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【発明の名称】 測位端末装置
【発明者】 【氏名】野本 弘平

【要約】 【課題】従来の測位端末装置では、測位のために、非線形方程式で記述される物理過程を解くための逐次近似法による計算や、地心座標系と局所測地座標系の問題も加わって、複雑な非線形の計算となる直交座標から経度緯度高度座標への座標変換の計算に要する、時間的あるいはコスト的な負荷が大きい、という課題があった。

【解決手段】位置基準局の位置と伝播時間の測定値とを入力し、未知の位置の測位結果を計算して出力するニューラルネットワークと、前記ニューラルネットワークに、その入出力関係を学習させる調整量を出力する調整量計算器を有する学習部とを具備するようにした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 位置基準局との間の電波の伝播時間を測定することにより、未知の位置を求める測位端末装置において、前記位置基準局の位置と前記伝播時間の測定値とを入力し、未知の位置の測位結果を計算して出力するニューラルネットワークと、前記ニューラルネットワークに、その入出力関係を学習させる調整量を出力する調整量計算器を有する学習部とを具備したことを特徴とする測位端末装置。
【請求項2】 前記学習部に、位置基準局の位置と伝播時間の測定値とを出力するデータ発生器と、前記伝播時間の測定値を入力し、疑似距離を出力する疑似距離計算器と、前記位置基準局の位置と前記疑似距離と測位結果に関する仮の解とを入力し、前記測位結果に関する仮の解を改善して出力する逐次近似計算器と、前記逐次近似計算器が出力する前記仮の解を入力し、この値の収束を判定し、収束が判定されたときにその値を測定結果として出力する収束判定器とを具備したことを特徴とする、請求項1記載の測位端末装置。
【請求項3】 前記学習部において、前記収束判定器の出力である測位結果を入力し、これを直交座標から経度緯度高度座標に変換して出力する座標変換器を具備したことを特徴とする、請求項2記載の測位端末装置。
【請求項4】 前記学習部において、前記収束判定器の出力である測位結果を、直接、前記調整量計算器の入力としたことを特徴とする、請求項2記載の測位端末装置。
【請求項5】 前記学習部に、位置基準局の位置と未知の位置と端末時計誤差とを出力するデータ発生器と、前記位置基準局と前記未知の位置と前記端末時計誤差とを入力し、伝播時間の測定値を計算して出力する物理過程計算器とを具備したことを特徴とする、請求項1記載の測位端末装置。
【請求項6】 測定端末装置が利用される空間を運用領域として出力する運用領域指示器を具備し、前記データ発生器は前記運用領域を入力し、その領域内で前記未知の位置を変化させて出力することを特徴とする、請求項5記載の測位端末装置。
【請求項7】 前記位置基準局として、その位置が一定、あるいは、ほぼ一定である位置基準局を用いたことを特徴とする、請求項1記載の測位端末装置。
【請求項8】 受信器の出力を入力し、前記位置基準局の識別信号を出力する位置基準局識別器と、前記識別信号を入力し、前記位置基準局の位置を出力する位置基準局位置読み出し器とを具備したことを特徴とする、請求項7記載の測位端末装置。
【請求項9】 受信器の出力を入力し、前記位置基準局の位置を出力する位置基準局位置解読器を具備したことを特徴とする、請求項7記載の測位端末装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、位置基準局との距離を電波を利用して測定し、その距離から未知の位置を求める測位端末装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図6は、従来の代表的な測位システムであるGlobal Positioning System(以下、GPSと呼ぶ)の運用を示す図である。この図により、従来の測位端末装置の運用を説明する。
【0003】図6において、1は、未知の位置に置かれ、その位置を測位する従来の測位端末装置、2は、前記測位端末装置1に電波を送信する位置基準局としての衛星、そして、3は、前記位置基準局2が地球を周回する衛星軌道である。
【0004】図7は、社団法人日本測地協会編著「新訂版GPS、人工衛星による精密測位システム」、1989年、社団法人日本測量協会発行の第5章「単独測位」に示された従来の前記測位端末装置1の構成を示すブロック線図である。
