| 【発明の名称】 |
レーダ装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】川久保 淳史
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| 【要約】 |
【課題】安価なディジタル・ビーム・フォーミングレーダ装置を提供すること。
【解決手段】送信信号を電磁波として放射する送信部と、電磁波が物体に到達してこの物体から再放射された電磁波を受信信号として受信する複数の素子アンテナからなるアレーアンテナと、出力端子を切換信号によりこの出力端子に択一的に接続される複数の入力端子とを有し各入力端子が素子アンテナのいずれかに接続される切換手段と、切換手段の出力端子から得られた受信信号を送信信号の一部を用いてダウンコンバートすることにより送信信号と受信信号との差信号を生成し、この差信号をディジタル信号に変換する受信部と、この受信部からのディジタル信号に対して所定の処理を施して物体までの距離または物体の相対速度を検出するディジタル信号処理部とを備えたレーダ装置。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 送信信号を電磁波として放射する送信部と、前記電磁波が物体に到達してこの物体から再放射された電磁波を受信信号として受信する複数の素子アンテナからなるアレーアンテナと、出力端子を切換信号によりこの出力端子に択一的に接続される複数の入力端子とを有し前記各入力端子が前記素子アンテナのいずれかに接続される切換手段と、前記切換手段の出力端子から得られた前記受信信号を前記送信信号の一部を用いてダウンコンバートすることにより前記送信信号と前記受信信号との差信号を生成し、この差信号をディジタル信号に変換する受信部と、前記受信部からのディジタル信号に対して所定の処理を施して前記物体までの距離または前記物体の相対速度を検出するディジタル信号処理部とを備えたことを特徴とするレーダ装置。 【請求項2】 前記切換信号の周波数は前記送信信号の周波数よりも小さく前記差信号の周波数よりも大きい範囲で設定されることを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。 【請求項3】 前記切換手段は、前記切換信号周波数よりも高く前記送信信号周波数よりも低い周波数の断続信号により前記出力端子と前記入力端子の接続を断続するものであり、前記受信部は前記切換手段からの受信信号を送信信号を用いてダウンコンバートし、このダウンコンバートされた信号をさらに前記断続信号を用いてダウンコンバートして前記差信号を生成するものであることを特徴とする請求項2に記載のレーダ装置。 【請求項4】 前記切換手段の出力端子から出力される前記別受信信号に対して前記素子アンテナ別に前記切換信号周波数に応じた位相補正を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のレーダ装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、信号処理をディジタル的に行うレーダ装置に関するものであり、特に、複数の素子アンテナからなるアレーアンテナを備え、アンテナビームをディジタル処理で形成するディジタル・ビーム・フォーミング(DBF)型のレーダ装置に関するものである。 【0002】 【従来の技術】DBF型のレーダ装置として、特開平6−88869号に記載されたものがある。この従来のレーダ装置では、アレーアンテナを構成する各素子アンテナごとにRFアンプ、ミキサ、フィルタ、A/D変換器が接続されており、各A/D変換器から出力されるディジタル信号をディジタル・ビーム・フォーミング・プロセッサに取り込んで、ディジタル・ビーム・フォーミング処理を行う。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】一般に、レーダ装置では、マイクロ波やミリ波のような高周波電磁波を用いているが、このような高周波で動作するアナログデバイス(RFアンプやミキサなど)は非常に高価である。 