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【発明の名称】 半導体装置の試験方法及び半導体装置
【発明者】 【氏名】平井 淳宏

【氏名】難波 浩司

【氏名】菊地 正

【要約】 【課題】密封容器内の水分量の多寡を非破壊的に検知する。

【解決手段】2端子間に電圧を印加してリーク電流イ,ロ,ハの温度特性を測定し,リーク電流イ,ロ,ハが極小となる温度T1 ,T2 から容器内水分量を検知する。リーク電流が極小となる温度は水分量の単調増加関数であり,水分量を一義に定めることができる。また,容器内の露点温度以下の低温で2端子間のリーク電流イ,ロ,ハを測定し,リーク電流イ,ロ,ハの大小から容器内水分量の多寡を検知する。露点以下では,リーク電流は水分量の単調増加関数となるので,水分量を一義に定めることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 半導体チップを収容する密封容器の外壁を貫通して該容器内外を電気的に接続する第一及び第二の端子を有する半導体装置の試験方法において,該第一の端子と該第二の端子との間に電圧を印加し,該第一及び該第二の端子間に流れるリーク電流の温度依存性を測定する工程と,該リーク電流が極小となる温度から該容器内の水分量の多寡を検知することを特徴とする半導体装置の試験方法。
【請求項2】 半導体チップを収容する密封容器の外壁を貫通して該容器内外を電気的に接続する第一及び第二の端子を有する半導体装置の試験方法において,該容器内の水分の氷結温度を越えかつ露点未満の温度で,該第一の端子と該第二の端子との間に電圧を印加し,該第一及び該第二の端子間に流れるリーク電流を測定する工程と,該リーク電流の測定値から該容器内の水分量の多寡を検知することを特徴とする半導体装置の試験方法。
【請求項3】 請求項2記載の半導体装置の試験方法において,該リーク電流を予め測定された標準試料のリーク電流と比較して,該標準試料の水分量と比較した該水分量の多寡を検知することを特徴とする半導体装置の試験方法。
【請求項4】 請求項1,2又は3記載の半導体装置の試験方法において,該第一及び該第二の端子のうち少なくとも一方は,該半導体チップの内部回路に接続されていないことを特徴とする半導体装置の試験方法。
【請求項5】 請求項1,2又は3記載の半導体装置の試験方法において,該第一及び第二の端子はそれぞれ該半導体チップの内部回路に接続され,該第一の端子と該第二の端子との間に印加する該電圧を,0.7V以下とすることを特徴とする半導体装置の試験方法。
【請求項6】 請求項5記載の半導体装置の試験方法において,該第一及び該第二の端子間に印加する該電圧を0.1V〜0.3Vとすることを特徴とする半導体装置の試験方法。
【請求項7】 半導体チップを収容する密封容器の外壁を貫通して該容器内外を電気的に接続する第一及び第二の端子を有する半導体装置において,該容器内に表出する基板表面上に互いに沿うように設けられた2本の検知用配線の一方が該第一の端子に,他方が該第二の端子に接続されていることを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は密封容器内に半導体チップを収容した半導体装置の密封容器内の水分量を検知する半導体装置の試験方法に関する。
【0002】容器内に半導体チップを密封し,半導体チップと端子間とを容器内壁面上に形成された内部配線により接続する半導体装置,例えはセラミック封止のピングリッドIC容器を用いた半導体装置では,容器内の水分が内部配線のマイグレーションあるいはコロージョンを誘発し,内部配線間の短絡又は断線を引き起こす。
【0003】このため,半導体装置の信頼性を担保するため,密封容器内の水分量を確実に検知することができる半導体装置の試験方法が必要とされている。
【0004】
