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【発明の名称】 高圧幹線ケーブルの絶縁監視装置
【発明者】 【氏名】山田 直也

【要約】 【課題】ビルや工場等の高圧幹線ケーブルを活線のままで監視する必要性を満たし、且つ、絶縁監視による不良判定の確度を大幅に向上させる。

【解決手段】高圧幹線ケーブルの絶縁監視装置は、複数の高圧幹線ケーブルの直流微少電流成分を検出する直流電流成分測定装置と、前記複数の高圧幹線ケーブルのシースに装着された電流変成器と、前記高圧幹線ケーブルからの基準ベクトル信号と前記電流変成器からの出力電流信号とを入力して活線tanδを計測するtanδ計測装置と、前記直流電流成分測定装置と前記tanδ計測装置からの出力信号に基づいて前記高圧幹線ケーブルの絶縁評価を行う絶縁評価装置とを備える。前記複数の高圧幹線ケーブルの接続部にシース切換スイッチを設け、前記シース切換スイッチを相分離型に構成して、異相のケーブルシース間を流れる迷走電流を防止する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の高圧幹線ケーブルの直流微少電流成分を検出する直流電流成分測定装置と、前記複数の高圧幹線ケーブルのシースに装着された電流変成器と、前記複数の高圧幹線ケーブル及び前記電流変成器に接続され、前記高圧幹線ケーブルからの基準ベクトル信号と前記電流変成器からの出力電流信号とを入力して活線tanδを計測するtanδ計測装置と、前記直流電流成分測定装置と前記tanδ計測装置とに接続され、それらの出力信号に基づいて前記高圧幹線ケーブルの絶縁評価を行う絶縁評価装置と、を備え、前記複数の高圧幹線ケーブルの接続部に、ケーブルシースを測定側と接地側とに選択的に切り換えるシース切換スイッチを設け、前記シース切換スイッチを相分離型に構成して、異相のケーブルシース間を流れる迷走電流を防止することを特徴とする高圧幹線ケーブルの絶縁監視装置。
【請求項2】 請求項1記載の高圧幹線ケーブルの絶縁監視装置において、前記直流電流成分測定装置及び前記tanδ計測装置の前段に選択スキャナを設け、この選択スキャナにより、前記複数の系統の高圧幹線ケーブル及び前記電流変成器からの基準ベクトル信号及び出力電流信号を各系統毎に切り換えて選択的に前記tanδ計測装置へ入力させると共に、前記複数の系統の高圧幹線ケーブルからの直流電流成分を各系統毎に切り換えて選択的に前記直流電流成分測定装置へ入力させることを特徴とする高圧幹線ケーブルの絶縁監視装置。
【請求項3】 請求項1記載の高圧幹線ケーブルの絶縁監視装置において、前記直流電流成分測定装置から前記絶縁評価装置へ入力される直流電流成分をケーブルシースの絶縁抵抗で換算・補正する補正演算回路を設けたことを特徴とする高圧幹線ケーブルの絶縁監視装置。
【請求項4】 請求項1記載の高圧幹線ケーブルの絶縁監視装置において、前記直流電流成分測定装置から前記絶縁評価装置へ入力される直流電流成分とtanδの計測過程にそれぞれ校正過程を採り入れて計測の信頼度を向上させることを特徴とする高圧幹線ケーブルの絶縁監視装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ビル等に敷設されている高圧CVケーブル等の高圧幹線ケーブルの絶縁劣化の主原因である水トリーに注目した直流微少電流成分を検出する絶縁監視装置、特に、その検出確度を向上させるために、活線tanδ計測装置との複合化を図ったものに関する。
【0002】
【従来の技術】図2は、三相トリプレックス形高圧電力ケーブルを対象とした、電力ケーブルの絶縁劣化を、ケーブル内部で発生する水トリーに伴う直流微少電流成分を検出することによって行う方式の従来の絶縁監視装置である。
【0003】図2において、1は主電気室(フィーダ室)から一番目の副電気室(第1サブ変8)へ至るトリプレックス(単芯ケーブル3本)形の第1ケーブル1R,1S,1Tの全体を示し、2は第1サブ変8から第2サブ変9に至る第2ケーブル2R,2S,2Tの全体をそれぞれ示す。
