トップ :: G 物理学 :: G01 測定;試験




【発明の名称】 光磁界センサ
【発明者】 【氏名】浅井 裕次

【氏名】亀嶋 義明

【要約】 【課題】ファラデー効果を利用した光磁界センサの温度特性を向上させる。

【解決手段】ファラデー素子を基板、偏光子、検光子に接着固定するための接着剤として、光磁界センサの使用温度領域におけるデュロメータA硬度が50以下の樹脂系接着剤を採用する。これにより、ファラデー素子と被固着部品とが熱膨張係数を異にしている場合に接着界面に発生する熱応力を接着剤層にて緩和し、熱応力に起因する温度特性に及ぼす影響を解消する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】基板に接着剤を介して固着した偏光子、ファラデー素子、および検光子を備え、前記ファラデー素子として自然旋光能の無い強磁性体を採用してなり、直線偏光を前記ファラデー素子に通過して直線偏光の偏波面を外部磁界に応じて回転させることにより光強度変換して磁界を検出する光磁界センサにおいて、前記ファラデー素子が前記偏光子および検光子とは独立的に前記基板に接着剤を介して固着されていて、同接着剤として、当該光磁界センサの使用温度領域におけるデュロメータA硬度が50以下の樹脂系接着剤が採用されていることを特徴とする光磁界センサ。
【請求項2】基板上に接着剤を介して固着した偏光子、ファラデー素子、および検光子を備え、前記ファラデー素子として自然旋光能の無い強磁性体を採用してなり、直線偏光を前記ファラデー素子に通過して直線偏光の偏波面を外部磁界に応じて回転させることにより光強度変換して磁界を検出する光磁界センサにおいて、前記ファラデー素子が前記偏光子および検光子のいずれか一方に接着剤を介して固着された状態で前記基板に接着剤を介して固着されていて、これら接着剤として、当該光磁界センサの使用温度領域におけるデュロメータA硬度が50以下の樹脂系接着剤が採用されていることを特徴とする光磁界センサ。
【請求項3】基板に接着剤を介して固着した偏光子、ファラデー素子、および検光子を備え、前記ファラデー素子として自然旋光能の無い強磁性体を採用してなり、直線偏光を前記ファラデー素子に通過して直線偏光の偏波面を外部磁界に応じて回転させることにより光強度変換して磁界を検出する光磁界センサにおいて、前記ファラデー素子が前記偏光子および検光子に接着剤を介して挟持されて固着された状態で前記基板に接着剤を介して固着されていて、これら接着剤として、当該光磁界センサの使用温度領域におけるデュロメータA硬度が50以下の樹脂系接着剤が採用されていることを特徴とする光磁界センサ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光磁界センサに関する。
【0002】
【従来の技術】光磁界センサの一形式として、特開平9−211093号公報に示されているように、基板に接着剤を介して固着した偏光子、ファラデー素子、および検光子を備え、直線偏光をファラデー素子に通過して直線偏光の偏波面を外部磁界に応じて回転させることにより光強度変換して磁界を検出する光磁界センサがある。当該光磁界センサにおいては、直線偏光の偏波面の回転角度が大きくて磁界の検出感度の高い希土類鉄ガーネット系(以下RIGという)の結晶等、自然旋光能のない強磁性体の結晶が採用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、本発明者は、当該光磁界センサにおいては、ファラデー素子を固着するために使用する接着剤の種類によっては温度特性(比誤差特性)が低下する現象を知得した。かかる現象が発生する理由は定かではないが、ファラデー素子と被固着部材との熱膨張係数の相違により、温度変化の際に、ファラデー素子と被固着部品との接着界面に発生する熱応力が介在する接着剤層で緩和されず、ファラデー素子の回転能に何らかの影響を及ぼし、特に、直線偏光の偏波面の回転角度が大きい自然旋光能のない強磁性体の結晶であるファラデー素子においては、その影響が顕著に発現するものと推測される。
【0004】従って、本発明の目的は、当該光磁界センサにおけるファラデー素子の温度特性の低下を防止することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、基板に接着剤を介して固着した偏光子、ファラデー素子、および検光子を備え、前記ファラデー素子として自然旋光能の無い強磁性体を採用してなり、直線偏光を前記ファラデー素子に通過して直線偏光の偏波面を外部磁界に応じて回転させることにより光強度変換して磁界を検出する形式の光磁界センサに関する。
【0006】しかして、本発明は上記した形式の光磁界センサにおいて、前記ファラデー素子が前記偏光子および検光子とは独立的に前記基板に接着剤を介して固着されていて、同接着剤として、当該光磁界センサの使用温度領域におけるデュロメータA硬度が50以下の樹脂系接着剤が採用されていることを特徴とするものである。
