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【発明の名称】 光パルスレーダ装置及び光パルス受光装置
【発明者】 【氏名】伊藤 秀文

【氏名】流郷 繁

【要約】 【課題】受光回路のアバランシェ・フォトダイオード( APD) のバイアスの最適化を図った光パルスレーダ装置及び光パルス受光装置を提供する。

【解決手段】本発明の光パルスレーダ装置は、所定の時間間隔で先行及び後続の光パルスを放射する送光回路(1) と、変更可能なバイアス電圧を受けて動作し、前記放射された先行及び後続の光パルスの反射光パルスを受光して先行及び後続の受光パルス信号を出力するAPDを含む受光回路(2) と、前記先行及び後続の受光パルス信号と所定の基準電圧とを比較し先行及び後続の2値化信号を出力する2値化回路(3) と、前記先行の2値化信号を前記所定の時間間隔だけ遅延させたものと前記後続の2値化信号との論理積を作成することにより雑音が除去された2値化信号を出力する雑音除去回路(4) と、この雑音除去回路又は前記2値化回路の出力に含まれるパルスの個数を計数し、この計数した個数に応じて前記APDのバイアス電圧を変更するバイアス電圧制御回路(7) とを備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】所定の時間間隔で先行及び後続の光パルスを放射する送光回路と、変更可能なバイアス電圧を受けて動作し、前記放射された先行及び後続の光パルスの反射光パルスを受光して先行及び後続の受光パルス信号を出力するアバランシェ・フォトダイオードを含む受光回路と、前記先行及び後続の受光パルス信号と所定の基準電圧とを比較し先行及び後続の2値化信号を出力する2値化回路と、前記先行の2値化信号を前記所定の時間間隔だけ遅延させたものと前記後続の2値化信号との論理積を作成することにより雑音を除去する雑音除去回路と、この雑音除去回路又は前記2値化回路の出力に含まれるパルスの個数を計数し、この計数した個数に応じて前記アバランシェ・フォトダイオードのバイアス電圧を変更するバイアス電圧制御回路とを備えたことを特徴とする光パルスレーダ装置。
【請求項2】請求項1において、前記アバランシェ・フォトダイオードのバイアス電圧は、前記計数された2値化信号の個数が所定値以下の場合にはそのブレークダウン電圧にほぼ等しい値に設定されると共に、前記計数された2値化信号の個数の増加と共にそのブレークダウン電圧にほぼ等しい値よりも低下せしめられることを特徴とする光パルスレーダ装置。
【請求項3】請求項1又は2において、前記送光回路における前記光パルスの放射のための前記所定の時間間隔は、前記雑音除去回路における前記2値化信号を前記所定の時間だけ遅延させるための遅延回路を用いて設定されることを特徴とする光パルスレーダ装置。
【請求項4】請求項1乃至3において、前記先行及び後続の光パルスの放射は、所定の時間間隔で反復されることを特徴とするパルス光レーダ装置。
【請求項5】光パルスを放射する送光回路と、変更可能なバイアス電圧を受けて動作し前記放射された光パルスの反射パルスを受光して受光パルス信号を出力するアバランシェ・フォトダイオードを含む受光回路と、前記受光パルス信号と所定の基準電圧とを比較し2値化信号を出力する2値化回路と、この2値化回路から出力される2値化信号の個数を計数し、この個数に応じて前記アバランシェ・フォトダイオードのバイアス電圧を変更するバイアス電圧制御回路とを備えたことを特徴とする光パルスレーダ装置。
【請求項6】請求項5において、前記アバランシェ・フォトダイオードのバイアス電圧は、前記計数された2値化信号の個数が所定値以下の場合にはそのブレークダウン電圧にほぼ等しい値に設定されると共に、前記計数された2値化信号の個数の増加と共にそのブレークダウン電圧にほぼ等しい値よりも低下せしめられることを特徴とする光パルスレーダ装置。
