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【発明の名称】 電力系統の事故点標定法
【発明者】 【氏名】新井 是男

【氏名】古澤 秀人

【氏名】坂場 昭雄

【氏名】佐藤 晃一

【氏名】小谷 一夫

【氏名】杣 謙一郎

【要約】 【課題】事故点の標定が、容易かつ短時間に行える電力系統の事故点標定法を提供する。

【解決手段】GPS受信器4a,4bによりGPS情報を受信し、時刻パルスC1,C2を生成する。高圧配電線路1の測定区間の両側のそれぞれに接続した信号検出装置3a,3bにより事故点1aからの放電パルス電流7a,7bを検出する。信号検出装置3a,3bの夫々は、同一タイミングで発生する時刻パルスC1,C2から放電パルス電流7a,7bの検出時点までの夫々の時間t1,t2を測定し、2つの時間差から事故点1aの位置を決定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 電力系統の事故点を有する区間の両側に信号検出装置を接続し、前記各信号検出装置の近傍で時刻情報を有する電波を受信して測定基準となる時刻パルスを生成し、前記各信号検出装置で前記事故点に生じた放電パルス電流に伴う放電パルスを検出し、前記時刻パルスの発生時点から、該時刻パルスより後に前記各信号検出装置で検出された各放電パルスまでのそれぞれの経過時間を測定し、前記測定した2つの経過時間に基づいて前記事故点の位置を決定することを特徴とする電力系統の事故点標定法。
【請求項2】 前記電波は、GPSであることを特徴とする請求項1記載の電力系統の事故点標定法。
【請求項3】 前記時刻パルスは、その発生間隔が数kHz〜数十kHzであることを特徴とする請求項1記載の電力系統の事故点標定法。
【請求項4】 前記時刻パルスは、前記放電パルス電流が前記事故点から前記信号検出装置へ伝搬するのに要する時間以上の発生間隔に設定されていることを特徴とする請求項1記載の事故点標定法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高圧配電線路等の電力系統の事故点標定法に関し、特に、事故点の位置を特定するための電力系統の事故点標定法に関する。
【0002】
【従来の技術】高圧配電線路等に事故が発生して停電になった場合、その復旧作業を迅速に行なえるようにするには、事故位置を早急に特定(標定)しなければならない。従来より、停電後の事故点標定法として、以下に列挙する具体例がある。
(i)事故発生後の停電状態になった配電線路に直流高電圧を課電して事故点を焼成させた後、ブリッジ回路でインピーダンスの変化を測定する。分岐がある場合、分岐部の切り離し作業を行いながら、順次切り離された分岐区間を測定する。区間を限定した後、事故点でインピーダンスが変化していることに着目し、ケーブルの一端よりパルス電圧を入射し、事故点で生じる反射波が入射点に到達する時間差から事故点を求める。
【0003】なお、架空線路のように分岐が多く、柱上変圧器等の設置機器が多く存在する系統の場合、直流高圧パルス電圧を線路に印加し、事故点に流れ込む電流を測定する作業を区間単位に順次移動しながら行い、その電流の有無と方向から事故点を求める。
(ii)活線状態での標定法として、測定線路の複数の箇所に事故信号検出装置を設置し、各事故信号検出装置における信号到達時間の差から事故点を算出する。この事故点標定法の場合、各事故信号検出装置間の同期を得るため、および各事故信号検出装置から測定結果を収集し、事故点を標定するための処理を行う親局へ信号を伝送するため、信号伝送媒体が布設される。
(iii) 特開平7−287045号公報に示される事故点標定法では、事故点を有する高圧配電系統の測定区間の両端に信号検出装置を接続し、片方の信号検出装置から基準信号を送出し、この基準信号と事故点からの放電パルスを検出し、各信号検出装置における基準信号受信時点から放電パルス検出時点までの時間t1とt2を求め、その時間差(t1−t2、またはt2−t1)から事故点を特定している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の電力系統の事故点標定法によると、前記(i)の標定法の場合、線路の切り離し操作が必要であり、多大な労力を要すると共に、移動時間及び繰返し測定のために作業時間が長くなるという問題がある。さらに、電力系統が活線状態での測定は不可能であり、再送成功事故の標定には使用できない。
【0005】前記(ii)の事故点標定法の場合、(i)と同様に順次測定のために探査時間が長くなるほか、信号伝送媒体の布設のために電柱の昇降作業を伴い、多大な労力を要する。また、設備コストが膨大になる。前記(iii) の事故点標定法の場合、基準信号を信号検出装置の一方から高圧配電系統に印加しているため、事故点の状況によっては他端の信号検出装置に基準信号が伝達されず、事故点標定が行えない可能性がある。また、基準信号を高圧配電系統から検出するため、放電パルスと基準信号を分離する手段を信号検出装置に設ける必要があり、構成が複雑になる。更に、基準信号を発生させるための装置が大がかりになる。