【従来の技術】従来,半導体装置の密封された容器内部の水分量の測定には,ガスの質量分析法が用いられていた。この方法では,半導体装置を真空中で加熱した後,容器に孔を開設して内部のガスを質量分析装置により分析する。従って,この方法は本質的に破壊検査であり,一旦水分量を測定した後はその半導体装置を再使用することができない。このため,半導体装置の全数試験に適用することができない。また,半導体装置の動作中に生ずる容器内の水分量の経時変化の観測のように,水分量を測定した半導体装置について引続き各種の試験を続行しその後の経過を観察することは不可能である。このため,半導体装置の信頼性を担保するに十分なデータを収集することは困難であった。
【0005】なお,容器のリーク試験,即ち密封状態の検査では,高圧ヘリウム中に半導体装置を放置してリーク部から容器内にヘリウムガスを侵入させ,その後大気圧に戻したときに容器内から漏出するヘリウムを検出することで,非破壊的にリーク試験をすることができる。従って,容器外部から侵入する水分を非破壊的試験により見積もることができる。
【0006】しかし,例えばセラミック封止の容器内には,半導体チップのマウンテング用にポリイミドが用いられ,また,セラミック容器の封止剤による内部配線の短絡を防止するために内部配線を囲む封止剤漏洩防止用のポリイミドが塗布されている。これらのポリイミドは,不適切な製造条件又は使用条件の下で,密封容器内に水を発生させることがある。このように,密封された容器内で水分が発生又は消失する場合は,外部から侵入する水分量を推定するに過ぎない既述の高圧ヘリウム中に放置するリーク試験は密封容器内の水分検出には無力であり,従って上述したガス分析による非破壊試験に依らねば容器内の水分量を検知することができない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上述したように,半導体装置の密封容器内の水分量は,従来はガス質量分析装置を用いた破壊検査によりなされていた。このため,全数試験あるいは継続する試験には適用することができず,試験の信頼性が制限されていた。また,従来なされていた高圧ヘリウム中に半導体装置を放置するリーク試験では,密封容器内部での水分の発生,消失を検知することができない。
【0008】本発明は,容器内の水分の凝結が,容器内部に設けられた内部配線相互間の絶縁抵抗を変化させるという事実を利用し,端子間の絶縁抵抗の温度変化から,又は端子間の絶縁抵抗値から容器内部の水分量の多寡を非破壊で検知する半導体装置の試験方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】図1は本発明の原理説明図であり,端子間のリーク電流の温度依存性を説明する図である。図中の実線イ,ロ及びホは,それぞれ異なる水分量を容器内に含む半導体装置におけるリーク電流を表す。図2は本発明の第一実施形態例測定装置概念図であり,半導体チップを容器内に密封した半導体装置のリーク電流の温度依存性を測定する装置の主要部分を表している。図3は本発明の第一実施形態例半導体装置断面図であり,セラミック封止された半導体装置を表している。図4及び図8は,それぞれ本発明の第一及び第三実施形態例半導体装置平面図であり,セラミック封止された半導体装置の容器に用いられるセラミック基板上に形成された配線を表している。なお,図4には,セラミック基板上の配線の一部が描かれており,残りの配線は省略されている。図9は本発明の第四実施形態例平面図であり,セラミック封止された半導体装置の容器に用いられるセラミック基板の一部分を表している。図11は本発明の第六実施形態例信号端子間のI─V特性図であり,半導体チップの内部回路に接続された端子間のダイオード特性を表している。