【請求項7】所定の時間間隔で出現する先行及び後続の光パルスを受光する光パルス受光装置であって、変更可能なバイアス電圧を受けて動作し、前記先行及び後続の光パルスを受光して先行及び後続の受光パルス信号を出力するアバランシェ・フォトダイオードを含む受光回路と、前記先行及び後続の受光パルス信号と所定の基準電圧とを比較し先行及び後続の2値化信号を出力する2値化回路と、前記先行の2値化信号を前記所定の時間間隔だけ遅延させたものと前記後続の2値化信号との論理積を作成することにより雑音が除去された2値化信号を出力する雑音除去回路と、この雑音が除去された2値化信号の個数を計数し、この個数に応じて前記アバランシェ・フォトダイオードのバイアス電圧を変更するバイアス電圧制御回路とを備えたことを特徴とする光パルス受光装置。
【請求項8】請求項7において、前記アバランシェ・フォトダイオードのバイアス電圧は、前記計数された2値化信号の個数が所定値以下の場合にはそのブレークダウン電圧にほぼ等しい値に設定されると共に、前記計数された2値化信号の個数の増加と共にそのブレークダウン電圧にほぼ等しい値よりも低下せしめられることを特徴とする光パルス受光装置。
【請求項9】光パルスを受光する光パルス受光装置であって、変更可能なバイアス電圧を受けて動作し、前記光パルスを受光して受光パルス信号を出力するアバランシェ・フォトダイオードを含む受光回路と、前記受光パルス信号と所定の基準電圧とを比較し2値化信号を出力する2値化回路と、前記2値化信号の個数を計数し、この個数に応じて前記アバランシェ・フォトダイオードのバイアス電圧を変更するバイアス電圧制御回路とを備えたことを特徴とする光パルス受光装置。
【請求項10】請求項9において、前記アバランシェ・フォトダイオードのバイアス電圧は、前記計数された2値化信号の個数が所定値以下の場合にはそのブレークダウン電圧にほぼ等しい値に設定されると共に、前記計数された2値化信号の個数の増加と共にそのブレークダウン電圧にほぼ等しい値よりも低下せしめられることを特徴とする光パルス受光装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、接岸速度計などに利用される光パルスレーダ装置等に関するものであり、特に、アバランシェ・フォトダイオード(APD)のバイアス電圧の最適制御機能を備えた光パルスレーダ装置等に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、レーザダイオードなどの発光素子からパルス状の光ビーム(光パルス)を放射し、その物体による反射で生じた反射光パルスを受光することにより、反射光パルスを発生させた物体までの距離などその物体の情報を得る光パルスレーダ装置が開発されてきた。この種の光パルスレーダ装置は、高品質の光ファイバなどを伝送路として用いる光通信装置などとは事情が大いに異なり、太陽光などの自然光や照明光などの人工の光が背景光として相当量出現する屋外で使用される。このため、そのような背景光などに起因する雑音ないしは不要信号の除去を行うために、送光動作と反射光の受光動作とが一定周期で多数回にわたって反復され、受光結果に対して時間平均化などの適宜な統計処理が行われる。
【0003】このような光パルスレーダ装置では、遠方から到来する微弱な反射光パルスを高感度で受光するために、光電流の増倍作用を有するアバランシェ・フォト・ダイオード(APD)が利用されてきた。一般に、APDの降伏電圧(ブレークダウン電圧Vb)近傍におけるバイアス電圧Vaと増倍率との関係は図6に示すように、バイアス電圧の増減に伴って増倍率が急峻に変化するような関係にある。APDのバイアス電圧がそのブレークダウン電圧を越えると、暗電流増幅率Mdは急峻に増加し続けるが光電流増倍率Mpは却って減少し、S/Nが急激に悪化する。このため、受光回路のS/Nを最適にするという観点から、通常は、APDのバイアス電圧は、そのブレークダウン電圧よりも所定比率だけ低い値に設定される。
【0004】また、APDのブレークダウン電圧は 100volt〜150 voltの範囲では、 0.6volt/ °C 程度の温度特性を示すため、広い温度範囲にわたってバイアス電圧をブレークダウン電圧よりも所定比率だけ低い値に設定するために、バイアス回路に温度補償用のダイオードが使用される。さらに、APDの出力を一定に保つようにそのバイアス電圧を制御する自動利得制御ループの方式もある。このような自動利得制御ループなどでは、特開平9ー270526号公報などに記載されているように、APDを破壊から保護するなどの目的でバイアス電圧に上限値や下限値が設定される場合もある。