【0007】また、本発明は上記した形式の光磁界センサにおいて、前記ファラデー素子が前記偏光子および検光子のいずれか一方に接着剤を介して固着された状態で前記基板に接着剤を介して固着されていて、これら接着剤として、当該光磁界センサの使用温度領域におけるデュロメータA硬度が50以下の樹脂系接着剤が採用されていることを特徴とするものである。
【0008】また、本発明は上記した形式の光磁界センサにおいて、前記ファラデー素子が前記偏光子および検光子に接着剤を介して挟持されて固着された状態で前記基板に接着剤を介して固着されていて、これら接着剤として、当該光磁界センサの使用温度領域におけるデュロメータA硬度が50以下の樹脂系接着剤が採用されていることを特徴とするものである。
【0009】
【発明の作用・効果】本発明に係る光磁界センサにおいては、ファラデー素子の被固着部品に対する接着剤として、デュロメータA硬度が50以下という硬度の低い樹脂系接着剤が採用されているため、ファラデー素子と被固着部品とが熱膨張係数を異にしている場合にも、接着剤層が接着界面で発生する熱応力を緩和する。
【0010】このため、熱応力に起因する温度特性に及ぼす影響を解消し得て、良好な温度特性が保持されるとともに、ファラデー素子と被固着部品に作用する熱応力が低減して、各部品の亀裂、その他の損傷の発生が防止され、光磁界センサの耐久性を向上させることができる。
【0011】この場合、接着剤としては、当該光磁界センサの使用温度領域におけるデュロメータA硬度が50以下、好ましくは、デュロメータA硬度が20以下の樹脂系接着剤が好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図面に基づいて説明するに、図1〜図4には、本発明に係る光磁界センサの一例が示されている。当該光磁界センサは、光学部品10、一対のボールレンズ21、一対の光ファイバー22、これらの構成部品10,21,22が配設されたベース23、およびこれらの構成部品10,21,22を覆蓋してベース23とともに挟持して収容する蓋体24により構成されている。
【0013】光磁界センサにおいて、ベース23および蓋体24はガラス素材をプレス成形して形成されているもので、所定の厚みを有する平板状を呈している。ベース23においては、ベース本体23aの表面に光学部品10、各ボールレンズ21および各光ファイバー22を収容する溝部23b,23c,23dが形成されている。また、蓋体24においてはその下面に、ベース23の各溝部23b〜23dに略下半分を収容されている光学部品10、各ボールレンズ21および各光ファイバー22を収容する溝部24b,24c,24dが形成されている。
【0014】ベース本体23aの表面には、図2および図3に示すように、中央部の第1溝部23bを挟んで一対の位置決め用の係合凹所23eが形成されており、また蓋本体24aの下面には、図3に示すように、各係合凹所23eに対向する一対の位置決め用の係合突起部24eが形成されている。蓋体24は、その各係合突起部24eをベース23の各係合凹所23eに嵌合させてベース23に対して位置決めされた状態で接着されて、ベース23の表面を覆蓋している。この状態で、蓋体24は、ベース23とともに、光学部品10、各ボールレンズ21、および各光ファイバー22を挟持して収容している。
【0015】光磁界センサを構成する光学部品10は、ファラデー素子11と、偏光子12と、検光子13とからなり、これら3者11〜13はファラデー素子11を挟んだ状態で接着剤を介して互いに接着されている。ファラデー素子11は、固相反応法にて生成されたRIG単結晶であり、また偏光子12および検光子13はガラス偏光板であって、光学部品10は、図5に示す製造方法により形成される。
【0016】光学部品10においては、先づ板状に生成されたRIG単結晶11aを第1ガラス偏光板12aの一側面に接着剤を介して接着し、RIG単結晶11aの表面を光学研磨して、RIG単結晶11aの厚みを20μm〜200μmの範囲の所定の厚みに調整する。次いで、このRIG単結晶11aの研磨面である表面に第2ガラス偏光板13aを接着剤を介して接着して、3層構造体10aを形成する。第2ガラス偏光板13aは、その偏光角を、第1ガラス偏光板12aの偏光角に対して45度偏倚して接着する。その後、この3層構造体10aを所定の大きさに切断して、多数の光学部品10を形成する。
【0017】光学部品10においては、中間部のRIG単結晶11aがファラデー素子11を構成し、第1ガラス偏光板12aが偏光子12を構成し、かつ第2ガラス偏光板13aが検光子13を構成し、これら3者11〜13が一体の状態でベース23と蓋体24の間に配設されている。
