| 【発明の名称】 |
自動車レーダ装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】浅野 孔一
【氏名】大島 繁樹
【氏名】原田 知育
【氏名】山田 直之
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| 【要約】 |
【課題】自動車レーダ装置において、複数のターゲット等が存在する環境下での計測精度、信頼性を向上させる。
【解決手段】ターゲットからの反射波は左右2チャネルの受信アンテナ16a,16bで受信される。信号処理装置20は、各チャネルの受信波の周波数分析を行う。方位演算部26は、左右チャネルで周波数が一致するピークのペアを用いて位相モノパルス方式により方位を決定する。ペアリング部28は、FMCW方式の上りフェーズ期間におけるピークと下りフェーズ期間におけるピークとのペアリングを行う。ペアリング部28は、多数存在するピークのうち、方位演算部26にて同じ方位を与えられたピークを選択して、ピークペアを構成する。距離・速度演算部30は、ペアリング部28により決定されたピークペアを用いてFMCW方式に基づいてターゲットの距離及び速度を決定する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 周波数が増加する上りフェーズ期間と周波数が低下する下りフェーズ期間とを有したFM変調された送信波を送信する送信部と、反射波を受信する複数チャネルの受信部と、各チャネルの受信波の周波数分析を行い、ターゲットに対応したエコーのピークと当該エコーの位相情報とを求める分析部と、前記複数チャネル間で周波数が互いに対応したピークの組を求め、当該組をなすピーク間の位相差に基づいて方位を求める方位演算部と、前記方位演算部で求められた方位に基づいて、前記上りフェーズ期間と前記下りフェーズ期間とで対をなすピークを求め、当該対をなすピークの周波数に基づいて前記ターゲットの相対速度及び相対距離を求める距離・速度演算部と、を有することを特徴とする自動車レーダ装置。 【請求項2】 方位、相対速度及び相対距離からなる追尾情報を前記方位演算部と前記距離・速度演算部とから得る統合処理部を有し、前記送信部は、互いに異なる方向へ指向性ビームを切り替えて送信し、前記統合処理部は、前記異なる指向性ビームそれぞれに対する前記追尾情報が所定範囲内で一致した場合に、当該複数の追尾情報に対して所定の平均処理を行って一のターゲットの追尾情報を決定すること、を特徴とする請求項1記載の自動車レーダ装置。 【請求項3】 前記平均処理は、前記指向性ビームの方向と当該ビームに対して前記位相モノパルス演算部にて検出された前記方位との一致度に基づいた重み付け平均であること、を特徴とする請求項2記載の自動車レーダ装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、FM変調における上りフェーズ期間と下りフェーズ期間のエコーのペアからターゲットとの相対速度及び相対距離を検出し、追尾フィルタによってターゲットの挙動を監視する追尾レーダ装置に関する。 【0002】 【従来の技術】従来より、自動車では、例えば先行車両といったターゲットの自車に対する位置や速度を検出するために各種レーダが利用されている。例えば、ターゲットまでの距離及びそれとの相対速度を検出するFMCW(周波数変調連続波)方式のレーダ装置や、複数の受信アンテナからの信号の位相差に基づいてターゲットの方位を検出する位相モノパルス方式のレーダ装置が知られている。 【0003】[位相モノパルスレーダ]位相モノパルスレーダは、一つの送信アンテナから電波を放射することで得られるターゲットからの反射波を複数の受信アンテナで受信する。複数の受信アンテナは空間的に位置が異なるので、同一のターゲットからの反射波の位相が受信アンテナ間で異なる。この位相ずれを検出することでターゲットの方位を検出することができる。この位相モノパルスレーダは、方位検出のために基本的に送信アンテナ及び受信アンテナを機械的に動かす必要がないというメリットがある。 【0004】図1を参照すると、ターゲットまでの距離をR0、二つの受信アンテナの間隔をL、ターゲットの方位をθとする。アンテナ1およびアンテナ2からターゲットまでの距離R1、R2は、【数1】 R1=R0+(L/2)sinθR2=R0−(L/2)sinθである。二つの受信アンテナの受信信号(波長:λ)の位相差Δφは、【数2】Δφ=(L/λ)sinθであり、従って、ターゲットの方位θは、【数3】θ=sin-1{Δφ(λ/L)} である。