トップ :: G 物理学 :: G02 光学




【発明の名称】 プラスチック液晶表示素子用基板とその製造方法
【発明者】 【氏名】石破 彰浩

【氏名】勝村 明文

【要約】 【課題】光学特性、耐熱性、機械的強度に優れたプラスチック液晶表示素子用基板を提供すること。

【解決手段】厚さ150〜300μmのアモルファスポリオレフィンフィルムの片面もしくは両面に、厚さ25〜100μmのポリエーテルスルホンフィルムを、透明な接着剤で貼り合わせてなり、全体の厚さが200〜500μmであるプラスチック液晶表示素子用基板。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 厚さ150〜300μmのアモルファスポリオレフィンフィルムの片面もしくは両面に、厚さ25〜100μmのポリエーテルスルホンフィルムを、透明な接着剤で貼り合わせてなり、全体の厚さが200〜500μmであることを特徴とするプラスチック液晶表示素子用基板。
【請求項2】 少なくとも一方の、アモルファスポリオレフィンフィルムとポリエーテルスルホンフィルムの間に、酸化珪素、酸化アルミニウムまたは酸化マグネシウムを主成分とするガスバリアー層を有する請求項1記載のプラスチック液晶表示素子用基板。
【請求項3】 少なくとも一方のポリエーテルスルホンフィルムのアモルファスポリオレフィン側ではない面に、インジウム錫酸化物からなる透明導電性薄膜を有する請求項1または2記載のプラスチック液晶表示素子用基板。
【請求項4】 ガスバリアー層とポリエーテルスルホンフィルムの間に、UV硬化型エポキシアクリレート系硬化被膜層を有する請求項2または3記載のプラスチック液晶表示素子用基板。
【請求項5】 透明導電性薄膜とポリエーテルスルホンフィルムの間に、UV硬化型エポキシアクリレート系硬化被膜を有する請求項3または4記載のプラスチック液晶表示素子用基板。
【請求項6】 少なくとも1方の表面に、UV硬化型エポキシアクリレート系硬化被膜層を有する請求項1〜5記載のプラスチック液晶表示用基板。
【請求項7】 アモルファスポリオレフィンフィルムおよびポリエーテルスルホンフィルムを溶融押出法により連続した巻物として製造し、貼り合わせ、ガスバリアー層の形成、透明導電性薄膜の形成、UV硬化型エポキシアクリレート系硬化被膜層の形成も連続した巻物の状態で加工した後に、枚葉に切断することを特徴とする請求項1〜6記載のプラスチック液晶表示素子用基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プラスチック液晶表示素子に用いられる上下電極基板を作成するための基板材料に関する。
【0002】
【従来の技術】液晶表示素子は、薄型・軽量・低消費電力等の特徴を生かして、電卓、デジタル腕時計、ページャー、携帯電話等の携帯電子機器の表示素子として採用されている。液晶表示素子は、透明電極を表面に形成した2枚の基板で液晶を挟み、その外側に偏光板を配置して構成されるが、従来の基板は、1.1mm厚さのガラス板が用いられてきた。最近、液晶表示素子のさらなる薄型・軽量化のためにガラス板の厚さを薄くする努力がなされているが、ガラスは薄くなると極めて割れやすくなり、目標とされている0.5mm以下の厚さになると製造が困難であるとともに、製品自体も耐久性の欠けるものとなる。そこでガラスの代わりに樹脂基板を採用する試みがなされるようになってきた。このような樹脂を基板に用いる液晶表示素子はプラスチック液晶表示素子(プラ液晶と略す)と呼ばれている。プラ液晶には、樹脂からなるフィルムを用い、ロールツーロール方式で巻き取り・巻き出しによる加工を行う、新たな生産方式を目指すもの(フィルム液晶)と、枚葉シートによる従来からのガラス基板用の生産設備を用いて従来技術および設備の有効活用を図ろうとするもの(シート液晶)があり、本特許はシート液晶用の基板に関わるものである。
