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【発明の名称】 電力ケーブルの絶縁劣化診断方法
【発明者】 【氏名】島田 元生

【要約】 【課題】低周波電源により、電力ケーブル絶縁体中における有害水トリーの判定および余寿命保証を行うこと。

【解決手段】0.05〜1HzのVLF電源1から高調波除去フィルタ2を介して被試験CVケーブル3に運転電圧の0.4〜1倍のVLF電圧を印加し、被測定CVケーブル3および標準コンデンサ4のそれぞれに流れる電流を損失電流測定ブリッジ6に入力し、基本波に対する損失電流の第3高調波の位相ずれを求め、水トリー劣化の有無を判定する。そして、有害水トリーが存在すると判定された電力ケーブルについて、運転電圧の3〜5.5倍の低周波電圧を印加してスクリーニングを行う。スクリーニングにより破壊しなかったケーブルについて3〜5年の余寿命が保証される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 0.05〜1Hzの低周波電圧を印加して、電力ケーブルの絶縁劣化を診断する方法であって、電力ケーブルに運転電圧の0.4〜1倍の低周波電圧を印加して、その時に発生する損失電流の第3高調波の波形歪みにより水トリー劣化の有無を判定し、水トリー劣化があると判定された電力ケーブルについて、運転電圧の3〜5.5倍の低周波電圧を印加して、水トリー劣化したケーブルを破壊させてスクリーニングを行うことを特徴とする電力ケーブル絶縁劣化診断方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電力用CVケーブルの絶縁劣化の診断方法に関する。
【0002】
【従来の技術】電力ケーブルを長期間便用すると、電界と水分の作用により絶縁体中に水トリーと呼ばれる劣化部が形成される。この水トリーは時間とともに進展し、電力ケーブルの絶縁性能を低下させるため、これを放置すると最終的には運転中の絶縁破壊事故を引き起こす。この絶縁破壊事故を未然に防止するため、電力ケーブルの絶縁劣化診断技術が種々開発されている。例えば、絶縁体中を流れる電流から印加電圧より位相が90°進んだ電流成分を除去した電流(損失電流)を検出し、この電流波形の変歪の様子つまり高調波成分の大きさや重畳位相を用いて、水トリーの有害レベルを判定する方法として、特開平5−80113号公報、特開平7−151815号公報等に記載される技術が知られている。
【0003】また、AC破壊電圧と水トリーの長さの関係を基にして、耐電圧試験をクリアしたケーブルについてその後の寿命は何年といった残存寿命を保証する方法も検討されている(例えば特願平8−58736号)。さらに、低周波電源を用い、電力ケーブルの絶縁劣化状態を監視したり、有害水トリーの存在を検出する方法としては、特開昭59−202077号公報、特開昭63−78061号公報に記載される技術が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】商用周波(以下ACという)電源を用いて、損失電流を測定し水トリーの有害レベルを判定する方法は電源が大きくなり可搬性に乏しく、また、この方法で電力ケーブルの余寿命を判定することはできなかった。また、低周波(以下、VLFという)電源は、上記AC電源に比べて小型であり可搬性に優れているが、損失電流を測定する電圧レベルが判っていなかったため、VLF電源を用いて損失電流を測定し水トリーの有害レベルを判定することができなかった。本発明は上記した事情に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、低周波電圧を印加して電力ケーブルの有害な水トリーを把握し、有害水トリーが存在する電力ケーブルに運転電圧より高い低周波電圧を印加して破壊によるスクリーニングを行うことにより、低周波電源により、電力ケーブル絶縁体中における有害水トリーの判定および余寿命保証を行うことである。
【0005】
【課題を解決するための手段】水トリー劣化したケーブルに単一周波数の正弦波電圧を印加した場合、その電流中に高調波成分が発生し、その基本波成分に対する位相のずれは水トリー劣化の程度を示す。したがって、ケーブルにVLF電圧を印加し、その高調波成分の位相のずれを測定することにより有害水トリーが存在しているか否かを診断することができる。
