| 【発明の名称】 |
透明電波吸収体およびその作製方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】橋本 修
【氏名】滝沢 幸治
【氏名】守田 幸信
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| 【要約】 |
【課題】透明であって、窓等に装着されて、電波吸収だけでなく電波反射をも行うことができる、新しい電波吸収体およびその作製方法を提供する。
【解決手段】電波の吸収および反射を行う透明な電波吸収体であって、電波を吸収する透明な高抵抗膜、電波を反射する透明な低抵抗膜、および高抵抗膜と低抵抗膜とを一定の間隔で保持する透明なスペーサーを有し、高抵抗膜側から見込んだ電波インピーダンスと自由空間の電波インピーダンスとが等しい。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 電波の吸収および反射を行う透明な電波吸収体であって、電波を吸収する透明な高抵抗膜、電波を反射する透明な低抵抗膜、および高抵抗膜と低抵抗膜とを一定の間隔で保持する透明なスペーサーを有し、高抵抗膜側から見込んだ電波インピーダンスと自由空間の電波インピーダンスとが略等しいことを特徴とする透明電波吸収体。 【請求項2】 高抵抗膜が保護膜および導電性膜からなる請求項1の透明電波吸収体。 【請求項3】 低抵抗膜が保護膜および導電性膜からなる請求項1ないし2の透明電波吸収体。 【請求項4】 導電性膜が酸化すずまたは酸化インジウムすずである請求項2ないし3の透明電波吸収体。 【請求項5】 低抵抗膜の表面抵抗値が50Ω/□以下である請求項1ないし4の透明電波吸収体。 【請求項6】 光線透過率が約70%以上である請求項1ないし5の透明電波吸収体。 【請求項7】 請求項1ないし6のいずれかの透明電波吸収体を作製する方法であって、表面抵抗値が既知の低抵抗膜を用いた場合の高抵抗膜側から見込んだ電波インピーダンスと自由空間のインピーダンスとが等しくなるように、スペーサーの厚さおよび高抵抗膜の表面抵抗値を選択することを特徴とする透明電波吸収体の作製方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、透明電波吸収体およびその作製方法に関するものである。さらに詳しくは、この発明は、透明であり、室内の窓等に装着されて電波吸収および電波反射を行うことができ、室内無線LANシステム実施時などにおいて好適に用いることのできる、新しい透明電波吸収体およびその作製方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術とその課題】近年、室内における無線LANシステムの研究が盛んに行われており、それにともない壁の反射特性や壁からの反射波を除去するための電波吸収体が盛んに研究されてきている。また、通常、室内には壁ばかりでなく窓も存在するので、窓からの反射を除去するために、窓に装着する透明な電波吸収体の必要性も高まってきている。 【0003】従来より、不透明ではあるが電波反射性能や電波吸収性能を有する電波吸収体も開発されており、この電波吸収体では、電波を反射する低抵抗膜としてその表面抵抗値が略0Ω/□であって電波の完全反射体である金属膜が用いられている。しかしながら、このような従来の電波吸収体では、たとえば、電波の反射体として用いられる不透明な金属体や金属メッキ体若しくはカーボン体に形成された部分的な開口部によって透明性を得るようにしてるため、非開口部が視野の邪魔になるだけでなく、より多くの透明性を得るためには開口部を広げる必要があり、透明性を向上させようとすれば必然的に電波反射性能や電波吸収性能が低下してしまうといった問題があった。 【0004】そこで、この発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、透明であるとともに、高度に電波吸収および電波反射を行うことができる、新しい電波吸収体およびその作製方法を提供することを目的としている。 【0005】 【課題を解決するための手段】この発明は、上記の課題を解決するものとして、電波の吸収および反射を行う透明な電波吸収体であって、電波を吸収する透明な高抵抗膜、電波を反射する透明な低抵抗膜、および高抵抗膜と低抵抗膜とを一定の間隔で保持する透明なスペーサーを有し、高抵抗膜側から見込んだ電波インピーダンスと自由空間の電波インピーダンスとが略等しいことを特徴とする透明電波吸収体(請求項1)を提供する。 