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【発明の名称】 レーダ装置
【発明者】 【氏名】奥村 実

【要約】 【課題】データ通信により伝送するデータ量を減少し、データ回線を有効利用することを可能とする【解決手段】パルス送信機13および観測用アンテナ装置11により地表面Eに向けて所定のパルス波を送信した際に到来する散乱波を、観測用アンテナ装置11および受信機14により受信する。受信機14での散乱波の受信状況に基づき、地表面検出回路17にて地表面Eの位置を推定し、観測用アンテナ装置11からパルス波を送信してから地表面Eでの散乱波が受信されるまでの時間を推定する。受信機14で生成された観測信号のうち、パルス波を送信してから所定の時間が経過した時点から、パルス波を送信してから上記推定された時間が経過した時点までの間に生成された観測信号のみを有効観測信号として抽出する。すなわち、地表面Eを基準とした一定範囲の観測信号のみを有効観測信号とする。

【解決手段】パルス送信機13および観測用アンテナ装置11により地表面Eに向けて所定のパルス波を送信した際に到来する散乱波を、観測用アンテナ装置11および受信機14により受信する。受信機14での散乱波の受信状況に基づき、地表面検出回路17にて地表面Eの位置を推定し、観測用アンテナ装置11からパルス波を送信してから地表面Eでの散乱波が受信されるまでの時間を推定する。受信機14で生成された観測信号のうち、パルス波を送信してから所定の時間が経過した時点から、パルス波を送信してから上記推定された時間が経過した時点までの間に生成された観測信号のみを有効観測信号として抽出する。すなわち、地表面Eを基準とした一定範囲の観測信号のみを有効観測信号とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 所定の基準物に向けて所定のパルス波を送信するパルス送信手段と、到来する散乱波を受信して観測信号を生成する受信手段と、この受信手段での散乱波の受信状況に基づいて前記基準物の位置を推定し、前記パルス送信手段がパルス波を送信してから前記基準物での散乱波が前記受信手段により受信されるまでの時間を推定する推定手段と、前記受信手段により生成された観測信号のうち、前記パルス送信手段がパルス波を送信してから所定の時間が経過した時点から、前記パルス送信手段がパルス波を送信してから前記推定手段により推定された時間が経過した時点までの間に生成された観測信号のみを有効観測信号として抽出する抽出手段とを具備したことを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】 抽出手段により抽出された有効観測信号を所定の観測信号収集局に向けて送信する観測信号送信手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】 宇宙航行体に搭載され、地球との間の気象現象を観測するものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレーダ装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば宇宙航行体などに搭載され、降雨の観測等に使用されるレーダ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般にレーダ装置においては、短いパルス波を送信し、観測対象により散乱された散乱波を受信することにより、その観測対象までの距離や観測対象からの散乱波の強度を検出する。レーダ装置においてはパルス波を送信してから散乱波を受信するまでの時間Τにより観測対象までの距離Rを決定し、その間には以下の関係が成り立つ。
R=c・Τ/2 …(1)
c:光速従って、観測範囲、すなわち観測対象が存在すると推定される最も近い距離Rmin と最も遠い距離Rmax を決定すれば、散乱波を受信しなければならない期間ΔTは以下のように与えられる。
ΔT=2Rmax /c−2Rmin /c …(2)
一般的に、宇宙航行体搭載用のレーダ装置では、ΔTの間の受信信号を所定の時間間隔でサンプリングしてΑ/D変換した後に、デジタルデータとして地上局に伝送する。従って、受信信号のサンプリング間隔やA/D変換のビット数等の条件が同一であれば、ΔTの値が大きいほど多量のデータを地上に伝送する必要がある。しかし、データ回線の容量には制約があり、地上局に伝送できるデータ量には限りがあるため、ΔΤの値は小さい方が望ましい。
【0003】一方、宇宙航行体が飛行する軌道高度は完全には一定ではなく、例えば地球の形状が完全な球形でないことや大気の抵抗による影響による変動を伴う。従って、ΔTの決定に当たっては以下に示すように高度変動による観測対象までの距離の変動分を見込んでおく必要がある。
ΔΤ=2(Rmax +ΔR+ )/c −2(Rmin −ΔR- )/c…(3) ΔR+ :軌道高度の増加幅ΔR- :軌道高度の減少幅この(3)式より与えられるΔΤの値は、前記(2)式により与えられるΔTの値より大きくなり、本来必要なデータ量よりも余分なデータを地上に伝送しなければならいことになる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】以上のように従来のレーダ装置では、所定の基準物までの間に位置する観測対象の観測を行う場合、散乱波を受信する期間を決定するに当たっては基準物までの距離の変動分を考慮する必要があるために必要以上に大きく設定せざるを得ず、収集する情報の量が増大するという不具合があった。