【0004】上述した従来のレーダ装置では、素子アンテナ毎にこれらのアナログデバイスが設けられているので多数のアナログデバイスが必要であり、高い製造コストを余儀なくされている。特に、性能向上のための一つの手段として、素子アンテナの数を増加することが挙げられるが、素子アンテナの増加はそれに付随する高周波アナログデバイスの増加につながり、コストの増加をもたらす。したがって、素子アンテナ数の増加が困難であった。また、アナログデバイスの増加はレーダ装置の大型化にもつながってしまう。 【0005】 【課題を解決するための手段】このような問題を解決するために本発明のレーダ装置は、送信信号を電磁波として放射する送信部と、電磁波が物体に到達してこの物体から再放射された電磁波を受信信号として受信する複数の素子アンテナからなるアレーアンテナと、出力端子を切換信号によりこの出力端子に択一的に接続される複数の入力端子とを有し各入力端子が素子アンテナのいずれかに接続される切換手段と、切換手段の出力端子から得られた受信信号を送信信号の一部を用いてダウンコンバートすることにより送信信号と受信信号との差信号を生成し、この差信号をディジタル信号に変換する受信部と、この受信部からのディジタル信号に対して所定の処理を施して物体までの距離または物体の相対速度を検出するディジタル信号処理部とを備えたことを特徴とする。 【0006】切換手段の切換動作により各素子アンテナで受信した受信信号を時間的に区切り順番に繰り返し受信部に入力することができる。受信部では素子アンテナ別に順次入力される受信信号をダウンコンバートして送信信号と受信信号との差信号を生成し、素子アンテナ別に連続する差信号をディジタル信号に変換する。ディジタル信号処理部では、受信部からのディジタル信号に所定の処理を施して物体の位置情報または速度情報を検出する。受信部には各素子アンテナからの信号が直列に入力されるので、ダウンコンバートに必要なデバイスを素子アンテナ毎に用意する必要が無く、一組だけあれば十分である。 【0007】切換手段は、切換信号周波数よりも高く送信信号周波数よりも低い周波数の断続信号により出力端子と入力端子の接続を断続するものであり、受信部は切換手段からの受信信号を送信信号の一部を用いてダウンコンバートし、このダウンコンバートされた信号をさらに断続信号を用いてダウンコンバートして差信号を生成するものであることが望ましい。 【0008】受信部では2段階のダウンコンバートを行って送信信号と受信信号との差信号を生成するので、1段階でダウンコンバートする、いわゆるホモダイン検波においては分離除去できなかった1/fノイズやFM−AM変換ノイズ等を有効に分離除去することができる。一段目のダウンコンバートで得られる信号周波数が断続信号分だけ引き上げられているので、低周波のノイズ成分と分離することができる。 【0009】 【発明の実施の形態】図1は本発明の一実施形態であるレーダ装置を示す構成図である。このレーダ装置は、連続波(CW)に周波数変調(FM)を掛けた送信信号を用いるFM−CWレーダ装置であり、且つ、ディジタル・ビーム・フォーミング処理を行うDBFレーダ装置である。 【0010】本実施形態の具体的な構成および動作を説明するのに先だって、FM−CWレーダ装置の探知原理およびDBF技術の基本概念を説明する。 【0011】はじめに、FM−CWレーダの探知原理を図2および図3のグラフを用いて説明する。図2(A)は、送信周波数の変化と、距離Rの位置にあり相対速度が零の目標物から再放射された受信周波数の変化とを示したグラフであり、縦軸に周波数、横軸に時間をとっている。実線は送信信号周波数を示し、破線は受信信号周波数を示している。このグラフから判るように、送信信号には連続波に三角状の周波数変調を掛けた変調信号を用いる。変調波の中心周波数はf0、周波数偏移幅はΔF、三角波の繰り返し周波数はfmである。また、図3(A)は、目標物の相対速度が零でなく速度Vのときの受信信号の変化とを示したグラフであり、実線は送信信号周波数を示し、破線は受信信号周波数を示している。なお、送信信号および座標軸の意義は図2(A)と同じである。 