トップ :: G 物理学 :: G01 測定;試験




【発明の名称】 航行物体の速度検出装置および速度検出方法
【発明者】 【氏名】碓村 仁啓

【氏名】河端 康司

【要約】 【課題】音波を発信することなく航行する船舶の速度を検出し得る速度検出装置を提供する。

【解決手段】船舶の航走音を海面下で受信する音波受信器11と、この音波受信器からの音波信号に微分処理を施し音波受信器に対して船舶が最も接近する地点を通過する第1通過時点およびこの最接近位置に対して45度方向の地点を通過する第2通過時点を検出する測定位置通過時点検出部21と、音波受信器からの音波信号を入力して所定時間毎に音波信号の周波数スペクトル解析を行う周波数解析部22と、上記測定位置通過時点検出部からの第1,第2通過時点および周波数解析部22からの周波数スペクトル解析結果を入力して、ドップラー効果により生じる周波数のシフト量を求めるとともに、このシフト量から第2通過時点での船舶の音波受信器方向における速度成分を求めた後、この速度成分から船舶の進行方向での速度を検出する速度計算部23とから構成したもの。
【特許請求の範囲】
【請求項1】海面または海中を航行する航行物体から発される航走音を海面下にて受信する音波受信器と、この音波受信器からの音波信号に微分処理を施して音波受信器に対して航行物体が最も接近する地点を通過する第1通過時点およびこの最接近位置に対して45度方向の地点を通過する第2通過時点を検出する測定位置通過時点検出部と、上記音波受信器からの音波信号を入力して所定時間毎に音波信号の周波数スペクトル解析を行う周波数解析部と、上記測定位置通過時点検出部からの第1および第2通過時点並びに周波数解析部からの周波数スペクトル解析結果をそれぞれ入力して、ドップラー効果により生じる周波数のずれ量を求めるとともに、このずれ量から第2通過時点での航行物体の音波受信器方向での速度成分を求めた後、この速度成分から航行物体の進行方向での速度を検出する速度計算部とから構成したことを特徴とする航行物体の速度検出装置。
【請求項2】海面または海中を航行する航行物体から発される走行音を海面下に設けられた音波受信器により受信し、この音波受信器からの音波信号に微分処理を施して、音波受信器に対して航行物体が最も接近する地点を通過する第1通過時点およびこの最接近位置に対して45度方向の地点を通過する第2通過時点を検出し、上記音波受信器からの音波信号を入力して所定間隔毎に周波数スペクトル解析を行い、第1通過時点と第2通過時点との周波数スペクトル解析結果からドップラー効果により生じる周波数のずれ量を求め、このずれ量に基づき第2通過時点における航行物体の音波受信器方向での速度成分を求めた後、この速度成分から航行物体の進行方向での速度を検出することを特徴とする航行物体の速度検出方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、航行物体の速度検出装置および速度検出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、海面(または海)を航行する船舶の速度を検出する方式としては、アクティブ方式およびパッシブ方式がある。
【0003】アクティブ方式のものは、船舶が航行する海域の海底に、船舶を検出するための音波発信器および受信器が設けられた検出装置を配置しておき、音波発信器から発射された音波が船舶に反射して戻ってきた音波を受信器にて受信し、そのドップラー効果を利用して、船舶の速度を検出するものである。