【0003】シート液晶用基板としては、200μm以上の厚さが必要である。また、500μmを超えるとガラス基板での問題が生じず必要性が無くなる。よって、求められる厚さは200〜500μmの厚さの基板である。液晶表示素子の基板として用いるには、光学特性・耐熱性・機械的強度等さまざまな要求を満たす必要がある。それらの要求を満足するものとして、ポリエーテルスルホンフィルムが有望であり、フィルム液晶用の基板として採用されているが、シート液晶用基板としては、200μm以上の厚さになると黄色味が強くなり、複屈折も大きくなり採用できなくなる。一方、200μm以上の厚さでも無色透明で、複屈折も低く良好である樹脂フィルムとして、アモルファスポリオレフィンフィルムがあるが、この場合は、耐熱性が低く、機械的強度にも劣り、求めるシート基板は得られなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、光学特性、耐熱性、機械的強度に優れたプラスチック液晶表示素子用基板を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、厚さ150〜300μmのアモルファスポリオレフィンフィルムの片面もしくは両面に、厚さ25〜100μmのポリエーテルスルホンフィルムを、透明な接着剤で貼り合わせてなり、全体の厚さが200〜500μmであるプラスチック液晶表示素子用基板である。好ましい形態としては、少なくとも一方の、アモルファスポリオレフィンフィルムとポリエーテルスルホンフィルムの間に、酸化珪素、酸化アルミニウムまたは酸化マグネシウムを主成分とするガスバリアー層を有し、少なくとも一方のポリエーテルスルホンフィルムのアモルファスポリオレフィン側ではない面に、インジウム錫酸化物からなる透明導電性薄膜を有し、またガスバリアー層とポリエーテルスルホンフィルムの間に、UV硬化型エポキシアクリレート系硬化被膜層を有するプラスチック液晶表示素子用基板である。更に好ましくは、透明導電性薄膜とポリエーテルスルホンフィルムの間に、UV硬化型エポキシアクリレート系硬化被膜を有し、また少なくとも1方の表面に、UV硬化型エポキシアクリレート系硬化被膜層を有するプラスチック液晶表示用基板である。更には、アモルファスポリオレフィンフィルムおよびポリエーテルスルホンフィルムを溶融押出法により連続した巻物として製造し、貼り合わせ、ガスバリアー層の形成、透明導電性薄膜の形成、UV硬化型エポキシアクリレート系硬化被膜層の形成も連続した巻物の状態で加工した後に、枚葉に切断するプラスチック液晶表示素子用基板の製造方法である。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明に使用するアモルファスポリオレフィンフィルムの厚さは、150〜300μmである。150μm未満の厚さではシート基板のたわみを抑える効果が得られず、また300μmを超えると溶融押出法で作成する場合に巻き取りが困難となり、またその後の加工性も劣る。本発明に使用するポリエーテルスルホンフィルムの厚さは、25〜100μmである。25μm未満ではしわが発生しやすく、押出成膜法での作成が困難であり、その後の加工でも扱いにくい。100μmを超えると、片面のみの貼り合わせの場合は、アモルファスポリオレフィンとの熱膨張等の特性の違いが大きくなり、加熱時に反りや変形が生じるので好ましくない。また両面に貼り合わせる場合は、黄色味や複屈折が大きくなるのでやはり好ましくない。
【0007】液晶表示素子用基板として重要な特性にガスバリアー性がある。そのために、枚葉のシートを液晶表示素子に加工する工程中にガスバリアー膜を表面に形成することも可能であるが、ガスバリアー層の形成は、巻物の状態で行う方が生産性が高く効率的である。しかも、アモルファスポリオレフィンフィルムとポリエーテルスルホンフィルムの間に形成すれば、表面に擦り傷等を受けてもガスバリアー性が損なわれる危険性が低減される。特に薄いフィルムであるほど巻物の状態で行う方が好ましく、ポリエーテルスルホンフィルム側に形成することが好ましい。ガスバリアー層には、温度や湿度の影響を受けにくい無機物の透明薄膜が好ましく、酸化珪素や酸化アルミニウムや酸化マグネシウムを主成分とする金属酸化物薄膜が好ましい。
