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【発明の名称】 レーダ装置
【発明者】 【氏名】浅野 孔一

【氏名】大島 繁樹

【氏名】原田 知育

【氏名】山田 直之

【要約】 【課題】ターゲットの距離、速度および方位の検出の信頼性を向上する。

【解決手段】送信アンテナ14は、周波数変調波を送信する。ターゲットからの反射波は左右2チャネルの受信アンテナ16a,16bで受信される。信号処理装置20は、位相モノパルス方式にて左右の受信信号の位相差に基づいてターゲットの方位を求める。方位検出は、FMCW方式における上り、下りフェーズでそれぞれ行われる。また信号処理装置20はFMCW方式でターゲットの距離と速度を求める。距離と速度の検出は、左右のチャネルの受信信号に基づいて個別に行われる。従って、方位、距離、速度ともに1組の検出データが得られる。方位の差、距離の差、速度の差に基づき、これらの差が小さい場合に、検出結果が有効と判定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 FMCW方式と位相モノパルス方式を組み合わせてターゲットの距離、速度および方位を検出するレーダ装置であって、周波数の上昇期間たる上りフェーズおよび下降期間たる下りフェーズを有する周波数変調波を送信する送信部と、ターゲットからの反射波を複数チャネルで受信する受信部と、前記複数チャネルの受信波に基づいた位相モノパルス方式でのターゲット方位の検出を、上りフェーズおよび下りフェーズのそれぞれにて行う方位検出部と、上りフェーズおよび下りフェーズの受信波に基づいたFMCW方式でのターゲット距離および速度の検出を、前記複数チャネルのそれぞれにて行う距離・速度検出部と、上りフェーズと下りフェーズの検出方位差、および、前記複数チャネルの間の検出距離差と検出速度差に基づいて、検出結果の有効性を判定する判定手段と、を含むことを特徴とするレーダ装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、FMCW方式と位相モノパルス方式を組み合わせてターゲットの距離、速度および方位を検出するレーダ装置に関し、特に、検出結果の有効性を的確に判定することにより信頼性の高い検出を行うものに関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、ターゲットの方位、距離、速度を検出するために各種レーダが利用されている。例えば、道路における先行車両との相対方位、相対距離、相対速度の検出にもレーダが用いられる。方位を検出するレーダの1つとして、位相モノパルスレーダがある。また、距離および速度を検出するレーダの1つとして、FMCW(周波数変調連続波)レーダがある。
【0003】[位相モノパルスレーダ]位相モノパルスレーダは、ターゲットからの反射波を複数の受信アンテナで受信する。複数の受信アンテナは空間的に位置が異なるので、同一のターゲットからの反射波の位相が受信アンテナ間で異なる。この位相ずれを検出することでターゲットの方位を検出することができる。この位相モノパルスレーダは、基本的に送信アンテナ及び受信アンテナを機械的に動かすことなく方位が検出できるというメリットがある。
【0004】図1を参照すると、ターゲットまでの距離をR0、二つの受信アンテナの間隔をL、ターゲットの方位をθとする。アンテナ1およびアンテナ2からターゲットまでの距離R1、R2は、【数1】R1=R0+(L/2)sinθR2=R0−(L/2)sinθである。二つの受信アンテナの受信信号(波長:λ)の位相差Δφは、【数2】Δφ=(L/λ)・sinθであり、従って、ターゲットの方位θは、【数3】θ=sin-1{Δφ・(λ/L)}
である。このようにして、受信信号の位相差からターゲットの方位を求めることができる。