【0005】またこのように収集する情報の量が増大すると、この収集した情報をデータ通信により伝送する場合、容量が大きなデータ回線が必要となってしまう。逆にデータ回線の容量が制限されている場合には、伝送するデータ量がデータ回線の容量を超えてしまう恐れがあった。
【0006】本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、実際に収集すべき情報の量の減少を図ることができるレーダ装置を提供することにある。また本発明の別の目的は、データ通信により伝送するデータ量を減少し、データ回線を有効利用することを可能とするレーダ装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】以上の目的を達成するために本発明は、例えば宇宙航行体に搭載されて地球との間の気象現象を観測するものであるレーダ装置を、例えば地表面などの所定の基準物に向けて所定のパルス波を送信する、例えばパルス送信機と観測用アンテナ装置とからなるパルス送信手段と、到来する散乱波を受信して観測信号を生成する、例えば観測用アンテナ装置と受信機とからなる受信手段と、この受信手段での散乱波の受信状況に基づいて前記基準物の位置を推定し、前記パルス送信手段がパルス波を送信してから前記基準物での散乱波が前記受信手段により受信されるまでの時間を推定する例えば地表面検出回路などの推定手段と、例えばデータ抽出回路などの抽出手段を備えて構成し、前記抽出手段が、前記受信手段により生成された観測信号のうち、前記パルス送信手段がパルス波を送信してから所定の時間が経過した時点から、前記パルス送信手段がパルス波を送信してから前記推定手段により推定された時間が経過した時点までの間に生成された観測信号のみを有効観測信号として抽出するようにした。
【0008】また別の本発明は前記発明に加えて、前記抽出手段により抽出された有効観測信号を所定の観測信号収集局に向けて送信する、例えばデータ送信機とデータ送信用アンテナ装置とからなる観測信号送信手段を備えた。
【0009】これらの手段を講じたことにより、観測対象を観測するのに本当に必要となる最小限の信号のみが有効観測信号として抽出されるので、収集する情報の量が最小限に抑えられる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の一実施形態につき説明する。図1は本実施形態に係るレーダ装置の構成を示す機能ブロック図である。なお本実施形態では、人工衛星に搭載されて地球の気象現象を観測するために用いられるものを例示する。
【0011】図1に示すように本実施形態のレーダ装置は、観測用アンテナ装置11、サーキュレータ12、パルス送信機13、受信機14、Α/D変換器15、メモリ16、地表面検出回路17、データ抽出回路18、データ送信機19および通信用アンテナ装置20を有してなる。
【0012】観測用アンテナ装置11は、パルス送信機13からパルス波信号の供給を受けて、地球に向けてパルス波を送信する。また観測用アンテナ装置11は、例えば降雨Rなどの観測対象や地表面Eでの散乱波を受け、電気信号(以下、観測信号と称する)に変換する。
【0013】サーキュレータ12は、パルス送信機13から出力されるパルス波信号を観測用アンテナ装置11へ供給するとともに、観測用アンテナ装置11から出力される観測信号を受信機14へと与える。
【0014】パルス送信機13は、周期的に所定のパルス波信号を出力する。受信機14は、観測用アンテナ装置11からサーキュレータ12を介して与えられる観測信号に対して、増幅、周波数変換、検波等の処理を施しビデオ信号(ベースバンド信号)に変換する。受信機14は生成したビデオ信号を、A/D変換器15に与える。
【0015】A/D変換器15は、受信機14から与えられるビデオ信号をディジタルデータに変換し、メモリ16に与える。メモリ16は、A/D変換器15から与えられるディジタルデータを一時的に記憶する。
【0016】地表面検出回路17は、メモリ16に記憶されたディジタルデータを読み出し、このディジタルデータに基づいて地表面E(陸上のみでなく海面をも含む)の位置を検出する。そして地表面検出回路17は、検出した地表面Eの位置をデータ抽出回路18に通知する。
【0017】データ抽出回路18は、メモリ16に記憶されたディジタルデータのうちから所定の有効データを抽出し、データ送信機19へと与える。データ送信機19は、データ抽出回路18から与えられるディジタルデータを変調し、通信用アンテナ装置20を介して地上局Bへ向けて送出する。
【0018】次に以上のように構成されたレーダ装置の動作を説明する。観測用アンテナ装置11には、サーキュレータ12を介してパルス送信機13から短いパルス波信号が一定周期で与えられ、パルス波信号に対応するパルス波を地表面Eに向けて送信する。
【0019】このパルス波が降雨Rや地表面Eに当たると散乱して散乱波となり、その一部が観測用アンテナ装置11に到達する。このように観測用アンテナ装置11に到達した散乱波は、観測用アンテナ装置11により観測信号に変換され、サーキュレータ12を介して受信機14に与えられる。
【0020】ここで、パルス送信機13と受信機14とは、送信動作と受信動作とが時分割に行われるよう動作タイミングが制御されている。また受信機14の受信期間ΔTは、光速をc、観測対象が存在すると推定される最も近い距離をRmin 、最も遠い距離をRmax 、軌道高度の増加幅をΔR+ 、軌道高度の減少幅をΔR- としたとき、ΔΤ=2(Rmax +ΔR+ )/c−2(Rmin −ΔR- )/cなる式、すなわち[従来の技術]の項で示した(3)式により決定される。