【0006】また、この発明は、上記の透明電波吸収体において、高抵抗膜が保護膜および導電性膜からなること(請求項2)や、低抵抗膜が保護膜および導電性膜からなること(請求項3)や、導電性膜が酸化すずまたは酸化インジウムすずであること(請求項4)や、低抵抗膜の表面抵抗値が50Ω/□以下であること(請求項5)や、光線透過率が約70%以上であること(請求項6)等をその態様としている。 【0007】さらにまた、この発明は、上記の透明電波吸収体透明電波吸収体を作製する方法であって、表面抵抗値が既知の低抵抗膜を用いた場合の高抵抗膜側から見込んだ電波インピーダンスと自由空間のインピーダンスとが等しくなるように、スペーサーの厚さおよび高抵抗膜の表面抵抗値を選択することを特徴とする透明電波吸収体の作製方法(請求項7)をも提供する。 【0008】 【発明の実施の形態】以下、添付した図面に沿って実施例を示し、この発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。 【0009】 【実施例】(実施例1)図1は、この発明の一実施例である透明電波吸収体の構成モデルを例示したものである。たとえばこの図1に示したこの発明の透明電波吸収体は、スペーサー(1)、粘着層(2)、高抵抗膜である吸収膜(3)、および低抵抗膜である反射膜(4)を有している。 【0010】吸収膜(3)は、PET(ポリエチレンテレフタレート)保護膜(31)の表面上に導電性のITO(酸化インジウムすず)膜(32)が蒸着されて形成され、反射膜(4)も、同様に、PET保護膜(41)表面上に導電性のITO膜(42)が蒸着されて形成されており、これら吸収膜(3)および反射膜(4)は、それぞれ、高抵抗膜および低抵抗膜として、たとえばPC(ポリカーボネイト)によりなるスペーサー(1)の両側表面に設けられている粘着層(2)を介してスペーサー(1)に圧着されて、このスペーサー(1)によって互いに一定の間隔で保持されている。 【0011】もちろん、スペーサー(1)、粘着層(2)、吸収膜(3)を形成するPET保護膜(31)とITO膜(32)、および反射膜(4)を形成するPET保護膜(41)とITO膜(42)はそれぞれある程度の透明度、たとえば75%以上の透明度を有するものである。このような構成の透明電波吸収体において、吸収膜(3)による電波吸収機能および反射膜(4)による電波反射機能を有するように作製するには、この発明の作製方法を用い、図1の構成を図2に例示したような等価回路に置き換え、図1のa−a’面、つまり高抵抗膜である吸収膜(3)から見込んだ電波インピーダンスを下記の数1を用いて計算し、この電波インピーダンスが自由空間の電波インピーダンスと等しくなるように、スペーサー(1)の厚さd4と吸収膜(3)面の表面抵抗値R1とを選択する。 【0012】 【数1】
【0013】ここでは、まず、図1のa−a’面における反射減衰量が、たとえば60[dB]以上となるスペーサー(1)の厚さd4と吸収膜(3)面の表面抵抗値R1との関係を求める。反射膜(4)は、低抵抗膜であるので、その表面抵抗値R2を1、5、10、20[Ω□]に予め設定しておき、各R2値におけるd4とR1との関係を求めることとする。 【0014】なお、スペーサー(1)、PET保護膜(31)(41)および粘着層(2)の複素比誘電率εr は、それぞれ、2.70−j0.03、3.16−j0.03および2.81−j0.16であり、また、粘着層(2)の膜厚d3およびd5、ITO膜(32)(42)の膜厚d6およびd2、PET保護膜(31)(41)の膜厚d7およびd1は、それぞれ、d3=d5=50[μm]、d6=d2≒0[μm]、d7=d1=125[μm]であるとする。 【0015】図3は、求められたスペーサー(1)の厚さd4と吸収膜(3)の表面抵抗値R1との関係を例示したものである。この図3から、各R2値に対して反射減衰量が60[dB]以上となる厚さd4と表面抵抗値R1との解が存在していることがわかり、これらの解が作製時の選択値として用いられる。ここで、特に室内無線LANに利用が期待されているミリ波帯である60GHz帯に着目し、表面抵抗値R2が5[Ω□]および20[Ω□]である場合について、解析値の一例を以下の表1に示した。 【0016】 【表1】