【0010】上記課題を解決するための本発明の第一の構成は,図1〜図4を参照して,半導体チップ2を収容する密封容器1の外壁を貫通して該容器1内外を電気的に接続する第一及び第二の端子3a,3bを有する半導体装置の試験方法において,該第一の端子3aと該第二の端子3bとの間に電圧を印加し,該第一及び該第二の端子3a,3b間に流れるリーク電流の温度依存性を測定する工程と,該リーク電流が極小となる温度T2 ,T3 から該容器1内の水分量の多寡を検知することを特徴として構成し,及び,第二の構成は,図1〜図4を参照して,半導体チップ2を収容する密封容器1の外壁を貫通して該容器1内外を電気的に接続する第一及び第二の端子3a,3bを有する半導体装置の試験方法において,該容器1内の水分の氷結温度を越えかつ露点未満の温度T0 で,該第一の端子3aと該第二の端子3bとの間に電圧を印加し,該第一及び該第二の端子3a,3b間に流れるリーク電流を測定する工程と,該リーク電流の測定値I1 ,I2 ,I3 から該容器内の水分量の多寡を検知することを特徴として構成し,及び,第三の構成は,図1〜図4を参照して,第二の構成の半導体装置の試験方法において,該リーク電流を予め測定された標準試料のリーク電流と比較して,該標準試料の水分量と比較した該水分量の多寡を検知することを特徴として構成し,及び,第四の構成は,図1〜図4を参照して,第一,第二又は第三の構成の半導体装置の試験方法において,該第一及び該第二の端子3a,3bのうち少なくとも一方は,該半導体チップ2の内部回路に接続されていないことを特徴として構成し,及び,第五の構成は,図1〜図4,及び図11を参照して,第一,第二又は第三の構成の半導体装置の試験方法において,該第一及び第二の端子3a,3bはそれぞれ該半導体チップ2の内部回路に接続され,該第一の端子3aと該第二の端子3bとの間に印加する該電圧を,0.7V以下とすることを特徴として構成し,及び,第六の構成は,第六の構成の半導体装置の試験方法において,該第一及び該第二の端子3a,3b間に印加する該電圧を0.1V〜0.3Vとすることを特徴として構成する。
【0011】第七の構成は,図2,図3,図8及び図9を参照して,半導体チップを収容する密封容器1の外壁を貫通して該容器1内外を電気的に接続する第一及び第二の端子3d,3cを有する半導体装置において,該容器1内に表出する基板1a表面上に互いに沿うように設けられた2本の検知用配線4aの一方が該第一の端子3aに,他方が該第二の端子3bに接続されていることを特徴として構成する。
【0012】本発明の発明者は,密封された半導体装置の電気的に開放された端子間に電圧を印加し,温度を変えて端子間のリーク電流を観測した結果,リーク電流は温度依存性を有しかつリーク電流が極小となる温度が存在する事実を明らかにした。さらに,本発明の発明者は,リーク電流を測定した半導体装置について密封容器内の湿度をガス質量分析装置を用いて定量分析した結果,リーク電流が極小となる温度は容器内湿度に依存することを明らかした。以下,リーク電流の温度依存性を調べた実験について説明する。
【0013】リーク電流の温度依存性は,図3及び図4を参照して,本発明の第一実施形態例の試料と同様のピングリッドアレイ型のセラミック封止半導体装置について測定した。この半導体装置は,セラミック基板1a上に載置された半導体チップ2を,金属製の蓋1bで容器内に封止する。端子3はセラミック基板を貫通して設けられる。セラミック基板1aの容器内の表出面には,端子3に接続され半導体チップ2周辺近傍に延在する配線が設けられる。
【0014】リーク電流の測定は,半導体チップ2の内部回路に接続されていない2つの隣接する端子3についてなされた。この端子3には,半導体チップ2の内部回路には接続しないが,セラミック基板1a上に配設され,半導体チップ2の周辺近傍に延在する配線が接続されている。
【0015】測定は,恒温槽内に収容した半導体装置の温度が一定になるのを待って,端子3間に10Vを印加し端子3間に流れる電流,即ちリーク電流を測定した。図1に,実測されたリーク電流の温度依存性のうち,典型的な3つの型を実線イ,ロ及びハで示した。イは標準試料,即ち容器内湿度が0.2〜0.3%と低いもの,ロは容器内湿度がイとハの中間の0.5%のもの,ハは容器内湿度が略1%と高いものである。なお,容器内湿度は,リーク電流の測定後に,真空中で容器に孔を開設し,加熱して発生するガスを質量分析法により測定した。