【0005】[FMCWレーダ]FMCWレーダは連続波を用いるものであり、この連続波の送信信号にFM変調を施している。図2は、FMCWレーダによる相対距離及び相対速度検出の原理を示すものである。例えば、送信波を三角波で周波数変調する。これによって、送信波の周波数は増加減少を順次繰り返す。この送信波がレーダから放射され、ターゲットで反射して受信されると、送信波と受信波の周波数は、図2(上)に示すような関係をもつ。ただし、ターゲットの相対速度が0の場合である。ここで、伝搬遅延時間τは、送信波が受信されるまでの時間である。そして、参照波(送信波)に基づいて受信波を検波することにより、送信周波数と受信周波数の差の周波数成分を持つビート信号(図2(下))が得られる。さらに、このビート信号にFFTなどの周波数分析をほどこし、そのピークをターゲットに対応した信号として抽出する。そして、そのピークの周波数がピーク周波数としてターゲットの距離、速度の検出に用いられる。なお、先に述べた位相モノパルス方式では、同一のターゲットに対して複数の受信アンテナで得られたピークの位相差がターゲットの方位検出に用いられる。
【0006】ターゲットまでの相対距離をR、光速をcとするとτ=2R/cである。さらに、FMの繰り返し周波数(図2における三角波の周波数)をfm、FMの周波数偏移幅(参照波の周波数の変化幅)をΔfとすると、ビート周波数frは、【数4】fr=4R・fm・Δf/cで表される。従って、ビート信号からビート周波数frを求めれば、相対距離Rが決定される。
【0007】図3(上)は、ターゲットの相対速度が0でない場合における、送信波と受信波の周波数の関係を示している。ターゲットがレーダに対して相対速度を有すると、ドップラ周波数fdだけ受信波の周波数が上または下にシフトする。図3(下)にはビート信号が示されている。このビート信号は、送信波の周波数が増加している上りフェーズ期間においては、相対速度0のターゲットのビート周波数frにドップラ周波数fdだけ加算されたものになる。一方、送信波の周波数が減少している下りフェーズ期間においては、ビート周波数frからドップラ周波数fdだけ減算されたものがビート信号になる。従って、このビート信号の上りフェーズ期間及び下りフェーズ期間の周波数からドップラシフトが求められ、これからターゲットの相対速度が求められる。
【0008】すなわち、上りフェーズ期間及び下りフェーズ期間におけるビート信号の周波数fbu、fbdは、【数5】fbu=fr+fdfbd=fr−fdである。そこで、ビート信号から周波数fbu、fbdを個別に求めれば、相対距離を表すビート周波数fr、相対速度を表すドップラ周波数fdが求められる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】上記のFMCWレーダおよび位相モノパルスレーダを組み合わせれば、ターゲットの距離、速度および方位を求めることができる。特に、単一のターゲットだけが存在するような極めて理想的な環境では、単にFMCW方式および位相モノパルス方式を組み合わせるだけで、ターゲットの距離、速度および方位を正確に検出することができる。
【0010】しかしながら、実際のレーダ使用環境では、様々な物体からの反射波が合成されて受信されるので、単に両方式を組み合わせるだけでは信頼性の高いターゲットの距離、速度および方位の検出を実現することは困難である。
【0011】道路における先行車の検出を行う場合を考えると、ターゲットたる先行車の反射波に基づいて、先行車の距離、速度および方位を検出できる。この際、受信波から先行車の反射波を抽出したり選別する必要がある。ところが、自動車レーダ使用環境では、複数の先行車が存在し、さらに、先行車以外の樹木やガードレールなどの物体が存在する。そして、このような様々な物体の反射波が合成されて受信される。そのため、同一ターゲットからの複数チャネルの反射波を正しく組み合わせたり、同一ターゲットからの上りフェーズ、下りフェーズの反射波を正しく組み合わせることが困難な場合もある。このような場合に、本来は利用すべきでない不適正な検出結果が得られてしまったことを確実に見分けられるようにすることが望まれる。
【0012】本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、適正な検出結果が得られたか否かを的確に判別でき、これにより信頼性の高い検出を行うことができるレーダ装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】(1)本発明は、FMCW方式と位相モノパルス方式を組み合わせてターゲットの距離、速度および方位を検出するレーダ装置であって、周波数の上昇期間たる上りフェーズおよび下降期間たる下りフェーズを有する周波数変調波を送信する送信部と、ターゲットからの反射波を複数チャネルで受信する受信部と、前記複数チャネルの受信波に基づいた位相モノパルス方式でのターゲット方位の検出を、上りフェーズおよび下りフェーズのそれぞれにて行う方位検出部と、上りフェーズおよび下りフェーズの受信波に基づいたFMCW方式でのターゲット距離および速度の検出を、前記複数チャネルのそれぞれにて行う距離・速度検出部と、上りフェーズと下りフェーズの検出方位差、および、前記複数チャネルの間の検出距離差と検出速度差に基づいて、検出結果の有効性を判定する判定手段と、を含むことを特徴とする。