【0005】本出願人の先願に係わる「レーダ装置及び信号受信装置」と題する特許出願(特願平8ー358671号) によれば、レーザ光パルスをこのレーダ装置の検出限界の最遠点に応じて設定される所定の時間だけ離間させて2個放射し、APDで受光した後続の受光パルスと、先行の受光パルスを上記所定の時間だけ遅延させたものとの論理積を作成することにより、先行と後続の受光パルス中にランダムに出現する雑音成分のみを互いに相殺させて除去し、S/Nを向上させる技術が開示されている。この先願の雑音除去技術は、後段のデータプロセッサなどのバックエンドにおけるソフトウェア処理によってではなく、フロントエンドにおけるハードウェア処理によって行われる点に大きな特徴がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記先願の信号受信装置は、APDで受光した後続の受光パルスと、先行の受光パルスを所定時間だけ遅延させたものとの論理積を作成することによって受光パルスのS/Nを向上させている。この結果、APDの後段でそのような論理積の作成によるS/Nの改良を行わない受光回路に対して、S/Nを最大にするために従来設定されてきた最適バイアス電圧、すなわち、ブレークダウン電圧よりも所定比率だけ低い値に固定することが、必ずしも最良とは言えない状況になった。
【0007】従って、本発明の一つの目的は、APDの後段において論理積の作成によるS/Nの改良を行う受光回路や、あるいは、そのような改良を行わない一般的な受光回路に対してもS/Nの最大化の観点からバイアス電圧を実情に応じて動的に変更する最適化を図ることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本第1の発明の光パルスレーダ装置は、所定の時間間隔で先行及び後続の光パルスを放射する送光回路と、変更可能なバイアス電圧を受けて動作し、前記放射された先行及び後続の光パルスの反射パルスを受光して先行及び後続の受光パルス信号を出力するアバランシェ・フォトダイオードを含む受光回路と、前記先行及び後続の受光パルス信号と所定の基準電圧とを比較し先行及び後続の2値化信号を出力する2値化回路と、前記先行の2値化信号を前記所定の時間間隔だけ遅延させたものと前記後続の2値化信号との論理積を作成することにより雑音を除去する雑音除去回路と、この雑音除去回路又は前記2値化回路の出力中のパルスの個数を計数し、この計数した個数に応じて前記アバランシェ・フォトダイオードのバイアス電圧を変更するバイアス電圧制御回路とを備えている。
【0009】本第2の発明の光パルスレーダ装置は、上記第1の発明の光パルスレーダ装置から上記雑音除去回路を除去したものである。本第3,第4の発明は、上記第1,第2の発明の光パルスレーダ装置から送光回路を除去することによって構成される光パルス受光回路である。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の好適な実施の形態によれば、前記アバランシェ・フォトダイオードのバイアス電圧は、前記計数された2値化信号の個数が所定値以下の場合にはそのブレークダウン電圧にほぼ等しい値に設定されると共に、前記計数された2値化信号の個数の増加と共にそのブレークダウン電圧にほぼ等しい値よりも低下せしめられるように構成される。
【0011】本発明の他の好適な実施の形態によれば、前記送光回路における前記光パルスの放射のための前記所定の時間間隔は、前記雑音除去回路における前記2値化信号を前記所定の時間だけ遅延させるための遅延回路を用いて設定されることにより、遅延時間のずれに基づく精度の劣化が回避されると共に、製造費用の低廉化と装置の小型化が図られている。本発明の光パルスレーダ装置のさらに他の好適な実施の形態によれば、前記先行及び後続の光パルスの放射は、所定の時間間隔で反復される。
【0012】