【0012】図2(A)および図3(A)から、このような送信信号を放射しているときの受信信号は、目標物の相対速度が零のときには距離に応じた時間遅れT(T=2R/C:Cは光の速度)を受け、目標物の相対速度がVのときには距離に応じた時間遅れTと、相対速度に相当する周波数偏移Dを受けることが判る。なお、図3(A)に示す例は、受信信号周波数が同グラフにおいて上方に偏移しており、目標物が接近する場合を示している。 【0013】この受信信号に対して送信信号の一部をミキシングすれば、ビート信号が得られる。図2(B)および図3(B)は、それぞれ目標物の相対速度が零のときとVのときのビート周波数を示すグラフであり、時間軸(横軸)はそれぞれ図2(A)および図3(A)とタイミングを一致させてある。 【0014】いま、相対速度が零のときのビート周波数をfr、相対速度に基づくドップラ周波数をfd、周波数が増加する区間(アップ区間)のビート周波数をfb1、周波数が減少する区間(ダウン区間)のビート周波数をfb2とすると、fb1=fr−fd …(1) fb2=fr+fd …(2) が成り立つ。 【0015】したがって、変調サイクルのアップ区間とダウン区間のビート周波数fb1およびfb2を別々に測定すれば、次式(3)(4)からfrおよびfdを求めることができる。 【0016】 fr=(fb1+fb2)/2 …(3) fd=(fb1−fb2)/2 …(4) frおよびfdが求まれば、目標物の距離Rと速度Vを次の(5)(6)式により求めることができる。 【0017】 R=(C/(4・ΔF・fm))・fr …(5) V=(C/(2・f0))・fd …(6) ここに、Cは光の速度である。 【0018】このようにして任意のビーム方向について目標物の距離Rおよび速度Vを求めることができるので、ビーム走査を行いながら距離Rおよび速度Vを順次算出すれば、目標物の方位、距離、速度を探知することができる。これがFM−CWレーダの原理である。 【0019】つぎに、本発明において利用するディジタルビームフォーミング(DBF)技術の基本概念について説明する。DBFは、複数の素子アンテナで構成されるアレーアンテナの各々の信号をA/D変換してディジタル信号処理部に取り込み、ビーム走査やサイドローブ特性等の調整をディジタル信号処理部で実現する技術である。DBFによるビーム走査原理は、フェーズドアレーアンテナレーダと比較すると理解しやすいので、まず、フェーズドアレーアンテナレーダについて説明する。 【0020】図4はフェーズドアレーアンテナレーダの基本構成を示す図である。レーダの中心方向Xに対して、角度θの方向から到来する電波を間隔dで配列されたn個の素子アンテナからなるアレーアンテナで受信する場合、素子アンテナ(CH1)に対する電波の伝搬経路長を基準とすると、素子アンテナ(CH2)、…、素子アンテナ(CHn)に対する各伝搬経路長は、図4に示すように、それぞれdsinθ、…、(n−1)dsinθだけ長くなる。したがって、その分だけ素子アンテナ(CH2)、…、素子アンテナ(CHn)に到達する電波の位相が素子アンテナ(CH1)に到達する電波の位相よりも遅れる。 【0021】この遅れ量は、それぞれ(2πdsinθ)/λ、…、(2(n−1)πdsinθ)/λとなる。ここに、λは電波の波長である。この遅れ分を各素子アンテナの後段に設けられた移相器で戻して位相を進めてやると、θ方向からの電波が全素子アンテナにおいて同位相で受信されることになり、指向性がθ方向に向けられたことになる。各移相器を経た受信信号を合成した後の信号処理は機械式走査と同様であり、低雑音増幅器(アンプ)で増幅し、送信信号とミキシングすることによりダウンコンバートして信号処理回路に送られる。 【0022】このようなフェーズドアレーアンテナレーダによれば、各移相器の移相量を適宜制御することにより、素子アンテナで構成されるアレーアンテナを固定したまま任意の方向に指向性を動かすことができる。 【0023】DBFレーダは、フェーズドアレーアンテナレーダの移相器の機能をディジタル信号処理で行うものである。図5にDBFレーダの基本構成を示す。各素子アンテナ毎にそれぞれ低雑音増幅器(アンプ)が設けられ、それぞれミキサにおいてダウンコンバートされる。