【0006】本発明の目的は、容易かつ短時間に事故点の標定が可能な電力系統の事故点標定法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の目的を達成するために、電力系統の事故点を有する区間の両側に信号検出装置を接続し、前記各信号検出装置の近傍で時刻情報を有する電波を受信して測定基準となる時刻パルスを生成し、前記各信号検出装置で前記事故点に生じた放電パルス電流に伴う放電パルスを検出し、前記時刻パルスの発生時点から、該時刻パルスより後に前記各信号検出装置で検出された各放電パルスまでのそれぞれの経過時間を測定し、前記測定した2つの経過時間にもとづいて前記事故点の位置を決定することを特徴とする電力系統の事故点標定法を提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の電力系統の事故点標定法を適用した測定システムを示す。1は電力系統としての高圧配電線路である。この高圧配電線路1に事故が発生し、停電線路となった場合、事故点1aの両側にセンサ2a,2bが設置される。センサ2a,2bには変流器等が用いられ、それぞれには信号検出装置3a,3bが接続される。信号検出装置3a,3bのそれぞれには、アンテナ5a,5bを備えたGPS(Global Postioning System)受信器4a,4bが接続されている。信号検出装置3aは、センサ2aからの検出信号S1とGPS受信器4aからの時刻パルスC1を記憶する検出メモリ31aと、検出メモリ31aに信号を書き込むタイミングを与える内部発振器32aを備えている。同様に、信号検出装置3bは、センサ2bからの検出信号S2とGPS受信器4bからの時刻パルスC2を記憶する検出メモリ31bと、検出メモリ31bに信号を書き込むタイミングを与える内部発振器32bを備えている。また、高圧配電線路1には、事故点を標定するために、事故点で放電を生じさせるために必要な、直流高電圧を出力する課電装置6が接続される。標定をする場合は、この直流高電圧により事故点で放電を生じさせる。ただし、活線での標定の場合は不要である。活線では、商用電力により事故点で放電が発生する。
【0009】GPSは、地球の上空約2万1000kmに形成された軌道を周回する24個の人工衛星の内の3個以上からの信号を受信して、GPS装置を搭載した車両、船舶等の所在位置をディスプレィに表示されている地図上に図示し、或いは緯度等の数値データとして知るためのシステムである。本発明においては、GPS情報を事故点標定時の放電パルス電流の検出時刻を求めるための基準時刻を生成するために用いている。
【0010】人工衛星からのGPS情報を受信するのがGPS受信器4a,4bであり、受信したGPS情報を処理し、GPS受信器4aでは時刻パルスC1 を生成し、GPS受信器4bでは時刻パルスC2 を生成する。図2は本発明の事故点標定法における信号波形を示す。図2及び図1を参照して本発明の事故点標定法を以下に説明する。
【0011】図1に示すように、高圧配電線路1に事故が発生した場合、事故点1aと思われる位置を含む距離範囲を測定区間として設定する。そして、事故点1aの片側のX1点にセンサ2aを設置し、反対側のX2点にセンサ2bを設置する。センサ2a,2bには信号検出装置3a,3bを接続し、それぞれにGPS受信器4a,4bを接続する。次に、事故点1aに放電を生じさせるため、課電装置6を信号検出装置3aの近傍の高圧配電線路1の導体部分に接続し、直流高電圧を高圧配電線路1に印加する。この課電によって事故点1aに放電が起こり、放電パルス電流7が発生する。この放電パルス電流7は、放電パルス7a,7bとなって高圧配電線路1を事故点1aから遠ざかる方向に伝搬し、信号検出装置3a,3bに検出されることにより検出信号S1,S2となる。
【0012】検出信号S1とS2を検出したことにより、信号検出装置3aと信号検出装置3bの間に事故点1aが存在することがわかる。しかし、これだけでは検出信号S1,S2の時間差が不明なため、事故点1aの位置を特定することができない。検出信号S1,S2の時間差を求めるためには、放電パルス7a,7bの検出時刻を求めるための基準を信号検出装置3a,3bで持つ必要がある。そこで、GPS受信器4a,4bから時刻パルスC1 ,C2 (C1 =C2 )を取得し、時間差(t1−t2)が求められるようにする。
【0013】図2に示すように、GPS受信器4a,4bより出力される時刻パルスC12の発生時刻と放電パルス7aの検出時刻の時間t1を信号検出装置3aで測定し、同時に、時刻パルスC22の発生時刻と放電パルス7bの検出時刻の時間t2を信号検出装置3bで測定する。この結果、時刻パルスC12とC22の発生時刻が同一のタイミングになり、かつ、このタイミングを起点に時間t1,t2が測定されれば、位置X1とX2の検出信号時間差は、t1とt2の差(=t1−t2)として求められる。
【0014】ここで、時刻パルスCの間隔(周期)Tは、信号検出装置3a,3bの検出メモリ31a,31bの記憶容量と、内部発振器32a,32bの精度と、高圧配電線路1を放電パルス7a,7bが伝搬するのに要する時間を考慮して決定する。具体的には、高圧配電線路1の測定線路長を放電パルス7a,7bが伝搬する時間以上に設定する。時刻パルスCの間隔Tが高圧配電線路1の測定線路長を放電パルス7a,7bが伝搬する時間より長いことにより、信号検出装置3a,3bで求めるべき時間が一義的に決まる。