【実施例】図1は、本発明の一実施例の光パルスレーダ装置の構成を示すブロック図であり、1はレーザダイオード1aと駆動回路1bなどから成る送光回路、2はAPD2aと抵抗器とコンデンサから成る受光回路、3は電圧比較器と基準電圧供給源から成る2値化回路、4は遅延回路4aと2入力アンドゲート4bから成る雑音除去回路、5は距離計測回路、6はバイアス電圧制御回路、7はバイアス電圧供給回路である。
【0013】雑音除去回路4内の遅延回路4aには、送光部1から放射されたパルス状のレーザ光がこの実施例の光パルスレーダ装置の検出限界として予め設定されている200 メートルの最遠点までの間を往復する (全部で400 メートルの距離を伝播する) のに必要な伝播所要時間に等しい遅延時間が設定されている。この遅延時間は、理論的には1.33μsec であるが、実際には、この理論値に遅延時間の温度変化を考慮した一定のマージンを付加し、1.45μsec ( 周囲温度20°C において)の遅延時間が設定されている。この遅延回路4aは、例えば、遅延時間が各2nsec のインバータが6個直列接続された構造の74AC04を約120 個直列接続することにより実現される。
【0014】遅延回路4aの温度特性は2nsec / °C であり、屋外使用を前提としたこの種のレーダ装置の想定周囲温度は−40°C 〜+80°C の広範囲に渡っている。このような遅延回路は、送信タイミング信号の遅延用と、雑音除去対象の2値化信号の遅延用とに2個必要となるが、信号を消滅させずに雑音のみを除去するために各遅延回路で設定される遅延時間は正確に一致する必要がある。しかしながら、上記温度変化率と広い温度範囲とを考慮すると、2個の遅延回路の遅延時間を全温度範囲にわたって正確に一致させることは極めて困難である。そこで、このような遅延回路を送信タイミング信号の遅延用と、雑音除去対象の2値化信号の遅延用とに共用する構成を採用することにより、遅延時間を広い温度範囲にわたって一致させている。また、このような遅延回路は大型かつ高価になるため、その共用化により、この種の光パルスレーダ装置全体としての小型化、低廉化が図られている。
【0015】送光回路1はレーザダイオード1aとその駆動回路1bに加えて、シュミットトリガ回路1c,1dと、ローパスフィルタ1e,1fと、送信タイミング信号発生回路1gとを備えている。送信タイミング信号発生回路1gが発生した図3の波形図に示すような周期3.33msec の送信タイミング信号aは、雑音除去回路4内のオアゲート4cを通過したのち2分割され、その一方は遅延回路4aに供給され、他方はローパスフィルタ1eを経てシュミットトリガ回路1cに入力する。シュミットトリガ回路1cは送信タイミング信号の立ち上がりエッジに同期して鋭いパルスを発生し、これがレーザダイオード駆動回路1bに供給される。この鋭いパルスに同期してレーザダイオード駆動回路1bが動作し、レーザダイオードから半値幅数nsec の鋭いパルス状のレーザビームが放射される。
【0016】一方、雑音除去回路4内のオアゲート4cを通して遅延回路4aに供給された送信タイミング信号は、この遅延回路で1.45μsec の遅延を受けたのち2分割され、その一方は2入力アンド回路の一方の入力端子に供給され、他方はローパスフィルタ1fを経てシュミットトリガ回路1dに供給される。シュミットトリガ回路1cは、1.45μsec の遅延を受けた送信タイミング信号の立ち上がりエッジに同期して鋭いパルスを発生し、これをレーザダイオード駆動回路1bに供給する。この鋭いパルスに同期してレーザダイオード駆動回路1bが動作し、レーザダイオードから数nsec の半値幅の鋭いパルス状のレーザビームが放射される。
【0017】このように、最遠点の検出限界と遅延回路の温度特性とから定められる1.45μsec の間隔で先行のものと後続のものとから成る光パルスの対が送光部1から放射される。この送光部1による1対の光パルスの放射は、3.33msec の周期で繰り返される。この3.33msec の送光周期は、このレーダ装置のユーザーが誤ってレーザパルスを眼に受けても障害が発生しないように定められているエネルギー密度に関するJISの安全基準と、レーザ駆動回路1b内で行われる高圧の充放電回路の充電に必要な時間とを考慮して設定されている。
