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【発明の名称】 電磁シールド工法
【発明者】 【氏名】岡田 慎一郎

【氏名】坂本 新

【氏名】吉田 克雄

【要約】 【課題】到来電波の建物内への侵入防止および建物内の電波の外部への漏洩防止を簡単かつ確実に行うとともに、電磁シールドの容易な施工を可能とする。

【解決手段】PC版1は、表裏面およびその周囲面を含む全面に電気的導通部を形成するように、このPC版1の内部に炭素繊維で形成したメッシュ2をコンクリート板の面方向に沿って埋設すると共に、更に、導電性材料、例えば炭素繊維のチョップ3をPC版1全体として導電性を帯びるような密度でほぼ均一にその内部に混入する。PC版1を相互に電気的に接続しつつ床スラブ20の周縁部を取り囲み、このデッキプレート21に接触して床スラブ20周縁に配置されるコンクリートの打止め用金物22とPC版1の裏面との間に弾力性のある導電性材料4を介在して、PC版1と上記デッキプレート21とを電気的に接続する
【特許請求の範囲】
【請求項1】 コンクリート板の表裏面およびその周囲面を含む全面に電気的導通部を形成するように、コンクリート中に導電性材料で形成したメッシュを埋設するとともに、導電性材料で形成したチョップを混入して形成したPC版を用い、このPC版を、デッキプレートを備えた床スラブに隣接配置し、このデッキプレートの周縁に配置されるコンクリートの打止め用金物と上記PC版との間に弾力性のある導電性材料を介設して、該PC版と上記デッキプレートとを電気的に接続したことを特徴とする電磁シールド工法。
【請求項2】 コンクリート板の表裏面およびその周囲面を含む全面に電気的導通部を形成するように、コンクリート中に導電性材料で形成したメッシュを埋設するとともに、導電性材料で形成したチョップを混入して形成したPC版を用い、このPC版を、床スラブが施工されるデッキプレートと電気的に接続されたS造梁に隣接配置し、このS造梁と上記PC版との間に、これら両者間の隙間を埋めるように弾力性のある導電性材料を介設して、S造梁とPC版とを電気的に接続したことを特徴とする電磁シールド工法。
【請求項3】 上記請求項1または2に記載のPC版は、金属製窓枠の外回りに、上記コンクリートを打設して成形される金属製窓枠一体型のPC版であることを特徴とする電磁シールド工法。
【請求項4】 上記請求項1または2に記載のPC版は、窓枠取付け用の開口部を有し、この開口部の周縁部に取付け金具を介して金属製窓枠を後付けし、これら金属製窓枠と開口部の周縁部との間に、導電性材料で形成したチョップを混入したモルタル・コンクリートを充填して形成されることを特徴とする電磁シールド工法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電磁シールド効果を発揮するPC(プレキャストコンクリート)版を用いて電磁シールド空間を構築するようにした電磁シールド工法に関する。
【0002】
【従来の技術】高度情報化が進んだ現在、無線利用が飛躍的に増加し、オフィスビル内に電波が侵入してコンピュータを始めとする電子機器に誤動作などの悪影響を及ぼしたり、オフィスビル内でのOA機器から情報が電波としてビル外へ漏洩し、これにより情報が盗まれるおそれがあるといった問題が発生しており、これらに対する対策が重要となっている。
【0003】従来、この種の電波障害対策として、PC版を利用してオフィスビル全体を電磁シールドする電磁シールド工法や、躯体コンクリートを利用した形態の電磁シールド工法が考えられている。このうち、PC版を利用した電磁シールド工法は、例えば特開平6−330573号公報や特開平5−21983号公報に見られるように、PC版中に金属メッシュ(または鉄筋)を挿入し、PC版とPC版との接合を、これらの隣接するPC版の導電性メッシュ同志を電気的に接続することによっている。また、躯体コンクリートを利用した電磁シールド工法は、例えば特開平5−44358号公報に見られるように、室内側に全てシールド層を構築して各階毎にシールドすることによっている。
