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【発明の名称】 FETの寄生抵抗の算出方法
【発明者】 【氏名】井上 隆

【要約】 【課題】n値が比較的大きな(1.1よりも大きな)ショットキー・ゲートFETやゲート長Lgが0.15μm以下の超微細ショットキー・ゲートFETでも、そのソース寄生抵抗Rs及びドレイン寄生抵抗Rdを正確に評価する方法を提供する。

【解決手段】ショットキー・ゲートFETにおいて、ソース接地状態でドレイン・バイアス電圧Vdを選んでFETをリニア領域にし、ゲートに順方向電流Igをゲート幅1mmあたり1mA程度印加して、実質的にゲート・ソース間にVgs〜Vf(Vf:ゲートの順方向ブレークダウン電圧)なる順方向バイアス電圧Vgsを印加し、ゲート電流Ig(≦Id/50(Id:ドレイン電流))が一定の下でドレイン電流をId1、Id2と変化させて、対応するVd1,Vd2、Vgs1、Vgs2を測定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】ショットキー・ゲートFETにおいて、コモン・ソース状態でFETをリニア領域とするようにドレインバイアス電圧Vdを印加し、実質的にゲート・ソース間の電圧VgsがVgf〜Vf(ゲートの順方向ブレークダウン電圧)なる順方向バイアス電圧となるようにゲートに順方向電流Igを印加し、ゲート電流Igが一定の下でドレイン電流をId1,Id2と変化させて対応するドレインバイアス電圧Vd1、Vd2及びバイアス電圧Vgs1、Vgs2をそれぞれ測定し、ソース寄生抵抗Rs及びドレイン寄生抵抗RdとVgs2、Vgs1、Id2、Id1、Vd,Idの関係式 Vgs2−Vgs1−Rs(Id2−Id1)+(nkT/q)*(ln(F2)−ln(F1))=0 (1)
(F=(1−exp(−u))/u,u=(Vd−(Rs+Rd)Id)/(nkT/q))
(ここでn:接合の理想因子、k:ボルツマン定数、T:接合の環境温度(ケルビン)、q:単一電子の電荷量)を用いることにより、RsまたはRdを算出することを特徴とするFETの寄生抵抗の算出方法。
【請求項2】ショットキー・ゲートFETにおいて、コモン・ソース状態でドレイン・バイアス電圧Vdを選んでFETをリニア領域にし、ゲートに順方向電流Igをゲート幅1mmあたり1mA程度印加して、実質的にゲート・ソース間にVgs〜Vf(Vf:ゲートの順方向ブレークダウン電圧)なる順方向バイアス電圧Vgsを印加し、ゲート電流Ig(≦Id/50(Id:ドレイン電流))が一定の下でドレイン電流Id1、Id2と変化させて、対応するVd1、Vd2、Vgs1、Vgs2を測定し、この時ソース寄生抵抗Rsおよびドレイン寄生抵抗Rdとこれらの変数の間には Vgs2−Vgs1−Rs(Id2−Id1)+(nkT/q)*(ln(F2)−ln(F1))=0 (1)
(F=(1−exp(−u))/u,u=(Vd−(Rs+Rd)Id)/(nkT/q))
が成立するので(ここでn:接合の理想因子、k:ボルツマン定数、T:接合の環境温度(ケルビン)、q:単一電子の電荷量)、RsとRdの間の関係式Ra=Rd−Rs (2)
を上式に代入して上式(1)からRs、下式(2)からRdを算出することを特徴とするFETの寄生抵抗の算出方法。
【請求項3】ショットキー・ゲートFETにおいて、まず、コモン・ソース状態で、ドレイン・バイアス電圧Vdを選んでFETをリニア領域にし、ゲートに順方向電流Igをゲート幅1mmあたり1mA程度印加して、実質的にゲート・ソース間にVgs〜Vf(Vf:ゲートの順方向ブレークダウン電圧)なる順方向バイアス電圧Vgsを印加し、ゲート電流Ig(<Id/50)が一定の下でドレイン電流Id1、Id2と変化させて、対応するVd1、Vd2、Vgs1、Vgs2を測定し、次に、コモン・ドレイン状態で、ソース・バイアス電圧Vsを選んでFETをリニア領域にし、上記のコモン・ソース状態のときと同様にゲートに順方向電流Igをゲート幅1mmあたり1mA程度印加して、実質的にゲート・ドレイン間にVgd〜Vfなる順方向バイアス電圧Vgdを印加し、ゲート電流Ig(≦Is/50(Is:ソース電流))が一定のもとでソース電流をIs1、Is2と変化させて、対応するVgd1、Vgd2を測定し、この時ソース寄生抵抗Rsおよびドレイン寄生抵抗Rdには、Rch、αをそれぞれこの時のチャネル抵抗とフラクショナル係数として、 (Vgs2−Vgs1)/(Id2−Id1)=Rs+αRch (3)