ダウンコンバート後の信号は、フィルタをかけられた後にA/D変換器によりディジタル信号に置き換えられ、ディジタル信号処理(DSP)回路に送られる。 【0024】DSP回路では、位相と振幅を自由に変えることができるため、各チャネルのディジタル受信信号をある規則で位相、振幅変換して全チャネルの合成を行うと、任意の方向に任意の形状でアンテナの指向性を形成することができる。これをディジタルビームフォーミング(DBF)という。 【0025】DBFの大きな特徴は、全素子アンテナ(全受信チャネル)の信号を一旦ディジタル信号として取り込んでしまうと、それをもとに任意の方向にビーム合成ができるため、一回の信号取り込みで複数のビームを形成することができることにある。 【0026】図1に示す本発明の一実施形態であるレーダ装置は、このようなDBFの原理をFM−CWレーダ装置に適用し、さらに、従来のDBFレーダ装置では素子アンテナごとに設けられていたRFアンプやミキサなどのアナログデバイスを全体で一組備えた構成としている。 【0027】このレーダ装置は、送信部1、アレーアンテナ2、切換スイッチ3、受信部4、およびディジタル信号処理部5を備えている。 【0028】送信部1は、中心周波数がf0(たとえば60GHz)の電圧制御型発振器11と、バッファアンプ12と、送信アンテナ13と、RFアンプ14とを備えている。発振器11は、図示省略した変調用の直流電源から出力される制御電圧によって、f0±ΔFの被変調波(送信信号)を出力する。被変調波はバッファアンプ12で増幅され、送信アンテナ13から電磁波として放射される。なお、送信信号の一部はRFアンプ14で増幅され受信検波用のローカル信号として出力される。 【0029】受信用アレーアンテナ2は、第1チャネル(CH1)から第nチャネル(CHn)までの各チャネルに対応するn個の素子アンテナを備えている。切換スイッチ3は、n個の入力端子と1個の出力端子とを有し、各入力端子にはアレーアンテナ2の各素子アンテナが1個づつ接続されている。出力端子は入力端子のいずれか一つと接続されるものであり、切換信号(クロック信号)により、その接続は周期的に切り換えられる。接続切換は、回路上で電気的に行われる。 【0030】受信部4は、RFアンプ41、ミキサ42、アンプ43、フィルタ44、A/D変換器45および切換信号発振器46を備えている。切換スイッチ3の出力端子から出力された信号、すなわち、アレーアンテナ2のいずれかの素子アンテナで受信した信号は、RFアンプ41で増幅され、ミキサ42でRFアンプ14からの送信信号の一部とミキシングされる。このミキシングにより受信信号はダウンコンバートされ、送信信号と受信信号との差信号であるビート信号が生成される。ビート信号は、アンプ43およびローパスフィルタ44を介してA/D変換器45に入力され、発振器46の出力信号すなわち切換スイッチ3での接続切換を行うためのクロック信号のタイミングでディジタル信号に変換される。 【0031】ディジタル信号処理部5は、A/D変換器45からのディジタルビート信号を入力して上述した原理に基づいてディジタル・ビーム・フォーミング(DBF)を行う。 【0032】つぎに、このように構成されたレーダ装置の全体動作を説明する。 【0033】送信信号の周波数をfTX、受信信号の周波数をfRX(i)、ただし(i=1,2,…,n)、ビート信号の周波数をfb(i)ただし(i=1,2,…,n)とすると、ビート信号の周波数fb(i)は、fb(i)=|fTX−fRX(i)| …(7) と表される。 【0034】ここで、自動車搭載用のレーダ装置を例にとってみると、fTX≒fRX(i)≒60GHz、fb(i)<100kHz程度になる。このとき、切換スイッチ3の切換信号であるクロック信号の周波数fswを数MHz〜数百MHzとなるように設定すると、ミキサ42では、各チャネル(素子アンテナ)からの受信波(60GHz帯)を数百〜数千周期ずつダウンコンバートしてfb(i)を1からnまで順番に繰り返し生成することになる。 【0035】このダウンコンバートされた信号の様子を図6に示す。この図では、簡単のために、受信チャネル数nをn=8とし、さらに、fswの値を小さくしてfb(i)に近い値にしている。