【0018】送光部1から放射された光パルスは、検知対象の物体などで反射され、反射光パルスとして受光回路3のAPD2aに入射する。この反射光パルスは、送光部1から1.45μsec の間隔で放射される先行及び後続の光パルスに対応して同じく1.45μsec の間隔の先行及び後続の反射光パルスとして出現する。APD2aは、バイアス電圧供給回路7から供給されるブレークダウン電圧Vbの近傍のバイアス電圧Vaのもとで動作し、反射光パルスのそれぞれが入射するたびに低インピーダンスのブレークダウン状態となり、後段の電圧比較器3の一方の入力端子の電圧Vsを上昇させる。このブレークダウンに伴いAPD2aの端子間電圧がブレークダウン電圧未満に低下し、この結果、APD2aは極く短時間でブレークダウン直前の状態に復帰する。
【0019】これに伴い、受光回路2から出力される電圧Vsは、先行及び後続の反射光パルスのそれぞれが入射するたびに急峻に立ち上がったのち急峻に立ち下がるという具合にパルス状に変化する。電圧比較器3は、電圧Vsが基準電圧Vref を越える極く短時間にわたってその出力をロー(0volt) からハイ(5volt) にパルス状に立ち上げることにより、入力アナログ電圧Vsをディジタル信号に変換して出力する。
【0020】この電圧比較器3から出力されるディジタル信号は後段の雑音除去回路4内のオアゲート4cを通過したのち2分割され、その一方は2入力アンドゲート4bの一方の入力端子に直接供給され、他方は遅延回路4aにおいて1.45μsec の遅延を受けたのち2入力アンドゲート4bの他方の入力端子に供給される。上記1対の反射パルスのうち先行のものが遅延回路4aで1.45μsec 遅延されたのち2入力アンドゲートの一方の入力端子に供給され、これと同時に、1.45μsec 遅れて送光部1から放射され物体で反射された後続のものが遅延回路4aを経ることなく直接2入力アンドゲート4bの他方の入力端子に供給されると、2入力アンドゲート4bからは雑音が除去された受信信号が出力される。この遅延回路4aと2入力アンドゲート2bとを組合せた回路によって受信信号の雑音が除去されるのは次の理由による。
【0021】すなわち、図4の波形図に例示するように、受光回路2から出力されるアナログ電圧Vsには、太い縦線で例示する反射光による信号成分に加えて細い縦線で例示するショット雑音などの雑音成分が含まれ、その2値化出力はDsのようになる。1.45μsec だけ離れた二つの時点におけるアナログ電圧Vsと2値化出力Dsは、それぞれ添字1と2を付して例示するようなものとなり、2値化出力Ds1とDs2との論理積は雑音除去信号Cとなる。2値化出力Ds1とDs2のそれぞれに出現する信号は相関を持つが、ランダムに出現する雑音には相関がないためその大部分は論理積を取ることによって除去される。しかしながら、たまたま1送信周期後にも同時点で発生したランダムな雑音成分や、背景光などに起因して発生した完全なランダム性を欠く不要成分が、雑音除去信号Cに残存することがある。
【0022】距離計測回路5は、雑音除去回路4から供給される多少の雑音を含む受光信号Cに統計的な処理を施すことにより、信号成分を雑音成分から分離して抽出し、反射パルス光の受光時点を検出する。距離計測回路5は、計測した反射パルス光の受光時点と、1.45μsec の遅延を受けた送信タイミング信号によって示される送光時点との差からレーザビームが物体との間を往復するのに要した伝播時間を検出し、その半分を光速で除算することにより、反射を生じさせた物体までの距離を算定し、表示する。
【0023】距離計測回路5内で行われる受光信号の抽出は、反射光を発生させた物体の速度が極端に大きくない限りこの受光信号が毎回同一の時点に出現するが、雑音の場合には必ずしもそうではないという性質を利用して行われる。この受光信号の抽出処理は、論理回路によるハードウエア処理や、ディジタルプロセッサによるソフトウエア処理によって実現される。この距離計測回路5の簡易化や処理速度の向上を図るうえで処理の負担を軽減することが必要になる。そのためには、前段において雑音成分を予め可能な限り除去しておく必要がある。