このようにして、受信信号の位相差からターゲットの方位を求めることができる。 【0005】[FMCWレーダ]FMCWレーダは、連続波を用いてターゲットの距離および速度を検出するものである。FMCWレーダと位相モノパルスレーダを組み合わせれば、ターゲットの距離、速度および方位を求めることができる。 【0006】FMCWレーダは、連続波の送信信号にFM変調を施している。図2は、FMCWレーダによる相対距離及び相対速度検出の原理を示すものである。例えば、送信波を三角波で周波数変調する。これによって、送信波の周波数は増加減少を順次繰り返す。この送信波がレーダから放射され、ターゲットで反射して受信されると、送信波と受信波の周波数は、図2(上)に示すような関係をもつ。ただし、ターゲットの相対速度が0の場合である。そして、参照波(送信波)で受信波を検波することにより、送信周波数と受信周波数の差の周波数成分を持つビート信号(図2(下))が得られる。 【0007】伝搬遅延時間τは、送信波が受信されるまでの時間である。ターゲットまでの相対距離をR、光速をcとするとτ=2R/cである。さらに、FMの繰り返し周波数(図2における三角波の周波数)をfm、FMの周波数偏移幅(参照波の周波数の変化幅)をΔfとすると、ビート周波数frは、【数4】fr=4R・fm・Δf/cで表される。従って、ビート信号からビート周波数frを求めれば、相対距離Rが決定される。 【0008】図3(上)は、ターゲットの相対速度が0でない場合における、送信波と受信波の周波数の関係を示している。ターゲットがレーダに対して相対速度を有すると、ドップラ周波数fdだけ受信波の周波数が上または下にシフトする。図3(下)にはビート信号が示されている。このビート信号は、送信波の周波数が増加している上りフェーズ期間においては、相対速度0のターゲットのビート周波数frにドップラ周波数fdだけ加算されたものになる。一方、送信波の周波数が減少している下りフェーズ期間においては、ビート周波数frからドップラ周波数fdだけ減算されたものがビート信号になる。従って、このビート信号の上りフェーズ期間及び下りフェーズ期間の周波数からドップラシフトが求められ、これからターゲットの相対速度が求められる。 【0009】すなわち、上りフェーズ期間及び下りフェーズ期間におけるビート信号の周波数fbu、fbdは、【数5】fbu=fr+fdfbd=fr−fdである。そこで、ビート信号から周波数fbu、fbdを個別に求めれば、相対距離を表すビート周波数fr、相対速度を表すドップラ周波数fdが求められる。 【0010】 【発明が解決しようとする課題】単一のターゲットだけが存在するような極めて理想的な環境では、上記位相モノパルス方式のレーダ装置は、ターゲットの方位を正確に検出することができ、また上記FMCW方式のレーダ装置は、ターゲットの距離及び速度を正確に検出することができる。よって、そのような単純な環境では、両方式を組み合わせて用いることにより、方位、距離及び速度を正確に決定することができる。 【0011】しかしながら、自動車レーダ装置が使用される環境では、様々な物体(例えばターゲットたる複数の先行車両、その他ターゲット以外の樹木やガードレール等)からの反射波が重なり合って受信される。FMCW方式では上述したように、相対速度を有するターゲットに対しては、受信信号スペクトルのピークが2つに分かれ、それらを正しく組み合わせない限り、正しい距離、速度を検出することができない。このような組み合わせ(ペアリング)を正しく決定することは、様々な物体からの反射波により受信信号スペクトルのピークが多数存在する環境下では困難である。また位相モノパルス方式においても、複数のターゲットの距離あるいは速度が異なる場合に上記ペアリングが良好に実施できればターゲットの方位を検出できるが、距離と速度がほぼ同じような複数のターゲットが存在する場合、例えば複数車線の道路で複数の車両が併走状態で走行している場合には基本的に方位の検出が困難である。従って、これら両方式を単に組み合わせて方位、距離及び速度を正確に決定することも困難となる。 【0012】本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数のターゲットやターゲット以外の物体などの反射波が合成されて受信されるレーダ使用環境でも信頼性の高い方位、相対距離及び相対速度の計測が可能な自動車レーダ装置を提供することにある。 