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【発明の名称】 部分放電状態診断方法
【発明者】 【氏名】合原 一幸

【氏名】水上 雄一

【氏名】岡本 達希

【要約】 【課題】高電圧機器等における欠陥や劣化状態に従った部分放電の発生状態を容易に、且つ高精度で把握、診断して、高電圧機器等の欠陥や劣化状態を精度良く診断することができる、新しい部分放電状態診断方法を提供する。

【解決手段】部分放電パルスの発生時間間隔を求め、この発生時間間隔に基づくリターンプロットを用いて部分放電の発生状態を診断する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 部分放電パルスの発生時間間隔を求め、この発生時間間隔に基づくリターンプロットを用いて部分放電の発生状態を診断することを特徴とする部分放電状態診断方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】この出願の発明は部分放状態診断方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、高電圧機器等の初期欠陥や劣化状態の診断などに有用な、部分放電の状態を容易に、且つ高精度で診断することができる、新しい部分放電状態診断方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】一般に、高電圧機器の絶縁体には大きな電圧ストレスがかかり、その中に欠陥があると、その欠陥箇所から部分放電が発生し絶縁寿命を著しく害してしまう。そのため、高電圧機器を使用するに当たっては、初期欠陥や劣化状態の診断を精度良く行う必要がある。
【0003】従来より、このような欠陥を診断する方法としては、様々なものが開発、研究されてきており、たとえば、部分放電を用いた診断方法が知られている。この診断方法は、部分放電が発生する状況が部分放電が発生している絶縁体中の欠陥の種類や状態によって大きく変化することを利用した方法であり、具体的には、たとえば、平均放電電荷や最大放電電荷、または印加電圧が交流の場合には印加電圧位相角などに対する平均放電電荷分布などに基づいて診断をするものである。これは、いわゆるパルス群の統計解析である。
【0004】一方、近年のコンピュータ計測技術の進歩により、部分放電パルス発生の時系列解析を行うこが可能となってきた。この時系列解析としては、たとえば自己相関関数やカオス性に注目してパルス発生状況を把握することなどが試みられている。しかしながら、これらの従来の診断方法は、十分に部分放電発生状況を把握できるとは言い難く、より精度の高い新しい診断方法の開発が強く望まれている。
【0005】そこで、この出願の発明は、以上の通りの従来技術の欠点を鑑みてなされたものであり、高電圧機器等における欠陥や劣化状態に従った部分放電の発生状態を容易に、且つ高精度で把握、診断して、高電圧機器等の欠陥や劣化状態を精度良く診断することができる、新しい部分放電状態診断方法を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記の課題を解決するものとして、部分放電パルスの発生時間間隔を求め、この発生時間間隔に基づくリターンプロットを用いて部分放電の発生状態を診断することを特徴とする部分放電状態診断方法(請求項1)を提供する。
【0007】
【発明の実施の形態】ここで、この発明の部分放電状態診断方法における診断手順について説明する。図1(a)(b)は、各々、この発明の診断方法において用いられる部分放電時系列データおよび部分放電開始間隔の一例を示した概略図である。
【0008】まず、この発明の診断方法では、高電圧機器等から検出された部分放電パルスの発生時間間隔を求める。この測定は、たとえば以下のように行うことができる。
<I>高電圧機器等が発生する部分放電を、たとえば、τ秒程度の間隔で測定し、図1(a)に例示したように、横軸に時間、縦軸に放電の大きさ(たとえば放電電荷)をとって時系列で表して、部分放電時系列データとする。図1(a)では、この部分放電時系列データは連続値として示されているが、もちろん、測定τ秒間隔での離散値のままプロットされていてもよい。なお、測定間隔τは、たとえば100マイクロ秒以下程度とすることができる。