【0017】この表1より、たとえばR2=5[Ω□]の場合はd4=559[μm]、R1=379[Ω□]という値、またはR2=20[Ω□]の場合nにはd4=600[μm]、R1=424[Ω□]という値に選択して作製すると、吸収膜(3)の電波インピーダンスと自由空間の電波インピーダンスが等しくなり、吸収膜(3)が60GHz帯に対して60[dB]以上の反射減衰量を有する図1のこの発明の透明電波吸収体を得ることができる。 【0018】さらに、表1の作製値をもとに、図1のa−a’面およびb−b’面における反射減衰量の周波数特性を計算して求めた。図4は、この周波数特性を例示したものである。この図4から明らかなように、表面抵抗値が既知である低抵抗膜、すなわち反射膜(4)を用いた場合の、高抵抗膜すなわち吸収膜(3)側から見込んだ電波インピーダンスと、自由空間の電波インピーダンスとが略等しくなるように、高低抵抗膜の表面抵抗値とスペーサーの厚さを決めれば、a−a’面、つまり吸収膜(3)面側から入射した電波の反射減衰量は、反射膜(4)の表面抵抗値R2によらず良好な特性を有していることがわかり、また、b−b’面、つまり反射膜(4)面における反射減衰量も、その表面抵抗値R2が20[Ω□]と大きな値であっても1[dB]以内となっており、金属膜のように表面抵抗値が略0Ω/□でなくても、電波遮蔽体として機能することがわかる。 【0019】(実施例2)図5は、この発明の透明電波吸収体の別の実施例を示したものである。この図5に例示したこの発明の透明電波吸収体においては、PET(ポリエチレンテレフタレート)保護膜(31)表面上に導電性のITO(酸化インジウムすず)膜(32)が蒸着されて形成された高抵抗膜としての透明な吸収膜(3)およびPET保護膜(41)表面上に導電性のITO膜(42)が蒸着されて形成された低抵抗膜としての透明な反射膜(4)は、それぞれ、透明な両面粘着層(5)によって、互いを一定間隔で保持している透明なPCスペーサー(1)の両側表面に圧着されている。 【0020】この両面粘着層(5)は、たとえばPET層(52)の両側に薄いアクリル系の接着層(51)(53)が付着されてなる3層構造を有しており、接着層(51)の厚さ=d5=d7=28[μm]、PET層(52)の厚さ=d4=d8=25[μm]、接着層(53)の厚さ=d3=d9=28[μm]である。他の層は、各々、前述した図1の透明電波吸収体における同一層と同じ厚さを有しており、ITO膜(32)(42)の膜厚=d10=d2≒0[μm]、PET保護膜(31)(41)の膜厚=d11=d1=125[μm]である。 【0021】図6は、このような構造を有する透明電波吸収体の等価回路を例示したものである。この図6の電気的等価回路において、b−b’面から順に各層をk=1,2,・・・,11とし、また各層における厚み、特性インピーダンスおよび伝搬定数をdk ,Zk およびγk とすると、第k層から内側を見込んだ電波インピーダンスZink は次式により導出できる。 【0022】 【数2】
【0023】よって、この数2を用い、a−a’面、つまり高抵抗膜である吸収膜(3)から内側を見込んだ電波インピーダンスZin11および自由空間中の特性インピーダンスZ0 が等しくなるように、スペーサー(1)の厚さd1および吸収膜(3)の表面抵抗値R1とを選択する。ここではa−a’面における反射減衰量が、たとえば60dB以上となるように各値を選択する。 【0024】表2は、反射膜(4)の表面抵抗値R2を10.8±0.1[Ω□]、14.4±0.2[Ω□]、18.5±0.1[Ω□]とし、設計周波数を60GHzとした場合において、選択されたスペーサー(1)の厚さd6および吸収膜(3)の表面抵抗値R1の一例を示したものである。 【0025】 【表2】
【0026】この表2に例示した各選択値を用いて実際に図5の透明電波吸収体を製作し、この透明電波吸収体について、吸収膜(3)面であるa−a’面および反射膜(4)であるb−b’面それぞれから電波を入射した場合における電波の反射減衰量の周波数特性の測定を行った。図7、図8および図9は、それぞれ、R2=10.8±0.1[Ω□]の場合、R2=14.4±0.2[Ω□]の場合、およびR2=18.5±0.1[Ω□]の場合の各透明電波吸収体についての反射減衰量周波数特性を例示したものである。なお、反射減衰量はTE波およびTM波とに分けて測定されている。 【0027】これら図7、図8および図9から明らかなように、高抵抗膜の吸収膜(3)から入射した電波のTE波およびTM波の測定反射減衰量はともに、設計周波数60GHzにおいて32dB〜38dB程度の値を示しており、60GHz±4GHzの周波数範囲では約20dB以上の反射減衰量が得られている。また、低抵抗膜の反射膜(4)から入射した電波のTE波およびTM波それぞれの測定反射減衰量は、50GHz〜62GHzの測定周波数全域にわたって1dB程度となっている。 【0028】したがって、製作された図5のこの発明の透明電波吸収体は、吸収膜(3)が高性能な電波吸収体として機能し、反射膜(4)が高性能な電波遮蔽(反射)体として機能して、非常に優れた電波吸収性能および電波反射性能を有していることがわかる。さらにまた、R2=10.8±0.1[Ω□]の場合の透明電波吸収体について、60GHzにおける吸収膜(3)側から入射した電波のバイスタティック斜入射特性を測定した。