また、CH1からCH8の各素子アンテナ毎に得られるビート信号の位相が少しずつずれているものとする。 【0036】図6において、細線で示した8つの曲線は、アレーアンテナ2の各チャネル(素子アンテナ)において受信された信号をそれぞれダウンコンバートしたと仮定した場合のビート信号を示している。本実施形態では切換スイッチ3において周波数fswでチャネル切換が行われるので、ミキサ42で得られるビート信号は、太線で示した細切れのビート信号となる。このチャネル別の細切れのビート信号は、アンプ42およびフィルタ44を経てA/D変換器45に入力される。 【0037】A/D変換器45では、切換スイッチ3の切換タイミングと同期させてA/D変換するので、A/D変換されたディジタルデータとチャネルとが1対1に対応する。各チャネルにおけるA/D変換のタイミングは、切換スイッチ3の切換タイミングよりも少しだけ遅らせることにより、接続期間の中心とする。図7は図6における第1チャネルの信号を抽出して示したグラフであり、黒い点で示した位置がA/D変換のタイミングである。 【0038】つぎに、ディジタル信号処理部5では、8チャネル分の連続データを8系列のバッファにある一定量、たとえば、各チャネル毎に1024点分を蓄積する。各チャネルと各バッファは1対1で対応しており、バッファの第1系列には、第1チャネルの細切れのディジタルビート信号が1024点分保存され(図7ではそのうちの3点が示されている)、同様に、バッファの第2系列〜第8系列には、それぞれ第2チャネル〜第8チャネルのディジタルビート信号が保存される。 【0039】この例では、上述したように、図示を容易にするためにfswの値を小さくしてfb(i)に近い値にしている。しかし、実際にはfsw>>fb(i)であり、ビート信号の周期に対して切換信号の周期は図示されたものより遥かに短く、ビート信号はさらに細かく細分化されている。なお、fb(i)の再生は、サンプリング定理が成り立つ周波数(fsw/(2×チャネル数))まで行うことができる。 【0040】ディジタル信号処理部5では、各チャネル毎に分かれたデータ系列は、各チャネル毎にダウンコンバートを行う従来のDBFレーダ装置の場合と同様に処理される。すなわち、FFT処理が行われた後、図4および図5を用いて説明したDBFの考え方に従って位相回転処理を加えることにより、指向角度別のビーム合成が行われ、各ビーム毎のビート信号周波数から物体までの距離および物体の速度が上記(5)(6)式に基づいて算出される。そして、最後に、これらの結果を総合して物体の位置および速度が認識される。 【0041】図8は、以上詳細に説明してきた本実施形態のレーダ装置の動作に関する一連の流れをひとまとめにして示すフローチャートである。チャネル番号をi、データサンプリング番号をjとすると、まず、ステップ801でi=1、j=1を設定する。ついで、クロック信号fswの取り込みを行い(ステップ802)、クロック信号のエッジを検出したら切換スイッチ3の出力端子をCHiの入力端子に切り換える(ステップ803、804)。いま、i=1であるので、出力端子はCH1の入力端子に接続される。 【0042】つづいて、クロック信号の周期の1/2の時間t(t=1/2fsw)だけ遅延して、A/D変換器45でA/D変換処理を行い、その処理で生成されたディジタルデータをディジタル信号処理部5内のバッファへ取り込む(ステップ805、806)。いま、i=1、j=1であるので、第1系列のバッファに1番目のサンプルデータが保存される。 【0043】その後、i=i+1の処理を行い(ステップ807)、ステップ802に戻って、i>8を満足するまでステップ802〜807までの処理を繰り返す(ステップ808)。この繰り返しにより、ディジタル信号処理部5内の第1〜第8系列の各バッファにそれぞれ第1番目のサンプリングデータが保存される。 【0044】ステップ808でi>8が満たされると、ステップ809に移行し、i=1、j=j+1の設定が行われる。いままでj=1であったから、ここでj=2となる。ステップ810ではj>1024か否かの判断がなされ、j>1024が満たされるまでステップ802〜809までの処理が繰り返される。