【0004】また、近年の多層階ビルでは外壁にカーテンウオールが多用されるが、このカーテンウオールと床スラブとの間には風圧等の外力による位置変位を考慮して適宜隙間を設け、建て込み完了後にこの隙間部分がラスなどの柔軟材料で充填されるようになったものがある。このように外壁と床スラブとの間に隙間が存在すると、外壁および床スラブが電磁シールドされている場合にも、これら外壁と床スラブとの取り合い部分から上下階に電波が漏洩してしまう。
【0005】このため、実公平5−34159号公報に見られるように、床版型枠と外壁の胴縁との間を覆うように電磁遮蔽プレートとなる床版端部型枠鋼板を設けたり、特公平7−33693号公報に見られるように、床スラブの電磁遮蔽層と外壁の電磁遮蔽層とをエキスパンドメタルにより接続するようにしたりして、電波の漏洩を防止するようにしたものが提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のPC版を利用した電磁シールド工法の場合、内部に挿入される金属メッシュ又は鉄筋メッシュの密度を高めることには限界があり、例えば鉄筋メッシュでは補強筋として望ましい設定にしておく必要があることから、到来する電波に対して十分なシールド性能を発揮させることができず、建物内への電波の侵入を防ぎきれない。また、PC版を利用してオフィスビル全体を電磁シールドする際には、PC版中に打ち込んだ金属メッシュ(または鉄筋)を、例えば一本毎に隣接するPC版のメッシュ(または鉄筋)と電気的に接続する必要があるため、大変な労力とコストがかかっている。
【0007】一方、躯体コンクリートを利用した電磁シールド工法において、特定のフロアー全体を電磁シールドする場合には、室内仕上げとは別に電磁シールド用の下地を作り、そこに導電性のシールド層を設けることとなるため、これも労力とコストがかかるとともに、室内のスペースが狭くなってしまう。
【0008】また、外壁と床スラブとの取り合い部分の電波の漏洩を防止するために、床版型枠と外壁の胴縁との間を床版端部型枠鋼板で覆った場合(実公平5−34159号公報)は、この床版端部型枠鋼板が鋼板であるため柔軟性に乏しく、外力の入力により変形して隙間が生じてしまうおそれがある。
【0009】一方、床スラブの電磁遮蔽層と外壁の電磁遮蔽層とをエキスパンドメタルで接続する場合(特公平7−33693号公報)は、このエキスパンドメタル一側部を床スラブ周縁に配置されるコンクリートの打止め用金物に引っ掛けて固定し、他側部を外壁の電磁遮断層に接触させた後に、隙間を岩綿で封止するようになっているため、エキスパンドメタルを所定形状に折曲する加工作業および岩綿の吹付け作業を必要とする一方で、電磁遮断層との接触不良が生じやすいという課題があった。
【0010】そこで、本発明は、上記課題を解決し、到来電波の建物内への侵入防止および建物内の電波の外部への漏洩防止を確実に達成することができるとともに、電磁シールドの容易な施工を可能とする電磁シールド工法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために請求項1にかかる電磁シールド工法は、コンクリート板の表裏面およびその周囲面を含む全面に電気的導通部を形成するように、コンクリート中に導電性材料で形成したメッシュを埋設するとともに、導電性材料で形成したチョップを混入して形成したPC版を用い、このPC版を、デッキプレートを備えた床スラブに隣接配置し、このデッキプレートの周縁に配置されるコンクリートの打止め用金物と上記PC版との間に弾力性のある導電性材料を介設して、該PC版と上記デッキプレートとを電気的に接続したことを特徴とする。
【0012】また、請求項2にかかる電磁シールド工法は、コンクリート板の表裏面およびその周囲面を含む全面に電気的導通部を形成するように、コンクリート中に導電性材料で形成したメッシュを埋設するとともに、導電性材料で形成したチョップを混入して形成したPC版を用い、このPC版を、床スラブが施工されるデッキプレートと電気的に接続されたS造梁に隣接配置し、このS造梁と上記PC版との間に、これら両者間の隙間を埋めるように弾力性のある導電性材料を介設して、S造梁とPC版とを電気的に接続したことを特徴とする。
【0013】更に、請求項3にかかる電磁シールド工法は、上記請求項1または2に記載のPC版は、金属製窓枠の外回りに、上記コンクリートを打設して成形される金属製窓枠一体型のPC版であることを特徴とする。