【0014】本発明によれば、位相モノパルス方式に基づく方位検出が、FMCW方式の上りフェーズと下りフェーズそれぞれで行われる。また、FMCW方式に基づく距離、速度検出が、複数の受信チャネルの信号それぞれを用いて行われる。
【0015】ここで、位相モノパルス方式で上り、下りフェーズで求めた方位が同等か近いということは、FMCW方式に基づいて距離、速度を検出する際に上り、下りフェーズでのピークの組合せが正しいことを意味する。同様に、FMCW方式で複数チャネルで求めた距離、速度が同等か近いということは、位相モノパルス方式で方位を検出する際に複数チャネルでのピークの組合せが正しいことを意味する。
【0016】そこで、判定手段により、距離、速度、方位の検出値の差に基づいて検出結果の有効性が判定される。検出値の差が小さければ、適正なピークの組合せから検出結果が得られており、従って正確な検出結果が得られているので、そのような検出結果が有効とされる。
【0017】例えば、距離、速度、方位の検出値の差が、それぞれ所定の判断基準値以下であれば、検出結果が有効と判断できる。後述するように、検出値の差から検出信頼度を求め、信頼度に基づいて有効性を判定することも好適である。
【0018】このように、本発明によれば、FMCW方式と位相モノパルス方式が一体化されていることを利用して、互いの方式を利用して、上り、下りフェーズ間および複数のチャネル間での正しいピーク組合せに基づいた有効な検出結果が得られているか否かを確認できる。FMCW方式の上り、下りフェーズそれぞれで方位を求め、位相モノパルス方式の複数チャネルそれぞれで距離および速度を求め、それらの値を互いに比較して大きな差が生じていないことを確認することにより、信頼性の高い距離、速度、方位の検出が可能になる。
【0019】(2)本発明の好ましい一態様のレーダ装置は、上りフェーズと下りフェーズの検出方位差、および、前記複数チャネルの間の検出距離差と検出速度差に基づいて、検出結果の信頼度を求める信頼性算出手段を含む。前記判定手段は、信頼性算出手段により算出された信頼度が、任意に設定された所定判断基準値を上回る場合に、検出結果が有効であると判断する。方位差、距離差および速度差に対応する信頼度を用いて確実かつ的確に有効性を判断することができる。
【0020】(3)また好ましくは、レーダ装置は、検出距離、速度および方位に時系列処理を施す予測フィルタを含む。上記のようにして有効と判断された検出結果(距離、速度および方位)のみを予測フィルタに入力し、時系列処理を施すことにより、現実のターゲットの距離、速度および方位の真の値を正確に推定し検出することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】[実施の形態1]以下、本発明の好適な実施の形態(以下、実施形態という)について、図面を参照し説明する。図4は、本発明の実施形態のFMCW・位相モノパルスレーダ装置の構成を示しており、このレーダ装置は車両に搭載するためのものである。
【0022】電圧制御発振器(VCO)10は周波数変調器として機能する。このVCO10には、図示しない制御部より、電圧が時間に応じて増減する三角波が供給される。VCO10は、この三角波で周波数変調された高周波を発生する。この高周波は、分配器12で分配され、その一つが送信アンテナ14に送られる。このようにして、三角波で周波数変調された高周波が、電波として外部に向けて放射される。
【0023】送信アンテナ14から放射された電波はターゲットで反射する。図中には2つの先行車両が、ターゲット1、2として示されている。反射信号は、左右2つの受信アンテナ16a,16bで受信される。この2つの受信アンテナ16a,16bは、空間的に所定距離Lだけ離れて配置されている。そして、この受信アンテナ16a、16bには、検波器18a,18bがそれぞれ接続されている。検波器18a,18bには、分配器12から、三角波で周波数変調された高周波(送信信号)が参照波として供給されている。検波器18a,18bは、受信波を参照波に基づいて検波して、ベースバンド信号に変換する。上記の検波処理により、送信周波数と受信周波数の差の周波数成分をもつビート信号が得られ、信号処理装置20に供給される。