【0005】図7において、1は、前記従来の測位端末装置、4は、前記位置基準局2が送信した前記電波を受信し、それに記された送信時刻ti を読み出して出力する受信器、5は、前記電波の受信時刻to を出力する時計、6は、前記受信器4が出力する前記送信時刻ti を入力し、前記位置基準局2の位置(xi ,yi ,zi)を出力する軌道計算器、7aは、前記位置基準局2の位置(xi ,yi ,zi)と、前記送信時刻ti と前記受信時刻to (to には端末時計誤差δt を含む)との差を入力し、測位結果を直交座標(xo ,yo ,zo ),δt で出力する測位計算部、8aは、前記直交座標の測位結果を入力し、これを経度緯度高度座標に変換して出力する座標変換器、そして、9は、前記経度緯度高度座標の測位結果を入力して表示する表示器である。以上、受信器4、時計5、軌道計算器6、測位計算部7a、座標変換器8a、そして、表示器9は、前記測位端末装置1を構成する。
【0006】さらに、図7の前記測位計算部7aにおいて、10は、前記送信時刻と前記受信時刻との差として得られる伝播時間の測定値τi を入力し、疑似距離を出力する疑似距離計算器、11は、前記位置基準局2の位置と前記疑似距離と測位結果に関する仮の解(x’,y’,z’),δt ’を入力し、前記測位結果に関する仮の解を改善して出力する逐次近似計算器、そして、12は、前記逐次近似計算器11が出力する前記仮の解を入力し、この値の収束を判定し、収束が判定されたとき、その値を測位結果として出力する収束判定器である。以上、疑似距離計算器10、逐次近似計算器11、そして、収束判定器12は、前記測位計算部7aを構成する。
【0007】上述した従来の測位端末装置の動作を以下に説明する。
【0008】まず、位置基準局2は、送信時刻ti を記した電波を送信する。
【0009】次に、測位端末装置1において受信器4は、前記位置基準局2が送信した前記電波を受信し、そこに記された送信時刻ti を読み出して出力する。
【0010】前記電波が受信されたのと同時に、あるいは一定時間遅延の後に、時計5は、前記電波の受信時刻to を出力する。ただし、前記時計5には、一般に、端末時刻誤差δt がある。このため、前記受信時刻to には、この端末時刻誤差δt が含まれている。
【0011】一方、軌道計算器6は、前記受信器4が出力する前記送信時刻ti を入力する。前記位置基準局2の衛星軌道3は公開されているから、前記送信時刻ti における前記位置基準局2の位置(xi ,yi ,zi )は、前記送信時刻ti を考慮した軌道計算により求めることができる。前記軌道計算器6は、この計算を行い、前記位置基準局2の位置を出力する。
【0012】そして、測位計算部7aは、前記軌道計算器6が出力する前記位置基準局2の位置と、前記受信器4が出力する前記送信時刻ti と前記時計5が出力する前記受信時刻to との差として得られる伝播時間の測定値τi とを入力する。このうち、前記伝播時間の測定値τi は、前述のように、前記受信時刻to が端末時計誤差δt を含んでいるため、見掛けの伝播時間としての意味を持つ。
【0013】さらに、前記測位計算部7aにおいて、疑似距離計算器10は、前記伝播時間の測定値τi を入力し、これに光速を乗ずることにより、前記測位端末装置1と前記位置基準局2との間の疑似距離rを出力する。この疑似距離rという意味も、前記端末時計誤差δt の影響を受けた距離ということを表わしている。
【0014】逐次近似計算器11は、前記軌道計算器6が出力する前記位置基準局2の位置(xi ,yi ,zi )と前記疑似距離計算器10が出力する前記疑似距離rとを入力する。一つの位置基準局2(これをi番目の位置基準局2とする)の位置と、測位端末装置1がある未知の位置との関係は、前記伝播時間の測定値τi により、次式のように表わされる。ただし、ここで、次式が直交座標で表現されることに注意する必要がある。実際には、この直交座標としては、WGS−84と呼ばれる地球固定地心直交座標が用いられる。
【0015】
【数1】

【0016】一般には、4組の位置基準局2の位置とそこまでの疑似距離とを入力する。このことにより、4つの前式を連立させることにより、前記測位端末装置1がある未知の位置を3次元で求め、前記端末時計誤差をも求める。
【0017】しかし、前式は、未知数の自乗の平方根がある非線形の方程式であり、容易には解く事ができない。そこで、未知数を、仮の解(x’,y’,z’),δt ’と補正値との和で表わし、式をその補正値について展開し、補正値は微小であるとの仮定の下に2次以上の項を省略して、線形化を行う。こうして、得られる補正値の線形連立一次方程式を解いて求められた補正値を前記の仮の解に加え、新たな仮の解、すなわち改善された解とする。そして、未知数を、この新たな仮の解と新たな補正値との和で表わし直し、以上の過程を繰り返す。この繰り返しにより、仮の解を、次第に改善し、真の値に近づけていく。このような計算の方法を、逐次近似計算法といい、前記逐次近似計算器11はこの逐次近似計算を繰り返し行い、仮の解を改善して出力する。
