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【発明の名称】 FMCWレーダ装置
【発明者】 【氏名】浅野 孔一

【氏名】大島 繁樹

【氏名】原田 知育

【氏名】山田 直之

【要約】 【課題】FMCWレーダ装置において、複数のターゲットが存在する場合でもピークペアを確実に検出して距離と速度を検出する。

【解決手段】三角波で周波数変調された送信信号及びターゲットで反射した受信信号を検波器16で合成検波し、ビート信号を生成する。ビート信号は信号処理装置18に供給され、周波数分析されて上りフェーズと下りフェーズのピークが検出される。信号処理装置18は、過去に検出された距離及び速度から現在の距離及び速度を算出し、さらにピークペアを予測する。予測ピークペアと所定値以下の差で一致する検出ピークペアが存在する場合にはそれを真のピークペアとし、所定値以下の差で一致する検出ピークが1つ存在する場合には、他方のピークを予測値から演算する。真のピークペアに基づいて距離及び速度を演算する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 FM変調における上りフェーズと下りフェーズのピークペアからターゲットの距離及び速度を検出するFMCWレーダ装置であって、過去に検出されたターゲットの距離及び速度の複数のデータに基づいてターゲットの距離または速度の少なくともいずれかを予測する予測フィルタと、前記予測フィルタでの予測に基づいて上りフェーズ及び下りフェーズにおけるピークの周波数を算出し、該周波数と所定値以内で一致する周波数を有するピークペアを真のペアと判定する演算手段と、を有することを特徴とするFMCWレーダ装置。
【請求項2】 前記演算手段は、前記所定値以内で一致する周波数を有するピークペアの一方が検出されない場合には、検出された他方のピークに合わせて前記予測フィルタでの予測に基づいて検出されない一方のピークを算出し、該検出されたピークと該算出されたピークを真のペアと判定することを特徴とする請求項1記載のFMCWレーダ装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はFMCWレーダ装置、特に上りフェーズと下りフェーズのピークペアの検出に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、送信波を例えば三角波で周波数変調してターゲットに向けて送信し、受信波と送信波を混合してビート信号を生成し、ビート信号の上りフェーズと下りフェーズにおけるピークペアからターゲットまでの距離と速度を検出するFMCWレーダ装置が知られている。具体的には、ビート信号の上りフェーズにはビート周波数(送信周波数と受信周波数の差の周波数)fbにドプラ周波数fdが加算され、下りフェーズにはビート周波数にドプラ周波数fdが減算されるので、上りフェーズのピーク周波数fb1と下りフェーズのピーク周波数fb2から、【数1】
R={c/(8fmΔf)}・(fb1+fb2) ・・・(1)
【数2】
V=(c/(4f0)}・(fb1−fb2) ・・・(2)
により距離Rと速度Vを検出することができる。但し、fmは繰り返し周波数、Δfは周波数変移幅、cは光速、f0は中心周波数である。
【0003】このように、FMCWレーダ装置では、ターゲットまでの距離やターゲットの速度を検出するためには上りフェーズと下りフェーズで対応するピークのペアを決定することが必須となる。検出すべきターゲットが1つしか存在しない場合には対応するピークペアを決定することは容易であるが、ターゲットが複数存在する場合には困難であり、各ターゲットの相対速度が互いに異なる場合には一層困難となる。
【0004】そこで、例えば特開平8−262130号公報に記載されたレーダ装置では、現在のペアとして組み合わされたピーク(ピーク周波数)に基づいて一定時間後のピーク周波数を予測し、その予測されたピークペアが一定時間後に検出されるピークの中に存在するときにそのピークを真のペアとする技術が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、複数のターゲットやターゲット以外の樹木やガードレールなどの物体が存在する車両用レーダ装置としてFMCWレーダ装置を用いる場合、種々の物体からの反射波が合成されて受信され、必ずしもペアとなるべきピークが検出されない状況が頻繁に生じ得る。このような状況において、上記従来技術では過去に検出されたペアに基づいて一定時間後のペアを予測しているため、一定時間後のペアリングの予測ができない問題がある。
【0006】また、ペアとなるべき2つのピーク(上りフェーズと下りフェーズ)がともに検出されるまで待ってペアリングを行う場合においても、その間ターゲットが定常運動を維持している保証はなく、ペアリングが困難となる問題がある。