この繰り返しによって、ディジタル信号処理部5内の第1〜第8系列の各バッファにそれぞれ第1番目〜第1024番目のサンプリングデータがすべて保存される。 【0045】その後、DBF合成が行われ、さらにその合成結果に基づいて物体の認識が行われる(ステップ811)。 【0046】ところで、この実施形態では、各チャネルの計測時刻は1/fswずつずれているので、正確には同時刻に得られたデータではない。fsw>>fb(i)が十分に成り立っている場合、たとえば、fsw>fb(i)×1000程度が成り立っている場合であれば、同時刻とみなして合成することが可能であるが、そうでない場合は、位相回転の回転量(指向角度)に対してチャネル別にその周波数に対応した補正を加えることが望ましい。 【0047】その補正量φは、CH1を基準(補正なし)とすると、 φ=(fb(i)/fsw)×(i−1)×2π …(8) ただし、i=1,2,…,nとなる。 【0048】つぎに、本発明の他の実施形態を説明する。図9は本発明の第2実施形態であるレーダ装置の構成を示す図である。第1実施形態のレーダ装置がホモダイン検波を行うものであるのに対し、この実施形態のレーダ装置はヘテロダイン検波を行うことによりノイズの低減を図ったものである。 【0049】マイクロ波やミリ波のような高周波信号をヘテロダイン検波することは、容易なことではない。それは、受信信号を中間周波数にダウンコンバートする際に用いる送信周波数±中間周波数のローカル信号を安定に供給する発振器を安価に構成することが困難だからである。そこで、この実施形態では、そのような発振器が不要なレーダ装置となっている。 【0050】図9において、図1と同一の要素には同一の符号を付してあり、その詳細な説明は省略する。切換スイッチ6は、図1の切換スイッチ3と同様に、n個の入力端子と1個の出力端子とを有し、出力端子は入力端子のいずれか一つと接続され、発振器46からの切換信号(クロック信号)によりその接続が周期的に切り換えられる。切換スイッチ3とは、入力端子と出力端子の接続を外部入力される断続信号により断続されるようになっている点が相違する。 【0051】受信部7は、図1の受信部5のミキサ42とアンプ43との間にIFアンプ71および第2ミキサ72を直列に挿入した構成となっている。発振器46の他に発振器73を有し、発振器73は切換信号よりも数十倍の周波数をもつ断続信号fIFを出力するものである。各信号周波数の一例を示すと、送信信号周波数f0がたとえば60GHz、中間周波数帯である断続信号周波数fIFがたとえば100MHz、切換信号周波数がたとえば5MHz、ビート信号周波数がたとえばDC〜100KHzである。 【0052】つぎに、このように構成された本実施形態のレーダ装置の動作を説明する。 【0053】アレーアンテナ2の各素子アンテナで受信した受信信号(f0±fb)は、切換スイッチ6によって、順次CH1、CH2、…、CHnの順にRFアンプ41に接続され、接続されたチャネルは断続信号によってその接続のオン・オフを繰り返す。 【0054】図10は、切換スイッチ6におけるスイッチングのタイミングチャートを示すものである。この図から、周波数fswの切換信号の立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジでチャネルの切り換えが行われ、この切り換えによって択一的に選択されたチャネルに対して周波数fIFの断続信号による接続のオン・オフが行われることが判る。 【0055】この切換スイッチ6における切換動作および断続動作により、切換スイッチ6の出力端子から出力される信号の周波数は、(f0±fb)±fIF、すなわちf0±fIF±fbとなる。 【0056】この信号をRFアンプ41で増幅した後ミキサ42に入力すると、RFアンプ14から得られる送信信号の一部とミキシングされ、fIF±fbの周波数をもつ中間信号が得られる。 【0057】図11はミキサ41から出力される中間信号を示したタイミングチャートである。この図から判るように、ミキサ41から出力される中間信号は、周波数fIFの断続信号をキャリア信号としてチャネル別にビート信号によりAM変調された信号である。