【0024】この目的を達成するための1手法として、上述した雑音除去回路4を多数段にわたって直列接続することが考えられる。しかしながら、遅延回路4aは、前述したように多数個のゲート回路を直列接続して実現している関係上、大型・高価になるため、これを多段に接続する構成は、レーダ装置を全体として大型・高価にするという問題がある。
【0025】そこで、この実施例では、雑音除去回路4から出力される雑音除去済みの信号C中に含まれる除去しきれなかった雑音の量を示すパルスの個数がバイアス電圧制御回路4で計数され、その計数値が多いほど受光回路2に供給されるバイアス電圧をブレークダウン電圧から低下させるように制御するための制御信号i,jがバイアス電圧供給回路7に供給される。これは、雑音除去済みの信号中に含まれるパルスの個数が増加するほど、APDのバイアス電圧がそのブレークダウン電圧に近く、ショット雑音が多量に発生していると見做せるからである。
【0026】バイアス電圧供給回路7は、トランジスタQ、シャントレギュレータSR、温度補償用ダイオードd1,d2,d3などから構成されている。バイアス電圧制御回路6から入力端子I1 ,I2 に供給される制御信号(i,j)のロー(0V)/ハイ(5V )の組合せに応じてシャントレギュレータSRのレファレンス端子電圧Vrが変化し、パルス個数の計数値の増加と共に、受光回路2に供給されるバイアス電圧値がブレークダウン電圧から低下せしめられる。APD2aとしてブレークダウン電圧が150 voltのものを選択すると、そのブレークダウン電圧は 0.6 volt/°C の割合で温度と共に増加する。抵抗器r1〜r6の抵抗値として、同順に、1MΩ,10 KΩ,68 KΩ,10 KΩ,1MΩ,510KΩとし、APDの温度特性を補償するために、シャントレギュレータSRのレファレンス端子と接地点との間に順方向電圧Vdの温度特性が−2mV/ °C の温度補償用シリコンダイオードd1 ,d2,d3が3個直列接続される。
【0027】すなわち、シャントレギュレータのレファレンス端子電圧Vrが約6mv/ °Cの温度係数で変化するため、バイアス電圧Vaは、Va=(Vr−Vd+6mv/ °C ・ΔT °C )(1 +r1/r2)
となり、バイアス電圧Vaは、600mv/ °C の傾斜で温度変化する。
【0028】図2は、図1のバイアス電圧制御回路6の構成の一例を示す回路図であり、11〜17は各種ゲート回路、20,21,22はカウンタ、23〜26はラッチ回路、27〜29は入力端子、30〜33は信号出力端子である。また、図2に記載された小文字のアルファベットb〜jが付された各種の信号線は、図3に同一のアルファベットb〜jを付されたて各種の波形が出現する。以下、図3の波形図も参照しながら図2のバイアス電圧制御回路の動作を説明する。
【0029】縦列接続された2個の4ビットカウンタ21,22は、雑音除去済みの信号中に残存するパルスの個数をカウントするためのものであり、それぞれはこのカウントの開始に先立って入力端子28に供給される周期3.33msec の送信タイミング信号を1.45μsec 遅延させたタイミング信号kによってクリアされる。この遅延された送信タイミング信号kはアンドゲート13,14から構成されるノイズカウントゲート信号発生回路にも供給され、送信タイミング信号の立ち上がりかち1.45μsec 遅延して立ち上がり、さらにに1.45μsec 間にわたってハイ状態を持続するノイズカウントゲート信号bが発生される。
【0030】このノイズカウントゲート信号bにより、送信タイミング信号の立ち上がりから1.45μsec 後に1.45μsec の期間にわたってナンドゲート11が開かれ、雑音除去回路4から出力されて入力端子27とナンドゲート11とを経てカウンタ21,22に供給される雑音除去済みの信号c中に残存するパルスの個数がカウントされる。カウンタ21のMSB(d)とカウンタ22のLSB(e)とは、ノイズカウントゲート信号の立ち下がり時点にインバータ15からラッチ回路23と24のそれぞれに供給されるラッチパルスに同期してラッチ回路23と24のそれぞれに保持され、2値信号fとgを発生させる。