【0004】一方、パッシブ方式のものは、海底の異なる2個所に音波受信装置を配置しておき、船舶から発される航走音を時間差を設けて2個所で検出することにより、時間差から船舶の速度を求めるものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述したアクティブ方式のものによると、自ら音波を発信するとともに、所定地域の海面に向けて設置する必要があるという問題があり、また上記パッシブ方式のものによると、各音波受信装置に3個の方位角検出器を必要とし、したがって合計6個の方位角検出器を必要とするとともに、やはりその方位角検出器の設置方向を所定海域の海面に向けて設置する必要があり、非常に面倒であるという問題があった。
【0006】そこで、本発明は、自ら音波を発信することなく、かつ設置を容易に行い得る航行物体の速度検出装置および速度検出方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明の航行物体の速度検出装置は、海面または海中を航行する航行物体から発される航走音を海面下にて受信する音波受信器と、この音波受信器からの音波信号に微分処理を施して音波受信器に対して航行物体が最も接近する地点を通過する第1通過時点およびこの最接近位置に対して45度方向の地点を通過する第2通過時点を検出する測定位置通過時点検出部と、上記音波受信器からの音波信号を入力して所定時間毎に音波信号の周波数スペクトル解析を行う周波数解析部と、上記測定位置通過時点検出部からの第1および第2通過時点並びに周波数解析部からの周波数スペクトル解析結果をそれぞれ入力して、ドップラー効果により生じる周波数のずれ量を求めるとともに、このずれ量から第2通過時点での航行物体の音波受信器方向での速度成分を求めた後、この速度成分から航行物体の進行方向での速度を検出する速度計算部とから構成したものである。
【0008】また、本発明の航行物体の速度検出方法は、海面または海中を航行する航行物体から発される走行音を海面下に設けられた音波受信器により受信し、この音波受信器からの音波信号に微分処理を施して、音波受信器に対して航行物体が最も接近する地点を通過する第1通過時点およびこの最接近位置に対して45度方向の地点を通過する第2通過時点を検出し、上記音波受信器からの音波信号を入力して所定間隔毎に周波数スペクトル解析を行い、上記第1通過時点および第2通過時点における周波数スペクトル解析結果からドップラー効果により生じる周波数のずれ量を求め、このずれ量に基づき第2通過時点における航行物体の音波受信器方向での速度成分を求めた後、この速度成分から航行物体の進行方向での速度を検出する方法である。
【0009】上記の各構成によると、海面または海中を航行する航行物体からの航走音を音波受信器にて受信するとともに、異なる通過地点における両周波数のずれ量を求め、そしてこのずれ量にドップラー効果の式を適用することにより、航行物体の速度を検出するようにしたので、速度検出のための信号を出力する必要がなく、またその検出方向についても全方位的である。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態における航行物体の速度検出装置および速度検出方法を、図1〜図4に基づき説明する。
【0011】本実施の形態においては、航行物体として、海面(水面も含む)を航行する船舶の場合について説明する。本実施の形態における速度検出方式は、図1に示すように、速度検出装置1の内、少なくとも音波受信器(音響センサーの一例で、より具体的には、音圧センサーが用いられる)11を所定海域の海底に設置しておき、船舶2がこの海域を航行する際に、船舶2から発される航走音の音波を受信して、航行している船舶2の速度を自動的に検出するものである。