【0013】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、第1の発明は、周波数が増加する上りフェーズ期間と周波数が低下する下りフェーズ期間とを有したFM変調された送信波を送信する送信部と、反射波を受信する複数チャネルの受信部と、各チャネルの受信波の周波数分析を行い、ターゲットに対応したエコーのピークと当該エコーの位相情報とを求める分析部と、前記複数チャネル間で周波数が互いに対応したピークの組を求め、当該組をなすピーク間の位相差に基づいて方位を求める方位演算部と、前記方位演算部で求められた方位に基づいて前記上りフェーズ期間と前記下りフェーズ期間とで対をなすピークを求め、当該対をなすピークの周波数に基づいて前記ターゲットの相対速度及び相対距離を求める距離・速度演算部とを有することを特徴とする。 【0014】本発明によれば、位相モノパルス方式による方位検出を行うため、複数チャネルの受信部が設けられ異なる位置における受信波が受信される。受信位置が異なることによるドップラシフト量の違いは、受信位置間隔に比してターゲットの距離が大きいのでわずかである。よって、受信信号を周波数分析して得られる受信信号スペクトルに現れる反射波のピークの位置、すなわち周波数は、複数のチャネル間でほとんど差がない。つまり、あるターゲットに対し、複数チャネル間では受信信号の位相は異なっても、それに対応するピークの周波数は基本的に同一とみなすことができる。方位演算部は、基本的に複数チャネルそれぞれで同一とみなすことができる周波数を有するピークの組を求め、その組に属する各ピークは互いに同一のターゲットに起因するものであると判断する。そして、その組に属するピークに対応する各エコー間の位相差から、位相モノパルス方式に基づいて、当該ピークの組を生じたターゲットの方位を求める。さて、ターゲットが本装置に対して相対速度を有する場合は、上りフェーズ期間と下りフェーズ期間とで同一のターゲットに対するピークの位置は異なる。例えば複数のターゲットが存在するため、上りフェーズ期間と下りフェーズ期間とでそれぞれ複数のエコーのピークが生じる場合に、距離・速度演算部は、上りフェーズ期間と下りフェーズ期間とで方位演算部で求めた方位が一致するピークの対を見出し、その対をなすピークは互いに同一のターゲットに起因するものであると判断する。そして、その対をなすピークの各周波数から、FMCW方式に基づいて、当該ピークの対を生じたターゲットの相対速度及び相対距離を求める。本発明では、まず位相モノパルス方式に基づいてターゲットの方位を定め、その方位が等しいことに基づいて上りフェーズ期間と下りフェーズ期間とのピークの対を決定するので、複数のターゲットが存在する状況下においてもFMCW方式の処理に用いるピークの組を正しく選定でき、信頼性の高い方位、相対速度及び相対距離の検出ができる。 【0015】上記目的を達成するために、第2の発明は、方位、相対速度及び相対距離からなる追尾情報を前記方位演算部と前記距離・速度演算部とから得る統合処理部を有し、前記送信部は互いに異なる方向へ指向性ビームを切り替えて送信し、前記統合処理部は、前記異なる指向性ビームそれぞれに対する前記追尾情報が所定範囲内で一致した場合に、当該複数の追尾情報に対して所定の平均処理を行って一のターゲットの追尾情報を決定することを特徴とする。 【0016】本発明によれば、送信部は、ビーム方向を切り替えて指向性ビームを送信する。これにより、広い対象領域の空間を分割して探査することができる。各方向の指向性ビームに対して、位相モノパルス演算部及び距離・速度演算部はそれぞれ上記第1の発明と同様の処理を行う。これにより各ビームの範囲内に位置するターゲットの方位、相対速度及び相対距離が求められる。ここでは、これら方位、相対速度及び相対距離を追尾情報として一括して称することとする。指向性ビームは一般にオーバーラップする部分を有するので、同一のターゲットが複数の指向性ビームで検出されることがある。統合処理部は、各指向性ビームで求めた追尾情報を比較し、それらのうち指向性ビーム間で基本的に一致するとみなすことができるものを探す。そして、一致するとみなすことができる追尾情報に対しては、所定の平均処理を行う。平均処理としては、例えば単純平均や、所定の方法に基づいて各追尾情報を重み付けした平均がある。また、重み付け平均の特殊な場合として、複数の追尾情報のうち最も確度の高いものを選択するという方法もある。これにより、複数のビームで検出されたターゲットの追尾情報の精度を向上させることができる。 