図10は、その測定結果を例示したものである。 【0029】この図10に例示したように、この発明の透明電波吸収体は、入射角度が30度以内において20dB以上の反射減衰量が得られており、斜入射電波に対する電波吸収も充分に行うことができ、広帯域特性とともに、ある程度の広角度特性をも有している。また、この透明電波吸収体の吸収膜(3)側から入射した光線の設計周波数60GHzにおける透過率は、R2=10.8±0.1[Ω□]の場合、R2=14.4±0.2[Ω□]の場合、およびR2=18.5±0.1[Ω□]の場合それぞれにおいて、−25.03dB、−23.13dBおよび−22.63dBとなり、いずれも約77.5%以上の全光線透過率が得られ、充分な透明度を有している。 【0030】このことから、吸収膜(3)側から入射した電波は、反射膜(4)で反射され外部に漏洩せずに、吸収膜(3)によって熱に変換され、そのエネルギーの大部分が吸収されていることがわかる。以上のように、この発明の作製方法によって、吸収膜(3)、つまり高抵抗膜側から見込んだ電波インピーダンスと自由空間のインピーダンスとが略等しくなるように選択されたスペーサー(1)の厚さと高抵抗膜である吸収膜(3)の表面抵抗値R1とを有するこの発明の透明電波吸収体は、吸収膜(3)により入射波を吸収するとともに、反射膜(4)により反射膜(4)側から入射した電波を反射して遮蔽することができる。 【0031】すなわち、高抵抗膜側から見込んだ電波インピーダンスと自由空間のインピーダンスとが略等しくなるように、その構成、特性値および厚さを選択することにより、広い範囲の周波数帯、たとえばMHz帯からGHz帯において、電波反射および電波吸収を高精度に行うことができる透明電波吸収体を実現できるようになる。 【0032】もちろん、この発明の透明電波吸収体では、前述のようにその全ての構成膜および層が透明であり、たとえば保護膜が上述したポリエチレンテレフタレート以外の透明な高分子樹脂層やガラス層であっても良く、スペーサーも透明であればポリカーボネート以外の高分子樹脂層やガラスだけでなく、油のような液体や空気のような気体であってもよい。同様に、粘着層も構造体の貼合強度を維持できれば、既存のあらゆる粘着、接着技術を用いることができる。さらにまた、上述したように各々の層が多層構造であっても何ら問題はない。 【0033】高抵抗膜と低抵抗膜も、既存のあらゆる透明導電膜が使用可能であるが、表面抵抗値の安定性とこの発明の高度な透明性の発現、市場での得やすさならびに経済性の点から、酸化すずまたは酸化インジュウムすずがたとえば推薦される。このように、この発明の透明電波吸収体は、その全ての構成膜および層が透明であるので、透明体であり、窓に装着しても光の透過を防ぐことなく、電波吸収および電波反射・遮蔽を行うことができる。また、室内における窓以外の場所にも設置することができることは言うまでもない。 【0034】この発明は以上の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。 【0035】 【発明の効果】以上詳しく説明した通り、この発明によって、一方からは電波吸収体として機能し、且つ、その反対方向からは電波遮蔽体として機能し、MHz帯からGHz帯において有効に用いることが可能であり、たとえば室内無線LANシステムに利用され得るミリ波帯、特に60GHz帯や94GHz帯、における電波吸収および反射による電波遮蔽を効果的に行うことができ、従来の電波吸収体では不可能であった、たとえば約70%以上の光線透過率を有する連続した透明であり、窓等に装着することのできる、新しい透明電波吸収体およびその作製方法が提供される。
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| 【出願人】 |
【識別番号】592111986 【氏名又は名称】王子トービ株式会社
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| 【出願日】 |
平成9年(1997)11月14日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】西澤 利夫
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| 【公開番号】 |
特開平11−150393 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)6月2日 |
| 【出願番号】 |
特願平9−313896 |
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