【0006】本発明者らが種々実験を行い検討したところ、絶縁体への電圧ストレスが2kV/mm以上であれば、VLFを使用した場合にも損失電流の波形からケーブルの劣化の有無を判定できることが明らかとなった。例えば、66kVCVケーブルの運転電圧により電圧ストレスは5kV/mmなので、運転電圧の0.4倍以上のVLFを印加することにより、CVケーブル絶縁体中の有害水トリーの判定を行うことができる。また、ケーブルの劣化の有無を判定する際には、ケーブルの運転電圧以下で試験することが望ましいので、VLFを使用し損失電流の波形からケーブルの劣化の有無を判定する場合には、運転電圧の0.4〜1倍の電圧を印加して行うのがよいと考えられる。さらに、水トリー長とACおよびVLF破壊電圧の関係を調べたところ、VLFの場合には、有害水トリーが存在するケーブルはAC運転電圧の3〜5.5倍の電圧で破壊し、破壊しなかったケーブルは3〜5年の余寿命を保証できることが明らかになった。
【0007】本発明は上記点に着目してなされたものであり、次のようにして前記課題を解決する。電力ケーブルに運転電圧の0.4〜1倍の0.05〜1Hzの低周波電圧を印加して、その時に発生する損失電流の第3高調波の波形歪みにより水トリー劣化の有無を判定する。そして、有害水トリーが存在すると判定された電力ケーブルについて、運転電圧の3〜5.5倍の低周波電圧を印加して、水トリー劣化したケーブルを破壊させてスクリーニングを行う。
【0008】本発明においては、上記のようにして電力ケーブルの絶縁劣化診断を行っているので、低周波電源を用いて損失電流の第3高調波の波形の歪み電力ケーブル絶縁体中における有害水トリーの判定を行うことができる。また、有害水トリーの判定を行うために印加する電圧は運転電圧以下でよいので、被試験ケーブルに余計なダメージを与えることがなく、最初から高いVLF電圧を印加するより効率的な診断を行うことができる。また、水トリー劣化があると判定されたCVケーブルについて、運転電圧の3〜5.5倍の低周波電圧を印加して、水トリー劣化したケーブルを破壊させているので、破壊しなかったケーブルについて3〜5年の余寿命保証が可能となる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について説明する。VLFによりCVケーブルの絶縁劣化診断および寿命判定を行うため、まず、水トリー長と損失電流の第3高調波の歪みとの関係を調べた。図1は未劣化の絶縁体シートと水トリー劣化した絶縁シートにAC交流正弦波電圧を印加した場合の損失電流の第3高調波波形であり、同図(a)は未劣化絶縁シート、(b)は水トリー劣化した絶縁シートの場合を示している。同図から明らかなように、水劣化絶縁シートの場合には、位相が90°(π/2)と270°(3π/2)で波形が歪む。
【0010】図2は22kVCVケーブル(絶縁厚=7mm)の劣化ケーブルでの損失電流の第3高調波波形であり、図1に示した絶縁シートの結果と一致しており、CVケーブルの場合であっても、損失電流の波形から劣化の有無を判定できることがわかる。図3は水トリー劣化した絶縁体にAC電圧を印加した場合における水トリー長と第3高調波成分の基本波成分に対する位相のずれを示す図であり、横軸は水トリーの長さを絶縁厚で割って100をかけたパーセントを示し、縦軸は位相のずれθ3 を示している。図3からわかるように、位相のずれθ3 が0に近づくにしたがって水トリー長が長くなる。すなわち、劣化が進んでいることがわかる。
【0011】図4は、AC破壊電圧と位相のずれθ3 の関係を表した図であり、縦軸はAC破壊電圧、横軸は位相のずれθ3 を示している。同図からわかるように、位相のずれθ3 が0°に近づくにしたがってAC破壊電圧が下がり、電気的にも劣化していることを表す結果がでている。同図においては、一例として|θ3 |<20°のとき要注意(有害水トリーが発生している)とした。以上のことから、水トリー劣化したケーブルに、単一周波数の正弦波電圧を印加し、その基本波成分に対する高調波成分の位相のずれを測定することにより有害水トリーが存在しているか否かを診断することができる。
【0012】上記図1、図2、図3、図4に示したものはAC電圧を印加した場合のデータであるが、VLFも基本的には正弦波であり、ACと同様な結果が得られるものと考えられる。そこで、本発明者は、0.05〜1HzのVLFについて水トリーの判定が可能な印加電圧を調べた。その結果、電圧ストレスが2kV/mm以上であれば、有害水トリーの判定を容易に行うことが確認できた。したがって、例えば、66kVCVケーブル(絶縁厚=8mm)の場合の運転電圧における電圧ストレスは〔60×15/√(3)〕/8=5kV/mmなので、運転電圧の0.4倍程度の電圧で有害水トリーの判定を行うことができる。