【0014】更にまた、請求項4にかかる電磁シールド工法は、上記請求項1または2に記載のPC版は、窓枠取付け用の開口部を有し、この開口部の周縁部に取付け金具を介して金属製窓枠を後付けし、これら金属製窓枠と開口部の周縁部との間に、導電性材料で形成したチョップを混入したモルタル・コンクリートを充填して形成されることを特徴とする。
【0015】かかる電磁シールド工法の作用を各請求項毎に以下述べる。
【0016】請求項1の電磁シールド工法は、上記PC版が、コンクリート中に導電性材料で形成したメッシュを埋設するとともに、導電性材料で形成したチョップを混入して形成されているので、メッシュによってチョップの混入分布の不均一性等を補い、かつ、チョップによってメッシュのピッチなどに左右されずに広範な周波数帯域で良好な電磁シールド性能を確保することができる。また、PC版は導電性材料で形成したチョップが混入されているので、その表裏面および周囲面を含む全面が導電性を有することとなり、電気的な接続のために導電性材料で形成したメッシュをPC版の外に引き出す必要がない。
【0017】そしてこのPC版を、デッキプレートを備えた床スラブに隣接配置することにより、床スラブはこのデッキプレートによって電磁シールドされ、かつ、この床スラブの近傍が上記PC版で囲まれることにより、このPC版で囲んだ部分が電磁シールドエリアとして機能する。そして、上記床スラブと上記PC版との取り合い部分には弾力性のある導電性材料を適用し、この導電性材料を、デッキプレート周縁に配置されるコンクリートの打止め用金物と上記PC版との間に介設したので、この導電性材料によって床スラブとPC版との間の隙間を封止しつつ、打止め用金物、ひいてはデッキプレートとPC版とを電気的に接続することができ、この隙間から電波が漏洩するのを防止することができる。そしてこれらPC版の設置と弾力性のある導電性材料の組付けのみで、確実な電磁シールド空間を的確に構築することができる。
【0018】また、このようにつなぎ材として弾力性のある導電性材料を用いたので、PC版間の隙間形状に柔軟に対応して変形させることができてPC版への接触面積が増大し、PC版相互の接触抵抗が著しく小さくなって導電状態が良くなり、優れた電磁シールド性能を得ることができる。すなわち、PC版の建て込み時には、導電性材料を目地部に詰め込むだけでよいので、簡単かつローコストの電磁シールド工法となる。また、この導電性材料は弾力性を備えているため、強風や地震などの外力による周囲の位置変位によってこの隙間が変化した場合にも、これに容易に追従して変形および復元を繰り返すため、この隙間の電磁シールド性が損なわれることもない。
【0019】また、請求項2の電磁シールド工法は、請求項1と同様にPC版が、広範な周波数帯域で良好な電磁シールド性能を発揮するとともに、その表裏面および周囲面を含む全面が導電性を有するので、電気的なつなぎのために導電性材料で形成したメッシュをPC版の外に引き出す必要はない。
【0020】そしてこのPC版を、床スラブが施工されるデッキプレートと電気的に接続されたS造梁に隣接配置することにより、上記請求項1と同様にPC版で囲んだ部分が電磁シールドエリアとして機能する。そして、床スラブとPC版との電気的導通については、床スラブのデッキプレートと電気的に導通するS造梁と上記PC版との間に、これら両者間の隙間を埋めるように上述の弾力性のある導電性材料を介設したので、この隙間が該導電性材料で封止されて電波の漏洩を防止することができる。そしてこれらPC版の設置と弾力性のある導電性材料の組付けのみで、確実な電磁シールド空間を的確に構築することができる。
【0021】また請求項1と同様に、つなぎ材として弾力性のある導電性材料を用いたので、PC版間の隙間形状に柔軟に対応して変形させることができて優れた電磁シールド性能を得ることができるとともに、PC版の建て込み時には、導電性材料を目地部に詰め込むだけでよいので、簡単かつローコストの電磁シールド工法となる。また、強風や地震などの外力により周囲に位置変位が生じてこの隙間が変化した場合にも、導電性材料がこれに容易に追従するので、この隙間の電磁シールド性が損なわれることはない。