(Vgd2−Vgd1)/(Is2−Is1)=Rs+αRch (4)
が成立し、かつ、 Vgs2−Vgs1−Rs(Id2−Id1)+(nkT/q)*(ln(F2)−ln(F1))=0 (1)
(F=(1−exp(−u))/u,u=(Vd−(Rs+Rd)Id)/(nkT/q))
が成立するので、(3),(4)式を利用して求めたRsとRdの間の関係式 Ra=Rd−Rs=(Vgd2−Vgd1)/(Is2−Is1)−(Vgs2−Vgs1)/(Id2−Id1) (5)
を上式(1)に代入して上式(1)からRs、下式(5)からRdを算出することを特徴とするFETの寄生抵抗の算出方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電界効果トランジスタの評価方法に関する。
【0002】
【従来の技術】DC測定によってGaAsFETのソース抵抗(Rs)及びドレイン抵抗(Rd)を求める方法としては、簡便な方法としてEnd−resistance法がある。この方法では、まずFETをコールドFET状態(ドレイン電圧Vd=0V)とし、ゲートにVgs>Vf(ゲートの順方向ブレークダウン電圧)なる順バイアス電圧Vgsを印加して、ゲート幅1mmあたり20mA程度のゲート電流Igを通電した状態にする。次にIg一定の下でdVgs/dIdを求めて、Rs=dVgs/dIdでソース抵抗Rsの値を決定する。しかしこの方法ではRs、Rdの測定値にチャネル抵抗の一部が含まれてしまう欠点があった。
【0003】この欠点を改善しようとした方法として、L.YangとS.I.Longによる改良End−resistance法がある。(文献[1]:ヤング及びロング著;“ニュー・メソッド・トゥー・メジャー・ザ・ソース・アンド・ドレイン・レジスタンス・オブ・ザ・GaAsメスフェット”アイ・イー・イー・イー、エレクトロン・デバイス・レター、L.Yang and S.I.Long,“New Method to Measure the Source and Drain Resistance of the GaAs MESFET,”IEEE Electron Device Lett.,vol.EDL−7,pp.75−77,Feb.1986)。原理的にはチャネル抵抗の混入をうまく避けてRs、Rdの測定を行うことができる。
【0004】この測定方法では、コモン・ソース状態でドレイン電圧VdをFETのリニア領域(Vd<0.25V)に選び、ゲート・ソース間にVf以下の順方向バイアスVg(Vd<Vgs<Vf)を印加して小さなゲート電流Igを流し(このときドレイン電流Idに対して、Ig<Id/50とする。)、Ig一定の条件下で、互いに異なったドレイン電流(電圧)Id1(Vd1)、Id2(Vd2)に対応したゲート電圧Vgs1、Vgs2を測定する。この測定条件でのFETの等価回路を図1で示すように、他の文献でもよく用いられている、ゲート直下からチャネルまで特性が均一なショットキー・ダイオードを分布させたものでモデル化する。
【0005】特性が均一とは、ゲート電流密度J(x)(x:ゲートでのゲート長方向の位置)を式で表現したとき、ショットキー・バリア高さφBと理想化係数n値がゲートでの位置xによらず同一ということである。ショットキー特性がたとえ均一であっても、実際に流れるゲート電流の密度J(x)は、チャネル抵抗とドレイン・バイアス電圧による電位勾配のためにゲートでの位置xによって均一ではないことに注意を要する。
【0006】さて、位置xにおけるチャネル電位V(x)は、V(x)=Vs′+(Vd′/Lg)x (6)
で表される。ここでVd′はチャネルを横切ったときの電位差、Vs′はソース抵抗による電位差、Lgはゲート長である。順方向バイアス時でのゲート電流密度は、ダイオード特性から、 J(x)=Js{exp[(Vgs′−V(x))/(nVt)]−1} (7)
と表せる。nは理想因子。
【0007】ここで、Vgs′はRgの寄与を差し引いたゲート電圧でVgs′=Vgs−RgIg、VtはVt=kT/q(常温T=300Kの時、Vt=2.59*10-2(V))である。Jsはショットキー接合の飽和電流密度と言われるものであり、 Js=A*T2 exp{−qφB/(kT)} (8)