【0015】図3は、時刻パルスの間隔Tが、放電パルス7a,7bの伝搬時間より非常に短い場合の時刻パルスCと放電パルス電流の関係を示す。この場合、どの時刻パルスに対して時間を測定するかは不明であり、特定しないと正確な時間を求めることができない。時刻パルスの間隔Tが長ければ、図2で示した様に、放電パルス7a,7bの手前の時刻パルスを用いることに予め決めておけば、同一時刻パルス(C12,C22)との時間差(t1−t2)を求めることができる。ただし、上記の如く、時刻パルスの間隔Tを放電パルス7a,7bが高圧配電線路1を伝搬する時間以上に設定する場合、放電パルス電流7の発生状況によっては時刻パルスC1とC2が同一にならない可能性がある。
【0016】図4は放電パルスの発生状況により、時刻パルスCが同一にならない場合を示している。この様な状態を避けるためには、信号検出装置3a,3bで測定する時間が、1つの時刻パルスとの時間差のみでなく、それより前の複数の時刻パルスに対する時間差を測定することが有効である。具体的には、図4に示すように、放電パルス7bが時刻パルスC22より前にあるとき、時刻パルスC21を基準にして時間t2,t3を求めればよい。また、測定誤りが生じている可能性があると考えられる時間範囲を予め設定し、この設定値より信号検出装置3a,3bの一方の時間が短く、かつ、他方の時間が前記設定値より長いとき、設定値より短い方の測定値を更に1つ手前の時刻パルスとの間の時間にする等の処理も有効である。設定値は、高圧配電線路1の測定線路長を放電パルス7a,7bが伝搬する時間程度に設定するのが望ましい。
【0017】よって、時刻パルス間隔は、高圧配電線路1の測定線路長を放電パルス7a,7bが伝搬する時間の数倍に設定することが望ましい。時刻パルスの間隔Tの最大は、検出メモリ31a,31bの容量に十分記憶できる間隔以内とし、かつ、内部発振器32a,32bの誤差が測定する時間差の誤差として許容できる間隔以内にする。10km程度の架空線路を測定対象とする場合、時刻パルスの間隔Tは、数kHz〜数十kHzに設定するのが妥当である。ただし、デューティ比は任意でよい。
【0018】次に、時間差算出結果を用いて事故点を標定するための基本処理について説明する。放電パルス7a,7bが高圧配電線路1内を同一伝搬速度で伝搬するとき、信号検出装置3a,3b間の中央で放電パルス電流7が発生したとすると、信号検出装置3a,3bの時間t1とt2の差は零となる。つまり、時間t1とt2の差分は、中央からのずれを示している。よって、位置X1から事故点1aまでの距離Fを求める基本算出式は次式で示される。
【0019】F=(t1−t2)*K/2+L/2(ただし、Kは伝搬速度、Lは信号検出装置3a,3b間の線路長)
なお、高圧配電線路1が途中で伝搬速度が異なる場合、例えば、架空絶縁線路が途中から地中ケーブルや架空ケーブルに変わるような場合には、伝搬速度差で線路長を補償して事故点を算出すればよい。
【0020】以上、事故発生後の停電線路での事故点標定法について述べたが、本発明により活線線路の事故発生点を標定する場合、放電を生じさせるための課電装置6を設置する必要はなくなる。上記実施の形態において、分岐線事故の標定も同時に実施する場合は、分岐端部にも信号検出装置3a,3bを設置することにより可能である。また、電力系統として高圧配電線路1を例にしたが、本発明は高圧配電線路に限定されるものではなく、事故点で放電パルス電流が発生する全ての線路に適用可能である。
【0021】図1のGPS受信器4a,4bに代え、原子発振器の出力を使用してもよい。また、GPSに代えてJST(標準時刻電波)等の時刻情報を有する電波を用いることもできる。標定精度および信号検出装置を設置する環境を考慮して選択する。
【0022】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明の電力系統の事故点標定法によれば、時刻情報を基に時刻パルスを生成して測定基準にし、測定区間内の事故点からの反射パルスを信号検出装置で検出し、時刻パルスから前記検出した放電パルスの各々の発生時点までの各時間を測定し、この算出時間により事故点の位置を求めるようにしたので、事故点の標定が容易、かつ短時間に可能となり、停電復旧時間の短縮が可能になる。更に、信号検出装置間で同期を得るための通信線等の媒体が不要になり、設備の簡略化及びローコスト化が可能になる。また、活線での標定が可能なため、消滅性の事故も標定が可能になる。
【出願人】 【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力株式会社
【識別番号】000005120
【氏名又は名称】日立電線株式会社
【出願日】 平成10年(1998)3月23日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
【公開番号】 特開平11−271380
【公開日】 平成11年(1999)10月8日
【出願番号】 特願平10−73872