られた長尺状物を誘電体の表層部に並設すると共に、その背後に電波の反射体を配設することを特徴とする電波吸収体の製造方法。
【請求項15】 結合材が熱硬化性樹脂である請求項12〜14いずれかに記載の電波吸収体の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電波吸収体およびその製造方法に関するものである。更に詳しくは高層建築の外壁材等として有用な電波吸収体およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、高層建築物に起因するテレビジョンの電波障害が大きな社会問題となっている。高層建築物は多量の鋼材を用いており、かつ外壁はコンクリートで構成されることが多く、コンクリートは電波吸収特性が極めて悪いため、鋼材で反射される電波が電波障害の原因となることが多い。この電波障害を防止する方法の一つとして、コンクリート壁面をフェライトタイル等の電波吸収特性のよいもので被覆することが行なわれている。しかし、フェライトタイルは電波吸収性は優れているが、比重が大きいという欠点がある。従ってフェライトタイルを用いる場合には、構造部材の強度をより高くしなければならず、費用が嵩むという問題がある。
【0003】そこで、導電性繊維を並べたものを抵抗膜として誘電層に取り付けた吸収体も考案されている(特開平7−283578)。しかしながら、所定の抵抗を持つ導電性繊維束を製造するには大がかりな設備が必要であり、抵抗値を制御することも難しいという問題もある。また、導電性塗料を塗布したリボンを並べた電波吸収体(特公昭39−25822号公報)や、プラスチックの表面にカーボンを塗布した抵抗膜を有する電波吸収体(特開昭61−252700号公報)も知られている。しかし、このような方法では、塗布という簡単な方法で抵抗皮膜を得ることができるが、一方で、塗布膜厚の制御が容易ではないという問題点がある。即ち、塗布膜厚が一定でない場合、電気抵抗値が一定でなくなるので所望の電波吸収特性を得ることが難しい問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、特性に優れ、ばらつきが小さく、製造が容易で安価な電波吸収体を提供するものである。また、本発明はこのような電波吸収体の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は上記の目的を達成するため、鋭意検討した結果なされたもので、■ 誘電体の表層部に、長さ方向に連続して形成された導電体収容部に導電体を保持せしめてなる長尺状物を所定間隔をおいて並設すると共に、その背後に電波の反射体を配設してなることを特徴とする電波吸収体。
■ 長さ方向に連続した導電体収容部が形成された長尺状物に導電物質の粉体または短繊維と結合材とを含有する導電性材料を充填して固化し、得られた長尺状物を誘電体の表層部に並設すると共に、その背後に電波の反射体を配設することを特徴とする電波吸収体の製造方法。および■ 導電物質の粉体または短繊維と結合材とを含有する導電性材料を長尺状に成形し、その表面を合成樹脂で被覆して得られた長尺状物を誘電体の表層部に並設すると共に、その背後に電波の反射体を配設することを特徴とする電波吸収体の製造方法を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明に係る電波吸収体1は図1に示すように、誘電体層2と、該誘電体層2の表層部に導電体が充填された長尺状物3、3を並設して形成された抵抗膜層と、反射体4からなる反射層とから構成される。長尺状物3、3は、その内部に導電体を保持する導電体収容部が長さ方向に形成されたものであり、例えば、内部に中空部を有する構造や、1以上の溝を有する構造等を例示することができる。具体的には、図3(A)に示すようなパイプ状、図3(B)に示す半割パイプ状、図3(C)に示す断面コ字状として、長さ方向に連続した導電体収容部3aが形成された長尺状物3が用いられる。この中でも、入手の容易さ等からパイプ状が好ましく、円筒状のパイプが好ましい。