【0022】更に、請求項3の電磁シールド工法は、上記PC版として、金属製窓枠の外回りに、上記コンクリートを打設して成形される金属製窓枠一体型のものとしていて、金属製窓枠がPC版と一体化されるため、該金属製窓枠はその全周でPC版と電気的に導通される。このため、この金属製窓枠に電磁シールド性能を有するガラスやパネルを嵌め込むのみで、このガラス等を簡単にPC版と電気的に導通させることができる。また、上記金属製窓枠はこれの全周がPC版と電気的に接続されるため、接触抵抗が著しく小さくなって良好な導電状態を確保でき、優れた電磁シールド性能を得ることができる。そしてこのような窓部を有するPC版を適用することにより、電磁シールド性能を発揮する窓を備えた躯体部分を容易に構築することができる。
【0023】更にまた、請求項4の電磁シールド工法は、上記PC版が窓枠取付け用の開口部を有していて、この開口部に後付けにより金属製窓枠を取り付ける場合で、開口部の周縁部に取付け金具を介して取り付けた金属製窓枠と該開口部の周縁部との間に、導電性材料で形成したチョップを混入したモルタル・コンクリートを充填することにより、このチョップを混入したモルタル・コンクリートを介して金属製窓枠とPC版とをその全周で電気的に接続することができる。このため、上記請求項3と同様に、この金属製窓枠に電磁シールド性能を有するガラスやパネルを取り付けるのみで、このガラス等を簡単にPC版と電気的に導通させることができるとともに、良好な導通状態を確保できて優れた電磁シールド性能を得ることができる。そしてこのような窓部を有するPC版を適用することにより、電磁シールド性能を発揮する窓を備えた躯体部分を容易に構築することができる。
【0024】本願において、モルタルの語とコンクリートの語とは適宜に読み替えでき、いずれを用いてもよいことはもちろんである。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1から図3は本発明の電磁シールド工法の実施形態を示し、図1はこの電磁シールド工法に用いられるPC版の接続状態を示す断面平面図、図2はこのPC版の他の接続状態を示す拡大断面側面図、図3は建物躯体の要部断面側面図である。
【0026】図1,図2に示すPC版1は、オフィスビル等の建物の外壁部における仕上げ材又は仕上げの下地材として適用され、電磁シールド性能を有するコンクリート構造体として構成され、該PC版1が本発明の電磁シールド工法に用いられる。上記PC版1は、表裏面およびその周囲面を含む全面が導電性を有するように、あるいは少なくともPC版1の周囲に電気的導通部を形成するように、このPC版1の内部に、長尺の導電性材料、例えば炭素繊維で形成したメッシュ2をコンクリート板の面方向に沿って埋設すると共に、更に、導電性材料、例えば炭素繊維のチョップ3をPC版1全体として導電性を帯びるような密度でほぼ均一にその内部に混入していて、該PC版1はその内部および表面において全体的に導電性を有する。
【0027】導電性材料としては上記炭素繊維の他に、例えば鉄系材料やステンレス、亜鉛、銅、アルミなどの周知の導電性を有する金属系材料や、このような導電性を有する金属でメッキを施した繊維状部材を含む。特にチョップ3については、太さが数ミクロンから数ミリ、殊に直径0.01mm〜0.1mm程度が好ましく、長さは数センチ以下、殊に1mm〜10mm程度が好ましい。さらにチョップ2の形態としては、繊維状物や片状物、さらには粉体状のものを含む。また導電性材料で形成したメッシュ2はPC版1の端面で終端させてある。そして、上記チョップ3は、上記PC版1の表裏面および周囲面を含む全面が導電性を有し、あるいは少なくともこのPC版1の周囲に電気的導通部が形成されるように、このPC版1の内部に、例えば炭素繊維の導電性材料で形成されるチョップ3を、PC版1全体として導電性を帯びるような密度(体積比で1%以上が望ましい)で、ほぼ均一にその内部に混入してある。