【0016】図1中の実線イを参照して,容器内湿度が0.3%以下の低い場合,リーク電流の対数は温度上昇と共に直線的に増加する。一方,図1中の実線ロを参照して,容器内湿度が0.5%と高い場合は,低温, 例えば温度T0 におけるリーク電流は容器内湿度が低い場合の実線イより多く,さらに温度上昇と共にリーク電流は減少する。さらに温度を上昇するとリーク電流は極小値を経由して増加し始め,高温では容器内湿度が0.3%以下の低い場合の実線イに接近し,容器内湿度が低い場合と同様にリーク電流の対数が直線的に増加する。容器内湿度が1%とより高い場合,図1中の実線ハを参照して,リーク電流は容器内湿度が0.5%の場合と同様に,温度上昇と共にリーク電流は極小値を経由し,高温ではリーク電流の対数が直線的に増加する。
【0017】上述した容器内湿度が1%の場合(実線ハ)と0.5%の場合(実線ロ)とを参照して,本発明者の他の実験結果をも総合すると,リーク電流が極小となる温度T2 ,T3 は,容器内湿度が高いと上昇す,また, 低温でのリーク電流I2 ,3 は,容器内湿度の上昇と共に多くなることが明らかにされた。
【0018】本発明の発明者は,かかるリーク電流の温度依存性は,以下に説明するように容器内の水分の凝結,蒸発に起因すると理解している。即ち,容器内湿度が低い場合,リーク電流は,基板表面の漏洩電流及び基板内の漏洩電流からなる。このようなリーク電流は,基板材料の絶縁物質の性質により定まり,図1中の実線イのような温度の指数関数として近似される。他方,容器内湿度が高い場合,露点より低温では基板表面に水分が凝結し,基板表面の漏洩電流を増加させる。図1中の破線ニ及びホは,水分凝結に起因する漏洩電流の推定される変化を定性的に表したものである。破線ニ及びホを参照して,露点以下の温度では基板表面への水分の凝結量は低温になる程多くなるから,基板表面の漏洩電流は露点以下の温度では温度低下と共に急激に増加する。このため,低温では,リーク電流の大部分が凝結した水分に起因する漏洩電流により占められ,実線ロ及びハを参照して,リーク電流は温度低下とともに増加する,即ち,リーク電流は温度上昇とともに減少する。これに対して,露点以上の温度では,基板表面への水分の凝結は起こらず,また基板表面に吸着されていた水分も蒸発するため,リーク電流は実線イに示す基板本来のリーク電流に限られる。従って,露点以上の高温ではリーク電流は,容器内湿度によらず基板本来のリーク電流に近づく。その結果,リーク電流は,低温では負の,高温では正の温度特性を有し,温度特性が負から正に変化する温度T1 ,T2 で極小値をとる。本発明はかかる事実と理解に基づいて考案された。
【0019】本発明の第一の構成では,2端子間に電圧を印加し,それらの端子間に流れるリーク電流の温度依存性を測定し,リーク電流が極小となる温度から容器内の水分量の多寡を検知する。
【0020】既述のように,リーク電流の極小は,基板本来の正の温度特性を有するリーク電流に,水分の凝結に起因して急激に増加する負の温度特性を有するリーク電流が重畳することで生ずる。従って,リーク電流の極小値を与える温度は,凝結温度,即ち露点に近い温度となる。露点は,容器内圧力が同じならば,容器内の水分量に強く依存する。通常の半導体装置では,容器内圧力は略同じであるから,リーク電流の極小値を与える温度は容器内の水分量により定まり,水分量が多いほど高温になる。従って,リーク電流が極小となる温度が測定されれば,その温度からおおよその露点,ひいてはおおよその容器内の水分量を推量することができる。また,リーク電流が極小となる温度を,他の半導体装置と比較することで両者の間の水分量の多寡を判別することができる。本構成では,リーク電流の極小となる温度を測定すれば足り,不安定かつ困難なリーク電流の絶対値を測定する必要がないから,水分量の多寡を確実に測定することができる。
【0021】本発明の第二の構成では,容器1内の水分の氷結温度を越えかつ露点未満の温度で,2端子間に電圧を印加してその間に流れるリーク電流を測定し,そのリーク電流の測定値から該容器内の水分量の多寡を検知する。