【0012】まず、速度検出装置の構成および速度検出原理について説明する。図2に示すように、この速度検出装置1は、海底(または、海中)に設置されて海面を航行する船舶2から発される航走音などの音波を受信する音波受信器11と、この音波受信器11で受信された音波信号(音圧信号)を増幅器12で増幅した後入力するとともに所定の演算を行い、船舶2の速度を検出する演算処理部(ディジタルシグナルプロセッサー、マイクロコンピュータなどから構成されている)13と、例えば陸上に設けられた基地局などのその検出速度を送信する送信部14とから構成されている。
【0013】上記演算処理部13は、増幅器12で増幅された音波信号を入力して、音波受信器11に対して予め設定された2個所の測定位置を船舶が通過した時点を検出する測定位置通過時点検出部21と、同じく上記増幅器12からの音波信号を入力して、音波信号の周波数スペクトル解析(FET解析)を行う周波数解析部22と、上記測定位置通過時点検出部21からの通過時点および周波数解析部22からの解析結果を入力して、ドップラー効果から船舶2の速度を計算する速度計算部23とから構成されている。
【0014】上記測定位置通過時点検出部21は、増幅された音波信号から必要な帯域分を取り出すバンドパスフィルタ(またはローパスフィルタ)などのフィルタ部31と、この帯域で取り出された音波信号から所定の信号波形を取り出す検波回路部32と、この取り出された信号波形を微分する第1微分回路部33と、この第1微分回路部33で微分された信号波形をさらに微分する第2微分回路部34と、上記第1微分回路部33で得られた1回微分による信号波形のゼロ点を求める第1通過時点検出部35と、上記第2微分回路部34で得られた2回微分による信号波形のゼロ点を求める第2通過時点検出部35とから構成されている。
【0015】ここで、上記1回微分および2回微分により、船舶2の通過時点、すなわち2つの測定対象位置を決定した理由について説明する。上述したように、船舶2の速度をドップラー効果を用いて検出するように説明したが、この場合、まず所定速度で航行する船舶2の音波信号を異なる2個所で測定して得られた両周波数のずれ量(以下、シフト量という)を求め、次にこのシフト量をドップラー効果の式に適用して、真の(進行方向での)船舶2の速度を求めるのであるが、このドップラー効果の式を適用する際に、シフトが生じていない基本周波数を知る必要がある。このため、船舶2が音波受信器11に最も接近した位置(最接近位置)Aを通過した時点の周波数を検出することにより、基本周波数を知ることができる。
【0016】すなわち、この基本周波数は音波受信器11にて測定した音圧レベルが最も高い(強い)時点における周波数であり、この音圧レベルが最も高い位置は、音波信号(音圧レベル信号)を1回微分したとき、その値がゼロとなるときである。
【0017】次に、2回微分をする理由であるが、ドップラー効果により求められた船舶2の速度は、船舶2における速度の内、音波受信器11に対する速度成分であり、この速度成分から船舶2の進行方向での真の速度を求める必要がある。このため、この速度成分の方向と進行方向との交差角θを知る必要がある(図4参照)。
【0018】この交差角θを、単に、船舶2から受信した音波信号から知ろうとすると、2回微分することにより、音圧レベルの変化点、すなわち交差角θが45度である地点を容易に知り得るからである。
【0019】以下、上記事項を具体的に説明する。図1に示すように、海底に設置された速度検出装置1の音波受信器11の位置を、三次元座標系(X,Y,Z)での原点(0,0,0)とするとともに、航行する船舶2の三次元座標を(x,y,z)とすると、船舶2と音波受信器11との相対距離(直線距離)rは、下記の(1)式にて表わされる。なお、(1)式を変形して、船舶2と音波受信器11との最接近距離dで表わすと、(2)式のようになる。
【0020】
【数1】