【0007】導電体を保持した長尺状物3の全断面積としては通常0.2〜80mm2 、好ましくは0.8〜20mm2 である。また、材質は絶縁物か半導体が使用できるが、設計のし易さから絶縁物が好ましく、さらには価格や扱い易さの点からポリエチレンや塩化ビニル等の熱可塑性の合成樹脂製のものが好ましい。そのほか、ガラス、陶磁器、モルタルなどの材質も使用できる。本発明では、上記の長尺状物3の導電体収容部3aに導電体5を保持せしめる。導電物質としては、炭素系の材料や金属等が例示できるが、抵抗値や軽さの点から炭素系のものが好ましく、更には混合のしやすさから炭素繊維の短繊維あるいはカーボンブラックが好ましい。
【0008】これらの導電物質は、結合材中に分散された可塑性の導電性材料として用いるのが好ましい。結合材としては、ゴム、合成樹脂、ケイカル、セメント、粘土等が挙げられるが、価格や扱い易さから樹脂が好ましく、更には成形の点から熱硬化性の合成樹脂が好ましい。結合材を使用することによって、導電物質の分散性を高めることができる。導電性材料を長尺状物3に充填するには、長尺状物3に設けられた導電体収容部3aに導電性材料を充填すればよい。この際、導電性材料を溶媒に分散して得られた液状の組成物を充填し、その後溶媒を除去する方法が好ましい。特に好ましい方法は、導電物質と結合材と溶媒とを有する液状組成物を充填し、その後溶媒を除去する方法である。これらの方法は、特に中空部を有する長尺状物3に対して有効である。長尺状物3の導電体収容部3aに前記液状組成物を充填する手段としては、混合物が液状のうちに長尺状物3に圧送し固形化した後に所定長さに切断する方法あるいは、片端を閉じて所定長さに切った長尺状物3に液状の混合物を詰めて固める等の方法を挙げることができる。
【0009】また、押出成形機あるいは成形型を用いて所定の形状に成形した導電性材料の外側に長尺状物を被覆する等の方法も採用できる。生産性やコストの点から長い中空の合成樹脂製パイプに、カーボンブラック等を熱硬化性樹脂に混合した液をポンプで圧送して充填し、所定の条件で樹脂を硬化させた後、所定の長さに切断して生産することが好ましい。長尺状物3は、通常は図1に示すように、誘電体層2の両端間に亘って一本のものとして配置されるが、所望ならば短い長尺状物3を複数本配置して全体として誘電体層2の両端間に亘って長尺状物3が配置されているようにしてもよい。しかしながら、この場合でも、作業性等の見地から長さ500mm以上の長尺状物3を用いるのが好ましい。
【0010】長尺状物3中の導電体5の導電性は、線抵抗が3〜100kΩ/m、好ましくは5〜50kΩ/m、更に好ましくは10〜30kΩ/mのものが望ましい。長尺状物3は、誘電体層2の表層部に所定間隔をおいて複数本を並べて配設される。本発明において表層部とは表面に近い位置を意味するものであって厳密に規制する必要はなく、表面に露出する状態であっても、誘電体層2に数cm程度埋設したものであってもよい。
【0011】誘電体層2は、ガラス、ポリウレタンフォーム、発泡ポリスチレン、コンクリート、セメントモルタル、珪酸カルシウムなど種々の材料で構成することができる。好ましくはコンクリートまたはセメントモルタル(本発明では、両者をあわせてコンクリートと称することがある)を用いる。コンクリート中には炭素繊維、スチール繊維、ガラス繊維、合成繊維などの補強剤や軽量骨材などを含めることができる。誘電体層2の好適な厚さ(d)は、吸収しようとする電波の波長(λ)と誘電体の比誘電率(ε)とから、次式で算出される。
【数1】d=λ/(4√ε)
【0012】従ってコンクリート中に炭素繊維などを含めて比誘電率を大きくすると、誘電体層の厚さを薄くすることができる。また、コンクリートは含水率により比誘電率が異なるので、本発明の電波吸収体1を高層建築物の外壁等に用いた場合に雨水の浸透等により誘電体層2の含水率が大きく変化しないように、誘電体層2のコンクリートを打設する際に撥水剤を混合するのが好ましい。撥水剤を混合して打設したコンクリートは、吸水率が大幅に低下するため、雨水の浸透等による含水率の変化、従って比誘電率の変化が小さくなる。また、誘電体層2は、全体を同一材料で形成してもよく、抵抗膜部分を異なる材料を使用して複数層の積層体とすることによって面抵抗値あるいは誘電体のインピーダンスを調整することができる。