【0022】図1を参照して,リーク電流は,露点未満の低温では基板表面への水分の凝結により急激に増加する。このリーク電流の増加量は,凝結した水分量に強く依存する。また,凝結する水分量は,同一温度の下では露点が高いほど,言い換えれば容器内の水分量が多いほど多くなる。このため,同一温度でのリーク電流は,容器内の水分量に依存し,水分量が多いほどリーク電流は多くなる。従って,一定の温度の下で測定されるリーク電流から,おおよその容器内の水分量を推定することができる。また,測定されたリーク電流を他の半導体装置のリーク電流と比較することで,その他の半導体装置の容器内水分量との多寡を判別することができる。
【0023】本構成では,リーク電流が測定される温度は,水分の凝結が生ずる露点未満の温度であり,とくに凝結量を多くしリーク電流を大きくしてリーク電流の測定を容易にする観点から,低温であることが好ましい。しかし,氷結温度以下では凝結した水分が氷結しリーク電流が小さくなるから,氷結温度より高い温度で測定することが好ましい。本構成では,一つの温度でリーク電流を測定することで水分量を判別することができるから,リーク電流の温度依存性を測定する第一の構成に較べて測定が簡便である。
【0024】第三の構成では,第二の構成の半導体装置の試験方法において,標準試料と測定すべき半導体装置とのリーク電流を比較し,いずれの水分量が多いかを判別する。標準試料として,例えば良品とされる容器内水分の少ない半導体装置を用いることができる。このような半導体装置のリーク電流の対数は温度に対して直線的に変化するから,低温でのリーク電流は極めて小さい。従って,標準試料からのリーク電流の増加分を精密に測定することができる。
【0025】第四の構成では,リーク電流を測定する2つの端子のうち,少なくとも一方は半導体チップの内部回路に接続されていないいわゆるNC端子からなる。従って,高電圧をこれらの端子間に印加しても半導体装置の回路を破壊することがないから,端子間に高い電圧を印加して大きなリーク電流を流すことができるので,リーク電流の測定が容易になる。なお,NC端子に基板表面に設けた配線パターンが接続されていても差し支えない。また,第一,第二及び第三の構成において,リーク電流を測定する端子は,容器内部に表出していれば足り,容器内部に表出する容器内壁面上,例えば基板表面上に形成された配線に接続されていても又接続されていなくてもよく,さらに,半導体チップの内部回路に接続されているか否かを問わない。
【0026】第五の構成では,半導体チップの内部回路に接続された端子間のリーク電流を測定する。本構成ではNC端子を必要としないから,試験し得る半導体装置の種類の範囲が広くなる。内部回路に接続された端子間は,図11を参照して,通常,ダイオード特性を有する。本構成では,シリコンダイオードの順方向電流がリーク電流の測定の妨げとならない程度の大きさに留まるように,端子間に印加する電圧を0.7V以下とする。さらに,本発明の第六の構成では,この印加電圧を0.1V〜0.3Vとする。この電圧範囲では,電圧の指数関数で増加する順方向電流は極めて小さいのに対して,電圧に略比例するリーク電流は順方向電流に較べて十分に大きい。従って,内部回路を破壊することがない低い印加電圧により,リーク電流を精密に測定することができる。
【0027】第七の構成では,図8及び図9を参照して,半導体チップを収容する密封容器1の外壁を貫通して該容器1内外を電気的に接続する複数の端子3を有する半導体装置において,リーク電流測定用の専用端子3c,3dを備える。この専用端子3c,3dには,基板表面に,互いに平行に添うように設けられた一組の検知用配線4aが接続される。この構成では,端子に高電圧を印加しても半導体装置を破壊することがないので,リーク電流を大きくして測定を容易にすることができる。また,端子3c,3dは基板表面に形成された配線に接続するため,水分の凝結に伴うリーク電流の増加を鋭敏に検出することができる。なお,リーク電流を鋭敏に検出する観点から,検知用配線4aは長いことが好ましい。同じ観点から,検知用配線間距離は短いことが好ましく,とくに基板表面に形成される配線の最小配線間隔とすることが望ましい。
【0028】
【発明の実施の形態】本発明の第一実施形態例は,半導体装置の製造工程への適用に関し,セラミック封止された半導体装置の容器内水分量を検知するための試験方法に関する。