【0007】このように、上記従来技術では、複数のターゲットが互いに近傍に存在するようなピークペア判断が困難な状況下において、真のペアを迅速かつ確実に検出することができないという問題があった。
【0008】本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みなされたものであり、その目的は、複数のターゲットが存在する場合においても迅速かつ確実に上りフェーズと下りフェーズのピークを検出し、もってターゲットまでの距離と速度を検出することができるFMCWレーダ装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、第1の発明は、FM変調における上りフェーズと下りフェーズのピークペアからターゲットの距離及び速度を検出するFMCWレーダ装置であって、過去に検出されたターゲットの距離及び速度の複数のデータに基づいてターゲットの距離または速度の少なくともいずれかを予測する予測フィルタと、前記予測フィルタでの予測に基づいて上りフェーズ及び下りフェーズにおけるピークの周波数を算出し、該周波数と所定値以内で一致する周波数を有するピークペアを真のペアと判定する演算手段とを有することを特徴とする。過去に検出されたターゲットまでの距離と速度のデータに基づいて現在(距離と速度を検出すべき処理タイミング)におけるターゲットの距離や速度を予測し、この予測値に基づいて上りフェーズ及び下りフェーズにおけるピーク周波数を算出することができる。この予測ピークペアは、現在におけるそのターゲットの検出ピークペアである確率の高いものであり、実際に検出されたピークペアが予測ピークペアと近い場合、すなわち所定値以内の周波数差で両ピークペアが一致する場合には、真のピークペアと判定することで、ターゲットが複数近接して存在する場合でも確実にピークペアを検出して距離及び速度を検出できる。また、過去のターゲットの距離と速度のデータに基づいて現在のピークペア周波数を予測するため、ペアとなるべきピークが欠落しても正しいピークペアを推定することができる。なお、予測ピークペア周波数の算出は、具体的には上記の(1)式、(2)式を用いて行うことができる。すなわち、(1)式及び(2)式をfb1及びfb2について解くとそれぞれ距離Rと速度Vの関数となるが、この距離と速度に予測フィルタで予測した距離と速度を代入することで、予測ピークペアの周波数を算出することができる。
【0010】また、上記目的を達成するために、第2の発明は、第1の発明において、前記演算手段は、前記所定値以内で一致する周波数を有するピークペアの一方が検出されない場合には、検出された他方のピークに合わせて前記予測フィルタでの予測に基づいて検出されない一方のピークを算出し、該検出されたピークと該算出されたピークを真のペアと判定することを特徴とする。ピークペアの一方が検出できない場合でも、他方のピークに合わせて距離または速度の予測値よりピークを算出するので、ピークペアを確実に抽出することができる。例えば、上りフェーズの検出ピークfb1が予測ピークペアの一方と所定値以内の周波数差で一致する場合には、他方のピークfb2は、上記の(1)式をfb2について解いてfb1と距離の予測値Rから算出することができる。もちろん、上記の(2)式を用いてfb1と速度の予測値Vから算出することも可能である。さらに、検出されない一方のピークとして、前記予測フィルタから得られる予測ピークペアの対応する片方をそのまま用いて、検出された一方のピークとペアを構成させることも可能である。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0012】図1には本実施形態の構成ブロック図が示されている。本実施形態のFMCWレーダ装置は、電圧制御発振器10、送信アンテナ12、受信アンテナ14、検波器16及び信号処理装置18を含んで構成されている。
【0013】電圧制御発振器10は、送信波を周波数変調するもので、例えば三角波で周波数変調し、送信波に上りフェーズと下りフェーズを生成する。図2には、電圧制御発振器10の出力電圧と時間との関係が示されている。図において、横軸は時間、縦軸は電圧を示しており、時間とともに電圧が増大する(周波数が増大する)期間が上りフェーズ、時間とともに電圧が減少する(周波数が減少する)期間が下りフェーズである。
【0014】送信アンテナ12及び受信アンテナ14は、それぞれ三角波でFM変調した信号をターゲットに向けて送信し、ターゲットから反射した信号を受信するもので、例えば車両の前部に搭載することができる。送信波の一部及び受信アンテナで受信した信号は、検波器16に供給される。
【0015】検波器16は、送信信号に基づいて受信信号を検波し、送信周波数と受信周波数の差の周波数成分を有するビート信号を生成して信号処理装置18に供給する。