【0013】また、CVケーブルにおける有害水トリーの存在の有無を判定する場合には、CVケーブルにダメージを与えないことが必要である。したがって、有害水トリーの有無を判定する場合の印加電圧は通常運転電圧より低いことが望ましい。このことから、本発明においてはCVケーブルには運転電圧の0.4〜1倍の0.05〜1HzのVLFを印加して、損失電流を測定し第3高調波の位相ずれから有害水トリーの有無を判定し、有害水トリーが存在しているCVケーブルのスクリーニングを行うこととした。
【0014】次に、水トリー劣化したケーブルを破壊できる0.05〜1HzのVLF電圧を調べた。図5は水針モデル(22kVCVケーブル)の実験により得られた水トリーの伸びと、AC、VLF破壊電圧の関係を示す図であり、同図の縦軸は破壊電圧〔kV〕を示し、横軸は、残存絶縁厚(水トリーの先端からの正常部の厚さ)を示している。
【0015】図5からわかるように、AC電圧の約3倍程度のVLF電圧を水トリー劣化したケーブルに印加することにより、有害水トリーの存在するケーブルを破壊することができる。さらに、22〜33kVCVケーブル(絶縁厚t=6mm)について試験電圧と余寿命の関係を調べたところ、絶縁厚6mmのケーブルに60kVの電圧を印加した(60kV/6mm=10kV/mm)とき、破壊しなかったケーブルの推定余寿命は3年、また、絶縁厚6mmのケーブルに70kVの電圧を印加した(70kV/6mm=12kV/mm)とき、破壊しなかったケーブルの推定余寿命は5年であることがわかった。60kVの場合は運転電圧(22〜33kV/√(3)=13kV〜20kV)の3〜4.5倍であり、70kVの場合は運転電圧の3.5〜5.5倍であるから、運転電圧の3〜5.5倍のVLFを印加することにより、有害水トリーの存在するケーブルのスクリーニングを行うことができる。
【0016】なお、上記データは22〜33kVCVケーブルについてのデータであるが、66kVCVケーブルにもトレースできると考えられ、66kVCVケーブルの場合には、運転電圧は60×1.15/√(3)≒40kVであるので、有害水トリーを持つケーブル(残存絶縁厚t=3mm)をスクリーリニングするVLF電圧は40kV×3〜5.5=120〜220kVとなる。
【0017】図6は本発明で使用される測定回路の一例を示す図であり、同図に示す測定回路を用い、CVケーブルにVLFを印加して損失電流を第3高調波の位相ずれθ3 を測定した。図6において、1は0.05〜1HzのVLF電源、2はVLF電源に含まれる高調波を除去するフィルタ、3は被試験ケーブル、4は標準コンデンサ、5は分圧器であり、被試験CVケーブル3、標準コンデンサ4および分圧器5に対して、VLF電源1から高調波除去フィルタ2を介して被試験CVケーブル3に運転電圧の0.4〜1倍のVLF電圧を印加した。そして、被測定CVケーブル3および標準コンデンサ4のそれぞれに流れる電流を損失電流測定ブリッジ6に入力し、被測定CVケーブル3に流れる電流から電源電圧位相より90°位相が進んだ成分を除去し、得られた損失電流信号を波形解析器7に入力し、基本波に対する損失電流の第3高調波の位相ずれθ3 を求めた。
【0018】以上のように位相ずれθ3 測定し、位相ずれθ3 に基づき有害水トリーが存在するCVケーブルを判定した。そして、これらのCVケーブルに前記したように運転電圧の3〜5.5倍の電圧を例えば10分間印加して、スクリーニングを行った。以上のような試験を行ったところ、本発明の方法により、有害水トリーが存在するケーブルの判定が可能であること、および、絶縁劣化診断および耐圧試験により破壊しなかったケーブルについて3〜5年の余寿命が保証できることが確認された。
【0019】
【発明の効果】以上説明したように本発明においては、以下の効果を得ることができる。
(1)小型な低周波電源を用いて電力ケーブルの絶縁劣化診断を行うことができるので、試験装置を安価に構成することが可能となり、また可搬型とすることもできる。
(2)有害水トリーの判定に際しては、運転電圧の0.4〜1倍の低周波電圧を印加して試験を行っているため、被試験ケーブルに余計なダメージを与えることがない。また、有害水トリーが存在しているケーブルについては、運転電圧より高い低周波電圧を印加してスクリーニングすることができる。このため、有害水トリーの判定だけでなく、スクリーニングの結果破壊しなかったケーブルについて、余寿命を保証することが可能となる。
【出願人】 【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
【出願日】 平成9年(1997)12月22日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】長澤 俊一郎 (外1名)
【公開番号】 特開平11−183557
【公開日】 平成11年(1999)7月9日
【出願番号】 特願平9−353259