【0028】そして、上記PC版1どうしを電気的に接続するには、図1,図2に示したようにコンクリート面どうしの防水目地の奥行き方向に5cm程度、或いはそれ以上、双方のコンクリート面が電気的導通にかかわるようにPC版1の相互間に弾力性のある導電性材料4を充填する。この弾力性のある導電性材料4としては、炭素繊維やステンレススチール等の多数の導電性繊維を粗く集合して柔軟な綿様に形成した例えばフェルト状の綿様導電材や、導電性シリコンゴム等を用いることができる。図2の上下方向に接続されるPC版1相互のつなぎでは、この目地部分の内外方向一側に上記弾力性のある導電性材料4を詰込むとともに、他側に紐状炭素繊維5を詰込むようになっている。
【0029】このようにPC版1どうしの間に電気的つなぎとして弾力性のある導電性材料4を介在させると、その弾力性により導電性材料4がPC版1に圧接し、PC版1相互の接触抵抗が小さくなって導電状態が良くなり、優れた電磁シールド性能を得ることができる。しかも、PC版1を取り付けた状態で、導電性材料4を目地部にシール材のバックアップ材として詰め込むだけでよいので、壁面(或いは、床や天井も可能)全体の電磁シールドを、簡単にしかもローコストで行うことができる。ここでいう壁面は、外壁及び内壁のいずれであってもよい。
【0030】図3は上記PC版1を用いて施工した電磁シールド工法の一実施形態を示す。即ち、この実施形態ではPC版1を相互に隣接配置して建物の所要エリアを取り囲み、さらにPC版1相互間に弾力性のある導電性材料4を挿入することによりPC版1相互を電気的に接続する。このようにPC版1を相互に電気的に接続しつつ、これらPC版1でデッキプレート21を備えた床スラブ20の周縁部を取り囲むとともに、このデッキプレート21に接触して床スラブ20周縁に配置されるコンクリートの打止め用金物22と上記PC版1の裏面との間に、同様にして弾力性のある導電性材料4を詰め込むようにして介在させて、該PC版1と上記デッキプレート21とを電気的に接続するようになっている。
【0031】上記床スラブ20はこれのコンクリートを打設するにあたって、この床スラブ20の下面にデッキプレート21が敷設されるとともに、このデッキプレート21の周縁部に打止め用金物22が結合されて型枠状に形成され、この型枠内に上記コンクリートが打設されて床スラブ20が構築される。上記デッキプレート21および打止め用金物22は鋼板で形成されるため、床スラブ20に電磁シールド機能が備わり、上下階間の電波漏洩を防止することができる。
【0032】従って、本実施形態の電磁シールド工法にあっては、上記床スラブ20と上記PC版1との取り合い部分には、弾力性のある導電性材料4を床スラブ20周縁に配置されるコンクリートの打止め用金物22と上記PC版1の裏面との間に詰め込んだので、床スラブ20とPC版1との間の隙間を閉止しつつ、打止め用金物22とPC版1とを電気的に接続して、この隙間から電波が漏洩するのを防止することができる。このとき、上記打止め用金物22は上記デッキプレート21に接触しているため、このデッキプレート21と上記PC版1とは電気的に接続され、PC版1および床スラブ20で囲まれるエリアが完全な電磁シールド空間となる。
【0033】また、上記床スラブ20と上記PC版1との間の隙間を閉止する導電性材料4は弾力性を備えているため、強風や地震などの外力により建物躯体に位置変位が発生してこの隙間が変化した場合にも、これに容易に追従して変形および復元を繰り返すことができるため、この隙間の電磁シールド性が損なわれるのを防止することができる。このとき、上記PC版1は、図1,図2に示したようにコンクリート中に導電性材料で形成したメッシュ2を埋設するとともに、導電性材料で形成したチョップ3を混入して形成したので、メッシュ2によってチョップ3の混入分布の不均一性等を補い、かつ、チョップ3によってメッシュ2のピッチなどに左右されずに広範な周波数帯域で良好な電磁シールド性能を確保することができる。更に、PC版1は導電性材料で形成したチョップ3が混入されているので、その表裏面および周囲面を含む全面が導電性を有することとなり、電気的なつなぎのために導電性材料で形成したメッシュ2をPC版1の外に引き出す必要はない。従って、PC版1どうしを電気的に接続する施工作業を容易化できる。