【0017】本発明の好適な態様は、前記平均処理が、前記指向性ビームの方向と当該ビームに対して前記方位演算部にて検出された前記方位との一致度に基づいた重み付け平均であるものである。一般に、ターゲットの方位が指向性ビームの方向と近いほど、エコーの強度は高く、それに基づく追尾情報の誤差は低くなる。よって、本態様によれば、エコー強度に応じた重み付けが行われ、誤差の小さい値に大きな重み付けがなされるので、追尾情報の精度が良好に向上する。 【0018】 【発明の実施の形態】[実施の形態1]以下、本発明の好適な実施の形態(以下、実施形態という)について、図面を参照し説明する。 【0019】図4は、本発明の実施形態の自動車レーダ装置の構成を示している。この自動車レーダ装置は車両に搭載され、それが提供する情報は、先行車等との安全な車間距離を確保する走行制御等に用いられる。本装置は、FMCW変調された送信波を送信し、ターゲットからの反射波を左右のチャネルで受信する。そして、位相モノパルス方式の原理に従い、左右のチャネルの受信波からターゲットの方位を求める。また、FMCW方式の原理に従い、上りフェーズと下りフェーズの受信波からターゲットの距離と速度を求める。 【0020】電圧制御発振器(VCO)10は周波数変調器として機能する。このVCO10には、図示しない制御部より、電圧が時間に応じて増減する三角波が供給される。VCO10は、この三角波で周波数変調された高周波を発生する。この高周波は、分配器12で分配され、その一つが送信アンテナ14に送られる。このようにして、三角波で周波数変調された高周波が、電波として外部に向けて放射される。 【0021】送信アンテナ14から放射された電波はターゲットで反射する。図中には2つの先行車両が、ターゲット1、2として示されている。反射信号は、左右2つの受信アンテナ16a,16bで受信される。この2つの受信アンテナ16a,16bは、空間的に所定距離Lだけ離れて配置されている。そして、この受信アンテナ16a,16bには、検波器18a,18bがそれぞれ接続されている。検波器18a,18bには、分配器12から、三角波で周波数変調された高周波(送信信号)が参照波として供給されている。検波器18a,18bは、受信波を参照波に基づいて検波し、これにより送信周波数と受信周波数の差の周波数成分をもつビート信号が得られ、信号処理装置20に供給される。 【0022】信号処理装置20において、周波数分析部22a,22bおよびピーク検出部24a,24bは、本発明の分析部として機能する。周波数分析部22a,22bは、それぞれ、左チャネルおよび右チャネルの受信信号から得られたビート信号に対して周波数分析を行い、信号の周波数スペクトルを得る。ここでは、複素FFT(高速フーリエ変換)が行われ、適当な周波数間隔(周波数bin)ごとの複素振幅(電圧)が求められる。以降の信号処理装置20における処理においては、binの番号が周波数に対応するインデックスとして用いられる。ピーク検出部24a,24bは、周波数分析結果に基づき、位相モノパルスの左、右チャネルのそれぞれでピーク(ピークが現れる周波数binの番号およびその周波数binの複素振幅値)を検出する。 【0023】図5(a)(b)は、それぞれ左チャネルおよび右チャネルの周波数分析結果の例である。左チャネルにおいて、大きい振幅をもつピークUL1,DL1は、それぞれターゲット1の上りフェーズおよび下りフェーズのピークである。下りフェーズのピークの周波数が上りフェーズより大きいのは、ターゲット1が自車よりも相対的に遅い(近づいている)ことを示している。また、小さい振幅をもつピークUL2,DL2は、それぞれターゲット2の上りフェーズおよび下りフェーズのピークである。下りフェーズのピークの周波数が上りフェーズより小さいのは、ターゲット2が自車よりも相対的に速い(遠ざかっている)ことを示している。同様に、右チャネルでは、ピークUR1,DR1は、それぞれターゲット1の上りフェーズおよび下りフェーズのピークである。また、ピークUR2,DR2は、それぞれターゲット2の上りフェーズおよび下りフェーズのピークである。 【0024】ただし、本実施形態では本装置が使用される道路等の使用環境では、複数のターゲット(先行車)が存在し、さらに、ターゲット以外の樹木やガードレールなどの物体が存在する。レーダには様々な物体の反射波が合成されて受信される。従って、実際には、図5に示すピークの他にもさらに多数のピークが存在している。