【0018】収束判定器12は、前記逐次近似計算器11が出力する前記改善された仮の解を入力し、その収束を判定する。具体的には、前記仮の解を計算の繰り返し毎に入力し、その値の変化量が十分に小さくなったら、収束したものと判定する。そして、収束したものと判定されたときに、その仮の解を、真の解、すなわち測位結果(xo ,yo ,zo ),δt として出力する。一方、収束したものと判定されなかった場合には、その仮の解は、再び前記逐次近似計算器11の入力となり、改善が繰り返される。ただし、前述のように。前記収束判定器12が出力する測位結果は、直交座標で表現された前式に基づいて求められたものである。
【0019】座標変換器8aは、前記収束判定器12が出力する直交座標で求められた測位結果を入力し、これを実際に日本の地図に対応できるように、日本の局所測地座標系としての経度緯度高度座標に変換し、出力する。この座標として、我が国では東京測地系(Tokyo Datum)が用いられている。
【0020】最後に、表示器9は、前記座標変換器8aが出力する経度緯度高度座標で表わされた測位結果を入力し、この位置を表示する。一般的には、地図上に表示する事が多い。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】以上に述べたように、測位は、位置基準局2から未知の位置までの電波の伝播時間を測定し、これと位置基準局2の位置とを基に、測位端末装置のある未知の位置を求めている。しかし、この関係を物理過程として見ると、図8に示すように、位置基準局2の位置と未知の位置とが先に決まっており、その位置基準局2からその未知の位置まで電波が伝播するのに要する時間が決まり、それに端末時計誤差が加わって伝播時間の測定値となるのである。この物理過程13を記述したものが、前述の位置基準局2の位置と、未知の位置との関係を、伝播時間で表わした方程式である。しかるに、図9に示すように、測位計算の過程14においては、伝播時間の測定値からその物理過程の逆問題を解いて、未知の位置を求めていることになる。ここで問題となることは、前述のように、もともとの方程式が非線形であるから、この逆問題は、逐次近似法の手間を掛けて繰り返し計算により解かなければならないということである。さらに、この方程式が立てられる直交座標系と、実際の地図との対応付けに利用される経度緯度高度座標系との間の座標変換も必要である。この座標変換も、前記「新訂版GPS、人工衛星による精密測位システム」の第7章「地球上の位置の表わし方と座標系」に詳細が述べられているように、この座標変換には、地心座標系と局所測地座標系の問題も加わって、複雑な非線形の計算となる。
【0022】従来の測位端末装置をこのような立場から見ると、測位をして地図上に照合するために、物理過程の逆問題を逐次近似法による計算で解き、さらに座標変換の計算を行っていることになる。すなわち、従来の測位端末装置1には、これらの計算処理に要する時間的あるいはコスト的な負荷が大きい、という課題があった。
【0023】この発明は、前述の課題を解決するために成されたもので、時間的あるいはコスト的な付加を要さない処理により、測位をして地図上に照合できる測位端末装置を得ることを目的とするものである。
【0024】
【課題を解決するための手段】第1の発明による測位端末装置は、前記位置基準局と位置と前記伝播時間の測定値とを入力し、未知の位置の測位結果を計算して出力するニューラルネットワークと、前記ニューラルネットワークに、その入出力関係を学習させる調整量を出力する調整量計算器を有する学習部とを具備したものである。
【0025】第2の発明による測位端末装置は、前記学習部に、位置基準局の位置と伝播時間の測定値とを出力するデータ発生器と、前記伝播時間の測定値を入力し、疑似距離を出力する疑似距離計算器と、前記位置基準局の位置と前記疑似距離と測位結果に関する仮の解とを入力し、前記測位結果に関する仮の解を改善して出力する逐次近似計算器と、前記逐次近似計算器が出力する前記仮の解を入力し、この値の収束を判定し、収束が判定されたときにその値を測定結果として出力する収束判定器とを具備したものである。
【0026】第3の発明による測位端末装置は、前記学習部において、前記収束判定器の出力である測位結果を入力し、これを直交座標から経度緯度高度座標に変換して出力する座標変換器を具備したものである。
【0027】第4の発明による測位端末装置は、前記学習部において、前記収束判定器の出力である測位結果を、直接、前記調整量計算器の入力としたものである。