【0029】本発明の第一実施形態例に係る半導体装置の試験方法は,セラミック封止されたピングリッドアレイ型半導体装置の製造工程において,半導体装置の全数検査として適用された。この半導体装置の容器1は,図3及び図4を参照して,セラミック基板1a上面を金属製の蓋1bで気密に封止し,基板1aと蓋1bの間に形成された空洞に半導体チップ2を収容する。セラミック基板1a中央に窪み5が形成され,半導体チップ2はこの窪み5上面に裏面をポリイミド(図示せず)により貼着されて固定されマウンテングされる。セラミック基板1aの窪み5の外側には,セラミック基板1aを貫通するグリッド状に配置されたピン状の端子3が設けられる。さらに,セラミック基板1aの空洞に表出する上面,即ち容器1内壁面には,端子3に接続され半導体チップ2周辺近傍に延在する配線4が設けられる。半導体チップ2と配線4とは,例えばワイヤ又はリードにより接続される。また,蓋1b外周部の封止部分に近い基板1a上面には,封止剤による配線不良の発生を防止するため,封止部分の内周に沿って封止剤漏洩防止用のポリイミド(図示せず)が塗布される。なお,マウンテング用及び封止剤漏洩防止用のポリイミドは,ベーキングにより水分を解離されたのち封止される。
【0030】リーク電流の測定に先立ち,半導体装置をベーキングして半導体装置の外表面に付着する水分及び汚染物質を除去した。次いで,図2を参照して,半導体装置7を恒温槽10内に保持し,隣接する第一及び第二の端子3a,3bに測定用ケーブル8をはんだ付けして接続した。測定用ケーブル8の他端は,微小電流測定器9の入力部9aに接続される。この微小電流測定器9は,測定用ケーブル8に1μV〜200Vの電圧を印加でき,このとき測定用ケーブル8に流れる電流を1fA〜1Aの検出感度をもって測定できる。また,入力部9aはノイズの影響を少なくするため,必要ならば本体から分離して被測定物の近くに設置することができる。恒温槽10,測定用ケーブル8,入力部9a及び微小電流測定器9は,ノイズ防止のため筐体又は外部導線を接地した。
【0031】リーク電流の測定は,室温(25℃),及び30℃から100℃まで10℃ステップで行った。測定に用いた端子3a,3bは隣接して配設され,基板1a表面に形成された互いにほぼ平行に延在する2本の配線4の一方が端子3aに,他方が端子3bに接続されている。この一方の端子3aに接続する配線4は,半導体チップ2の近くまで延在するが半導体チップ2の内部回路に接続されないNCピンであり,他方の端子3bに接続する配線4は半導体チップ2の内部回路,例えば接地回路又は電源回路に接続されている。
【0032】図5は本発明の第一実施形態例リーク電流の温度依存性を表す図であり,2つの端子3a,3b間に10Vの電圧を印加したとき,両端子3a,3b間に流れるリーク電流を異なる温度下で測定した結果を表している。なお,図5中,イは容器封入前のポリイミドの水分離脱ベーキングが十分なもの,ロはベーキング時間を短くしたもの,ハはベーキング時間をロより短くしたものについてのリーク電流を表している。
【0033】図5イを参照して,十分な水分離脱ベーキングを施したものは,リーク電流の対数が室温から100℃の全範囲で温度に対して直線的に増加する。また,その絶対値は小さく,とくに低温で著しく小さくなる。他方,図5ロ及びハを参照して,ベーキング時間が短いものは,全温度範囲でリーク電流が多く,かつ各半導体装置についての特有の温度A,B,即ちロについては温度50℃,ハについては70℃でリーク電流が極小となった。これらの半導体装置イ,ロ,ハの容器内水分をリーク電流の測定終了後にガス質量分析により測定した結果,容器内の湿度はイは0.24及び0.29%,ロは0.68%,ハは1.09%であった。
【0034】このように,本実施形態例ではポリイミドのベーキング不良から容器内に発生した水分量を,リーク電流の極小値を与える温度から半定量的に検知することができた。なお,十分なベーキングを施したものでは,イを参照して,25℃〜100℃の範囲には極小が存在しない。これは容器内の湿度が小さいため露点が室温以下にあるためで,室温以下の温度範囲のリーク電流を測定することで,極小値を観測できる。従って,低温におけるリーク電流の温度依存性を測定することで,少量の水分の多寡を検知することができる。