【0024】信号処理装置20では、周波数分析部22a,22bが、それぞれ、左チャネルおよび右チャネルの受信信号から得られたビート信号の周波数分析を行い、信号の周波数成分についてのデータを得る。ここでは、複素FFT(高速フーリエ変換)が行われ、適当な周波数間隔(周波数bin)ごとの複素振幅(電圧)が求められる。以降の処理では、binの番号が、周波数に対応するインデックスとして用いられる。ピーク検出部24a,24bは、周波数分析結果に基づき、位相モノパルスの左、右チャネルのそれぞれでピーク(ピークをもつ周波数binの番号およびその周波数binの複素振幅値)を検出する。
【0025】図5(a)、(b)は、それぞれ左チャネルおよび右チャネルの周波数分析結果の例である。左チャネルにおいて、大きい振幅をもつピークUL1,DL1は、それぞれターゲット1の上りフェーズおよび下りフェーズのピークである。下りフェーズのピークの周波数が上りフェーズより大きいのは、ターゲット1が自車よりも相対的に遅い(近づいている)ことを示している。また、小さい振幅をもつピークUL2,DL2は、それぞれターゲット2の上りフェーズおよび下りフェーズのピークである。下りフェーズのピークの周波数が上りフェーズより小さいのは、ターゲット2が自車よりも相対的に速い(遠ざかっている)ことを示している。同様に、右チャネルでは、ピークUR1,DR1は、それぞれターゲット1の上りフェーズおよび下りフェーズのピークである。また、ピークUR2,DR2は、それぞれターゲット2の上りフェーズおよび下りフェーズのピークである。
【0026】距離・速度・方位演算部26(以下、単に演算部26という)は、本発明の方位検出部および距離・速度検出部として機能し、検出されたピークを用いて、各ターゲットの相対距離、相対速度および相対方位を求める。ここでは、位相モノパルス処理を実施してターゲットの方位を検出する。また、FMCW処理を実施してターゲットの距離及び速度を検出する。
【0027】図1を用いて説明したように、2つの受信アンテナ16a,16bで受信した信号の位相を比較することで、その位相差から方位が求められる。方位角θは、2つの受信波の位相差をΔφ、2つの受信アンテナの距離をL、電波の波長をλとすれば、【数6】θ=sin-1{Δφ・(λ/L)}
であらわされる。本実施形態では、ビート信号の対応する2つのピークの位相差から方位が求められる。
【0028】また、図2、図3を用いて説明したように、ビート信号は、ターゲットの距離に応じた受信波の遅延に基づく成分と、ターゲットの速度に応じたドップラシフトに基づく成分からなっている。上りフェーズ期間及び下りフェーズ期間におけるビート信号の周波数fbu、fbdは、相対距離を表すビート周波数をfr、相対速度を表すドップラ周波数をfdとすると、【数7】fbu=fr+fdfbd=fr−fdである。従って、周波数fbu、fbdから、ビート周波数frおよびドップラ周波数fdが求められ、相対距離および相対速度が求められる。本実施形態では、上り、下りフェーズの対応するピークのbin番号に基づいて、距離および速度を求める。このbin番号はそのピークのもつ周波数に対応している。
【0029】上記のようにして、位相モノパルス方式とFMCW方式で、ターゲットの方位、距離、速度が求められる。しかし、本実施形態ではレーダ装置が車両に搭載されて道路で使用される。このようなレーダ使用環境では複数のターゲット(先行車)が存在し、さらに、ターゲット以外の樹木やガードレールなどの物体が存在する。レーダには様々な物体の反射波が合成されて受信される。従って、実際には、図5に示すピークの他にもさらに多数のピークが存在している。そのため、同一ターゲットからの複数チャネルのピークを正しく組み合わせたり、同一ターゲットからの上りフェーズ、下りフェーズのピークを正しく組み合わせることができない可能性もあり、その結果、本来は無効とすべき不適正なデータが得られてしまうこともあり得る。そこで、本発明では、以下のようにして、適正なデータが得られているか否かを判定する。