【0028】第5の発明による測位端末装置は、前記学習部を、位置基準局の位置と未知の位置と端末時計誤差とを出力するデータ発生器と、前記位置基準局と前記未知の位置と前記端末時計誤差とを入力し、伝播時間の測定値を計算して出力する物理過程計算器とを具備したものである。
【0029】第6の発明による測位端末装置は、測定端末装置が利用される空間を運用領域として出力する運用領域指示器を具備し、前記データ発生器は前記運用領域を入力し、その領域内で前記未知の位置を変化させて出力するようにしたものである。
【0030】第7の発明による測位端末装置は、前記位置基準局として、その位置が一定、あるいは、ほぼ一定である位置基準局を用いたものである。
【0031】第8の発明による測位端末装置は、受信器の出力を入力し、前記位置基準局の識別信号を出力する位置基準局識別器と、前記識別信号を入力し、前記位置基準局の位置を出力する位置基準局位置読み出し器とを具備したものである。
【0032】第9の発明による測位端末装置は、受信器の出力を入力し、前記位置基準局の位置を出力する位置基準局位置解読器を具備したものである。
【0033】
【発明の実施の形態】以下、この発明による測位端末装置のいくつかの実施の形態を図に基づいて説明する。
【0034】実施の形態1.図1は、この発明の実施の形態1の構成を示すブロック線図である。図1において、15は、位置基準局2の位置(xi ,yi ,zi )と伝播時間の測定値τi とを入力し、測位結果を経度緯度高度座標で出力する測位・座標変換計算部である。
【0035】前記測位・座標変換計算部15において、16は、測位のオンライン使用時に、前記測位・座標変換計算部15の全体を構成するニューラルネットワークである。
【0036】さらに図1において、17は、前記ニューラルネットワーク16を、オフライン時に、構成要素の一つとする学習部である。
【0037】前記学習部17において、18aは、位置基準局の位置(xi ,yi ,zi )と伝播時間τi の測定値とを発生するデータ発生器、19aは、前記ニューラルネットワーク16に、その入出力関係を学習させる調整量を出力する調整量計算器である。
【0038】ここで、ニューラルネットワークについて、これを用いる意味について簡単に説明をする。まず、ニューラルネットワークは、歴史的には、動物の神経回路をモデル化することが研究の大きなモチベーションであったが、ここでは単なる工学的アルゴリズムの一つとしてみなす。また、ニューラルネットワークは、階層型ネットワークと相互結合型ネットワークとに大別されるが、ここでは前者、階層型ネットワークをさしている。さらに、階層型ネットワークのニューラルネットワークにも、階層の段数や、ユニット相互の結合の仕方や、各ユニットが持つ入出力関数などにより様々なタイプのものが提案されているが、ここではそれらのタイプには関係なく一般的に階層型ネットワークのニューラルネットワークを用いるものとする。
【0039】工学的アルゴリズムとして捕えた場合の階層型ネットワークのニューラルネットワークの特徴は、オンライン時に実行する入出力関数を、オフライン時に学習できるメカニズムである、ということである。たとえば、ロボットアームの制御において、各関節で制御すべきトルクは、その結果実現されるアームの動作が所望のものとなるようなものである。このような場合に、ニューラルネットワークを制御アルゴリズムとして用いると、オフライン時に、ニューラルネットワークでトルクを制御させて、その結果生ずるアームの動きと、所望のアームの動作(これを「教師信号」という)とから計算される調整信号により、ニューラルネットワークを学習させる。その学習させたニューラルネットワークを、オンライン時に用いれば、ロボットアームに所望の動作を実現するような関節のトルクをニュートラルネットワークは制御することができる。このことは、物理的には、関節のトルクの制御が原因であり、ロボットアームの動きが結果である関数関係に対し、所望のロボットアームの動作を与えられて、それを実現する関節のトルクの制御を出力するような逆関数をニューラルネットワークは実現したことになる。
【0040】このことは、前述の従来の測位端末システムにおける解決すべき課題、電波の伝播時間から位置を求めるという物理過程の逆問題に、一つの解決手段を与える。本発明の意図は、ニューラルネットワークを用いて物理過程の逆関数を実現することにより、前述の課題を解決することである。
【0041】次に動作について説明する。動作は、前記ニューラルネットワークを16を用いた測位に関するオンライン時の動作と、このニューラルネットワーク16を学習させるためのオフライン時の動作とがある。まず、測位に関するオンライン時の動作について説明する。