【0009】<II>この部分放電時系列データから、図1(b)に例示したように、部分放電が非連続的に開始する時間に着目し、その部分放電開始の時間間隔を計測する。この時間間隔が、部分放電パルスの発生時間間隔となる。そして、この発明の診断方法では、上述のように計測された部分放電パルスの発生時間間隔に基づくリターンプロットを用いて部分放電の発生状態を診断する。
【0010】<I>まず、たとえば、部分放電パルスの発生時間間隔を、順にT1 ,T2 ,・・・,Tn ,Tn+1 ,・・・とし、nの値を1から順に従って、Tn の値を横軸に、Tn+1 の値を縦軸にプロットして、リターンプロットを作成する。より具体的には、まずはじめに、nの値を1とし、T1 の値を横軸に、T2 の値を縦軸にプロットする。次に、T2 の値を横軸に、T3 の値を縦軸にプロットする。次に、T3 の値を横軸に、T4 の値を縦軸にプロットする。このようにして、順次、nに従って横軸および縦軸へのプロットを行い、リターンプロットを作成する。
【0011】<II>そして、このリターンプロットを用いて部分放電の発生状態を診断する。リターンプロット上には、部分放電の発生状態に従って、プロット点の集中状態が異なって現れるようになる。したがって、部分放電時系列データから得られた部分放電間隔のリターンプロット上に現れるプロット点の集中状態によって、部分放電の状態を簡単に診断することができる。
【0012】たとえば、既知の部分放電発生状態を示すプロット点集中状態が現れているリターンプロット(以下、既知リターンプロットと呼ぶこととする。)を用い、この既知リターンプロットと実際に得られたリターンプロットとを比較することで、実際の部分放電の発生状態がどのようなものかを診断することができる。なお、上述したリターンプロットは縦軸および横軸へのプロットにより作成される二次元的なものとなっているが、この二次元リターンプロットに限らず、三次元・・・n次元的にプロットしてなる三次元・・・n次元リターンプロットとしてもよく、この場合にも、部分放電の発生状態に従ったプロット点の集中状態が現れるので、部分放電状態を精度良く、簡単に診断することができる。
【0013】図2は、上述したこの発明の部分放電状態診断方法を用いた診断システムの一例を示したものである。この図2に例示した診断システムにおいては、たとえば、高電圧印加手段(1)、部分放電測定手段(2)、部分放電パルス発生時間間隔計測手段(3)、リターンプロット作成手段(4)、部分放電発生状態判定手段(5)、および既知リターンプロット蓄積手段(6)が備えられており、高電圧印加手段(1)により、部分放電を発生する高電圧機器等における欠陥部分などである被測定物(7)に、その部分放電を発生させるための高電圧が印加され、部分放電測定手段(2)により部分放電が測定され、次いで、部分放電パルス発生時間間隔計測手段(3)によって、測定された部分放電から部分放電パルスの発生時間間隔が計測され、さらに、リターンプロット作成手段(4)によって、たとえば上述したように、部分放電パルスの発生時間間隔に基づいてリターンプロットが作成される。そして、部分放電状態判定手段(5)により、作成された実際のリターンプロットと、既知リターンプロット蓄積手段(6)に予め格納されている複数の既知リターンプロトとが比較されて、一致すると判定された既知リターンプロットが表す部分放電発生状態で、実際の被測定物(7)から部分放電が発生していると診断される。
【0014】このようにして、図2に例示したこの発明の方法を用いた診断システムにより、部分放電の発生状態が、容易、且つ的確に診断される。以下、添付した図面に沿って実施例を示し、この発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0015】
【実施例】(実施例1)この発明の部分放電状態診断方法によって、高電圧機器絶縁中の欠損を想定し、その欠損から発する部分放電の状態を診断した。本実施例において用いた欠損モデルは、図3に例示したように、厚さ0.125mmのポリエステルフィルム(8)を、その両面から、平板状電極(9)および直径20φの円筒状電極(10)で挟むようにして形成されたものであり、平板状電極(9)は接地され、円筒状電極(10)には交流高電圧が印加されるようになっている。