と表される(Aはリチャードソン係数)。ここではショットキー特性はゲートでの位置によらず均一としているので、みかけのショットキー・バリア高さφBもすなわち飽和電流密度Jsもゲートでの位置xによらず一定となる。
【0008】ゲート電流Igは(7)式をxで積分することによって得られる(Wはゲート幅)。
【0009】
【数1】

【0010】ただし、 u=Vd′/(nVT)〜{Vd−(Rs+Rd)Id}/(nVt) (11)
である。
【0011】ゲート電流Igは次のようにも表せる。
Ig=WLgJs{exp[((Vgs′−Vs′+nVt*ln(F))/(nVt)]−1} (12)
従ってゲート電流Igが一定の下で、ドレイン電流をId1、Id2と変化させたときに対応するゲート・ソース間電圧Vgs1、Vgs2は、以下の関係を満たす。
【0012】
Vgs1−RgIg−Rs(Id1+Ig)+nVt*ln(F1)=Vgs2−RgIg−Rs(Id2+Ig)+nVt*ln(F2) (13)
ここでIg<Id/50ゆえ、よい近似で、 Vgs1−RsId1+nVt*ln(F1)=Vgs2−RsId2+nVt*ln(F2) (14)
が成り立つ。チャネル抵抗の寄与は(14)式のFで考慮されており、ソース抵抗Rsは、原理的にはこの式の中に含まれるRsについて解くことによって決定されるものである。
【0013】Yang&Longの論文に記述されている従来の評価方法は近似的な手法を用いており、ソース抵抗を求める際にドレイン抵抗(ドレイン抵抗を求める際にはソース抵抗)を無視できる条件で測定する必要がある。n値が1.1程度の比較的小さな値を示すFETでは、ドレイン電圧VdをFETのリニア領域の範囲内(Vd<0.25V)でVd′=Vd−(Rs+Rd)Id>7*nVt(n=1.1のとき7nVt〜0.199V)を満たすように選ぶことができる場合がある。このとき、よい近似でexp(−u)<<1が成立するので、 ln(F2)−ln(F1)=ln(F2/F1)=ln{(u1/u2)*[1−exp(−u2)]/[1−exp(−u1)]}〜−ln(Vd2′/Vd1′)〜−ln(Id2/Id1) (15)
が成立するため、従来の方法ではRsを Rs=(Vgs2−Vgs1−nVt*ln(Id2/Id1))/(Id2−Id1) (16)
で求めていた(前述の文献[1]参考)。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】ところで、n値が比較的大きい場合(n≧1.2)には、上述の近似的解法は一般的には使えない。
【0015】今、FETのオン抵抗RonをRon=Rs+Rch+Rd (17)
と近似してみよう(Rchはチャネル抵抗)。このとき Id=Vd/Ron=Vd/(Rs+Rch+Rd) (18)
となるので、Vd′>7nVtでなけれないけないということは Vd′=Vd−(Rs+Rd)Id={1−(Rs+Rd)/Ron}Vd>7nVt (19)
ということである。Rs〜Rdとすると、 Vd>7nVt(1+(Rs+Rd)/Rch)〜7nVt(1+2Rs/Rch) (20)
となるから、測定条件がFETのリニア領域Vd<0.25(V)であるという条件とあわせて、 7nVt(1+2Rs/Rch)<Vd<0.25 (21)
が成立しなければならない。
【0016】常温下においては、今仮にRs/Rch、Rd/Rch<<1と仮定しても、上式からn値にはn<1.38という制限があることがわかる。実際にはn値は1.1程度の理想に近い値でないと近似法は適用できないことが多い。n値がn=1.2以上のときにはRs/Rchの比がかなり小さいことが必要となるからである。(Rsが5ΩのFETの場合、n値が1.2とするとRonが80Ω以上あれば測定可能となり、n値が1.3のときにはRonに対する制限が強くなり95Ω以上ないと測定可能な条件の範囲をとることができない。)