このような多数のピークから、以下のようにして同一ターゲットの左右チャネルのピークが選ばれる。 【0025】図4に戻り、受信アンテナ16a,16bの位置の違いは、ターゲットまでの距離に比べて小さいので、各受信アンテナからターゲットを臨む方位はほとんど同じであり、ターゲットの各受信アンテナに対する相対速度もほとんど同じである。よってチャネルが異なっても、同一ターゲットに対応するピークの周波数は、同一か極めて近い。そこで、方位演算部26では、近い周波数binをもつピークが左、右チャネルから選ばれ、選ばれた2つのピークはピークペアとされる。ここでは、左、右チャネル間での周波数binの差が所定しきい周波数差以下のピークペアが選択される。ここで、ピークAとBとがペアをなすことを〈A,B〉と表すこととすると、図5に示す例に対しては、上りフェーズ期間においてはピークペア〈UL1,UR1〉、〈UL2,UR2〉が検出され、下りフェーズ期間に対しては〈DL1,DR1〉、〈DL2,DR2〉が検出される。 【0026】方位演算部26は、周波数分析部22a,22bでの複素FFT処理において得られる位相情報を元に、各ピークペアを構成する各ピーク間の位相差Δφを求め、当該ピークペアに対応するターゲットの方位θを求める。すなわち図1を用いて説明したように、2つの受信アンテナ16a,16bでの受信波の位相差をΔφ、2つの受信アンテナの距離をL、電波の波長をλとすれば、方位角θは次式で求められる。 【0027】 【数6】θ=sin-1{Δφ(λ/L)} ペアリング部28は、上りフェーズ期間と下りフェーズ期間とのピークのペアリングを行う。すなわち、ペアリング部28は、上りフェーズ期間において得られるピークと、下りフェーズ期間において得られるピークとを対応付け、距離・速度演算に用いるピークの対を決定する。 【0028】ここでは、ペアリング部28は、上りフェーズ期間について得られる左、右チャネルのピークペアと、下りフェーズ期間について得られる左、右チャネルのピークペアとで互いに方位角θが同一とみなすことができるものの対を求める。例えば、上り、下りフェーズ期間での方位の差が所定閾値以下となるピーク(ペア)が選択される。この処理により、図5に示す例に対しては、ターゲット1により生じるピークペア〈UL1,UR1〉と〈DL1,DR1〉(又はUL1とDL1、若しくはピークUR1とDR1)、及びターゲット2により生じるピークペア〈UL2,UR2〉と〈DL2,DR2〉(又はUL2とDL2、若しくはピークUR2とDR2)が選択される。 【0029】なお、この処理において、ピークの振幅を考慮にいれることも可能である。すなわち、同一のターゲットからのエコーの強度は、上りフェーズ期間と下りフェーズ期間とで大きく異ならないということに基づいて、方位角θの差が所定閾値以下であるという条件とともに、振幅の差も所定閾値以下であるという条件を課して、ここでのピークの対を求めることとしてもよい。そのような構成によれば、多数のターゲットが存在して、狭い方位角範囲内に複数のターゲットからのピークが含まれる場合であっても、それらの振幅の違いによってターゲットの弁別を行い、正しく上り、下り各フェーズ期間のピークを組み合わせることができる。 【0030】距離・速度演算部30は、ペアリング部28にて決定されたピークの対に基づいて、ターゲットの相対距離、相対速度を求める。すなわち、図2、図3を用いて説明したように、ビート信号は、ターゲットの距離に応じた受信波の遅延に基づく成分と、ターゲットの速度に応じたドップラシフトに基づく成分からなっている。上りフェーズ期間及び下りフェーズ期間におけるビート信号の周波数fbu、fbdは、相対距離を表すビート周波数をfr、相対速度を表すドップラ周波数をfdとすると、【数7】fbu=fr+fdfbd=fr−fdである。従って、周波数fbu、fbdから、ビート周波数frおよびドップラ周波数fdが求められ、相対距離および相対速度が求められる。本実施形態では、ペアリング部28で決定されたペアの上り、下りフェーズの対応するピークのbin番号に基づいて、距離および速度を求める。このbin番号はそのピークのもつ周波数に対応している。また、左右チャネルのそれぞれの受信波に基づいて独立して距離および速度を求めることができ、両検出値を用いてより精度の高い検出結果が得られる。 【0031】以上、本実施形態のレーダ装置について説明した。上記のように、本実施形態では、複数存在するターゲットの方位を先に求め、その方位を参照して上りフェーズ期間と下りフェーズ期間とのピークのペアリングを行う。