【0042】受信器4と、時計5と、軌道計算器6の動作は、従来の測位端末装置と同じである。
【0043】測位・座標変換計算部15は、前記軌道計算器6が出力する前記位置基準局2の位置(xi ,yi ,zi )と、前記受信器4が出力する前記送信時刻ti と前記時計5が出力する前記受信時刻to との差として得られる前記伝播時間の測定値τi とを入力する。
【0044】前記測位・座標変換計算部15において、ニューラルネットワーク16は、前記位置基準局2の位置(xi ,yi ,zi )と前記伝播時間の測定値τi とを入力し、これらの値に対応する未知の位置の測位結果の経度緯度高度座標による値を計算し、出力する。
【0045】ここで、前記ニューラルネットワーク16は、次に述べるオフライン時の動作により、予め学習が完了している。
【0046】最後に、前記測位結果は、前記測位・座標変換計算部15の出力となり、表示器9に入力される。前記表示器9の動作は、従来の測位端末装置と同様である。
【0047】次に、前記ニューラルネットワーク16を学習させるためのオフライン時の動作について説明する。
【0048】学習部17は、オフライン時に、前記ニューラルネットワーク16をその構成要素の一つとする。
【0049】前記学習部17において、データ発生器18aは、前記位置基準局2の位置(xi ,yi ,zi )と伝播時間の測定値τi とを発生し、出力する。
【0050】測位計算部7bは、前記データ発生器18aが出力する前記位置基準局2の位置(xi ,yi ,zi )と前記伝播時間τi の測定値とを入力する。前記測位計算部7bの動作は、従来の測位端末装置における測位計算部7aと同様であり、逐次近似計算により、正しい測位結果を直交座標で求め、出力する。
【0051】座標変換器8aは、前記測位計算部7bが出力する直交座標で求められた正しい測位結果を入力する。前記座標変換器8aの動作も従来の測位端末装置1における座標変換器8aと同様であり、経度緯度高度座標に変換された正しい測位結果を出力する。
【0052】一方、前記データ発生器18aが出力する前記位置基準局2の位置(xi ,yi ,zi )と前記伝播時間の測定値τi とは、同時に、前記学習部17の構成要素となっている前記ニューラルネットワーク16の入力ともなっている。前記ニューラルネットワーク16は、オンライン時と同様の計算で測位結果を経度緯度高度座標で求め、出力する。ただし、オフライン時の学習過程にあるこの測位結果は、一般には正しい値ではない。
【0053】つまり、前記データ発生器18aが出力した前記位置基準局2の位置(xi ,yi ,zi )と前記伝播時間の測定値τi は、同時に、前記測位計算部7bと前記ニューラルネットワーク16の入力となり、正しい測位結果と前記ニューラルネットワーク16の学習過程の測位結果とが、それぞれ出力されるのである。
【0054】そこで、調整量計算器19は、前記正しい測位結果と前記ニューラルネットワーク16の学習過程の測位結果とを入力する。そして、前記調整量計算器19は、前記学習過程の測位結果が前記正しい測位結果に近づくように、前記ニューラルネットワーク16を調整するための調整量を計算して出力する。
【0055】この調整信号の計算アルゴリズムは、誤差逆伝播法、あるいは、ErrorBack Propagation Algorithmと呼ばれているものである。ニューラルネットワークも、今や、一般的に普及した方法論であり、その中でもこの逆誤差伝播法のアルゴリズムは代表的なものであるので、この分野の技術者であれば、誰でも理解しているものとしてここでは説明をしない。わかりやすい解説書として、次のものをあげておく。麻生英樹著「ニューラルネットワーク情報処理」、1990年、産業図書株式会社発行。
【0056】前記調整量計算器19から出力された前記調整量は、前記ニューラルネットワーク16に入力される。前記ニューラルネットワーク16は、前記調整量にしたがってユニット間の結合係数を変化させることにより、次第に、正しい測位結果に近い測位結果を出力できるようになる。あらかじめ基準値を用意し、学習過程の測位結果と正しい測位結果との差がこの基準値以下に収まるようになれば、オフラインでの学習を終了する。その結果、前記ニューラルネットワーク16は、オンラインでの測位を実行できるようになる。
【0057】実施の形態2.図2は、この発明の実施の形態2の構成を示すブロック線図である。実施の形態2では、学習部17において、測位計算部7bの出力は、実施の形態1のように座標変換器8aを介することなく、直接、調整量計算器19bの入力となっている。
【0058】また、実施の形態1の構成要素であった測位・座標変換計算部15は、実施の形態2では、測位計算部7bに置き換えられている。