【0034】また、この実施形態では上記床スラブ20は、H型鋼で形成されるS造梁23によって支持されるようになっており、このS造梁23の上フランジ23aはデッキプレート21と接触した状態にある。そして、床スラブ20の端部に位置するS造梁23は、下フランジ23bと外壁となる上記PC版1との間が、上記実施形態で示したと同様の弾力性のある導電性材料4によって埋められるようになっている。この実施形態では上記S造梁23の下フランジ23bにアングル材24が溶接されて、このアングル材24の片面がPC版1と小さな間隙をもって平行配置されるようになっている。そして、この間隙部分にはこれを埋めるように上記導電性材料4が詰め込まれる。また、上記S造梁23からPC版1に亘って、岩綿などの耐火被覆層25が吹き付けられる。
【0035】従って、この実施形態では床スラブ20の端部に位置するS造梁23の下端部と上記PC版1の裏面との間が導電性材料4で埋められるので、この導電性材料4によって電波が漏洩するのを防止できる。このとき、上記デッキプレート21は上記S造梁23および上記導電性材料4を介してPC版1に電気的に接続され、電磁シールド機能を備えることができる。また、上記S造梁23の外側に耐火被覆層25を形成する場合にも、このS造梁23とPC版1との間の隙間を埋めた上記導電性材料4を下地として、耐火被覆層25を連続して形成することができる。また、この実施形態にあっても上記導電性材料4が弾力性を備えているため、これを挿入した隙間の広さが外力により変化した場合にもこれに追従して、隙間の電磁シールド性は損なわれない。
【0036】ところで、本実施形態では床スラブ20とPC版1との取り合い部分の電波漏洩を防止する構造として、打止め用金物22とPC版1との間を導電性材料4で埋めた場合と、S造梁23の下端部とPC版1との間を導電性材料4で埋めた場合との二重構造としたが、このように両方のシールド構造を用いることなく、いずれか一方でもよい。
【0037】また、上記S造梁23とPC版1との間の間隔が大きく、アングル材24等の固定式スペーサでは十分でない場合には、図4に示すようにS造梁23の下フランジ23bに多数の鉄筋棒26を櫛歯状に溶接し、この鉄筋棒26の上側に導電性材料で形成される網状ラス27を敷設して、この網状ラス27をPC版1の裏面に接触させてもよい。この場合、網状ラス27が下地材となって耐火被覆層25が吹き付けられる。
【0038】図5〜図7は他の実施形態を示し、上記実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べる。この実施形態ではPC版に金属製窓枠を一体に組み込むようにしたもので、図5は正面図、図6は図5中A−A線断面図、図7はシールドガラスの取付け状態を示す要部拡大断面図である。
【0039】即ち、この実施形態のPC版1aは、図5,図6に示すようにアルミニウムなどの金属製窓枠6を図外の型枠にセットして、これの外回りに導電性材料で形成したメッシュ2を配置するとともに、チョップ3をほぼ均一に混入(容積比で0.8%以上)したコンクリートを打設して成型したものである。従って、このPC版1aでは該金属製窓枠6を一体化し、その表裏面およびその周囲面を含む全面には、上記実施形態と同様に電気的導通部が設けられることになる。
【0040】そして、上記金属製窓枠6には図7に示すように電磁シールド性能を有するガラス7が取り付けられる。該金属製窓枠6は建物内方に向けて開口幅が大きくなるように段差部6aを設けて拡幅棚6bが形成され、この拡幅棚6bの内方側に止め板8を取付け、この止め板8と段差部6aとの間に形成される凹部に上記ガラス7を嵌め込むようになっている。そして、ガラス7と凹部との隙間には、上記PC版1を相互に接続する目地部分に用いたと同様の弾力性をもった導電性材料4が充填される。また、シールドガラス7の凹部に嵌合される周縁部には、銅板9が巻かれ、この銅板9が導電性材料4に接触するようになっている。
【0041】図8は他の実施形態を示す要部断面図で、上記各実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べる。この実施形態では金属製窓枠が後付けによりPC版に取り付けられるようになっている。
【0042】即ち、この実施形態ではPC版1bに窓枠取付け用の開口部30を製作段階で予め形成しておき、その後に開口部30に金属製窓枠6を取り付けるようになっている。この開口部30の内周部には予め取付け金具31を埋設しておき、この取付け金具31に金属製窓枠6を溶接により取付け、その後これら金属製窓枠6と開口部30の周縁部との間の隙間に、導電性材料で形成したチョップ3を所定割合で均一に混入したモルタルまたはコンクリート32を充填する。