【0016】このような欠損モデルにおいて、印加する電圧値を変えて行き、発生する部分放電の状態を診断する。本実施例では、印加電圧を1.05KV、1.60KVおよび1.97KVとした。まず、各印加電圧において、放電電圧を5マイクロ秒間隔で測定する。図4、図5および図6は、それぞれ、印加電圧1.05KV、印加電圧1.60KVおよび印加電圧1.97KVの時に発生した部分放電の電荷を時系列で例示したものである。つまり、部分放電時系列データである。
【0017】次に、これらの部分放電時系列データから、非連続的な部分放電開始の時間間隔を抜き出す。つまり部分放電パルスの発生時間間隔を計測する。図7、図8および図9は、それぞれ、図4、図5および図6の部分放電時系列データ、つまり印加電圧1.05KV、印加電圧1.60KVおよび印加電圧1.97KV時の部分放電時系列データに対応する放電間隔を例示したものである。
【0018】これらの図から明らかなように、部分放電は、交流印加電圧に依存して発生していることがわかるが、その発生要因は印加電圧だけでなく、たとえば前回までの部分放電発生による電荷の移動、生成ガス、表面への体積物、放電の遅れなどの様々な原因が絡み合って放電の瞬間と大きさが決められているため、必ずしも交流50Hzの周期と同期した放電が、生じているわけではない。
【0019】そして、図7、図8および図9の放電間隔から、リターンプロットを作成する。図10、図11および図12は、それぞれ、印加電圧1.05KV、印加電圧1.60KVおよび印加電圧1.97KV時のリターンプロットを例示したものである。印加電圧1.05KV時のリターンプロットは、図10に例示した通りとなり、プロット点が3から4箇所程度に集中して現れている。このようなプロット点の集中状態から、図3に例示した欠損モデルの場合では、部分放電が電極周辺に限られた状態になっていることがわかる。
【0020】また、印加電圧1.60KV時のリターンプロットは、図11に例示した通りとなり、プロット点が数十箇所に集中して現れており、部分放電が沿面放電も発生している状態であることがわかる。さらに、印加電圧1.97KVの時リターンプロットは、図12に例示した通りとなり、プロット点はほとんどが分散しており、集中してなる群がほぼ存在していないことがわかる。よって、部分放電は、沿面放電が主体となって発生している状態にある。
【0021】このようにして、部分放電時系列データから得られた部分放電の発生時間間隔に基づくリターンプロット上におけるプロット点の集中状態によって、部分放電状態の診断を容易に、且つ高精度で行うことができる。ここで、さらにまた、部分放電の測定間隔τを100マイクロ秒とし、上述の手順と同様にして、部分放電時系列データから得られる部分放電パルス発生時間間隔に基づくリターンプロットを作成した。測定は、印加電圧1.05KVおよび1.60KV時について行った。
【0022】印加電圧1.05KV時の放電間隔データのリターンプロットは、図13に示した通りとなり、プロット点が3〜4箇所程度に集中して現れている。また、印加電圧1.60KV時の放電間隔データのリターンプロットは、図14に示した通りとなり、プロット点が集中してなるプロット群が数十個現れている。これらの各図と、上述の測定間隔τを5マイクロ秒としたときのリターンプロットとを比較すると、ほとんど同じプロット点の集中状態となっている。したがって、測定間隔τが100マイクロ秒間隔においても、この発明の診断方法は、精度良く部分放電の状態を診断できることがわかる。
【0023】(実施例2)本実施例2では、図15に例示したような欠損モデルを用い、上述の実施例1と同様に、各印加電圧値において部分放電を測定間隔τで測定して部分放電時系列データを作成し、この部分放電時系列データから部分放電パルス発生時間間隔データを作り、さらに部分放電パルス発生時間間隔データからリターンプロットを作成して、リターンプロット上に現れるプロット点の集中状態に従って部分放電の状態を診断する。
【0024】図15の欠損モデルは、厚さ0.5mmのポリエステルフィルム(8)の下面に、接地された平板状電極(9)が当接され、その上面に、0.125mmのギャップを持って、針状電極(11)が設けられて形成されている。針状電極(11)は、直径1φおよび先端曲率20μmの針形状を有しており、交流高電圧が印加されるようになっている。