【0017】また、従来の方法[1]は、ゲート長Lgがたいへん細い(特にLgが0.15μm以下の場合)超微細ゲートのFETでは正確なソース及びドレイン抵抗の値を抽出できない。ゲート直下の電界はエッジ部に集中しており、このエッジ部でのゲート電流密度は、中心部に比べてたいへん大きくなっているが、ゲート長がたいへん細くなるとこのエッジ部での電界集中効果が無視できなくなり、ゲート電流密度の特性(すなわちみかけのショットキー・バリア高さφBと理想化係数n値)が均一であるというモデルの仮定が崩れるからである(たとえばRobert Anholt:“Electrical and Thermal Characterization of MESFETs,HEMTs,andHBTs”,ARTECH HOUSE,INC.,1995のpp.208−209を参考のこと。)
【0018】このように従来の近似的解法([1]に準ずる)は、FETゲートのn値が1.1程度を示し、かつゲート長Lgが比較的大きい(少なくとも0.18μm以上)比較的理想に近いショットキー特性のFETでないと適用できないという大きな測定制限があることがわかる。
【0019】
【課題を解決するための手段】請求項1、2の発明について説明する。
【0020】ショットキー・ゲートFETにおいて、コモン・ソース状態(リース接地状態)でドレイン・バイアス電圧Vdを選んでFETをリニア領域にし、ゲートに順方向電流Igをゲート幅1mmあたり1mA程度印加して、実質的にゲート・ソース間にVgs〜Vf(Vf:ゲートの順方向ブレークダウン電圧)なる順方向バイアス電圧Vgsを印加し、ゲート電流Ig(≦Id/50(Id:ドレイン電流))が一定の下でドレイン電流をId1、Id2と変化させて、対応するVd1,Vd2、Vgs1,Vgs2を測定し、この時ソース寄生抵抗Rs及びドレイン寄生抵抗Rdとこれらの変数の間には Vgs2−Vgs1−Rs(Id2−Id1)+(nkT/q)*(ln(F2)−ln(F1))=0 (1)
(F=(1−exp(−u))/u,u=(Vd−(Rs+Rd)Id)/(nkT/q))
が成立するので(ここでn:接合の理想因子、k:ボルツマン定数、T:接合の環境温度(ケルビン)、q:単一電子の電荷量)、RsまたはRdの間の関係式Ra=Rd−Rs (2)
を上式に代入して上式(1)からRs、下式(2)からRdを算出するFETの寄生抵抗の算出方法。
【0021】請求項3の発明について説明する。
【0022】ショットキー・ゲートFETにおいて、まずコモン・ソース状態で、ドレイン・バイアス電圧Vdを選んでFETをリニア領域にし、ゲートに順方向電流Igをゲート幅1mmあたり1mA程度印加して、実質的にゲート間にVgs〜Vf(Vf:ゲートの順方向ブレークダウン電圧)なる順方向バイアス電圧Vgsを印加し、ゲート電流Ig(≦Id/50)が一定の下でドレイン電流Id1、Id2と変化させて、対応するVd1、Vd2、Vgs1、Vgs2を測定する。
【0023】次に、コモン・ドレイン状態(ドレイン接地状態)で、ソース・バイアス電圧Vsを選んでFETをリニア領域にし、上記のコモン・ソース状態のときと同様にゲートに順方向電流Igをゲート幅1mmあたり1mA程度印加して、実質的にゲート・ドレイン間にVgd〜Vfなる順方向バイアス電圧Vgdを印加し、ゲート電流Ig(≦Is/50(Is:ソース電流))が一定のもとでソース電流をIs1、Is2と変化させて、対応するVgd1、Vgd2を測定する。
【0024】この時ソース寄生抵抗Rsおよびドレイン寄生抵抗Rdには、Rch、αをそれぞれこの時のチャネル抵抗とフラクショナル係数として、 (Vgs2−Vgs1)/(Id2−Id1)=Rs+αRch (3)
(Vgd2−Vgd1)/(Is2−Is1)=Rs+αRch (4)
が成立し、かつ、 Vgs2−Vgs1−Rs(Id2−Id1)+(nkT/q)*(ln(F2)−ln(F1))=0 (1)
(F=(1−exp(−u))/u,u=(Vd−(Rs+Rd)Id)/(nkT/q))
が成立するので、(3),(4)式を利用して求めたRsとRdの間の関係式 Ra=Rd−Rs=(Vgd2−Vgd1)/(Is2−Is1)−(Vgs2−Vgs1)/(Id2−Id1) (5)
を上式(1)に代入して上式(1)からRs、下式(5)からRdを算出することを特徴とするFETの寄生抵抗の算出方法。
【0025】[作用]