なお、図11は、第1実施形態での説明と同様に、説明を容易にするために、受信チャネル数nをn=8とし、さらに、fswを小さくしてfb(i)に近い値にしている。また、CH1からCH8の各素子アンテナ毎に得られるビート信号の位相が少しずつずれているものとしている。 【0058】このようにして得られた周波数fIF±fbの中間信号を、IFアンプ71で増幅した後、第2ミキサ72において周波数fIFの断続信号とミキシングすると、チャネル順に連続したビート信号が得られる。図12は、第2ミキサ72から出力されるビート信号を示したものである。 【0059】この後の処理は、第1実施形態と同様であり、アンプ43、フィルタ44を経てA/D変換器45に入力され、周波数fswの切換信号に同期させてA/D変換され、そのディジタルデータ出力はディジタル信号処理部5に入力される。ディジタル信号処理部5での処理も第1実施形態と同様であり、入力されたディジタルデータに対してFFT処理が行われた後、位相回転処理を加えることにより、指向角度別のビーム合成が行われ、各ビーム毎のビート信号周波数から物体までの距離および物体の速度が算出される。そして、最後に、これらの結果を総合して物体の位置および速度が認識される。 【0060】図13は、本実施形態における信号処理過程での周波数変換の様子を示すスペクトルマップである。本実施形態のレーダ装置では、受信信号130を切換スイッチ6での断続信号に従うオンオフにより信号131および132に置き換えた後、ミキサ42で中間信号133までダウンコンバートし、続いて、第2ミキサ72でビート信号134までダウンコンバートする。 【0061】図13において、曲線135はミキサ42のノイズフロアを示し、曲線136は第2ミキサ72のノイズフロアを示している。この図から判るように、ミキサ42では、そのノイズの影響が低下するIF帯までのダウンコンバートが行われ、ついで、低域のノイズがミキサ42よりも低い第2ミキサ72でビート信号までのダウンコンバートが行われる。したがって、ホモダイン方式に比べて大幅にノイズマージンを拡大することができる。 【0062】ミキサ42は、帯域が非常に広いため、一般には低域側の1/fノイズやFM−CW方式によるFM−AM変換ノイズが多く出てしまうが、第2ミキサ72は、帯域が狭くなるので、ノイズフロアが低下する。本実施形態ではこのような作用を利用してノイズマージンの拡大を達成している。 【0063】なお、第2ミキサ72の前段のIFアンプ71を狭帯域化すると、低周波域で発生するFM−AM変換ノイズとIF信号を分離できるので、さらに低域ノイズを低下させることができる。 【0064】上述した第1および第2実施形態はいずれもFM−CW方式のレーダ装置であるが、送信信号と受信信号の差信号を用いて物体の位置または速度を認識するものであれば、他の方式のレーダ装置においても本発明を適用することができる。 【0065】 【発明の効果】以上説明したように、本発明のレーダ装置によれば、ダウンコンバートに必要な高価なデバイス、たとえば、RFアンプや高帯域のミキサ等を素子アンテナの数に無関係に一組だけ設ければよい。したがって、装置全体を安価に構成することができ、しかも、小型化することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003207 【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
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| 【出願日】 |
平成9年(1997)11月28日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】長谷川 芳樹 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開平11−160423 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)6月18日 |
| 【出願番号】 |
特願平9−328644 |
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