【0030】本実施形態では、演算部26により、上りフェーズ、下りフェーズのそれぞれについて、位相モノパルス方式で方位が求められる。また、左チャネル、右チャネルのそれぞれについて、FMCW方式で距離および速度が求められる。これにより、左右両チャネルの上り、下りフェーズの4つのピークを利用して、同一ターゲットに対して、1組の方位、1組の距離および1組の速度が求められる。
【0031】有効性判断部28は、上記の複数の検出結果を比較して、検出結果の有効性を判定する。この有効性判断部28は、検出結果が下記の2つの条件を両方とも満たす場合に、検出結果が有効であると判断する。
【0032】(1)「方位差」が所定の判断基準値以下であること(「方位差」:上りフェーズと下りフェーズのそれぞれで検出された方位の差)
(2)「距離差」および「速度差」が所定の判断基準値以下であること(「距離差」および「速度差」:右チャネルと左チャネルのそれぞれで検出された距離の差、および速度の差)
図5を参照すると、1つのターゲットに関して、上りフェーズのピークペア(UL1,UR1)から求めた方位をθ(UL1,UR1)とし、下りフェーズのピークペア(DL1,DR1)から求めた方位をθ(DL1,DR1)とする。さらに、左チャネルのピーク(UL1,DL1)から求めた距離および速度を、それぞれ、R(UL1,DL1)、v(UL1,DL1)とする。また、右チャネルのピーク(UR1,DR1)から求めた距離および速度を、R(UR1,DR1)、v(UR1,DR1)とする。その際、上記(1)(2)の条件は式で表すと、下記のようになる。これらの式が成立する場合に、選択したピークペアが正しいと判断される。
【0033】
【数8】
|θ(UL1,UR1)−θ(DL1,DR1)|≦判断基準値|R(UL1,DL1)−R(UR1,DR1)|≦判断基準値|v(UL1,DL1)−v(UR1,DR1)|≦判断基準値有効性判断部28にて有効と判断されたデータは、例えば、先行車両への自動追尾制御に利用される。有効なデータは、そのまま追尾制御に利用される。また、有効なデータが得られない場合には、有効なデータが得られるまでペアリングを変更することも考えられる。ペアリングを変更しても有効なデータが得られない場合には、無効なデータは棄却され、追尾制御には利用されない。無効なデータの代わりに、適当な推定処理や補間処理を行って、過去の検出結果を用いて現在のターゲットの距離、速度および方位を推定することが好ましい。
【0034】以上、本実施形態のレーダ装置について説明した。本実施形態では、位相モノパルス方式の検出方位が、FMCW方式における上りフェーズと下りフェーズでそれぞれ求められる。また、FMCW方式の検出距離、検出速度が、左右の受信チャネルの信号からそれぞれ求められる。
【0035】上り、下りフェーズで求めた1組の方位がほぼ等しいということは、FMCW方式に基づいて距離、速度を検出する際に上り、下りフェーズでのピークの組合せが正しかったことを意味する。同様に、左右チャネルで求めた距離、速度がほぼ等しいということは、位相モノパルス方式に基づいて方位を検出する際に左右チャネルでのピークの組合せが正しかったことを意味する。
【0036】そこで、距離、速度の差が判断基準値以下であり、方位の差が判断基準値以下である場合には、ピークの組合せが正しかったと考えられ、正確なデータが得られているとみられるので、検出結果が有効と判定される。
【0037】このようにして、本発明によれば、FMCW方式の上り、下りフェーズおよび位相モノパルス方式の左右チャネルでもって、同一ターゲットに対する1組の方位、距離、速度を求め、それらの値を互いに比較して、所定判断基準値より大きな差が生じていないことを確認することにより、信頼性の高い距離、速度、方位の検出が可能になる。
【0038】なお、本実施形態の距離、速度、方位の判断基準値は、予め適当な値に決められている。判断基準値は、同一ターゲットのピークの組合せが正確に行われた場合の検出ばらつきを考慮して設定することが好適である。例えば、判断基準値を、ばらつきの標準的な大きさに設定したり、ばらつきの最大値に設定することができる。判断基準値は、実験結果や経験に基づいて設定してもよい。