(請求項1,2の説明)本発明の評価方法では、ゲートに順方向電流Igをゲート幅1mmあたり1mA程度印加して、実質的にゲートにVgs〜Vf(Vf:ゲートの順方向ブレークダウン電圧)なる順方向バイアス電圧Vgsを印加することによって、ゲートの電流密度特性を均一にしている。ゲート・エッジ部は中心部に比べて電界が集中するためにショットキー・バリア厚さが薄くなりトンネル電流が増大するが、ゲートにVf程度の大きな順方向バイアス電圧を印加することによって、熱電子放出電流が電流全体において支配的になり、ショットキー・バリア厚さによらずにゲートの電流密度特性が均一になるのである。
【0026】図2は、GaAsMESFETについて2次元モンテカルロ計算を行い、ゲート位置xにおける電流密度を印加ゲート電圧Vgを変化させて算出しプロットしたものである。計算の際には、ゲート抵抗やチャネル抵抗はないものとし、ドレイン電圧はゼロとしている。ゲート電圧が比較的低いとき、ゲート・エッジ部に電界が集中することによりゲート電流密度に大きな不均一がみられる。一方、ゲートに印加する電圧がVf(この場合0.72V程度)程度になると、熱電子放出電流が支配的になるのでゲート電流は不均一さが低減されてほぼ均一になってくることがわかる。本発明の評価方法では、この状態を活用して測定条件を設定している。ここで、特性が均一とは、ゲート電流密度J(x)を式で表現したとき、みかけのショットキー・バリア高さφBと理想化係数n値がゲートでの位置xによらず同一ということである。ショットキー特性がたとえ均一であっても、実際のデバイスに流れるゲート電流の密度J(x)は、チャネル抵抗とドレイン・バイアス電圧による電位勾配のためにゲートでの位置xによって均一ではないことに注意を要する。本モンテカルロ計算の場合では、チャネル抵抗やドレイン電圧を無視しているので、ゲートにおいて電流密度が均一ということがすなわちゲートのショットキー特性が均一ということになる。(ゲートバイアス電圧VgをVfよりも大きく印加しすぎると、実際のデバイスでは接合の抵抗に対してゲート抵抗Rgの効果が大きくなってきて、誤差を生じるので注意を要する。)
【0027】また、本発明ではドレイン電圧をモニターし、それからたてた方程式を厳密に解くことにより、ドレイン抵抗による電位降下を正確に考慮している。従って、本発明の評価方法にはn値による測定制限はなく、n値が1.1よりも大きなショットキー・ゲートFETのソース寄生抵抗Rs及びドレイン寄生抵抗Rdを正確に評価することができる。
【0028】以上により、ゲートの電流特性が非理想的なショットキー・ゲートFET、すなわちn値が比較的大きな(1.1よりも大きな)ショットキー・ゲートFETやゲート長Lgが0.15μm以下の超微細ショットキー・ゲートFETでも、そのソース寄生抵抗Rs及びドレイン寄生抵抗Rdを正確に評価することができる。もちろん、理想的な特性を有するゲートをもったショットキー・ゲートFETにも問題なく適用できる。
【0029】(請求項3の説明)まず請求項2と同様に、コモン・ソース状態で、ドレイン・バイアス電圧Vdを選んでFETをリニア領域にし、ゲートに順方向電流Igをゲート幅1mmあたり1mA程度印加して、実質的にゲートにVgs〜Vf(Vf:ゲートの順方向ブレークダウン電圧)なる順方向バイアス電圧Vgsを印加し、ゲート電流Ig(≦Id/50)が一定の下でドレイン電流をId1、Id2と変化させて、対応するVd1,Vd2、Vgs1,Vgs2を測定する。
【0030】請求項3ではさらにFETをコモン・ドレイン状態にする。ソース・バイアス電圧Vsを選んでFETをリニア領域にし、上記のコモン・ソース状態のときと同様にゲートに順方向電流Igをゲート幅1mmあたり1mA程度印加して、実質的にゲートにVgd〜Vfなる順方向バイアス電圧Vgdを印加し、ゲート電流Ig(≦Is/50(Is:ソース電流))が一定のもとでソース電流をIs1、Is2と変化させて、対応するVgd1、Vgd2を測定する。このコモン・ドレインでの測定では、半導体パラメータ・アナライザにおいてプローバの針は上記コモン・ソースでの測定状態のままでよい。したがってコモン・ドレインでの測定は、正確かつ容易に行える。
【0031】この時ソース寄生抵抗Rs及びドレイン寄生抵抗Rdには請求項2と同様に、 Vgs2−Vgs1−Rs(Id2−Id1)+(nkT/q)*(ln(F2)−ln(F1))=0 (1)
(F=(1−exp(−u))/u,u=(Vd−(Rs+Rd)Id)/(nkT/q))