【0016】信号処理装置18は、ビート信号からピークペアを検出してターゲットまでの距離及び速度を検出するもので、機能ブロックとしては周波数分析部18a、ピーク検出部18b、ピークペア決定部18c、距離・速度演算部18d、予測フィルタ処理部18e及びピーク演算部18fから構成される。
【0017】周波数分析部18aは、ビート信号を複素FFT等を用いて周波数分析し、適当な周波数間隔(周波数bin)毎に複素振幅(電圧)を検出する。検出結果はピーク検出部18bに出力する。図3には、周波数分析結果の一例が示されている。図において、横軸は周波数、縦軸は電圧であり、適当な周波数間隔で離散化されている。図では、一例として2つのターゲットが存在する場合の上りフェーズと下りフェーズのピークを示している。
【0018】ピーク検出部18bは、周波数分析結果、つまり周波数bin毎の電圧からピークを検出する。具体的には、所定のしきい値を用いてピークを示すbinの番号及びそのbinの複素振幅(電圧)を検出する。検出したピークは、ピークペア決定部18cに出力する。
【0019】ピークペア決定部18cは、過去に検出されたターゲットまでの距離及び速度から予測された距離及び速度に対応するピークペアの周波数と検出されたピーク周波数とを比較し、所定値以下で両者が一致する場合に検出されたペアを真のペアとして決定する。決定された真のピークペアは、距離・速度演算部18dに出力する。
【0020】距離・速度演算部18dは、決定された真のピークペアに基づいてターゲットまでの距離と速度を演算するもので、具体的には上述した(1)式及び(2)式に基づいて距離と速度を演算する。得られた距離と速度は予測のために予測フィルタ処理部18eに出力する。
【0021】予測フィルタ処理部18eは、入力した距離及び速度のデータから現在の距離及び速度を予測して出力するとともに、入力した距離及び速度に基づいて、次の処理タイミングにおける距離及び速度を予測する。予測フィルタとしては、例えばカルマンフィルタやα−βフィルタなどを用いることができる。予測した距離及び速度は、ピーク演算部18fに出力する。
【0022】ピーク演算部18fは、予測距離及び予測速度に対応するピークペア(上りフェーズと下りフェーズ)の周波数を演算するもので、具体的には(1)式、(2)式を逆に用いて演算する。得られたピークペア周波数はピークペア決定部18cに出力し、次の処理タイミングにおける真のピークペア決定に用いられる。
【0023】このように、本実施形態の信号処理装置18は、検出された距離及び速度から次の処理タイミング(次のピークペア決定時点)における距離と速度、さらにはこの距離と速度に対応するピークペアの周波数を演算し、この予測ピークペアに近い検出ピークペアを真のピークペアと判定することで、確実にターゲットまでの距離と速度を検出する。
【0024】以下、信号処理装置18内のピークペア決定部18cの処理について、より詳細に説明する。
【0025】図4及び図5には、ピークペア決定部18cの処理フローチャートが示されている。まず、図4において、ピーク検出部18bで検出できたピークデータを取り込む(S101)。また、ピーク演算部18fで算出された予測ピークペアデータを取り込む(S102)。複数のターゲットに対応して予測ピークペアが複数(n個)存在する場合には、その全てを取り込む。
【0026】次に、カウンタiを1とし(S103)、i番目の予測ピークペアと所定値以下の差で一致する2つの検出ピークが存在するか否かを判定する(S104)。予測ピークペアに近い検出ピークペアが存在する場合には、2つのピークペアを真のピークペアとして登録し、登録した検出ピークペアをデータから削除する(S105)。登録したピークペアをデータから削除するのは、他の予測ピークペアとの比較を回避して処理の冗長を避けるためである。また、対応する予測ピークペアデータも削除する(S106)。
【0027】一方、i番目の予測ピークペアと所定値以下の差で一致する2つのピークが存在しない場合には、S105及びS106の処理は行わず、カウンタiを1だけインクリメントして次の予測ピークペアi+1との比較を行う。これは、周波数が所定値以下の差で予測ピークペアと一致する検出ピークペアが存在しない場合には、他のターゲットに対するピークペア探索を優先させることを意味する。S104〜S106の処理は、n個の予測ペアデータ全てについて繰り返し実行する(S107)。