【0021】また、船舶2から発される音波の受波レベルの距離減衰に関しては、下記の(3)式が成立する。
RL=SL−TL・・・(3)
(3)式中、RL:音波受信器での受波レベル(dB)
SL:船舶からの音の送波レベル(dB)
TL:伝搬損失(dB)で、TL=20logrである。
【0022】上記(3)式に、x=vt[vは船舶2の速度を示し、tは船舶2の現在位置(検出位置)Bから水中局11に対する最接近位置Aまでの所要時間を示す。]を代入して変形すると、下記(4)式のようになる。
【0023】
【数2】

【0024】上記(4)式を1回微分すると、下記(5)式となり、さらに微分して2回微分を行うと、下記(6)式となる。
【0025】
【数3】

【0026】そして、上記2回微分した(6)式の値がゼロとなるようにする。すなわち、分子[(vt)2−d2]の値がゼロとなる条件は、vtとdとが等しいときであり、このことは、船舶2の現在位置Bと船舶2の最接近位置Aとの交差角θが45度であることを示している。
【0027】次に、上記周波数解析部22は、周波数スペクトル解析の対象となる帯域(例えば、1000〜1030Hz)だけを抽出するための周波数変換部41と、この帯域における音波信号をA/D変換するA/D変換部42と、このA/D変換部42で変換された信号の周波数スペクトル解析(FET解析)を行う解析部43と、所定時間毎の解析結果を記録する解析結果記録部44とから構成されている。
【0028】上記解析部43では、所定時間毎に周波数スペクトル解析が行われ、それぞれの解析結果が解析結果記録部44にて記録保持される。そして、速度計算部23では、解析結果記録部44からの解析結果が入力されるとともに、上記各通過時点検出部35,36で得られた通過時点すなわち通過時刻が入力されて、図3に示すように、速度の計算に必要な測定位置(A,B)に応じて、すなわち基本周波数を示している基本スペクトラムf0および交差角θが45度の時のシフトスペクトラムfDに基づき、両測定位置におけるスペクトラムのシフト量FDが求められる。
【0029】以下、シフト量FDに基づき船舶2の音波受信器11方向での速度vrを求める手順を説明する。ドップラー効果の基本式から、下記(7)式が求まる。
【0030】
D={c/(c−vr)}×f0・・・(7)
但し、cは音速を表わす。ここで、シフト量FDは下記(8)式にて表わされる。
【0031】FD=fD−f0・・・(8)
上記(8)式に(7)式を代入すると、シフト量FDは、下記(9)式で表わされる。
【0032】
D={c/(c−vr)}×f0−f0={vr/(c−vr)}×f0・・・(9)
上記(9)式を変形して、vrを求めると、下記(10)式のようになる。
【0033】
r=FD×c/(FD+f0
=(FD×c)/fD・・・(10)
上記(10)式より、vrが求められると、下記(11)式により、船舶2の進行方向での速度vが求められる。
【0034】v=vr/sinθ・・・(11)
次に、上記速度検出装置により、船舶の速度の検出方法を概略的に説明する。まず、音波受信器11にて海面を航行する船舶2の航走音の音波を受信する。
【0035】この受信された音波信号は増幅器12で増幅された後、測定位置通過時点検出部21に入力され、ここで1回微分および2回微分が施されて、音波受信器11からの最接近位置Aおよび45度位置Bを通過した時刻が検出される。
【0036】一方、増幅器12で増幅された音波信号は、測定位置通過時点検出部21と並列に、周波数解析部22に入力され、ここで所定時間毎の周波数スペクトラムが求められる。
【0037】そして、測定位置通過時点検出部21における第1および第2通過時点検出部35,36で得られた最接近位置Aおよび45度位置Bの各通過時刻および周波数解析部22での解析結果が速度計算部23に入力される。
【0038】ここでは、図3に示すように、各位置A,Bでの各通過時刻に対応する周波数スペクトラムを示すグラフから周波数のシフト量FDが求められた後、上記(10)式に基づき、音波受信器11方向での速度成分vrが求められ、さらに(11)式から、進行方向での船舶2の真の速度vが求められる。
【0039】なお、この求められた速度vは送信部14を介して陸上の基地局に送られ、例えばモニターなどに表示される。このように、海面を航行する船舶からの航走音を音波受信器にて受信するとともに、異なる通過地点における両周波数のシフト量を求め、そしてこのシフト量にドップラー効果の式を適用して、船舶の速度を検出するようにしたので、従来のように、速度検出装置側から検出用信号を出力する必要がないとともに、その検出方向については無指向性であるため、方位角検出器を使用するものに比べて、その設置を極めて容易に行うことができる。
【0040】ところで、上記実施の形態においては、周波数解析部22を1つだけ設けたが、例えば図5に示すように、周波数解析部22,22′を、並列に2個設けることもできる。この場合、周波数スペクトル解析の対象となる周波数帯域が互いに異なるようにされるとともに、それぞれの周波数解析部22,22′に応じて速度計算部23,23′が設けられ、そしてこれら両速度計算部23,23′で得られた速度が速度計算結果照合部51に入力されて照合が行われ、速度の検出精度の向上が図られる。
【0041】また、上記実施の形態においては、海面上を航行する船舶の速度を検出する場合について説明したが、海中(水中も含む)を航行する物体例えば潜水艦などの速度の検出にも適用することができる。
【0042】
【発明の効果】以上のように本発明の速度検出装置および速度検出方法によると、海面または海中を航行する航行物体からの航走音を音波受信器にて受信するとともに、異なる通過地点における両周波数のずれ量を求め、そしてこのずれ量にドップラー効果の式を適用して、航行物体の速度を検出するようにしたので、従来のように、速度検出装置側から検出用信号を出力する必要がないとともに、その検出方向については無指向性であるため、方位角検出器を使用するものに比べて、その設置を極めて容易に行うことができる。
【出願人】 【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
【出願日】 平成10年(1998)3月26日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】森本 義弘
【公開番号】 特開平11−271446
【公開日】 平成11年(1999)10月8日
【出願番号】 特願平10−78180