【0021】受信機14は、このΔTの期間に与えられる観測信号に対して増幅、周波数変換および検波等の処理を施してビデオ信号に変換する。このように受信機14で得られたビデオ信号は、A/D変換器15でディジタル化され、メモリ16に格納される。
【0022】さて従来は、受信期間ΔTに得られたディジタルデータの全てを地上局Bに向けて送信していた。すなわち、従来は自己の位置を基準として観測範囲を決定していたため、軌道高度の変動を考慮して決定した受信期間ΔTの全てを観測範囲とせざるを得ず、その期間に得られるディジタルデータの全てを地上局Bに向けて送信しなければならなかった。しかし、観測対象からの散乱波が存在する範囲は、地表面Eを基準にすると軌道高度に関係なく一定である。
【0023】そこで本実施形態では、1受信期間に得られたディジタルデータの全てをメモリ16に一旦格納し、このデータに基づいて地表面検出回路17が地表面Eの位置の検出を行い、検出結果をデータ抽出回路18に通知する。地表面検出回路17において地表面Eの位置を検出する方法は種々考えられるが、一般的に降雨等の観測対象からの散乱波に比べて地表面Eからの散乱波は非常に強いため、受信データの中から最も強い信号の位置を地表面Eの位置として検出するのが比較的簡単な方法である。
【0024】データ抽出回路18は、地表面検出回路17から通知された地表面Eの位置を基準として、図2に示すようにその地表面Eから所定の高度までの範囲を要求観測範囲として判定し、この期間に相当するディジタルデータのみをメモリ16から取出す。そしてデータ抽出回路18は、抽出したディジタルデータをデータ送信機19に与え、地上局Bに向けて送信させる。
【0025】地上局Bでは、以上のように送出されたデータを受信し、所定のデータ処理が行われる。以上のように本実施形態によれば、高度変動マージンに相当する分のデータの送信を行わずに、実際に必要な要求観測範囲に対応するデータのみを地上局Bに向けて送信するので、地上局Bとの間で伝送するデータの量を必要最小限として従来よりも低減することができ、地上局Bとの間のデータ回線の容量を最小化できる。
【0026】なお本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、地表面検出回路17としてのハードウェアを設ける形で説明したが、レーダ装置の信号処理をCPUを搭載してソフトウェアで処理するような構成とする場合は、地表面検出ソフトウェアとして地表面Eからの散乱波を検出する手段を設けてもよい。
【0027】また上記実施形態では、散乱波の受信状況をそのまま地球局Bに向けて送信し、地上局においてデータ処理を行うものとしているが、レーダ装置内でデータ処理を行うようにしても良い。この場合、上記実施形態のように伝送データ量を減少するという効果は生じないが、データ処理の対象となるデータの量が少ないので、データ処理を短時間に終了することが可能となり、処理後のデータを地上局Bに伝送するまでに要する時間を短縮できるという効果が生じる。
【0028】また上記実施形態では、人工衛星に搭載されて地球の気象現象を観測するものを例示しているが、例えば航空機などの他の飛翔体に搭載することも可能である。また観測対象も気象現象には限定されない。さらに基準物も地球(地表面E)には限定されず、他の天体であっても良いし、あるいは天体以外の物体であっても良い。このほか、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形実施が可能である。
【0029】
【発明の効果】本発明によれば、例えば宇宙航行体に搭載されて地球との間の気象現象を観測するものであるレーダ装置を、例えば地表面などの所定の基準物に向けて所定のパルス波を送信する、例えばパルス送信機と観測用アンテナ装置とからなるパルス送信手段と、到来する散乱波を受信して観測信号を生成する、例えば観測用アンテナ装置と受信機とからなる受信手段と、この受信手段での散乱波の受信状況に基づいて前記基準物の位置を推定し、前記パルス送信手段がパルス波を送信してから前記基準物での散乱波が前記受信手段により受信されるまでの時間を推定する例えば地表面検出回路などの推定手段と、例えばデータ抽出回路などの抽出手段を備えて構成し、前記抽出手段が、前記受信手段により生成された観測信号のうち、前記パルス送信手段がパルス波を送信してから所定の時間が経過した時点から、前記パルス送信手段がパルス波を送信してから前記推定手段により推定された時間が経過した時点までの間に生成された観測信号のみを有効観測信号として抽出するようにしたので、実際に収集すべき情報の量の減少を図ることができるレーダ装置となる。
【0030】また別の本発明によれば、前記発明に加えて、前記抽出手段により抽出された有効観測信号を所定の観測信号収集局に向けて送信する、例えばデータ送信機とデータ送信用アンテナ装置とからなる観測信号送信手段を備えたので、データ通信により伝送するデータ量を減少し、データ回線を有効利用することを可能とするレーダ装置となる。
【出願人】 【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
【出願日】 平成9年(1997)11月28日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外6名)
【公開番号】 特開平11−160427
【公開日】 平成11年(1999)6月18日
【出願番号】 特願平9−328337