よって、上り、下りフェーズ期間にそれぞれ複数存在するピークを正しくペアリングすることができ、信頼性の高い方位、相対速度及び相対距離の検出が可能になる。 【0032】なお、本実施形態の周波数差の閾値及び方位が一致とみなされる判定の閾値は、それぞれ予め適当な値に決められている。周波数差の閾値は、同一ターゲットの反射波から得られるピークの周波数のばらつきの大きさに基づいて設定することが好適である。同様に、方位判定の閾値は、上りフェーズ期間と下りフェーズ期間との間にターゲットと装置との相対運動により変わりうる方位角の大きさを想定して定めることができる。また例えば、両閾値を、ばらつきの標準的な大きさに設定したり、ばらつきの最大値に設定することができる。各閾値は、実験結果や経験に基づいて設定してもよい。 【0033】[実施の形態2]次に、本発明の第2の実施形態を説明する。図6は、本発明の実施形態の自動車レーダ装置の構成を示している。本実施形態の構成要素のうち、図4に示した実施形態1の構成要素と同様のものについては同一の符号を付し、その説明は適宜省略する。実施形態2は、まず送信部が実施形態1と異なる。すなわち、本装置は、複数の送信アンテナ44-1、44-2、…、44-nを有し、VCO10からこれら送信アンテナ44への送信波の供給を時分割で切り替える切替器46を有している。また、信号処理装置50は、これら複数の送信アンテナ44から送信された複数の指向性ビームそれぞれに対する演算結果を最後にまとめる統合処理部48を距離・速度演算部30の次に有している。 【0034】VCO10からの送信波は切替器46を介して、送信アンテナ44のそれぞれに時分割で順次供給される。各送信アンテナ44はそれらの送信ビームの向きが異なるように構成され、これにより検出領域を分割して、それぞれの領域ごとに電波を送受することができる。なお、同様の検出領域の分割は、例えば、異なる指向性を有した受信アンテナ16を複数配置してそれらを切り替える構成や、送受両方で切り替える構成によっても実現することができる。 【0035】時分割で切り替えられた各検出領域に対する受信信号の処理は上記実施形態と同様であり、得られたビート信号は信号処理装置50に渡される。信号処理装置50における周波数分析処理から距離・速度演算部30での処理までは実施形態1と同様である。よって、各検出領域ごとにその領域内のターゲットの追尾情報(方位、距離及び速度)が検出される。 【0036】統合処理部48へは、このように切り替えによってそれぞれの検出領域にて得られたターゲットの追尾情報が入力される。各指向性ビームの検出領域は、隣接するもの同士がオーバーラップするように構成される。そのため、同一のターゲットが複数の検出領域で検出されることがある。統合処理部48は、ターゲットの追尾情報を隣接する検出領域間で比較して、所定の精度で互いに一致する追尾情報を探索する。一致するものが見つかった場合、それら追尾情報が同一のターゲットに対応するものであると判断する。 【0037】この一致の判断は、例えば、追尾情報を構成する方位、距離及び速度の各値の隣接検出領域間での差がそれぞれ所定の許容範囲以下であることに基づいて行うことができる。また、方位、距離及び速度の各差の二乗和が所定閾値以下となるといった判断基準を用いることもできる。 【0038】同一のターゲットに対応すると判断された複数の追尾情報は、所定の平均処理により、一つの追尾情報に統合される。この所定の平均処理としては、例えば、簡単には、それぞれのビームで検出された追尾情報を等しい重みで平均する単純平均がある。また、他の方法としては、それぞれのビームで検出された追尾情報それぞれの確からしさなどに基づいた重み付けを行った平均(重み付け平均)がある。ここでは、指向性ビームの軸の方向と方位演算部にて検出された方位との一致の程度を重み係数とした重み付け平均を行う。これは、一般に方位がビームの軸に近いほど、エコー強度が大きくなり、誤差が小さくなるからである。なお、同様の理由から重み係数として、例えば検出された方位におけるビームの強度を用いることも可能である。また、統合処理部48は、それぞれのビームで検出された追尾情報のうち最も確度又は精度が高いものを選択してもよい。これは、重み付け平均の特殊な場合であり、最も確度若しくは精度の高い追尾情報の重み係数を1とし、他の追尾情報の重み係数を0とした場合に相当する。 【0039】本装置によれば、距離と速度が似通った複数のターゲットが存在する場合であっても電波を送受する領域を分割することにより、それら複数のターゲットを異なるビームで分離して検出することができる。