が成立するが、Rch、αをそれぞれこの時のチャネル抵抗とフラクショナル係数として、 (Vgs2−Vgs1)/(Id2−Id1)=Rs+αRch (3)
(Vgd2−Vgd1)/(Is2−Is1)=Rs+αRch (4)
が成立するので、(3),(4)式を利用して求められるRsとRdの間の関係式 Ra=Rd−Rs=(Vgd2−Vgd1)/(Is2−Is1)−(Vgs2−Vgs1)/(Id2−Id1) (5)
を式(1)に代入して式(1)からRs、式(5)からRdを容易に算出できる。
【0032】すなわち、請求項3の方法は原理的には請求項2の方法に基づくものであるが、RsとRdの関係式が正確かつ容易に求められるので、ひいてはRs、Rdの値を正確かつ容易に求めることができる。
【0033】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)本発明の方法でRsを決定するためには、Rdの値がわかっているか、あるいはRdとRsの間の関係がわかっていることが必要である。
【0034】そこで図2のようにドレイン開放、ソース開放のそれぞれの場合についてFETゲートに順方向バイアス電圧Vgを印加してダイオード特性を測定し、ゲート電圧Vg対ゲート電流Igがリニア(線形)の領域(ゲート電流が比較的大きいとき)で傾きdVg/dIgを求める。
【0035】ドレイン・オープンの時、dVg/dIg=Rg+Rs+Rf (22)
ソース・オープンの時、dVg/dIg=Rg+Rd+Rf (23)
となる。ここでRfはチャネル抵抗の一部である。(22)、(23)式の差をとることによってRsとRdの差RaRa=Rd−Rs (2)
が求められるので、Rd=Rs+Ra (2′)
とすることができる。なおRdとRsの差Raを求めるには、上記の方法の他にも多数の方法が知られており、たとえば文献[2](レイチョーデュリ他著:“ア・シンプル・メソッド・トゥー・エクストラクト・ザ・アシメトリ・イン・パラジティック・ソース・アンド・ドレイン・レジスタンシズ・フロム・メジャーメンツ・オン・ア・モス・トランジスタ”アイ・イー・イー・イー・トランザクションズ・オン・エレクトロン・デバイシズ・A.Raychaudhuri,J.Kolk,M.J.Den,and M.I.H.King,“A Simple Method to Extract the Asymmetryin Parasitic Source and Drain Resistances from Measurement on a MOS Transistor,“IEEE Transactions on Electron Devices Vol.42,No.7,July 1995.)などが参考になる。
【0036】(2′)式を(1)式に代入することによって、 Vgs2−Vgs1−Rs(Id2−Id1)+nVt(ln)(F2)−ln(F1))=0 (F=(1−exp(−u))/u,u=(Vd−(2Rs+Ra)Id)/(nVt)) (24)
を得ることができる。
【0037】式(24)の未知数はRsだけなので、式(24)をパソコンなどによって数値解析的に(たとえばニュートン法などによって)解くことによって容易にRsを決定することができる。Rsが決定されれば、式(2)によってRdも同時に決定される。また、Rs、Rdの決定に必要な測定は、半導体パラメータ・アナライザによって容易に行うことができる。
【0038】(実施の形態2)請求項3の方法は、原理的には請求項2の方法に基づいている。請求項2のコモン・ソース状態の測定を行ったあと、請求項3ではさらにFETをコモン・ドレイン状態にし、ソース抵抗Rsとドレイン抵抗Rdの関係式を求める測定を行う。
【0039】ソース・バイアス電圧Vsを選んでFETをリニア領域にし、上記のコモン・ソース状態のときと同様のゲートに順方向電流Igをゲート幅1mmあたり1mA程度印加して、実質的にゲートにVgd〜Vfなる順方向バイアス電圧Vgdを印加し、ゲート電流Ig(<Is/50(Is:ソース電流))が一定のもとでソース電流をIs1、Is2と変化させて、対応するVgd1、Vgd2を測定する。このコモン・ドレインでの測定は、半導体パラメータ・アナライザにおいてプローバの針は上記コモン・ソースでの測定状態のままでよい。したがってコモン・ドレインでの測定は、正確かつ容易に行える。