【0039】[実施の形態2]次に、図6を参照し、本発明の第2の実施形態を説明する。本実施形態でも、実施形態1と同様に、複数の距離、速度および方位の比較によって検出結果の有効性が判断される。ただし、実施形態2では、複数の検出結果の比較によって検出データの信頼度が求められ、この信頼度から検出データの有効性が判断される。そして、有効なデータが予測フィルタに入力され、この予測フィルタではデータの予測フィルタリングが行われる。このようにして、さらにターゲットの距離、測度および方位の検出の信頼性の向上が図られる。
【0040】図6において、図4の実施形態1の構成と同様の構成要素には同一符号を付し、これらの構成要素の説明は省略する。距離・速度・方位演算部26は、実施形態1と同様に、左右両チャネルの上りフェーズおよび下りフェーズの4つのピークを利用して、同一ターゲットに対して、1組の方位、1組の距離および1組の速度を求める。
【0041】本実施形態の信号処理装置30には、信頼度演算部32が、有効性判断部34の前段に設けられている。信頼度演算部32は、上記の演算部26によって計算された検出データの信頼度REを求めるものであり、下記の検出データ差に基づいて信頼度REを求める。
【0042】(1)「方位差」:上りフェーズと下りフェーズのそれぞれで検出された方位の差(実施形態1と同様)
(2)「距離差」および「速度」:右チャネルと左チャネルのそれぞれで検出された距離の差、および速度の差(実施形態1と同様)
ここで,信頼度REは、例えば、下式によって演算される。
【0043】
【数9】REr=1−|R10−R20|/R00(但し,REr<0の場合は0とする。)
REv=1−|v1−v2|/v0(但し,REv<0の場合は0とする。)
REθ=1−|θ1−θ2|/θ0(但し,REθ<0の場合は0とする。)
REr、REv、REθは、それぞれ、距離、速度および方位の信頼度である。R10,R20は1組の検出距離の値であり、R00は距離用の信頼度評価基準値である。同様に、v1,v2は1組の検出速度の値であり、v0は速度用の信頼度評価基準値である。θ1,θ2は1組の検出方位の値であり、θ0は方位用の信頼度評価基準値である。上記のR00、v0、θ0の値は検出対象により異なり、例えば装置の検出精度の数倍程度とすることができる。
【0044】有効性判断部34は、上記の信頼度REr,REv,REθに基づいて、検出結果の有効性を判断する。(1)例えば、検出対象ごとに個別に信頼度のしきい値REr0,REv0,REθ0を設定しておく。そして、信頼度REr,REv,REθがすべてしきい値以上である場合に、検出結果が有効であると判断される。しきい値REr0,REv0,REθ0は、同一であってもよく、異なっていてもよい。(2)あるいは、信頼度REr,REv,REθの積を全体の信頼度REとする。この全体信頼度を、所定のしきい信頼度RE0と比較することにより、一度に検出結果の有効性が判断される。すなわち、しきい信頼度RE0以上の全体信頼度REが得られた場合に、検出結果が有効であると判断される。
【0045】本実施形態では、信号処理装置30に予測フィルタ36が設けられている。予測フィルタ36は、カルマンフィルタやα−βフィルタなどである。予測フィルタ36には、有効性判断部34が有効と判断した検出結果のみが入力される。予測フィルタ36では、この有効なデータに基づく予測フィルタリングが行われる。予測フィルタリングでは、検出結果の平滑化が行われる。予測位置データと測定位置データを使って、平滑化された位置および速度が求められ、平滑化されたデータがターゲット情報として出力される。
【0046】以上、実施形態2のレーダ装置について説明した。実施形態2においても、実施形態1と同様に、1組の方位、1組の距離、および1組の速度が求められ、そして、方位差、距離差および速度差に基づいて検出データの有効性の判断が行われ、差の値が小さいときに検出データが有効であると判定される。特に、上記の様な信頼度演算、その演算結果に基づく検出結果の有効性判断、さらに有効な検出結果だけを用いた予測フィルタリングを行うことにより、信頼性の高い距離、速度、方位の検出が可能になる。
【出願人】 【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
【出願日】 平成10年(1998)3月26日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 研二 (外2名)
【公開番号】 特開平11−271433
【公開日】 平成11年(1999)10月8日
【出願番号】 特願平10−78725