【0035】図6は本発明の第一実施形態例リーク電流の温度可逆性を表す図であり,測定を温度上昇時に測定されたリーク電流と温度降下時に測定されたリーク電流とを表している。図6中,ニ及びホは封止前に十分にベーキングされたものについて,ト及びヘはベーキング時間が短いものについてのリーク電流であり,また,実線でつながる丸印は温度上昇時の測定値を,破線でつながる三角印は温度降下時の測定値を表している。
【0036】図6を参照して,温度上昇時のリーク電流と温度降下時のリーク電流は,同一温度でほぼ一致している。この事実は,リーク電流を決定する要因が温度に対して平衡状態にあることを強く示唆しており,既述のリーク電流の増加が容器内雰囲気中の水分の凝結に起因するいう本発明者の推論を支持するものである。
【0037】本発明の第二の構成は,一定温度下でリーク電流を測定し,封止された容器内の水分量の多寡を判定する半導体装置の試験方法に関する。本実施形態例のリーク電流の測定方法は,測定時の温度を一定にする以外は,上述した本発明の第一実施形態例における測定方法と同様である。また,半導体装置の構造も同様である。リーク電流の測定は,ポリイミドの水分離脱のベーキング時間が異なる複数の半導体装置について行った。
【0038】図7は,本発明の実施形態例容器内湿度とリーク電流との相関図であり,25℃で測定されたリーク電流と容器内湿度との関係を表している。図7を参照して,容器内の湿度はリーク電流の単調増加関数であり,両者は一対一に対応している。従って,リーク電流から容器内の水分量を知ることができる。
【0039】本第二の実施形態例において,容器内水分が少ない又は容器内水分量が知られている半導体装置を標準試料として用い,標準試料のリーク電流と被試験半導体装置のリーク電流との差から被試験半導体装置の容器内水分量を検出することもできる。この方法では,半導体装置の構造,半導体装置の製造又は保管の際の汚染等に起因するリーク電流が差をとることで相殺されるので,容器内水分に起因するリーク電流をより精密に測定することができる。なお,本実施形態例では,容器内水分に起因するリーク電流が大きくなり,かつ容器本来のリーク電流が小さくなる低温での測定が,リーク電流の精密な測定のために好ましい。
【0040】本発明の第三実施形態例は,専らリーク測定に使用される検知用配線を備えた半導体装置の試験方法に関する。本実施形態例にかかる半導体装置は,図8を参照して,密封容器の基板となるセラミック基板1aの上面で,端子3が設けられている領域の外側と蓋の封止部分との間の領域に,基板1a上面の配線4(図8では省略されている。)の最小間隔にほぼ等しいほぼ平行する2本の検知用配線4aを設ける。この2本の検知用配線4aはそれぞれ2本の端子3a,3bに接続される。リーク電流の測定及び容器内水分量の検知方法は,既述の第一又は第二実施形態例と同様である。本実施形態例では,水分の凝結に起因するリーク電流の増加が大きいので,水分量の検知を精密にすることができる。
【0041】本発明の第四実施形態例では,第三実施形態例の検知用配線に代えて,図9を参照して,インデックスマークの形成領域に2本の配線を渦巻き状に形成した検知用配線4aを用いる。インデックスマークは,図4を参照して,チップの特定の一角を表示するマークである。本実施形態例によれば,検知用配線4aはインデックスマークとしても利用できるので,インデックスマーク形成領域の他に検知用配線4aの形成領域を特別に設ける必要がなく基板1a寸法の増加を防止することができる。
【0042】図10は本発明の第五実施形態例正面図であり,リーク電流測定用のパッドを有する半導体装置の測定に用いられる測定治具の構造を表している。図10を参照して,第五実施形態例にかかる半導体装置は,容器上面に2つのパッド状端子3c,3dを有する。この端子3c,3dには,上述した第三及び第四実施形態例と同様の検知用配線4aが接続する。なお,この検知用配線4aは容器内部に設けられている限り,他の形状であっても又配設位置が基板上面以外であってもよい。