【0004】上記のように構成された高圧電力ケーブル系において、水トリーの発生に伴う直流微少電流が第1種接地E1に流出するが、図2の従来例では、これをフィーダ室10に接地した直流電流成分測定装置4で行おうとするものである。図2では、電力ケーブル系はA系統のみを示しているが、B以降複数の系統がある場合には、例えば図2のように、20系統をスキャニング測定させることが行われている。
【0005】そして、一つの系統内のケーブルシースの接続は、図2に示されるように、第1サブ変8では、ケーブル1の末端シース1Erをケーブル2の始端シース2Esに一括して接続するように第1シース切換器13を測定側に切り換えることで行い、また第2サブ変9では、シース2Erとシース3Esが一括して接続されるように第2シース切換器14を測定側に切り換えることで、フィーダ室10のみでケーブルシース1Esが直流電流成分測定装置4を介して第1種接地E1に接地されるように構成されている。
【0006】ところで、電力ケーブルの活線下での絶縁監視方式には、図4の表に示すように、直流電流成分の他に活線tanδ法がある。これらそれぞれ単独での判定結果を、最も信頼できる判定法とされている、停電させて直流高圧を印加して評価する停電測定の不良判定結果と比較した一致率で見ると、70%前後である。しかし、直流電流成分と活線tanδ法の組み合わせで判定すると、不良ケーブルの発見率は100%となることが電気学会の技術報告書にも記載されている。図3は、この一致率の関係を、横軸に直流電流成分、縦軸に活線tanδ値をとってプロットしたものである。
【0007】このような調査結果を踏まえて、直流電流成分と組み合わせて活線tanδ法を実施しようとするときの説明を、図2の電力ケーブル系と対比して図5に示した活線tanδ法の部分構成図を基に行う。
【0008】図5において、5は後述する活線tanδを測定するためのtanδ測定装置、6は例えばR相の高圧母線に接続された標準コンデンサ(Cs)で、該高圧母線からこの標準コンデンサ(Cs)6を介して基準ベクトル信号Vs(図6の横軸Vs)がピックアップされる。7はR相の電力ケーブルのシースに装着された電流変成器で、その出力Ixは上記基準ベクトル信号Vsと共にtanδ測定装置5に入力される。
【0009】tanδ測定装置5では、その内部の演算回路により、図6のベクトル図に示すように、電流変成器7の出力電流信号Ixは基準ベクトルVsと同相の成分Irとπ/2進みの成分Icとに分けられ、しかる後に、両者の比としてtanδ値が計測される。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】このような活線tanδの測定を、図5の電力ケーブル1が電力ケーブル2とカスケード接続されたような場合に行おうとすると、多くの場合、そのtanδ測定は巧く実施できない。その理由は、図5に示すような電力ケーブルのシース回路を循環する迷走電流Irsにある。迷走電流Irsは、図5の場合、R相始端シースから流入し(21)、シースを経由(22)した後、R相終端シースからS相終端シースに入り(23→24)、S相シースを逆流(25)してS相始端シースに戻る(26)。その大きさはフィーダ室10やサブ変内での隣接ケーブルの負荷状況により変動するが、通常1000〜2000mAに達することがある。
【0011】電流変成器7ではせいぜい数十mA程度のケーブル充電電流(100〜200m長のケーブル亘長に対応)を対象としている上、位相関係のバラバラな迷走電流Irsが流れると全く測定にならないという問題点があった。
【0012】このように、絶縁監視装置の検出確度を向上させるために、活線tanδ計測装置との複合化を図る場合、ケーブルシースの迷走電流に影響されて、上記直流電流成分とtanδの計測を両立させることが難しいという問題点があった。