【0008】液晶表示素子用基板として、透明電極を形成するための透明導電性薄膜が必要であるが、この薄膜についても、枚葉のシートを液晶表示素子に加工する工程中に形成することも可能であるが、透明導電性薄膜の形成も、巻物の状態で行う方が生産性が高く、効率的である。この場合も、特に薄いフィルムであるほど巻物の状態で行う方が好ましく、貼り合わせる前のポリエーテルスルホンフィルムに形成しておくことが好ましい。透明導電性薄膜としては、インジウム錫酸化物を用いることが好ましい。
【0009】ガスバリアー層をポリエーテルスルホンフィルムの表面に形成するにあたり、ポリエーテルスルホンフィルムの表面にUV硬化型エポキシアクリレート系硬化被膜層を形成しておくと、ガスバリアー層の密着力が向上し、貼り合わせ工程などでの損傷を防ぐことができて好ましい。また、透明導電性薄膜をポリエーテルスルホンフィルムの表面に形成するにあたり、ポリエーテルスルホンフィルムの表面にUV硬化型エポキシアクリレート系硬化被膜を形成しておくと、透明導電性薄膜の密着力が向上し、貼り合わせ工程などでの損傷を防ぐことができ、また、液晶表示素子用透明電極としての導電性や透明性や耐久性が向上するので好ましい。
【0010】
【実施例】《実施例1》溶融押出法で住友化学(株)製ポリエーテルスルホン樹脂スミカエクセル4100を連続的に50μm厚さのポリエーテルスルホンフィルムに成形し巻き取った。光線透過率は600nmで89%、400nmで88%であった。複屈折(リタデーション)は、セナルモンコンペンセータ法で5nmであった。このポリエーテルスルホンフィルムの両面に、それぞれ2μmの厚さに、UV硬化型エポキシアクリレートを主成分とする樹脂をグラビア塗布法で塗布し、紫外線(UV)を照射して硬化被膜を形成した。その硬化被膜付きポリエーテルスルホンフィルムに、酸化珪素を真空蒸着法により1000オングストロームの厚さに形成し、ガスバリアー層とした。さらに、他方の硬化被膜面には、インジウム錫酸化物を、スパッタリング法によって、表面抵抗が100Ωになるように成膜した。このガスバリアー層と透明導電性薄膜を有するポリエーテルスルホンフィルムのガスバリアー層側に、接着剤を塗布し、別途に溶融押出法で作成したアモルファスポリオレフィン樹脂としてJSR(株)製のアートン樹脂を250μm厚さでフィルム化したものと貼り合わせた。全体の厚さは325μmであった。光線透過率は、600nmで85%、400nmで81%であった。複屈折は、5nmであった。この光学特性は液晶表示素子用基板として採用できるものである。またこの基板を300mmx300mmの枚葉にカットし、既存のガラス基板用液晶表示素子製造ラインに投入し、液晶表示素子を作成することができた。
【0011】《実施例2》溶融押出法で連続的に50μm厚さのポリエーテルスルホンフィルムを作成し巻き取った。光線透過率は600nmで89%、400nmで88%であった。複屈折(リタデーション)は、セナルモンコンペンセータ法で5nmであった。このフィルムを、実施例1のプラスチック液晶表示素子用基板の、枚葉にカットする前の巻物の段階で、アモルファスポリオレフィンフィルム側に、実施例1の接着剤を用いて貼り合わせた。全体の厚さは400μmであった。光線透過率は、600nmで83%、400nmで79%であった。複屈折は、10nmであった。この光学特性は液晶表示素子用基板として採用できるものである。また、この基板を300mmx300mmの枚葉にカットし、既存のガラス基板用液晶表示素子製造ラインに投入し、液晶表示素子を作成することができた。実施例1の基板に比べて、加熱時の反りが小さく、加工性が向上していた。
【0012】
【発明の効果】本発明によりシート液晶に必要な黄色み、リタデーションが小さいシート基板が得られる。また、ガスバリアー層や透明導電性薄膜を経済的に形成することが可能となる。
【出願人】 【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
【出願日】 平成10年(1998)3月19日
【代理人】
【公開番号】 特開平11−271736
【公開日】 平成11年(1999)10月8日
【出願番号】 特願平10−71048