【0043】リーク電流を測定するには,測定用ケーブル8に代えて下方に突出する接触針11を備えた電流測定器9の入力部9aをサンプル押さえ12の下面に把持し,接触針11の先端を端子3c,3d上面に押圧して電気的に接続する。接触針11は,例えばスリーブ内を滑動し,上方からバネで下方に押圧される針を備えたいわゆるポゴピンを用いることができる。リーク電流の測定方法は第一又は第二の実施形態例と同様である。
【0044】本発明の第六実施形態例は,半導体チップの内部回路に接続された端子を用いてリーク電流を測定する半導体装置の試験方法に関する。リーク電流の測定方法は,図2〜図4を参照して,測定用ケーブル8が接続される端子3a,3bがいずれも半導体チップ2の内部回路に接続されていること,及び,端子3a,3b間に印加する電圧が0.7V以下,とくに0.1〜0.3V,例えば0.2Vとすること以外は,測定装置及び測定方法ともに第一又は第二実施形態例と同様である。
【0045】図11中のイ及びロは,後の行ったガス質量分析法により容器内の湿度がそれぞれ0.29%及び1%と測定された半導体装置のI−V特性を表している。図11中のイを参照して,容器内湿度が小さい半導体装置では,端子間の電気的特性は,端子間電圧が0.3V以下では端子間電流は殆ど流れず,端子間電圧が0.3Vを越えると数pAの端子間電流が流れ始め,さらに端子間電圧が0.7V以上では端子間電流は急速に増加するダイオードの順方向特性を示した。他方,容器内湿度が大きい半導体装置では,順電流が立ち上がる0.7V以下でダイオードの順方向電流に重畳するリーク電流の増加が観測された。このリーク電流の増加とダイオードの順方向電流との大きさの比は,端子電圧が0.1〜0.3Vで大きい。とくに端子電圧が0.2Vでは,リーク電流の絶対値が大きく測定が容易である。
【0046】本発明の第七の実施形態例は,ソケットを用いてする半導体装置の試験方法に関する。本実施形態例では,半導体装置をピングリッドアレイ用のプラスチック製ソケットに挿入し,ソケットの端子間のリーク電流を測定する。図12は本発明の第七実施形態例ソケットのリーク電流の温度特性図であり,ソケット単体での隣接する端子間に10Vの電圧を印加したときにその端子間に流れるリーク電流を表している。図12を参照して,リーク電流は温度ともに急速に増大する。しかし,40℃におけるリーク電流は2.2pAであり,それ以下の温度,例えば25℃では0.25pAと小さくなる。このリーク電流2.2pAは,半導体装置の端子間のリーク電流を測定するに十分小さな漏洩電流であり,容器内水分量を検知する際に重大な障害にはならない。従って,40℃以下でする上述した半導体装置の試験にソケットを使用することができる。本実施形態例ではソケットを使用するから,半導体装置の端子を損なうことがないので,全数試験に適用することができる。また,バーンイン試験のソケットと兼用することで,バーンイン試験と同時に容器内水分量の多寡を試験することができる。
【0047】上述したソケットを使用する半導体装置の試験は,低温で行う第二の実施形態例にとくに有効に適用することができる。また,端子間に印加される電圧が小さな第七の実施形態例に適用することで,より試験の精度を向上することができる。
【0048】
【発明の効果】本発明によれば,非破壊的に半導体装置の密封された容器内の水分量の多寡を検知することができるので,半導体装置の信頼性の向上に寄与するところが大きい。
【出願人】 【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
【出願日】 平成9年(1997)7月1日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】井桁 貞一
【公開番号】 特開平11−23652
【公開日】 平成11年(1999)1月29日
【出願番号】 特願平9−175475