また複数のビームで同一のターゲットが検出された場合には、得られた複数の追尾情報を何らかの形で平均して統合することにより、精度のよい追尾情報を得ることができる。 【0040】[実施の形態3]次に、本発明の第3の実施形態を説明する。図7は、本発明の実施形態の自動車レーダ装置の構成を示している。本実施形態の構成要素のうち、図4、図6に示した実施形態1及び実施形態2の構成要素と同様のものについては同一の符号を付し、その説明は適宜省略する。実施形態3が構成上、実施形態1と異なる点は、信号処理装置70が追尾フィルタ処理部72を有する点である。追尾フィルタ処理部72は、距離・速度演算部30と統合処理部48との間に設けられる。 【0041】本装置も実施形態2同様、複数の送信アンテナ44を有し、時分割で各検出領域の測定を行い、各領域に存在するターゲットの追尾情報を求める。つまり、本装置と実施形態2の装置とは距離・速度演算部30までの動作、処理は同じである。 【0042】本装置では、追尾フィルタ処理部72が、距離・速度演算部30で得られた各領域の追尾情報に対して、追尾フィルタ処理を行う。追尾フィルタ処理部72が行う追尾フィルタ処理は、距離・速度演算部30までに得られた方位、距離及び速度に対して行う、カルマンフィルタ処理やα−βフィルタ処理といった予測フィルタ処理である。この予測フィルタ処理により、過去の追尾情報に基づいて、ターゲットの真の方位、距離及び速度が推定される。これにより、複数のターゲットやターゲット以外の例えば樹木やガードレールなどの物体が存在することによって生じる誤検出状態や、不検出状態による好ましくない影響を回避することが可能となる。 【0043】統合処理部48は、例えば、複数の分割領域で得られたターゲットの追尾情報の推定値が所定の差以下で一致する場合に、それら追尾情報の推定値が同一ターゲットに対応すると判断する。また、統合処理部48は例えば、追尾情報の推定値の過去から現在までの軌跡を、ビームの各分割領域ごとに求め、それら領域間で軌跡の隔たりが所定値以下である場合にそれら軌跡に対応するターゲットは同一であると判断することも可能である。 【0044】統合処理部48はこのように推定値、又は推定値の軌跡に基づいて、ターゲットの同一を判断し、同一ターゲットについて複数領域に関して得られた追尾情報の各推定値を、実施形態2と同様の方法により平均して一つの追尾情報に統合する。 【0045】このように本装置では、FMCW方式及び位相モノパルス方式により得られる追尾情報に対して、予測フィルタ処理を行うこと、さらにビーム切替により複数領域で得られた各追尾情報を統合する処理を行うことにより、ある時刻または期間において距離と速度がほぼ同じとなる複数のターゲットを、追尾情報の時系列に基づいて弁別することができる。また、複数ターゲットやターゲット以外の例えば樹木やガードレールなどの物体が存在するような実際の使用環境下において、確度の高い距離、速度及び方位の検出を行うことができる。 【0046】なお、本装置では、追尾フィルタ処理部72は統合処理部48の前に設けたが、追尾フィルタ処理部72を統合処理部48の後ろに設ける構成も可能である。 【0047】ちなみに、追尾フィルタ処理部72は、ビームによる検出領域の分割とは無関係に採用することができ、例えば実施形態1の装置においても用いることができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003609 【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
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| 【出願日】 |
平成10年(1998)3月25日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】吉田 研二 (外2名)
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| 【公開番号】 |
特開平11−271430 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)10月8日 |
| 【出願番号】 |
特願平10−77965 |
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