【0040】この時ソース寄生抵抗Rsおよびドレイン寄生抵抗Rdには請求項2と同様に、 Vgs2−Vgs1−Rs(Id2−Id1)+(nkT/q)*(ln(F2)−ln(F1))=0 (1)
(F=(1−exp(−u))/u,u=(Vd−(Rs+Rd)Id)/(nkT/q))
が成立するが、Rch、αをそれぞれこの時のチャネル抵抗とフラクショナル係数として、 (Vgs2−Vgs1)/(Id2−Id1)=Rs+αRch (3)
(Vgd2−Vgd1)/(Is2−Is1)=Rs+αRch (4)
が成立するので、(3),(4)式を利用して求められるRsとRdの間の関係式 Ra=Rd−Rs=(Vgd2−Vgd1)/(Is2−Is1)−(Vgs2−Vgs1)/(Id2−Id1) (5)
を式(1)に代入して式(1)からRs、式(5)からRdを容易に算出できる。
【0041】すなわち、請求項3の方法は原理的には請求項2の方法に基づくものであるが、RsとRdの関係式が正確かつ容易に求められるので、ひいてはRs、Rdの値を正確かつ容易に求めることができる。
【0042】
【実施例】ここでは請求項3の発明の方法に基づいて、実際のFETを測定した例を記述する。なお、請求項2は請求項3の方法をより一般的に表現したものである。
【0043】測定装置には半導体汎用パラメータ・アナライザを用いた。試料はゲート長Lg=0.15μm、ゲート幅Wg=50μm×2フィンガのヘテロ接合FETである。この試料は、ゲート長Lgがたいへん細く、ゲート電流密度特性の不均一さを生じることや、n値が1.3より大きく、FETのリニア領域内でVd′=Vd−(Rs+Rd)Id>7nVtを満たすことができないため、従来の近似的な解法を適用できない例である。
【0044】まず図3に示すようにソース接地状態でIg−Vgs特性を評価した。nVt値を求め、n値の均一性を確認した。図3はドレイン電流Idが一定で、Id=5.0mA、6.0mAの各場合においてゲート電圧Vgsに対応したゲート電流Igを対数表示したものである。この測定の条件下ではドレイン電圧Vdは0.1V以下であるので、FETはリニア領域にある。またIgは十分小さく、Ig≦Id/50を満たしている。n値はプロットの傾きから、nVt=ΔVgs/Δ[ln(Ig)] (25)
で決定され、n=0.28であった(接合の環境温度Tは300Kとした)。Id=5.0mA、Id=6.0mAの場合のプロットは互いに平行であり、この測定ではn値のバイアス依存性がないことがわかる。本測定におけるn値は、金属と半導体材料の組み合わせによって決まるn値とは異なり3端子的なもので、広いバイアス範囲ではバイアス依存を持つことに注意を要する。
【0045】次にIg=1mA/mmの一定の条件下でのId対Vd,Vgs値を図3から求めた。Igの値は、ゲート幅100μmに合わせて100μAを用いた。測定から、Id1=0.0050A、Id2=0.0060Aに対して、Vgs1=0.763586V、Vgs2=0.769702V、Vd1=0.062996V、Vd2=0.075538Vが求められた。本測定は電流、電圧値が小さい領域で行うものなので、測定値に光による影響やバラツキが生じることがあるので注意を要する。
【0046】次にプローバの針はそのままでドレイン端子とソース端子の役割を入れ換えてドレイン接地にし、Ig−Vgd特性を評価した(図4参照)。次に上記ソース接地のときと同様にIg=1mA/mmの一定の条件下でIs対Vgd特性を評価した。Igの値は、ゲート幅100μmに合わせて100μAを用いた。またソース電流Isは上記ソース接地状態での測定に合わせてIs1=Id1=0.0050mA,Is2=Id2=0.0060mAとした。測定から、Is1=0.0050A、Id2=0.0060Aに対して、Vgd1=0.764470V、Vgd2=0.770426Vが求められた。(5)式よりRdとRsの差を求め、Ra=Rd−Rs=−0.16(ohm)を決定した。
【0047】以上の測定で求められた測定値を式(1)に代入し、パソコンを用いて数値解析的に解くことによって、Rs、Rdの値を決定した。数値解析の手法としてはニュートン法を用いた。
【0048】
【数2】

【0049】関数f(z)として f(z)=Vgs2−Vgs1−z(Id2−Id1)+nVt(ln(F2)−ln(F1))