【0059】次に動作について説明する。ここでは、前記ニューラルネットワーク16を学習させるためのオフライン時の動作について先に説明する。
【0060】学習部17において、データ発生器18aと測位計算部7bの動作は、実施の形態1による測位端末装置と同様である。
【0061】調整量計算器19bは、測位計算部7bが出力する直交座標で求められた正しい測位結果と、ニューラルネットワーク16が出力する学習過程の測位結果とを入力し、両者の差が小さくなるように、前記ニューラルネットワーク16を調整するための調整量を計算し、出力する。
【0062】前記調整量は、前記ニューラルネットワーク16に入力される。前記ニューラルネットワーク16は、前記調整量にしたがってユニット間の結合係数を変化させることにより、次第に、直交座標で求められた正しい測位結果を出力するようになる。すなわち、前記ニューラルネットワーク16は、経度緯度高度座標に変換する前の直交座標の測位結果を出力するように学習される。
【0063】次に、測位に関するオンライン時の動作について説明する。
【0064】受信器4と、時計5と、軌道計算器6の動作は、従来の測位端末装置あるいは実施の形態1による測位端末装置と同じである。
【0065】測位計算部7bは、従来の測位端末装置における測位計算部7aと同様に、前記軌道計算器6が出力する前記位置基準局2の位置と、前記受信器4が出力する前記送信時刻と前記時計5が出力する前記受信時刻との差として得られる前記伝播時間の測定値とを入力する。
【0066】そして前記測位計算部7bにおいて、実施の形態1による測位端末装置1における測位・座標変換計算部15と同様に、あらかじめオフラインで学習されたニューラルネットワーク16が、前記位置基準局2の位置と前記伝播時間の測定値とを入力し、測位結果を出力する。ただし、実施の形態2では、前述のように、前記ニューラルネットワーク16が学習した測位計算は、前記測位結果の値が、経度緯度高度座標ではなく、直交座標で表わされたものであるから、前記測位計算部7aの出力も直交座標で表わされた測位結果となる。
【0067】最後に、表示器9は、前記測位計算部7aが出力する直交座標で表わされた測位結果を入力し、これを表示する。特に、実施の形態2による測位端末装置では、この測位結果を他の任意の地点との距離の関係において、表示する際に有効である。たとえば、この実施の形態2では、前記表示器9は、測位結果として得られた測位端末装置の位置から、半径10キロメートルの範囲を求めて、表示する。
【0068】実施の形態3.図3は、この発明の実施の形態3、および、次に述べる実施の形態4の運用を示す図である。
【0069】図3において、20は、その位置が一定、あるいは、ほぼ一定である位置基準局である。このような位置基準局20は、たとえば、空中に静止させた飛行船で実現される。
【0070】図4は、この発明の実施の形態3の構成を示すブロック線図である。
【0071】図4に示された学習部17において、21は、この測位端末装置1が利用される空間を運用領域として出力する運用領域指示器、18bは、前記運用領域指示器21が出力する前記運用領域を入力し、前記位置基準局20の位置と経度緯度高度座標で表わされた未知の位置(xo ,yo ,zo )および端末時計誤差δtとを出力するデータ発生器、8bは、前記経度緯度高度座標で表わされた未知の位置を入力し、直交座標に変換して出力する座標変換器、そして、22は、前記位置基準局20の位置(xi ,yi ,zi )と、前記直交座標に変換された未知の位置(xo ,yo ,zo )と、端末時計誤差δt とを入力し、伝播時間の測定値τi を計算して出力する物理過程計算器である。
【0072】さらに図4において、23は、受信器4の出力を入力して位置基準局20の識別結果を出力する位置基準局識別器、24は、それぞれの位置基準局20の位置を記憶しており、問い合わせに応じてその位置を出力する各位置基準局位置記憶器、25は、前記位置基準局位置読み出し器23が出力する前記位置基準局20の識別結果を入力して、その識別結果に対応する位置基準局20の位置を前記各位置基準局位置記憶器24に問い合わせて入力し、出力する位置基準局位置読み出し器である。
【0073】次に動作について説明する。まず、測位に関するオンライン時の動作について説明する。
【0074】まず、位置が一定、あるいは、ほぼ一定である位置基準局20は、送信時刻ti を記した電波を送信する。さらに、この電波には、前記位置基準局20を識別するための識別信号が付与されている。この信号は、メッセージであってもよいし、スペクトル拡散の符号であっても実現できる。