【0043】従って、この実施形態ではチョップ3が混入したモルタル等32を介して金属製窓枠6とPC版1bとをその全周で電気的に接続することができる。このため、上記図7の実施形態と同様にこの金属製窓枠6に電磁シールド性能を有するガラス7を取り付けるのみで、このガラス7を簡単にPC版1bと電気的に導通させることができる。また、上記金属製窓枠6はこれの全周がPC版1bと電気的に接続されるため、その接触面積を増大して優れた電磁シールド性能を得ることができる。勿論、この実施形態のPC版1bは、上記各実施形態のPC版1,1aと同様に、コンクリート内に上記メッシュ2が埋設されるとともに、チョップ3が混入されている。また、金属製窓枠6と開口部30との間のモルタル等32の充填部分に、併せてメッシュを取り付けておいてもよい。
【0044】図9,図10はシールド性能の測定結果をそれぞれ示す特性図で、図9はPC版1,1a,1b間の目地部分に上記弾力性のある導電性材料4を詰め込んだ場合における測定結果であり、また図10は上記金属製窓枠6に上記ガラス7を嵌め込んだ状態でシールド性能測定を行った結果である。これら測定試験は、図11に示す実験室10で行った。この実験室10は高さ3mで奥行きがそれぞれ4mの送信室11と受信室12とを備え、送信室11は電磁シールドルームとして構成される一方、受信室12は半無響室として構成される。送信室11と受信室12との間は、試料としてのPC版取付け用の開口部13が形成された隔壁14で画成される。送信室11の送信アンテナ15および受信室12の受信アンテナ16に、ログペリオディックアンテナやダブルリジッドアンテナが用いられ、送受信機としてトラッキングゼネレータ付きスペクトラルアナライザが用いられる。なお、17は吸収体である。そして、上記開口部13に亜鉛引き鉄板の治具を介してPC版を取り付けてシールド性能測定が行われ、上記図11に示す実験室10で試料取付け前後の電界強度レベルの差から挿入損失を求める方法で行われた。図9の測定結果では、500MHz以下で30dBを下回っているが、これは試験片への炭素繊維の混入率を0.8%とした影響であると考えられ、炭素繊維の混入率を上げることで十分なシールド効果を得ることができる。
【0045】以上各実施形態で説明した本発明の電磁シールド工法では、■PC版単版部分のシールド性能は、炭素繊維チョップの混入率を上げることによりそのシールド性能を上げることができる。そして、試験した結果からチョップを体積比で1%位混入することが、目地,窓部分とのバランスから妥当であると言える。
【0046】■PC版のコンクリート打ち放し部分の導電性をそのまま利用し、目地に柔軟性のある導電性の材料を詰めることでPC版相互のシールド性能を確保でき、きわめて簡単に外壁全面のシールド壁を構成できる。
【0047】■窓部分についても金属製窓枠をコンクリート打込み時にセットするだけで、コンクリート面との導電性を確保できてシールド性能が得られる。従来の工法のように、金属系の材料とのシールを必要としないぶん簡略化できる電磁シールド工法となる。
【0048】■PC版を利用しての外壁面のシールドが可能であり、各階のデッキプレートなどを利用して建物全館あるいは特定階の電磁シールドを簡単に構築することができる。
【0049】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、次のような優れた効果が得られる。
【0050】(1)請求項1の電磁シールド工法にあっては、メッシュによってチョップの混入分布の不均一性等を補い、かつ、チョップによってメッシュのピッチなどに左右されずに広範な周波数帯域で良好な電磁シールド性能を確保することができる。また、PC版はその表裏面および周囲面を含む全面が導電性を有することとなり、電気的な接続のために導電性材料で形成したメッシュをPC版の外に引き出す必要がない。