【0028】n個の予測ペアデータと検出したピークとの比較処理が終了した後、次にカウンタiを再び1とし(S109)、i番目の予測ピークペアは未だ削除されていないか否かを判定する(S110)。予測ピークペアに近い2つの検出ピークが存在しない場合にはこの予測ピークペアは削除されないから(S106を参照)、次にi番目の予測ピークペアと所定値以下の差で一致する検出ピークが1つ存在するか否かを判定する(S111)。S104では予測ピークペアに近い2つの検出ピークが存在するか否かを判定したが、ここでは予測ピークペアに近い検出ピークが1つ存在するか否かを判定する点に留意すべきである。そして、予測ピークペアに近い検出ピークが1つ存在する場合には、この検出ピークは真のピークペアの一方で、他方の検出ピークは干渉などにより検出できなくなっていると判定できるので、ピークペア決定部18cは、検出ピークと予測ピークペアから残りのピークを演算して真のピークペアとして登録する(S112)。すなわち、検出できた片方のピークに合わせて別の片方のピークを予測値から算出し、検出したピークと算出したピークを真のピークペアとして登録する。そして、登録した検出ピークをデータから削除するとともに(S113)、対応する予測ピークペアデータを削除する(S114)。これらS113及びS114の処理は、S105及びS106の処理に対応するものである。
【0029】一方、i番目の予測ピークペアが既に削除されている場合、あるいはi番目の予測ピークペアは未だ削除されておらず、しかもi番目の予測ピークペアと所定値以下の差で一致する検出ピークが1つも存在しない場合には、この予測ピークペアに対応する検出ペアは存在しないことになるので、S112〜S114の処理は行わず、カウンタiを1だけインクリメントして次の予測ピークペアとの比較を行う(S116)。以上の処理を全ての予測ピークペアについて実行する(S115)。
【0030】次に、図5に示されるように、カウンタiを再度1として(S117)、i番目の予測ピークペアが未だ削除されていないか否かを判定する(S118)。予測ピークペアに近い検出ピークが1つまたは2つある場合には上述したようにその予測ピークペアは削除されるが、予測ピークペアに近い検出ピークが1つも存在しない場合には削除されずに残ることになる。この場合、i番目の予測ピークペアの連続未検出回数が所定値以下か否かを判定する(S119)。連続未検出回数が所定回数以下の場合には、何らかの原因により一時的にピークが検出されなかったと考えられ、検出ピークの不存在にもかかわらず予測ピークペアを真のピークペアとして登録する(S120)。そして、連続未検出回数を1だけインクリメントし(S121)、対応する予測ピークペアデータを削除する(S122)。
【0031】一方、i番目の予測ピークペアの連続未検出回数が所定値を超える場合には、予測ピークペアに対応するターゲットが存在しないことを意味するから、この予測ピークペアに対する予測処理を打ち切る(S123)。そして、この予測ピークペアデータを削除する(S122)。以上の処理を全ての予測ピークペアについて繰り返す(S124、S125)。
【0032】そして、このような処理によっても未削除の検出ピークが存在する場合には(S126でYES)、検出ピークをピークペアとして登録し、取り込んだ検出ピークのデータから削除する(S127)。これは、あるタイミングでターゲットが突然出現した場合に対応するものであり、次の処理タイミングではこのピークペアに基づいてそのターゲットの予測が行われることになる。
【0033】このように、本実施形態では、(1)過去に検出されたターゲットの距離及び速度のデータに基づいて現在のターゲットの距離及び速度を予測し、この予測値に基づいてビート信号の周波数分析結果の上りフェーズと下りフェーズのピークの周波数を算出し、これらの予測ピークペアに対して周波数が近い(その差が所定値以下)検出ピークペアを真のピークペアとする(2)予測ピークペアと周波数が所定値以下の差で一致する検出ピークペアが存在しない場合には、他のターゲットに対するピークペア探索を優先させる(3)予測ピークペアと周波数が所定値以下の差で一致する検出ピークが片方でも存在する場合には、別の片方のピークが干渉などで検出できないと判断して検出できた片方のピークに合わせて別の片方のピークを予測値に基づき算出し、検出したピークと算出したピークを真のピークペアとする(4)予測ピークペアと周波数が所定値以下の差で一致する検出ピークが存在しない場合には、連続して検出できなかった回数を求め、その値が所定値以下の場合には予測ピークペアを真のピークペアとし、所定値を超える場合には対応するターゲットが存在しないと判断する(5)ペアリングできない検出ピークが存在する場合には、新たなターゲットとして真のピークペアとすることで、迅速かつ確実にピークペアを検出し、これによりターゲットまでの距離及び速度を検出することができる。
【出願人】 【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
【出願日】 平成10年(1998)3月24日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 研二 (外2名)
【公開番号】 特開平11−271429
【公開日】 平成11年(1999)10月8日
【出願番号】 特願平10−76169