【0025】印加電圧は1.00KV、1.42KVおよび1.75KVとし、部分放電の測定間隔τは5マイクロ秒とする。図16、図17および図18は、それぞれ、印加電圧1.00KV、印加電圧1.42KVおよび印加電圧1.75KV時のリターンプロットを例示したものである。
【0026】これら図16、図17および図18の各リターンプロットから明らかなように、図15に例示した欠損モデルでは、印加電圧が低い場合は、プロット点が散乱して原点0付近には集中しておらず、部分放電の間隔が大きく、印加電圧を上げていくと、プロット点が原点0付近に集中してくるので、部分放電がより短い間隔で発生するように変化していることがわかる。
【0027】ここでは、さらにまた、図15に例示した欠損モデルにおいて、部分放電の測定間隔τを100マイクロ秒とした場合について、リターンプロットを作成し、測定間隔τが5マイクロ秒の場合と比較した。図19および図20は、各々、100マイクロ秒とした場合の印加電圧1.00KVおよび1.75KVにおけるリターンプロットを例示したものである。
【0028】これら図19および図20と前記の図16および18とを比較すると、測定間隔τが100マイクロ秒であっても5マイクロ秒であっても、ほぼ同じプロット点の集中状態が得られていることがわかる。
(実施例3)本実施例3では、図21に例示したような欠損モデルにおいて、上述の実施例と同様にして、リターンプロットを作成した。部分放電の測定間隔τは5マイクロ秒とし、印加電圧は、12.04KV、14.40KVおよび17.09KVとした。
【0029】図21の欠損モデルでは、エポキシモールド(12)に、一対の断面略T字状電極(13)および(14)が25mmの間隔を持って相対向して配設されており、一方の断面略T字状電極(13)は接地され、他方の断面略T字状電極(14)には交流高電圧が印加されるようになっている。さらに、他方の断面略T字状電極(14)からは、図21に例示したように、長さ約10mm、幅約0.1mm以下のクラックボイド(15)が形成されており、いわゆるクラックボイド電極系となっている。
【0030】印加電圧12.04KV、14.40KVおよび17.09KVの時のリターンプロットは、各々、図22、図23および図24に例示した通りとなり、印加電圧が低い時は、プロット点が原点0付近と原点0から離れた箇所に集中しているので、部分放電は短い間隔および長い間隔のものが発生していることがわかり、印加電圧の上昇に伴って、プロット点が原点0付近のみに集中するようになり、部分放電の発生間隔が短くなっていき、より小刻みな部分放電パルスが発生することがわかる。
【0031】また、図25および図26は、各々、図21の欠損モデルにおいて、測定間隔τを100マイクロ秒とした場合における、印加電圧12.04KVおよび17.09KV時のリターンプロットを例示したものである。これら図25および図26と前記の図22および図24とを比較してわかるように、図21の欠損モデルにおいても、部分放電を5マイクロ秒から100マイクロ秒までにおける任意の時間間隔で測定して、各測定間隔でなんら遜色のない部分放電診断を行うことができる。
【0032】もちろん、この発明は以上の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。たとえば、測定間隔τは、実施例で用いた5マイクロ秒や100マイクロ秒に限定されるものではなく、また、印加電圧も交流でも直流でもよい。
【0033】
【発明の効果】以上、詳しく説明したように、この発明の部分放電状態診断方法によって、部分放電の発生状態の診断、たとえば部分放電が電極周辺に限られた状態になっているか、電極から離れた部分にまで達しているか、または、その両放電が混在しいるのかなどのような診断を的確に、且つ容易に行うことができ、電力機器等の初期欠損や絶縁劣化などを高精度で検出し、診断することができる。
【出願人】 【識別番号】000156938
【氏名又は名称】関西電力株式会社
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】財団法人電力中央研究所
【出願日】 平成10年(1998)3月23日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 謙秀 (外1名)
【公開番号】 特開平11−271385
【公開日】 平成11年(1999)10月8日
【出願番号】 特願平10−74347