【0013】そこで、この発明は、上述した従来の絶縁監視装置の問題点を解消しようとするものであり、ビルや工場等の高圧幹線ケーブルを活線のままで監視する必要性を満たし、且つ、絶縁監視による不良判定の確度を大幅に向上させ得る絶縁監視装置を提供することを目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、請求項1の発明に係る高圧幹線ケーブルの絶縁監視装置は、複数の高圧幹線ケーブルの直流微少電流成分を検出する直流電流成分測定装置と、前記複数の高圧幹線ケーブルのシースに装着された電流変成器と、前記複数の高圧幹線ケーブル及び前記電流変成器に接続され、前記高圧幹線ケーブルからの基準ベクトル信号と前記電流変成器からの出力電流信号とを入力して活線tanδを計測するtanδ計測装置と、前記直流電流成分測定装置と前記tanδ計測装置とに接続され、それらの出力信号に基づいて前記高圧幹線ケーブルの絶縁評価を行う絶縁評価装置とを備え、前記複数の高圧幹線ケーブルの接続部に、ケーブルシースを測定側と接地側とに選択的に切り換えるシース切換スイッチを設け、前記シース切換スイッチを相分離型に構成して、異相のケーブルシース間を流れる迷走電流を防止するように構成したものである。
【0015】請求項2の発明に係る高圧幹線ケーブルの絶縁監視装置は、前記直流電流成分測定装置及び前記tanδ計測装置の前段に選択スキャナを設け、この選択スキャナにより、前記複数の系統の高圧幹線ケーブル及び前記電流変成器からの基準ベクトル信号及び出力電流信号を各系統毎に切り換えて選択的に前記tanδ計測装置へ入力させると共に、前記複数の系統の高圧幹線ケーブルからの直流電流成分を各系統毎に切り換えて選択的に前記直流電流成分測定装置へ入力させるように構成したものである。
【0016】請求項3の発明に係る高圧幹線ケーブルの絶縁監視装置は、前記直流電流成分測定装置から前記絶縁評価装置へ入力される直流電流成分をケーブルシースの絶縁抵抗で換算・補正する補正演算回路を設けたものである。
【0017】請求項4の発明に係る高圧幹線ケーブルの絶縁監視装置は、前記直流電流成分測定装置から前記絶縁評価装置へ入力される直流電流成分とtanδの計測過程にそれぞれ校正過程を採り入れて計測の信頼度を向上させるように構成したものである。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、添付図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。
【0019】実施の形態1.図1はこの発明の一実施の形態によるを示す概略図である。図1において、1乃至4及び6乃至10は図2或いは図5に示された上記従来例と同様の構成要素を示しているので、それらの説明を省略する。
【0020】5は、活線tanδを測定するためのtanδ測定装置で、各相(R、S、T)の母線に各標準コンデンサ(Cs)6を介して接続されると共に、各電力ケーブル1のシースに装着された各電流変成器7に接続されている。
【0021】11は、第1サブ変8内の電力ケーブル1、2のシース1Er、2Esを相分離的に測定側と接地側に切換え可能な第1シース切換器であり、12は、第2サブ変9内での電力ケーブル2、3のシース2Er、3Esを相分離的に切換える第2シース切換器である。
【0022】15は、tanδ測定装置5及び直流電流成分測定器4に接続され、それらの出力tanδ及びIdcを入力して、図3のチャート等を参照して絶縁評価を行う絶縁評価装置である。
【0023】以下、図1のA系統でさらに電力ケーブルがカスケード的に接続されている場合、全てのシース接続部を相分離可能なようにする。すなわち、第1サブ変8内において同一相(R、S、T)の電力ケーブル1、2のシース1Er、2Es同士を各切換スッチ11r、11s、11tを介して接続し、各切換スッチ11r、11r、11tの個別の切換により同相のケーブルシース1Er、2Es同士の閉回路が断接される。同様に、第2サブ変9内においても、同一相(R、S、T)の電力ケーブル2、3のシース2Er、3Es同士を各切換スッチ12r、12s、12tを介して接続し、各切換スッチ12r、12r、12tの個別の切換により同相のケーブルシース2Er、3Es同士の閉回路が断接される。
【0024】このようなシース接続構成とすることで、図5に図示したR相とS相、S相とT相、T相とR相のケーブルシースがループ状になって生ずる循環迷走電流Irs、Ist、Itr等はすべて解消することができる。従って各相の基準ベクトル信号Vsを標準コンデンサ(Cs)6を介して、また電力ケーブルの各相シースの漏れ電流Ixを各電流変成器7を介して、同時にtanδ測定装置5に入力することによって、上記迷走電流の影響を受けずにtanδの測定を所期の性能通りに実施することができる。