【0051】そしてこのPC版を、デッキプレートを備えた床スラブに隣接配置することにより、床スラブはこのデッキプレートによって電磁シールドされ、かつ、この床スラブの近傍が上記PC版で囲まれることにより、このPC版で囲んだ部分を電磁シールドエリアとして機能させることができる。そして、上記床スラブと上記PC版との取り合い部分については、導電性材料によって床スラブとPC版との間の隙間を封止しつつ、打止め用金物、ひいてはデッキプレートとPC版とを電気的に接続することができ、この隙間から電波が漏洩するのを防止することができる。そしてこれらPC版の設置と弾力性のある導電性材料の組付けのみで、確実な電磁シールド空間を的確に構築することができる。
【0052】また、このようにつなぎ材として弾力性のある導電性材料を用いたので、優れた電磁シールド性能を得ることができるとともに、PC版の建て込み時には、導電性材料を目地部に詰め込むだけでよいので、簡単かつローコストの電磁シールド工法となる。また、この導電性材料は、強風や地震などの外力による周囲の位置変位によってこの隙間が変化した場合にも、これに容易に追従して変形および復元を繰り返すため、この隙間の電磁シールド機能を良好に維持することができる。
【0053】(2)請求項2の電磁シールド工法にあっては、請求項1と同様にPC版が、広範な周波数帯域で良好な電磁シールド性能を発揮するとともに、その表裏面および周囲面を含む全面が導電性を有するので、電気的なつなぎのために導電性材料で形成したメッシュをPC版の外に引き出す必要はない。
【0054】そしてこのPC版を、床スラブが施工されるデッキプレートと電気的に接続されたS造梁に隣接配置することにより、上記請求項1と同様にPC版で囲んだ部分が電磁シールドエリアとして機能させることができる。そして、床スラブとPC版との電気的導通については、床スラブのデッキプレートと電気的に導通するS造梁と上記PC版との間に、これら両者間の隙間を埋めるように上述の弾力性のある導電性材料を介設したので、この隙間が該導電性材料で封止されて電波の漏洩を防止することができる。そしてこれらPC版の設置と弾力性のある導電性材料の組付けのみで、確実な電磁シールド空間を的確に構築することができる。
【0055】また請求項1と同様に、つなぎ材として弾力性のある導電性材料を用いたので、優れた電磁シールド性能を得ることができるとともに、PC版の建て込み時には、導電性材料を目地部に詰め込むだけでよいので、簡単かつローコストの電磁シールド工法となる。また、強風や地震などの外力により周囲に位置変位が生じてこの隙間が変化した場合にも、導電性材料がこれに容易に追従するので、この隙間の電磁シールド機能を良好に維持することができる。
【0056】(3)請求項3の電磁シールド工法にあっては、金属製窓枠をPC版と一体化して、該金属製窓枠をその全周でPC版と電気的に導通させることができる。このため、この金属製窓枠に電磁シールド性能を有するガラスやパネルを嵌め込むのみで、このガラス等を簡単にPC版と電気的に導通させることができる。また、上記金属製窓枠はこれの全周がPC版と電気的に接続されるため、優れた電磁シールド性能を得ることができる。そしてこのような窓部を有するPC版を適用することにより、電磁シールド性能を発揮する窓を備えた躯体部分を容易に構築することができる。
【0057】(4)請求項4の電磁シールド工法にあっては、チョップを混入したモルタル・コンクリートを介して金属製窓枠とPC版とをその全周で電気的に接続することができる。このため、上記請求項3と同様に、この金属製窓枠に電磁シールド性能を有するガラスやパネルを取り付けるのみで、このガラス等を簡単にPC版と電気的に導通させることができるとともに、良好な導通状態を確保できて優れた電磁シールド性能を得ることができる。そしてこのような窓部を有するPC版を適用することにより、電磁シールド性能を発揮する窓を備えた躯体部分を容易に構築することができる。
【出願人】 【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
【出願日】 平成9年(1997)10月2日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】一色 健輔 (外2名)
【公開番号】 特開平11−112190
【公開日】 平成11年(1999)4月23日
【出願番号】 特願平9−269958