【0075】次に、測位端末装置1において受信器4は、前記位置基準局2が送信した前記電波を受信し、そこに記された前記送信時刻ti と前記識別信号を読み出して出力する。
【0076】前記電波が受信されたのと同時に、あるいは一定時間遅延の後に、時計5は、前記電波の受信時刻to を出力する。ただし、前記時計5には、一般に、端末時刻誤差δt がある。このため、前記受信時刻to には、この端末時刻誤差δt が含まれている。
【0077】一方、位置基準局識別器23は、前記受信器4が出力する前記識別信号を入力し、受信した電波がどの位置基準局20からのものであるか、その識別結果を出力する。
【0078】また、各位置基準局位置記憶器24は、それぞれの位置基準局20の位置を記憶しており、問い合わせに応じてその位置を出力する。
【0079】そして、位置基準局位置読み出し器25は、前記位置基準局識別器23が出力する前記位置基準局20の識別結果を入力して、其の識別結果に対応する位置基準局20の位置を前記各位置基準局位置記憶部24に問い合わせて入力し、前記位置基準局20の位置を出力する。
【0080】測位・座標変換計算部15は、前位置基準局位置読み出し器25が出力する前記位置基準局20の位置と、前記受信器4が出力する前記送信時刻ti と前記時計5が出力する前記受信時刻to との差として得られる前記伝播時間の測定値τi とを入力する。
【0081】そして前記測位・座標変換計算部15において、実施の形態1による測位端末装置1における測位・座標変換計算部15と同様に、あらかじめオフラインで学習されたニューラルネットワーク16が、前記位置基準局20の位置と前記伝播時間の測定値とを入力し、経度緯度高度座標で表わされた測位結果を出力する。
【0082】最後に、表示器9は、前記測位・座標変換計算部15が出力する経度緯度高度座標で表わされた測位結果を入力し、これを表示する。
【0083】次に、前記ニューラルネットワーク16を学習させるためのオフライン時の動作についてのみ説明する。
【0084】学習部17は、オフライン時に、前記ニューラルネットワーク16をその構成要素とする。前記学習部17は、前記位置基準局20の位置の値と前記伝播時間の測定値とに対応する前記測位結果の値との関係を計算し、その関係を関数として前記ニューラルネットワーク16に学習させる。この点は、の実施の形態1あるいは2による測位端末装置と同じであるが、前記関係を求める方法が、図8に示した物理過程に即した計算に依るものであり、図9に示した逆問題を解く計算ではない点が、の実施の形態1あるいは2による測位端末装置と異なる。
【0085】前記学習部17において、まず、運用領域指示器21は、この測位端末装置1が利用される空間を指定し、運用領域として出力する。このことは、関数の定義域と値域の内、値域を実際にこの測位端末装置1が利用される空間に限って、前記ニューラルネットワーク16を学習させ、運用上意味の無いデータの学習を避ける意味がある。たとえば、高度マイナス1,000メートルの位置、つまり地底に、測位端末装置を持って行って測位を行う事はない。また、この運用領域の指定は、地心座標のような直交座標ではなく、人間の解釈や社会システムの運用に適した経度緯度高度座標で与えると考える方が自然であろう。
【0086】つぎに、データ発生器18bは、前記運用領域指示器21が出力する運用領域を入力し、この運用領域内の未知の位置(真値)と、前記位置基準局20の位置、および端末時計誤差とを出力する。すなわち、前記未知の位置(真値)の変域は、数値の組み合わせ全体を覆う必要はなく、上記運用領域の範囲のみを覆えばよい。
【0087】そして、座標変換器8bは、経度緯度高度座標で与えられた前記位置基準局20の位置(真値)を、前記データ発生器18bから入力し、これを直交座標に変換したものを出力する。
【0088】物理過程計算器22は、前記データ発生器18bが出力する前記位置基準局20の位置(xi ,yi ,zi )と前記端末時計誤差δt 、および、前記座標変換器8bが出力する前記直交座標で表わされた未知の位置(真値)とを入力する。そして、与えられた位置基準局20から電波が送信され、与えられた未知の位置(真値)でこれを受信し、与えられた端末時計誤差を持つ時計で測定された受信時刻によりこの伝播時間を測定した場合の値を、この実際の物理過程に沿って計算し、伝播時間の測定値として出力する。
【0089】前記ニューラルネットワーク16は、前記データ発生器18bが出力する前記位置基準局20の位置と、前記物理過程計算器22が出力する伝播時間の測定値とを入力する。そして、前記ニューラルネットワーク16は、学習のためのオフライン時には、測位結果だけではなく、同時に得られる端末時計誤差の推定値も併せて出力する。