【0025】実施の形態2.図1において、A系統と並列して複数の系統がある場合、tanδ測定装置5のVs入力部とIx入力部に当該測定相のVsとIxを同時に演算部に入力可能な相選択スキャナを設け、且つ、Ix入力部に直流電流成分測定装置4のシース選択スキャナと同期した複数ケーブルからのIx選択スキャナを設けることで、絶縁評価装置15に同一系統のケーブルのtanδデータと直流電流成分Idcデータとを伝送可能とする。これによって、図3に示した、電気学会の推奨するtanδと直流電流成分Idcの二次元データによる絶縁不良の判定確度の高い絶縁監視装置を、各1台づつのtanδ測定装置5及び直流電流成分測定装置4のみで構成することができる。
【0026】絶縁評価装置15は図3のような評価帳票を出力できるほか、tanδと直流電流成分Idcのレベル設定の組み合わせによる各種の警報信号9を出力できる機能を具備させることで、きめ細い電力ケーブルの常時絶縁監視装置が得られる。
【0027】実施の形態3.図1における絶縁評価装置15に入力される直流電流成分Idcは、シースの絶縁抵抗Rshと反比例的に増減することが知られている。
【0028】従って、冬期にはRsh=500MΩでIdc=0.5nAのデータは、ケーブルが劣化していなくても、夏期にはRsh=50MΩでIdc=5nA程度となることが普通である。
【0029】そこで、上記の絶縁評価装置15に入力する直流電流成分Idcとして、絶縁評価装置15のIdc入力部に、例えばRsh=100MΩに換算したIdcが得られるような補正演算回路を設けることで、絶縁評価装置15の出力帳票としての図3のデータチャートをRshに左右されない普遍的なものとすることが可能である。
【0030】実施の形態4.図1のような絶縁監視装置は長期間に亘って稼動をするものであり、従って、使用時間の経過と共にtanδ測定装置5及び直流電流成分測定装置4そのものの精度が悪くなって、このため、絶縁評価装置15が誤った警報16を出すことが懸念される。
【0031】そこで、tanδの測定スキャニング及び直流電流成分Idcの測定スキャニングの間に、それぞれtanδとIdcの校正計測のプロセスを組み込み、この校正結果が定められたゾーンを逸脱した時には、絶縁評価装置15から計測異常の警報を出すようにして、絶縁監視システムの計測の信頼度を向上させることができる。
【0032】
【発明の効果】請求項1の発明によれば、複数の幹線ケーブルの接続部のシース切換スイッチを相分離型とすることで、迷走電流の影響を無くし、直流電流成分とtanδとの複合計測が可能となり、従って、ビルや工場等の高圧幹線ケーブルを活線のままで監視することができ、且つ、絶縁監視による不良判定の確度を大幅に向上させることができる。
【0033】請求項2の発明によれば、直流電流成分測定装置及びtanδ計測装置の前段に選択スキャナを設け、この選択スキャナにより、複数の系統の高圧幹線ケーブル及び電流変成器からの基準ベクトル信号及び出力電流信号を各系統毎に切り換えて選択的に前記tanδ計測装置へ入力させると共に、前記複数の系統の高圧幹線ケーブルからの直流電流成分を各系統毎に切り換えて選択的に前記直流電流成分測定装置へ入力させることにより、複数の系統の高圧幹線ケーブルの場合であっても、各1台の直流電流成分測定装置及びtanδ計測装置によって不良判定確度の高い絶縁監視装置を得ることができる。
【0034】請求項3の発明によれば、直流電流成分をケーブルシースの絶縁抵抗で換算・補正したものを入力できるようにしたので、シースの絶縁抵抗が季節の温度変化等により変動しても、常に確度の高い不良判定を行うことができる。
【0035】請求項4の発明によれば、直流電流成分とtanδとの計測過程にそれぞれ校正過程を採り入れることにより、計測の信頼度を一層向上させることができる。
【出願人】 【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
【出願日】 平成10年(1998)3月19日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道照 (外6名)
【公開番号】 特開平11−271383
【公開日】 平成11年(1999)10月8日
【出願番号】 特願平10−70498