【0018】このように構成した光磁界センサにおいては、光源から出射した光が一方の光ファイバー22を経てボールレンズ21に入射され、ボールレンズ21にて平行光とされて光学部品10に入射される。光学部品10に入射された平行光は、先づ偏光子12にて直線偏光とされてファラデー素子11を通過して検光子13を経て他方のボールレンズ21に入射され、ボールレンズ21にて集光されて他方の光ファイバー22から出射される。
【0019】この場合、直線偏光はファラデー素子11を通過する間に、ファラデー素子11に印加された外部磁界に応じて偏波面が回転され検光子13に入射され、検光子13において印加磁界に応じた強度の変調光とされ、外部磁界の検出信号として出力される。
【0020】しかして、当該光磁界センサにおいては、光学部品10を構成するファラデー素子11と偏光子12および検光子13とを接着するための接着剤として、また、光学部品10をベース23に接着するための接着剤として、光磁界センサの使用温度領域におけるデュロメータA硬度が50以下の樹脂系接着剤が採用されている。かかる接着剤は、変性アクリル系樹脂または変成ウレタン系樹脂に可塑剤を混合して生成され、可塑剤の混合量に基づいて硬度が調整される。
【0021】なお、デュロメータA硬度とは、日本工業規格「JIS K7215:プラスチックのデュローメータ硬さ試験法」に基づく樹脂硬度を意味し、合成樹脂の分野ではショアー硬度とも称呼されている。
【0022】このように、当該光磁界センサにおいては、光学部品10を構成するファラデー素子11と偏光子12および検光子13とを接着するための接着剤、および、光学部品10をベース23に接着するための接着剤として、デュロメータA硬度が50以下という硬度の低い樹脂系接着剤を採用している。このため、ファラデー素子11と偏光子12および検光子13、ファラデー素子11とベース23が熱膨張係数を異にしていても、接着剤層が接着界面で発生する熱応力を緩和し、熱応力に起因する温度特性に及ぼす影響を解消し得て、良好な温度特性を保持する。
【0023】また、ファラデー素子11、偏光子12、および検光子13にて構成されている光学部品10内で発生する熱応力、光学部品10とベース23間で発生する熱応力が低減するため、光学部品10を構成するファラデー素子11、偏光子12、および検光子13における亀裂、その他の損傷の発生が防止され、光磁界センサの耐久性が向上する。
【0024】なお、上記した光磁界センサにおいては、ファラデー素子11が偏光子12と検光子13に接着固定されて1個の光学部品に構成されている例であるが、ファラデー素子11が偏光子12および検光子13のいづれか一方に接着固定して使用される場合、ファラデー素子11が偏光子12および検光子13とは独立してベース23等基板に接着固定して使用される場合においても、これらの接着固定に使用する接着剤として、デュロメータA硬度が50以下の樹脂系接着剤を使用すれば、光磁界センサの温度特性を向上させることができる。
【0025】
【実施例】当該光磁界センサの温度特性を確認するため、樹脂硬度の異なる各種の変性アクリル系接着剤を使用して図1に示す各光磁界センサを作製し、各光学磁界センサの高磁場と低磁場におけるセンサ出力値を測定して、基準温度(25℃)のセンサ出力値に対する低温時、高温時のセンサ出力値の誤差を算出した。得られた結果の一例(接着剤の樹脂硬度:デュロメータA硬度10とデュロメータD硬度60)を、下記の表1,2に示すとともに、接着剤の樹脂硬度とセンサ出力値の誤差のとの関係を図6のグラフに示す。
【0026】なお、上記したデュロメータD硬度とは、デュロメータA硬度と同様、日本工業規格「JIS K7215:プラスチックのデュローメータ硬さ試験法」に基づく樹脂硬度を意味する。
【0027】
【表1】

【0028】但し、表1の結果は、室温(25℃)で高磁場(100 Oe)でのセンサ出力値を基準として、−20℃の低温環境下で低磁場(10 Oe)でのセンサ出力値を測定して、このセンサ出力値の誤差を算出したものである。
【0029】
【表2】
【0030】但し、表2の結果は、室温(25℃)で高磁場(100 Oe)でのセンサ出力値を基準として、80℃の高温環境下で低磁場(10 Oe)でのセンサ出力値を測定して、このセンサ出力値の誤差を算出したものである。
【0031】図6に示すグラフにおいては、実線のグラフAは測定環境を−20℃の低温に変化させた場合の結果、破線のグラフBは測定環境を80℃の高温に変化させた場合の結果である。但し、採用した接着剤の樹脂硬度はデュロメータA,Dの両硬度でグラフの横軸に表示しており、接着剤の樹脂硬度はグラフの横軸の右方にいくほど増大する。
【出願人】 【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
【出願日】 平成10年(1998)3月23日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 照一 (外3名)
【公開番号】 特開平11−271410
【公開日】 平成11年(1999)10月8日
【出願番号】 特願平10−74641