【0090】調整量計算器19cは、前記データ発生器18bが出力する前記未知の位置(真値)と前記端末時計誤差を入力し、同時に、学習過程にある前記ニューラルネットワーク16が出力する測位結果と端末時計誤差の推定値とを入力する。そして、これらの学習過程にある前記ニューラルネットワーク16の出力が、それぞれ、前記データ発生器18bが出力する対応する真値に近づくように前記ニューラルネットワーク16を調整するための調整量を計算して出力する。
【0091】前記調整量は、前記ニューラルネットワーク16に入力される。前記ニューラルネットワーク16は、前記調整量にしたがってユニット間の結合係数を変化させることにより、次第に、経度緯度高度座標で表わされた正しい測位結果、および、正しい端末時計誤差を出力するようになる。
【0092】実施の形態4.図5は、この発明の実施の形態4の構成を示すブロック線図である。
【0093】図4において、26は、前記位置基準局20からの電波を受信する受信器4の出力を入力し、前記位置基準局20の位置を出力する位置基準局位置解読器である。
【0094】次に動作について説明する。学習のためのオフライン時の動作は実施の形態3と同じであるので、測位に関するオンライン時の動作についてのみ説明する。
【0095】まず、位置が一定、あるいは、ほぼ一定である位置基準局20は、送信時刻を記した電波を送信する。さらに、この電波には、前記位置基準局20の位置を示す位置信号が付与されている。
【0096】次に、測位端末装置1において受信器4は、前記位置基準局2が送信した前記電波を受信し、そこに記された前記送信時刻と前記位置信号を読み出して出力する。
【0097】つぎに、位置基準局位置解読器26は、前記受信器4が出力する前記位置信号を入力し、受信した電波を送信した位置基準局20の位置を、その位置信号から解読し、出力する。この出力は、測位・座標変換計算部15の入力となる。
【0098】前記測位・座標変換計算部15と表示器9の動作は、実施の形態3と同様である。
【0099】
【発明の効果】第1の発明によれば、非線形の方程式を逐次近似計算の手間を掛けて解く必要が無いために、時間的あるいはコスト的な負荷を軽減した、測位を行うことができる。
【0100】第2の発明によれば、従来の測位端末装置が測位を行う方法と同じ計算処理により測位テーブルの値を決定するので、従来の測位端末装置と測位結果が同一になり、状況などにより両者の切り替え運用を行う場合にも、出力の連続性が保証される。
【0101】第3の発明によれば、非線形の方程式を解くための逐次近似計算の手間だけでなく、地心座標系と局所測地座標系の問題も加わって、複雑な非線形の計算となる直交座標から経度緯度高度座標系への座標変換の処理の手間における、時間的あるいはコスト的な負荷をも、軽減することができる。
【0102】第4の発明によれば、測位端末装置の位置する未知の位置から、任意の位置までの距離計算に適した形式で、測位結果を出力することができるので、たとえば、測位端末装置の位置から半径10キロメートルの範囲を求める、というような計算に適している。
【0103】第5の発明によれば、物理過程に即した計算により測位テーブルを作成するので、逐次近似法に起因する近似誤差が無く、正確な値を得ることができるとともに、逐次近似法の繰り返し計算の手間を省くことができる。さらに、逆問題を解く形式を取らなくとも済むので、物理的にあり得ない入力の組み合わせを扱う必要が無く、必要な入力の組み合わせだけを扱うことができる。
【0104】第6の発明によれば、ニューラルネットワークの学習にあたり、測位端末装置の利用者にとって実用上の意味のある入力の組み合わせのみを学習させることができるので、学習に要する時間が短くなるとともに、意味の無いデータの学習により意味のあるデータの学習精度が劣化するのを防ぐことができる。
【0105】第7の発明によれば、軌道計算を行う負荷を除くことができ、その計算誤差による測位精度の劣化を防ぐことができる。
【0106】第8の発明によれば、各位置基準局がそれぞれの識別信号を電波に付加するだけで、その位置を測位に利用することができるようになる。
【0107】第9の発明によれば、位置基準局の位置が真に一定ではない場合にも、逐次その位置を知らせることにより、測位に利用することができるようになる。
【出願人】 【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
【出願日】 平成9年(1997)11月26日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 金雄 (外2名)
【公開番号】 特開平11−160409
【公開日】 平成11年(1999)6月18日
【出願番号】 特願平9−324044