(F=(1−exp(−u))/u,u=(Vd−(2*z+Ra)Id)/(nVT)) (27)
とおけるが、このときf′(z)は、 f′(z)=Id2{2/u2−1−2*exp(−u2)/(u2*F2)
}−Id1{2/u1−1−2*exp(−u1)/(u1*F1)} (28)
で与えられる。本方法で求めたRs、Rdの値はRs=3.73(ohm),Rd=3.57(ohm)であった。
【0050】FETの小信号パラメータ抽出を行う場合、寄生抵抗Rs、Rd、Rgの組の決定は、Rs,Rd,Rgのうち少なくとも1つのパラメータをDCから決定し、残りをSパラメータから決定する方法が一般的である。そこで次に、表1に示すように、本方法を用いて求めたRs,Rd,Rgのrf値(Rgの決定には10GHzでのSパラメータを用いた)を他の方法で求めたものと比較してみた。方法■は、旧来のEnd−resistance法(式(16)においてRs=ΔVgs/ΔIdとする方法)で求めたRs、RdとSパラメータに用いるもの、方法■はYang&Longの方法[1]で求めたRs,RdとSパラメータを用いるもの、方法■は、本方法で求めたRs、RdとSパラメータを用いるもの、方法■は、RgのDC値から見積もったRgのrf値とSパラメータを用いるFukuiの方法である。この方法によるRgのrf値は、実際よりも多少低く算出されることが知られており、あくまでも経験式による概算値であるが、参考になる。
【0051】
【表1】

【0052】方法■で旧来のEnd−resistance法を用いてRs(Rdも)を決定すると、Rgが負の値になってしまうことがわかる。これは旧来のEnd−resistance法ではRsの値にチャネル抵抗の一部が混入し、Rsを過大評価しているためであると考えられる。従来のYang&Longの方法■でRs、Rdを求めた場合には、ゲート・エッジ部のソース端に集中してゲート電流が流れる結果、測定の際のチャネル抵抗の寄与は少なくなっているのに、評価用の式をたてたときの等価回路モデルではチャネル抵抗の寄与を大きく見積もり過ぎているために、Rs及びRdを過小評価し、マイナスの誤った値を算出してしまっている。一方、本発明の方法■でRs、Rdを本方法で求めた場合と、Fukuiの方法■でRgをDC値から見積もった場合とでは、寄生抵抗Rs,Rd、Rsの値は比較的よい一致を見せている。これは本方法がRs,Rdの算出に際してうまくチャネル抵抗の寄与を除去できたことの現れであり、本方法で決定したRs、Rdの値の妥当性が示されているものと考えられる。また、本発明の方法で抽出したRs,Rdの値は、ほかのDC測定やSパラメータからも妥当性を確認できた。
【0053】以上により本発明の方法は、ゲートの電流特性が非理想的なショットキー・ゲートFET、すなわちn値が比較的大きな(1.1よりも大きな)ショットキー・ゲートFETやゲート長Lgが0.15μm以下の超微細ショットキー・ゲートFETでも、そのソース寄生抵抗Rs及びドレイン寄生抵抗Rdを正確に評価することができることがわかった。もちろん本発明の方法はその評価方法の原理から、理想的な特性を有するゲートをもったショットキー・ゲートFETにはさらに問題なく適用できる。
【0054】
【発明の効果】以上により本発明の方法は、ゲートの電流特性が非理想的なショットキー・ゲートFET、すなわちn値が比較的大きな(1.1よりも大きな)ショットキー・ゲートFETやゲート長Lgが0.15μm以下の超微細ショットキー・ゲートFETでも、そのソース寄生抵抗Rs及びドレイン寄生抵抗Rdを正確に評価することができる。もちろん、理想的な特性を有するゲートをもったショットキー・ゲートFETにも問題なく適用できる。
【0055】従って本発明は、GaAsMESFETやヘテロ接合FETなどの電界効果トランジスタの評価方法の発展に寄与すること大である。
【出願人】 【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
【出願日】 平成9年(1997)7月3日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】京本 直樹 (外2名)
【公開番号】 特開平11−23644
【公開日】 平成11年(1999)1月29日
【出願番号】 特願平9−178242