【0031】ラッチ回路23と24のそれぞれに保持されたカウンタ21のMSBとカウンタ22のLSBとは、4ビットカウンタ20とビット選択スイッチ18とで構成される分周回路からラッチ回路25と26に供給されるラッチパルスhに同期してラッチ回路25と26に保持され、2値信号i,jを発生させる。これら2値信号i,jは出力端子30と31とを経て図2のバイアス電圧供給回路7の入力端子I1 とI2 とに供給される。この結果、カウンタ21のMSB(d)とカウンタ22のLSB(e)のハイ又はローの組合せによって指定される4種類のカウント値の範囲に応じてバイアス電圧が四つの範囲にわたって変更される。
【0032】上記パルスの個数、カウンタのビット、バイアス電圧の関係は以下の通りである。

ただし、Vbはブレークダウン電圧である。このように、パルスの個数が7 以下であれば、バイアス電圧はAPDのブレークダウン電圧に設定され、パルスの個数の増加につれて段階的にブレークダウン電圧から低下せしめられる。
【0033】ラッチ回路23と24に保持したカウンタ21と22のMSBとLSBとを直ちに出力端子30と31に出力せずに、ラッチ回路25と26と分周回路とを利用して送信周期の何回かに一回だけ出力端子30と31とに出力するようにしたのは、送信周期の各回ごとに出力するとした場合のバイアス電圧の頻繁な昇降を回避するためである。なお、ラッチ回路23と24に保持したカウンタ21と22のMSBとLSBとは、出力端子32と33とを経て図1の距離計測回路5に供給される。距離計測回路5は、出力端子32と33から供給されたカウンタ21と22のMSBとLSBとからバイアス電圧制御回路6で計測されたパルスの個数に基づき雑音から分離した信号パルスの信頼度を検出する。
【0034】バイアス電圧のフィードバック制御に基づき、図5の波形図に例示するように雑音除去回路4による雑音除去前の2値化信号中のパルスの個数が減少する共に理想的には雑音除去後の2値化信号中に信号のみが含まれるような状態が実現される。
【0035】以上、電圧比較器3並びに、距離計測回路5及びバイアス電圧制御回路6の間に雑音除去回路4を設置する構成を例示した。しかしながら、この雑音除去回路4を設置することなく、電圧比較器3の出力端子を距離計測回路5とバイアス電圧制御回路6の入力端子に直結する構成を採用することもできる。
【0036】また、検出可能な最遠点を200 メートルと想定し、これに対応した雑音除去回路の遅延時間として1.45μsec の値を設定した。しかしながら、検出可能な最遠点としては数メートルの範囲まで設定可能であると共に、この最遠点に応じた遅延時間を設定できる。
【0037】また、最遠点の短縮に伴い放射レーザビームの出力を低下できるため、エネルギー密度に関するJISの安全基準から定められている繰り返し周期を遅延時間の程度にまで短縮することにより両者を一致させることもできる。
【0038】さらに、パルスの計数を信号の出現が期待される期間にわたって行う構成を例示した。しかしながら、このパルスの計数は雑音に基づき発生するパルスの計数であるから、その計数期間は信号の出現が期待されない期間であってもよいし、両者を含む期間であってもよい。また、このパルスの計数期間は任意の適宜な長さに設定できる。
【0039】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明の光パルスレーダ装置と光パルス受光装置は、2値化信号、あるいは自己相関操作によって雑音が除去された2値化信号の個数を計数し、この個数が増加するほど減少するようにAPDのバイアス電圧を変更する構成であるから、APDの後段においてアンド操作によるS/Nの改良を行う受光回路や、あるいは、そのような改良を行わない一般的な受光回路に対してもS/Nの最大化の観点からバイアス電圧の最適化を図ることができるという効果が奏される。
【出願人】 【識別番号】000001177
【氏名又は名称】株式会社光電製作所
【出願日】 平成9年(1997)11月28日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 俊彦
【公開番号】 特開平11−160432
【公開日】 平成11年(1999)6月18日
【出願番号】 特願平9−344228