【0013】抵抗膜層の背後には電波の反射体4が配設されて反射層が形成される。反射体4は入射した電波を実質的に全反射するものが好ましく、金属板や金網、金属棒などの導電体で構成される。特に本発明においては誘電体層2を構成するコンクリートの補強を兼ねて鉄筋で構成するのが好ましい。すなわち、反射層は、抵抗膜層を構成する長尺状物3と平行になるように鉄筋を間隔をおいて配置して構成されるのが好ましい。鉄筋は、コンクリートの補強に用いられている常用の太さのものを用いればよい。また、鉄筋と鉄筋との間隔は、通常25〜200mm好ましくは30〜150mmである。反射層は所望ならば太さを異にする複数種の鉄筋で構成することができる。例えば広い間隔で配置した補強用の太い鉄筋の間に、細い鉄筋を配置して反射率を高めるようにすることができる。
【0014】本発明に係る電波吸収体1は、本質的に上述の抵抗膜層、誘電体層および反射層より成るが、更に付加的な層を有していてもよい。例えば本発明の好ましい態様では、長尺状物3、3を並設して形成された抵抗膜層の前面に図2に示すように、表面層6を形成することができる。表面層6は陶板のような非透水性の化粧材であってもよく、またフェライトタイルのような電波吸収性のものであってもよい。また、誘電体2をコンクリートで構成し、かつ反射層を鉄筋で構成する場合には、鉄筋がコンクリート中に完全に埋没するように、鉄筋の背後にまでコンクリートを打設する、すなわち反射層の背後にも誘電体層を形成するのが好ましい。
【0015】本発明に係る電波吸収体1の好ましい実施態様の一つは、表面層6を有しており、反射層が補強を兼ねて鉄筋で構成されており、かつ反射層の背後にまで延びるコンクリートにより、全体が一体化されているものである。そしてこのような電波吸収体は、常用のコンクリートパネルの製造法により容易に製造することができる。すなわち浅い皿状の型枠内に、先ず陶板やフェライトタイルのような表面材を配置し、その上に長尺状物3を相互に所定の間隔となるように配置する。好ましくは、型枠の大きさに合わせて数本の縦通材に長尺状物3を所定の間隔をおいて横向きに取付けたもの、または長尺状物3を紐で所定の間隔をおいて簾状に編んだものを予め製作しておき、これを表面材の上に設置するようにする。
【0016】このような手法を用いると、長尺状物3を一本ずつ配置するのに比して、作業能率が高く、かつ長尺状物3間の間隔のずれも防止できる。長尺状物3を配設したならば、次にその上方に反射体4として鉄筋を配置する。鉄筋は長尺状物3に平行に、かつ長尺状物3と鉄筋との間の距離が、前述の式で算出される誘電体層の厚さとほぼ等しくなるように配置する。なお、通常は補強用のため、これらの鉄筋に直交する鉄筋も配置する。従って好ましくは、鉄筋を所定の間隔で平行に配置し、かつこれらをこれに直交する方向の鉄筋で結合して一体化した鉄筋組立体を予め製作しておき、これを型枠内に設置するようにする。このようにすると作業能率が高く、かつ鉄筋を所定の位置に正確に配置できる。以上の準備作業が終了したならば、鉄筋が完全に埋没するように型枠にコンクリートを流し込んでよくつき固め、全体が一体化するようにして養生することにより、本発明に係る電波吸収体が得られる。
【0017】
【発明の効果】本発明によれば、電波を効率よく吸収することができる、特性の優れた電波吸収体を提供できる。また、塗布という手段を採用する必要もないため、抵抗皮膜の面抵抗値の制御が容易であり、その結果電波吸収性能のばらつきが小さく、歩留まりがよい。さらには、塗布装置のような高価で大がかりな設備が不要となるので、経済的でより好ましい電波吸収体が得られる。
【出願人】 【識別番号】000005968
【氏名又は名称】三菱化学株式会社
【出願日】 平成10年(1998)1月8日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 曉司
【公開番号】 特開平11−204983
【公開日】 平成11年(1999)7月30日
【出願番号】 特願平10−2172